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タカサゴユリ 2011

 

 タカサゴユリはテッポウユリにそっくりで、八月頃に咲き、空き地などで良くみかけます。テッポウユリは白く清楚の中にも、どこかユリの色っぽさがあるのに対して、タカサゴユリは花も葉ももっとすっきりして、より清楚なイメージです。

 

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タカサゴユリはタネから花が咲くまでの期間が短いと言われています。種をまくと、翌年、葉だけが生えてきて、二年目くらいから花を咲かせるそうです。ただ、私の経験からすると、種をまいてから数年はかかっているように思えます。

 

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タカサゴユリの良い点は種で増えることです。タカサゴユリの種の入った房は、大きい物は十センチもあり、おそらくは最低でも数百以上もの種が入っているでしょう。だから、これだけ種をまけばたくさん発芽するだろうと思うと、案外、駄目です。私の経験から大まかに言うなら、種の房一つで1本生えてきたら、成績が良いほうでした。粘り強く種をまき続けると、何年かたつとそのあたりからポツポツと生えてくるという感じです。

 

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テッポウユリとの区別は葉でもわかります。写真下左のタカサゴユリのほうが、写真下右のテッポウユリより葉が細くとんがっています。テッポウユリの葉のほうが幅も広く、肉厚です。発芽して間もない頃のタカサゴユリは、ユリとは思えないような、まるでイネ科の雑草のような姿です。

 

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 テッポウユリとのもう一つの違いは、写真下左のようにしばしば花の筒の部分が赤くなることです。ユリの中でもこんなふうに内と外とが色が違うのは珍しい。

 

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 ただ、タカサゴユリの全部が色がついているのではありません。かすかに色のついているものから、テッポウユリと同じように真っ白なものもあります(写真下)。白いのはテッポウユリとの掛け合わせだという説もあるようですが、違うと思います。なぜなら、色がついているかどうかだけの違い程度で、葉の形など他はそっくりだからです。

 

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 一般にユリは六月頃から咲き始め、七月末には終わってしまいます。タカサゴユリはその後の八月中旬に咲きです。他のユリよりも時期が少しずれていることが、庭に次々とユリを咲かせる上でとても便利です。それにしても、どうしてこのユリだけ咲く時期が八月なのでしょう。同じ南方が原産のテッポウユリは他のユリと同じ時期です。

 

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 タカサゴユリの咲く時期がちょうど八月の旧盆と重なるので、墓地などに生えていることもあり、日本では陰気なイメージを持っている人がいるのは残念です。タカサゴユリは先祖供養や死者とは何にも関係ない美しいユリです。

 

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 タカサゴユリは名前からしてお目出たいユリです。名前の由来は、原産地である台湾を意味するタカサングから来ているのだそうです。日本に来たのは意外に新しく、1923年頃に園芸用に輸入されたといいますから、まだ百年もたっていません。専門家の間では侵入生物という分類です。しかし、これが日本の古来の植物に明らかに害を為しているというのは見たことがありません。(http://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/81040.html)

 

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 写真下の二つのタカサゴユリの違いにお気づきでしょうか。左は花弁の数が足りません。普通は右のように六枚あるのに、左は四枚しかありません。

 

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 写真下もタカサゴユリです。開花に失敗したのか、あるいは病気かもしれません。

 

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 写真下の見事なラッパをごらんください。私の庭で最もたくさんの花を付けたタカサゴユリです。放射状に花を付け、それはもう見事です。私はとても喜んで、来年はもっとすごい数が咲くに違いないと、しっかりと球根に栄養を蓄えるように葉が完全に枯れるまで放置し、球根のあるあたりは踏んづけたりしないよう囲いを作り、周囲の雑草を取り除くなど、大いに気を遣いました。

 

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 ところが、翌年、なんと生えて来ませんでした。花が減ったのではなく、そもそも生えて来なかったのです。そればかりか、この周囲に増えていた十数本のタカサゴユリも大半が生えてきませんでした。

 

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私は愕然とし、驚愕し、絶望し(大袈裟)、自分の世話の何がまずかったのだろうかと振り返りました。雑草なのに余計な世話をしたのがかえってまずかったのか、私が大いに期待しているのを見て、「だったら、生えてやんないよ」というひねくれた性格なのかと()、いろいろ考えてみましたが、わかりません。

まるで、今日のデートでプロポーズしようとしていた相手が、待ち合わせ場所に現れないどころか、家まで訪ねたら、もぬけの殻だったような気分でした()

 

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消えた理由は連作障害でした。ネットを調べると、たくさん生えていたのが、ある年、突然消えてしまうということがあるようです。なぜ連作障害が起きるのか、詳しくはわかりません。タカサゴユリは定住が嫌いらしく、何年か生え続けると新天地を求めて種となってどこかに行ってしまうようです。

 

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 十数個の花を咲かせたのも、旅立ちのために準備、最後の大花火だったのでしょう。タカサゴユリがたくさんの花を咲かせた時はお別れの時のようです。そういえば、これだけあちこちで見かける雑草なのに、爆発的に増えているという話も聞きません。

 

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 連作障害というなら、寿命はどのくらいなのでしょう。少なくとも十年以上も生えているタカサゴユリを知っています。毎年、見事な花を咲かせています。最初は一本だったのが、種がこぼれ落ちて、周囲には十本以上に増えて、しかも増えたユリも大きくなっています。あれらもいずれ消えてしまうのでしょうか。

 

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 タカサゴユリは出身が台湾のわりには、寒さにも適用して、専門家のホームページの分布では福島県、宮城県まで北上しています。実際には山形県でも露地で生えています。もちろん、人間が持ち込んだものです。

 

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 写真下は福島県の常磐自動車道や磐越自動車道の斜面に咲いたタカサゴユリです。毎年、ここを通るのを楽しみにしています。時速百キロで走りながら、咲いている土手を見かけると車を停めるのですから、急ブレーキをかけるわけにもいかず、たいてい通り過ぎてしまいます。路肩は駐車禁止ですから、ちょっと停めて急いで写真を撮り、さっと引き上げなければなりません。

 

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私の庭では、他のユリが終わった8月にタカサゴユリが咲いてくれるのでとても助かります。同時に、このユリが咲き始めると6月から始まったユリの競演の終わりを意味するので、タカサゴユリの花が減り始めると、ちょっと寂しくもあります。急に消えたりせずに、来年もたくさん咲いてほしい。

 

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