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ユリ

―― 美しかった昔 ――

 

 戸建てを借りていた頃、家の周囲にたくさんのユリを植えました。その一部を紹介したのが「ピンク色のユリ」です。家の北側に隣接する小さな公園に植えたユリで、沖永良部島でユリ栽培をしている人が、花を収穫した後の球根をネットで安く販売したものを購入しました(写真下)

 

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 私がここに引越しして来た頃、小さな公園は草刈りされるだけで、さびれていました。ここにキューピット像を立て、五月のフランスギクに続いて(写真下)、六月にユリが咲くようにしました。目論見は当たり、近所の方々からは好評でした。

 

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 その後、私はまた引越しをすることになり、何年かかけて作った庭は放棄するしかありませんでした。

 写真下の左とその約十年後の右を比較してください。太いケヤキを見ればわかるように、ほぼ同じ位置から見た風景です。もちろん、写真右ではユリは一本も出てきません。これらのユリの一部は残したのですが、私の後の居住者はこれらの上に物置を置き、草刈りをしたので、数年後にはすべてなくなりました。

 

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 写真上左に写っている天使像は転職し()、ユリと一緒に第二の人生を送っています(写真下)

 

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 写真下左の、私がペンキを塗った直後に危うく女子高生たちが座りそうになった白いベンチも、今では朽ち果てている(写真下右)。世の中とはこのようなものだと理屈では分かっていても、ため息が出る()

 

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 昔は美しかったのに今は荒れ果ててしまった光景をみると、「美しい昔(Diem Xua)」(チン・コン・ソン作曲、カーン・リー唄)というベトナムの曲を思いだします。日本では1970年の大阪万博で発表された曲で、反戦歌だから、この風景とは違います。

 

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 暗い雰囲気になりましたが()、花がうつろうなら、庭や公園が美しかった昔に戻り、ユリを楽しみましょう。今は荒れ果て、先々は売却され宅地開発されてしまうこの土地に、かつてはたくさんのユリが咲いていました。

 

 

カサブランカの親は絶滅

 カサブランカはヤマユリやタモトユリなどを元に1970年代にアメリカで作られ、その後でオランダで品種が固定されたそうです。モロッコのカサブランカはポルトガル語の「白い家(Casa Blanca)」という意味なので、このユリにもカサブランカという名付けられました。白くて大きなこのユリのイメージと合ったのでしょう。

 

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 海外では大人気らしいが、花はブワッと広がって、しまりのないイメージで、私はあまり好きではありませんでした。ところがネットで球根を安く売っていたので、つい欲にかられて買ってしまった()

 

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 買った時には小さな球根だったので、植えてもいずれ消えてしまうだろうと、あまり期待せずに植えたのだが、何年かたつと大きく見事な花をたくさんつけるようになりました。

 

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 転居するため球根を掘り起こした時、年数のわりにはずいぶん大きく成長していることに驚きました。天使像の再就職先でもカサブランカが大きく成長しています(写真下)。転居の時、何ヵ所かに移植し、そのほとんどが再び大きく成長し、大きな花を咲かせています。ユリの中でも比較的取扱いが楽で、しかも豪華な花が咲くという点で、優れたユリです。

 

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 ヤマユリなどを元にして品種改良されたと言われていますが、この丈夫さはヤマユリにはありません。たぶんもう一つの元になったタモトユリの性質かもしれません。

 タモトユリなんて、私を含めてほとんどの人は知りません。それもそのはずで、鹿児島の南にある口之島にだけ生えていたユリで、第二次世界大戦後、乱獲され、絶滅しました。その乱獲の背後にいたのか欧米の園芸業者で、やがてそれがカサブランカとなって日本に戻ってきたのです。つまり、カサブランカの「親」の一人はもういない。

 

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 タモトユリ復活の試みは成功したとは言えないようです。絶滅は腹立たしい限りだが、気を付けないと私たちも間接的に関与してしまうことがあります。最近、多肉植物がブームになっていて、それ自体は悪い事でないのだが、マニアが特殊な多肉植物を欲しがり、現地の希少植物が盗掘されることがあるからです。ランなどは昔からこれが問題になっていて、開発途上国では自然が残っているので、高値でランが売れるとわかると地元の人たちが「ラン獲」して、やがて天然物は絶滅するというパターンです。

 

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女王様のお約束

 クイーンズプロミスは私のお気に入りのユリの1つです。簡単に言えば、ピンクのテッポウユリです。白いシンテッポウユリとピンク色のオリエンタルリリーを掛け合わせたとあります。

 

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 クイーンズ・プロミスと書きたいところだが、登録されている名称はクイーンズプロミスです。直訳すれば「女王様の約束」で、花の名前にしては変だし、何か由来があるのだろうかとネットで調べたが、良くわかりません。この花のシリーズがプロミスだったということのようです。

 

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 クイーンズプロミスはタキイ種苗株式会社が2005年に発表したユリで、比較的新しい。ところが、タキイのホームページで探しても販売されていません。タキイが開発したピンクのテッポウユリには三種類あり、2003年にピンクプロミス、2005年にクイーズプロミスとプリンスプロミスが出て、現在はプリンスプロミスのみが販売されています。私はクイーンズプロミスしか現物は見たことがありません。ネット上の写真や解説を読むかぎり、三者の外見に素人目には違いはなく、なぜ前二つが販売中止になったのかよくわかりません。

 

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 私がネットでクイーンズプロミスを安く手に入れられた理由も、これが販売中止になり、残り物処分だったのかもしれません。あの値段ならもう一度買いたい()

 

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 写真下が天使像の前の職場です()

 

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 この天使は彼の転職先でクイーンズプロミスと一緒に人々を楽しませています(写真下)

 

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 皆さんは写真を見た時、まずピンク色のきれいなユリに見とれるでしょう。だが、良く写真を見てください。実は周囲は雑草だらけです。ユリがなければただの雑草だらけの庭だが、その間から花が咲くと花畑になる。

 

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 これは人間の目の錯覚を利用したもので、私は半ば意図的にしています。労力的にここを毎日草取りするのは無理で、手抜きをしながらも花壇のように見せる安易な方法はないものかと模索しました。そこで考えたのが、雑草よりも強い草花を植えることと、目立つきれいな花を植えることで、人々の目をあざむくことです。

 

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 同じようなことを試みていたのが駅の空き地でした。駅の周囲に空き地があると皆さんゴミを捨てる。ゴミは放置するともっとゴミを呼んでしまい、困った駅側が苦肉の策として出したのが花の種をまくことです。花を植えるなど手入れする花壇ではなく、目立つ花を咲かせる丈夫な草花の種をまいただけの花壇を作ることでした。花畑にゴミを捨てる人は少なく、効果があったというのです。

 

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 きれいな花が咲くと、人々の目は花に向けられ、雑草が一緒に生えているのにそちらには目が向きにくい。しかも、丈夫な草花なら他の雑草を減らしてくれます。通行人から「自然を活かした庭ですね」と誉められました。私が、雑草も自然の一部であるというような哲学を持っていると思ってくれたようだが、そうではなく、ただの手抜きです()

 

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 ユリには他の雑草を駆逐するほどの力はないばかりか、むしろ駆逐されてしまうほうです。だから、多少は手をかけてやらないといけない。その代わり、人目を惹く事で他の雑草を隠してくれる。

 

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 ユリは咲いている期間が長くはありません。そこで少しずつ咲く時期の違うユリを植えれば、六月後半から八月上旬までの約二か月間、ちょうど雑草が生い茂る時期に次々と花を咲かせてくれるので、通行人の目をユリに向けさせることができます。

 

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 クイーンズプロミスはカサブランカに比べて移植に弱いようで、だいぶん数が減ってしまいました。もう一度、この写真にあるように自由奔放にユリが咲く雑草園を作ってみたい。

 

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