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高山病には酸素を吸おう

 

 

 チベットなどの高地に行くと、高山病にかかる旅行者が多くいます。しかし、今日の高山病に対する対策は不十分です。普通の高山病には予防も治療も基本は酸素です。これを読んだ方だけでも、我慢したり薬に頼る前に酸素を吸って予防と治療をして、旅行を楽しいものにしましょう。

なお、私は医学は素人ですから、内容についてはあくまでも個人的な意見として参考にしてください。また、この内容は高度5千メートル以下の旅行を前提としています。

 

 

高山病で驚いた

 私は高山病に弱く、最初に高山病にかかったのはチベットのラサに行った時でした。高度500mほどの四川省の成都から飛行機で、いきなり高度3600mの空港に降り立ちました。たぶん機内は約750hpa(0.74気圧)、標高に直すと約2400mくらいに保たれていただろうから、500m2400m3600mを二時間ほどで移動したことになります。高山病にならないためには一日の高度の移動は500mとされていますから、高山病になることは当たり前です。高山病の危険性は知っていましたから、ゆっくりと動く、水分を十分に摂る、など気を付けました。

 

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写真 ラサの空港(1987)

 

 ラサに到着からゆっくりと歩き回っていると、二時間ほどたったあたりから、体はだるく、頭痛と気持ち悪さに襲われ、頭を左右に向けることもおっくうになり、ホテルに戻り、しばらくベッドで寝ていました。風邪と二日酔いを一緒にしたような症状でした。高山病は寝ていても良くならないどころか、血の巡りが悪くなるので逆効果です。わかっていても、とても起きていられない。高山病とはこれほどのものかと驚きました。

驚きはもう一つありました。ホテルのボーイに酸素を届けてもらいました。大きな空気枕一つ分くらいです。これを吸ってみると、なんと起き上がり、ゆっくりとだが動けるようになったことです。酸素が高山病に劇的に効くを体験しました。酸素不足こそが高山病の原因なのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが、まずは驚きました。

 この後、症状が消えたわけではなく、体調はイマイチだったが、ゆっくりと動けるようになりました。

 

 

二度目の高山病

 二度目の高山病はブータンに行った時でした。ブータン自体が高地で、首都のティンプーも標高二千メートルを超える高地です。高地にかなり順応していたはずの旅の後半、チェレ・ラ(チェレ峠)というパロの郊外にある峠にブルーポピーを見に行きました。

 

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写真上 Meconopsis simplicifolia

 

高度3800mほどの峠の頂上近くまでバスで行き、そこで昼食を取りました。周囲に青いケシがあるので、斜面を登ろうとしても、息切れしてうまく登れない。数メートル先の斜面に初めて見る青いケシがあるのに、そのわずかな斜面を登るのに一苦労です。ガス欠を起こした車か、電池の切れかけたモーターみたいに、一歩登っては激しく息をして、また一歩登ると百メートルを全速力で走ったようになりました。

 ガス欠ではなく酸欠です。この時はラサの時のように頭痛や身体のだるさなどはないが、そもそも身体が動かないという面白い体験をしました。

 

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写真上 ブータンのチェレ・ラ(2000)

 

 峠を少し下がって、たぶん3千メートルあたりから車を下りて歩き始めると、今度はなんともなく動くことができました。これは高度が下がったことと、周囲がうっそうとした林なので酸素濃度が高かったせいでしょう。

 

 

飛行機で高山病

 高山病になってから気が付いたのが、飛行機による高山病です。私は若い頃から飛行機に乗ると頭痛がしました。頭痛薬を持ち歩くようにしたが、飲んでもあまり効果がない。それもそのはずで、高山病だった。ラサに行く前から私は高山病にかかっていたのです。

 飛行機の機内は上空では、高度2400mに相当する気圧に下げています。飛行機の飛ぶ高度一万メートルなら周囲は0.3気圧以下(265hPa)ですから、まともに機内に1気圧をかけたら機体が持ちません。耐えられるだけの壁を作れば重くなる。そこで人間が我慢できて高山病も出にくい高度2400mくらいに相当する気圧にしています。私のように弱い人はこんな程度でも簡単に発病します。

 私は飛行機が好きなのに、乗るとなんとなく不快感があります。時間があるのだから、本を読んだり、パソコンを触りたいのだが気持ちが集中できない。眠ろうとしてもうまくいかない。これも酸素不足の症状です。最新型のボーイング787(写真下)、従来よりも機内の圧力を高め、高度1800mに相当する圧力をかけることで大幅に不快感が減ると言われていますから、大いに期待したいところです。

 

初飛行中のボーイング787

写真上 ウィキペディアより

 

 

高山病対策

 ラサとブータンの経験から、自分が高山病にかなり弱いことと、高山病には酸素が特効薬であることがわかり、海外でも使えるような携帯用の酸素はないかと探してみました。それが写真下の「オーツー・フォレスト」です。薬剤が入っていて水を入れると反応して、酸素を発生します。

 

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 なお、私はこの商品や販売企業とは利害を含めたいっさいの関係がありませんので、この商品についての効能などに責任は負いません。私が使った範囲では、高山病の予防に効果があったというだけです。

 最新の物は使い捨てのようですが、私が使い始めた頃は、写真下のような酸素発生装置に二種類の薬剤と水を入れるもので、構造がかなり複雑で、洗浄の際、小さな部品がなくなってしまうなど、旅行用には向きませんでした。

 

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 残念ながら、「オーツー・フォレスト」に用いられている薬剤は航空機に持ち込むことは禁止されていますから、これを海外に持っていくことはできません。

 そこで現地で調達することになります。

 中国のチベットなどでは大きな街ならたいてい酸素ボンベを売っています。ちょうど日本のカセット・コンロを大きくした程度です。私の買った範囲でいうなら、2570元くらいです。つまり5001000円程度です。ホテルでも売っていますし、中国語がわからなくても「酸素」「O2」と書けばたいてい通じます。

 

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写真上 中国雲南省の香格里拉で買った酸素ボンベ

 

 

高度計を持ち歩く

 高山病は2千メートルを越えた頃から症状が出ると言われています。私の体質での危険高度は3千メートルです。これ以下なら多少の不快感はあってもまず高山病にはなりません。そこで必要なのが高度計です。時計についている高度計は気圧から割り出す数値ですから、正確な高度ではないが、逆に気圧がわかるので便利です。高度計を見ながら、酸素を吸うタイミングを決めます。

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間欠的に酸素を吸う

 旅行中は高度計を見ていて、3千メートルを越したら酸素を「間欠的」に吸います。オーツー・フォレストも缶入り酸素も大した酸素量はありませんから、連続ではなく、間をおいて吸います。3分おき、5分おき、あるいは50m高度が上がるごとなど適当に決めて、その都度、数回深呼吸をしながら酸素を吸います。前述の中国製の酸素ボンベなら2本くらい吸います。

 こんな程度では、実際に身体が必要としている酸素に比べてほんのわずかで、本当に高山病に効果があるのかという疑問も出てきます。だが、効果があるのです。むしろ、酸素量がこの程度だからこそ効果があるのですが、それは後で説明します。

 

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写真上 グルジアのシハラ山

 

 

早めの手当

 重要なことは、初期のまだ症状が出ないうちに酸素を吸うことです。体調が悪くなってからあわてて吸うのではなく、自分で決めた高度になったら、まず吸う。実際に、私の場合など3千メートルになっても特に不快感があるわけではありません。しかし、何もなくてもまず酸素を吸う。私の経験から言っても、「早めの手当」こそが高山病にならないコツです。症状が本格的に出る前に酸素を少し供給してあげることで、身体が高度に順応する時間を稼ぐのです。

 風邪と似ていて、風邪も無理をすれば悪化するが、初期症状の時に手当をすると軽くて済みます。

 高山病に酸素が効果があると知って、準備している旅行会社もあります。しかし、客が症状を訴えてから吸わせています。これは順序が逆で、酸素を準備しておき、症状が出る前にから吸うように助言することです。

 酸素が高山病に効果があるのは、頭痛や吐き気など高山病の初期症状までで、高山病から肺水腫など別な病気を発症してしまうと効果がありません。この段階では酸素ではなく、医者の出番です。

 

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写真上 東チベットの四姑娘山

 

 

我慢大敵

 高山病で我慢は逆効果です。「ちょっと我慢すればなんとかなる」などという無意味な精神論はやめて、酸素を吸うことです。日本人は我慢強い。日本人は痛みを耐えるのが美徳とされ、未だに出産は無痛分娩がほとんど見られないという驚異的な国です。頭痛や吐き気など症状が出始めたら、我慢するのではなく、手当てをすることです。高山病を我慢することで症状を悪化させてしまった例を私は何度も目撃しています。

 中国で製作された昔のチベット探検のビデオを観たことがあります。チベットの高山地帯を探検した記録映画で、高山病になった隊員が映し出されました。彼は、国家建設の使命を果たすために断固として高山病と闘うと雄々しく宣言していました。だが、闘うべき相手は高山病ではなく無知です。

 

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写真上 東チベットの巴朗山峠からの眺め

 

 

高山病に免疫はない

 高山病は体質ですから、何度でもかかります。

 3000メートルから3500メートルに登った時に酸素を吸ってうまく順応しても、次の日4000メートルに登るなら、またそこで酸素を吸う必要があります。つまり、高さが高くなる時は必ず酸素を吸うことです。

 一度4000メートルに順応して、その高さに留まるなら、もはや酸素を吸う必要はりありません。しかし、その順応とはその時だけで、次回の旅行まで高山病の免疫が残っているわけではありません。

 自分の体質を良く知ることです。一度高山病を体験した方は、次回もかかりますから、準備しましょう。

 

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写真上 飛行機から見たヒマラヤ山脈

 

 

意外に怖い高山病

 高山病は風邪と似ていて、風邪そのもので死ぬ人は稀だが、そこから様々な病気を併発します。高山病も肺水腫などの別な病気を併発して死ぬようです。

 もう一つ怖いのは酸素不足によって持病や隠れていた病気が突然出てくることです。富士山では落雷や滑落などの事故を除き、心肺停止などの突然死が年に何件か報告されています。これなど酸素不足、つまり高山病がこれらの病気を誘発してしまったのでしょう。

高山病が原因で亡くなった人たちは圧倒的に中高年が多い。若い頃は高山病にかからなかったのに、年をとってからはかかるようになった人を知っています。老化によって新陳代謝が落ちてきますから、酸素供給が悪くなっているのでしょう。毎日新聞(2004710日付)によれば、順天堂大学の患者の中で、高山病が原因で認知症になった事例があるそうです。こういう事例を見てもわかるように、順応するまでじっと我慢するなど、いかに愚かかわかります。

 

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写真上 東チベットの亜丁にある牛乳海

 

 

高山病の薬

 高山病に効くといわれる薬には、医者が処方するAcetazolamideアセタゾラミド(商品名 Diamoxダイアモックス)が、また民間薬としては紅景天やイチョウの葉があります。

 

・ダイアモックス

 私は医者ではないし、ダイアモックスを試したことがないので、どの程度効くのか知りません。知っている範囲で言うなら、一緒に旅行した方がこれを予防薬として飲んでいたのに高山病になって苦しんで、食事もろくに取れない状態でした。その時、私は酸素を吸っていましたから、何ともありませんでした。

 大きな問題点は市販薬ではないことです。医者に処方してもらいにくい。何か規制があるのか、昔は旅行中の病気に備えて、薬を前もって処方してくれたのに、今は拒絶されます。つまり、病気になって診察しない限り、薬は処方できないということのようです。

旅行中に細菌性の下痢などになったら、どうすれば良いのでしょう。パックツアーは予定通りに移動しなければならないから、自分だけ医者に行くというわけにもいきません。こういう時、抗生物質など本当にありがたい。

 

・紅景天

 民間薬として紅景天(Rhodiola sachalinensis)があります。チベットに自生するイワベンケイの仲間で、民間薬として市販されていますから、入手は簡単です。私は粉末で買ったのでそれほど高価ではありませんでした。かつては民間薬としては高山病に効く唯一の薬だと言われていました。私は高山ではこれ単品で試したことがなく、飛行機の中で試した程度なので効果のほどはわかりません。

 

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写真上 「術数縦横」より転載

(http://www.fengshui-chinese.com/discuz/viewthread.php?tid=42684)

 

・イチョウ葉エキス

 健康食品としても売られているイチョウ葉エキスは高山病にも効果があることがラットの実験などで明らかなっています。入手が簡単で値段も安く、健康食品として売られているくらいで副作用の心配もありません。私もいずれ試してみようと思っています。味のまずい紅景天を飲み終えていないので、イチョウ葉エキスはまだ試していないのです。

飛行機に酸素ボンベや酸素発生用の薬剤を持ち込んだら逮捕されますから()、酸素以外のこういう簡単に手に入るサプリメントは重宝です。

 

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(ウィキペディアから転載)

 

 

医者は酸素を勧めない?

 日本旅行医学会(http://www.jstm.gr.jp/mountain_sickness.html)で高山病についての説明と注意があります。読んでおわかりのように、酸素を吸入するという記述がありません。医学会なのだから、薬を中心とした予防や治療を重視するのはわかるが、酸素という一番大事で一番決定的ともいえる予防方法、治療法に一言の言及もないことに驚きませんか。

 日本登山医学会(http://www.jsmmed.org/info/pg51.html)でも、

「高齢者の場合はとくに早め早めの酸素吸入が効果的です。」

とあるだけで、これでは高齢者のみの対処法であるかのように受け取られます。

 

 専門家ですらこの有様ですから、いろいろな旅行記や旅行した人たちから聞いても、酸素を準備している旅行会社はごく少数です。多くの旅行会社の対策は血中の酸素濃度を調べて、低い人はホテルに留まるように助言したり、あまり高度の高いホテルには宿泊しないという方針を定めている旅行会社もあるようです。酸素ボンベを各人に配り、高度計を見て、酸素を吸うように助言すればよいだけです。大した値段ではないのに、こんな簡単な方法をほとんどの旅行会社は採用しません。

 登山を専門とする旅行会社のパンフレットには、高山病の予防法として五つの対策が書かれていました。それらは、体調管理、深い呼吸、水分摂取、十分な睡眠、保温、アルコールを控える、とあり、酸素を吸うというのはありません。

 専門家などが酸素に無関心なのには理由があるのですが、その理由を説明するためにも、もう一つご紹介しましょう。

 

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写真上 東チベットの亜丁の央邁勇(ヤンマイヨン)

 

 

酸素を吸うと順応が遅れる?

チベット圏の旅行ガイドブック『旅行人ノート チベット 第4版』には、「高山病で苦しまないための到着当日の心得!」(359ページ)と題して、約1ページにわたり対策が書かれています。深呼吸をする、水を飲む、禁酒など、その助言は正しいのに、酸素ボンベから酸素を吸うことは一言も触れていません。

 その前のページでも「高山病」と題して半ページさいた説明があり、そこに次のような一文があります。

 

「外国人の泊まるような宿なら酸素ボンベが備えてあるし、商店や診療所で缶入りの酸素が売られている。酸素にばかり頼ると順応が遅れるが、当座の苦痛がしのげる。」

(『旅行人ノート チベット 第4版』旅行人編集部、旅行人、2006年、358)

 

 酸素に頼ると高山への順応(馴化)が遅れる、というのです。私の意見とはまったく逆で、むしろ酸素は吸わないほうが良いと言っているようなものです。

 このように、医学や登山など高山病に直接関係した人たちは高山病対策として酸素吸入にたいへん否定的です。その理由は、ネットで見ると、世界の登山医学界では、酸素を吸うことで順応が遅れたり、高山病の症状を隠してしまうという主張が「常識」とされているからのようです。

この「常識」とは、高山病を治すのに酸素を吸いっぱなしの状態にしたとか、素人が行かない五千メートル以上の高地での話ではないかと思われます。彼らのいう酸素を吸うとはアクアラングみたいに酸素マスクをつけたまま酸素を吸うことをさしているのでしょう。これでは低地の空気を吸っているのと変わりないから、高山に順応するはずがなく、マスクを外したらすぐに高山病に逆戻りです。

 私が勧めている薬剤の酸素やボンベの酸素では身体が必要な酸素量は圧倒的に足りません。だが、その足りない酸素で十分なのです。なぜなら、この酸素は身体が高地に順応するまでの気付け薬のようなもので、不足している分を補っているのではないからです。

 

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写真上 チベット鉄道の車窓からのチベットの山々

 

 

なぜ少ない酸素でも効果があるのか

 高山病とは、酸素不足の環境に身体が順応できずに暴走した状態です。そこで酸素を吸っても、供給している酸素の量は実際に身体が必要としている量よりもはるかに少ないが、そのわずかな酸素があると身体は暴走せずに、順応しようと努力を継続してくれるのです。

推測で申し上げるなら、濃度の高い酸素をちょっと供給してあげると、身体が一時的に正常な酸素があるかのように錯覚して、自律神経系が暴走をせずに、引き続き低酸素状態に順応しようとするのでしょう。ものの例えで言うなら、お腹が空いた時、飴玉をなめると血糖値が少し上がり、空腹をしのげるのと同じです。飴玉のカロリーは身体が必要なカロリーよりも圧倒的に少ないが、一時しのぎにはなります。

 

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写真上 グルジアのウシュバ山

 

 

酸素供給で順応する時間を稼ぐ

高山病にかかりやすい人とは、低酸素状態に順応するまで時間がかかる人のことです。

病気と言っても風邪のような感染症とは違い、体質の違いです。走るのが早い人と遅い人がいるのと同じで、高地に適用するのに短時間で順応する人もいれば、時間がかかる人もいます。後者は急激な気圧の変化に順応できず、身体が拒絶反応を起こして、頭痛や吐き気など身体が暴走を始める。

時間さえ稼いであげれば、後者でもやがては順応します。少量の酸素を供給してあげることで、順応するまでの時間稼ぎをしてあげるのです。酸素を供給しようがしまいが、順応する時間は個々人で決まっており、変わりませんから、少量の酸素供給によって順応が遅れるなどというのは「常識」どころか、間違った考えです。

 

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写真上 インドのガンガリヤにある花の谷

 

 

酸素で楽しい旅行を

 日本人は白人に比べて高山病にかかりやすいと言われています。職場に来たアメリカ人が親子で富士山に登山するというので、高山病に気をつけるように助言したが、何もなく帰ってきました。

 旅行で一緒の方から「高山病ってどんな症状か」と聞かれたので「二日酔いと風邪をいっしょにしたような症状だ」と言ったら、「私は二日酔いも風邪もなったことがないからわからない」という返事でした。また、五千メートルのキリマンジャロに登っても高山病にならなかったという人もいました。

 

 テレビで、有名な女流登山家が、2011年の東日本大震災で被災した高校生たちを励ましながら富士山に登るという番組がありました。高校生の中には高山病で途中からフラフラ状態になり、それを勇気づけながら、全員を頂上まで導き、人生でも辛い時もくじけずに頑張ろうという主旨でした。

主旨に大いに私も賛同しました。しかし、大地震は人間の努力だけでは避けられない苦難だが、一方高山病は我慢するべきものではなく、酸素を吸いながら登ればいいだけです。高山病は必要のない苦痛であり、登る忍耐とは分けて考えたほうが良いと思います。努力することと、苦痛を耐えることは別です。

 

かからない人にとっては高山病は「何の話?」です。そこから、我慢すれば良い、という誤った「信仰」が生まれています。これを読んだ方だけでも高地では酸素を吸って楽しく旅行をしましょう。

旅行の添乗員やツアーリーダーは正しい知識を持ってください。客や仲間の体調が悪くなったら、大きな負担になります。ちょっと酸素を吸わせただけで、客が無事に楽しく旅行できるなら、こんな簡単で安いことはありません。

 

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写真上 雲南省の白馬雪山

 

 

 


 

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