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秋の風景

 

 空気が澄み、木々が色づく美しい秋です。写真下は見事なほどに赤くなるカエデの仲間で、毎年楽しみにしていました。年によって色づき方が違います。

 

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 壁のツタも色をつける。

 

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 イチョウは黄色になり、雌株が銀杏を落としています(写真下)。イチョウは葉が広いのに針葉樹で、恐竜時代の生き残りで、化石もあるそうです。イチョウの大樹海で、恐竜がイチョウの葉を食べている光景はすごかったでしょう。

 

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 私がイチョウにお世話になっているのは銀杏よりも葉です。血液の流れを良くすることから、高山病に効果が認められた数少ない植物です。今はサプリメントとして市販されているので、簡単に入手できて重宝しています。

 

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 秋が匂いでわかるのが、キンモクセイです(写真下)。山形から東京に上京して、秋にこの匂いが街中に漂い始めた時、私は桃の缶詰工場がどこにあるのだろうと周囲を見渡しました()

 写真下は前に通っていた道に生えていたキンモクセイで、ごらんのように見事にこんもりと枝葉をのばし、道路はその落ちた花弁でオレンジに染まるほどで(写真下右)、そばを通るのをいつも楽しみにしていました。ところが、繁茂して家のそばまでのびてしまい、ある日いきなり伐採されてしまった。こんな見事な木は切るのではなく、家を壊せばいいじゃないか()

 

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秋の実り

 柿は日本原産で、しかもカキという名前で世界中に広がっています。夕暮れの柿のぶら下がった景色はいかにも秋で、これでカラスでもいれば満点です。

 

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 私の柿のイメージは上のような青空の柿ではなく、写真下のような雪がかぶさった冬の柿です。冬になり、食べ物がなくなるとカラスなどがこの渋柿をついばむ。私も試しに雪で冷やされたドロドロに柔らかい柿を食べてみると、すごく甘い・・・のもつかの間、しばらくすると口に中に猛烈な渋みが広がります。冷たさと渋みを我慢してでも食べたいくらいうまい。

 

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 つくば市は栽培用の栗林が多くみられます。写真下の林は公務員宿舎にあった自然林で、ここの栗は栽培品種ではなく野生でしょう。市販の栗に比べて実は小さく、虫がついていることもあるが、なにせ無料、無農薬、採り放題です。この林は道から入りにくいので、栗があることを知る人も少なく、私はいつも持ちきれないほど集められました。場所を教えてあげたいが、もう林はありません。

 

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 カラスウリも見事になっている。食えませんが、林の中では良く目立ちます。ただ、カラスが食っているのは見たことがない。

 

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 花は目立たないのに実になると目立つのが写真下のノブドウです。ヤマブドウと違い、ノブドウはまずいので人間の食料にはならず、果実酒として利用される程度です。しかし、見た目がおもしろい。磨いた石みたいで、これが石なら、ちょっとした飾りになりそうです。ここまで同じ枝に色違いの実がなっている植物は珍しい。

 

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写真上下 ノブドウ(野葡萄)

 

 赤紫が多い中、写真下のような白っぽいのも、ソバカスがアクセントになっていて、なかなか良い

 

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 秋の林の中は木の実がたわわに実って、鳥や動物たちの大事な食料になっています。ただ、写真下の下段が葉から見てガマズミであることはわかるくらいで、後は何の実なのかよくわからない。

 

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 落ち葉の上で、ミドリシジミが日向ぼっこをして(写真下左)、カマキリ君は「何か用か?」と私を振り返る(写真下右)。あの目玉に私の姿はどのように映っているのだろう?

 

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キノコ

 秋といえばキノコ。ただ秋だけでなく、梅雨の時期などもけっこう生えています。芝生に生えてきたのはテングダケです(写真下)。毒性があるので食べられません。毒があってもベニテングダケのように色鮮やかだと楽しいのに、毒がある上にこんな普通のキノコではおもしろくない。

 

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 そういう点、写真下のベニタケの仲間は毒々しいというよりも、なんとなく楽しい。

 

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 写真下左は同じベニタケの仲間でフタイロベニタケ、写真下右は黄色いタマゴダケです。赤や黄色など、こんなふうにキノコが色で区別がつくのはむしろ珍しい。

 

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 写真下のカサが割れてしまっているのはタマシロオニタケかコシロオニタケでしょう。カサにボツボツの突起がついているのが特徴です。

 

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 写真下はシロハツかシロハツモドキで、もしそうなら、食べられるが、もちろん、試す勇気はありません。ドイツトウヒと思われる人工林の薄暗い地面から、厚く積もった針葉樹の葉を押しのけて毎年生えてきます。

 

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 姿形が独特で明瞭に区別のつくキノコは少数で、大半は名前さえもわかりません。

 

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 ヨーロッパの映画などでは良く森でキノコ採りをしている光景があります。あちらは毒キノコが少ないのでしょうか?

 

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 わかりにくいキノコが多い中、写真下のカワラタケはどこにでもあるからわかりやすい。しかし、ここまで密集すると、まるで樹木のウロコのようで、見事というよりもちょっと不気味です。

 

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 写真下は典型的なサルノコシカケで、霊芝という名前で売られています。免疫力をあげ、血液の流れを良くし、ガンや糖尿病にも効果があると言われています。

 

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 写真下は妖精が座る椅子です。オレンジなのにアケボノオシロイタケという奇妙な名前で、理由は白い胞子を大量に飛ばすからだそうです。写真下がそうであるように、倒木に発生することが多い。

 

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 写真下はヒトクチタケで、松の木に生えているので松脂の匂いがするといいます。これらのサルノコシカケたちは固くて食料にはなりません。霊芝以外のサルノコシカケの仲間は木製品を腐らせる「お邪魔キノコ」として林業や園芸関係者からは嫌われます。しかし、彼らが枯れた樹木の分解を手伝っているという点で、自然のサイクルの重要な役割をしていることは明らかです。自然界では、人間はいなくても困らないが、サルノコシカケはいないと困るでしょう。それどころか、自然から見れば人間こそが邪魔者です。

 

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秋はリンドウ

 十月に入ると、まだ暑い日もあるが、秋の気配が漂ってきます。いかにも秋の花というイメージがリンドウです。庭に生えて来た写真下のリンドウは何と言うリンドウなのだろうと調べると、リンドウだという()。私の実家で花卉として栽培していたのはエゾリンドウの園芸種で、これを私は長い間リンドウの標準的な姿なのだと思っていました。

 

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 切花用のリンドウと違い、野生のリンドウは背が低いので、周囲の雑草に負けています。昔は、田んぼなどで雑草刈りをしていたので、背が低くても残ったようです。しかし、手入れをされなくなっただけでなく、除草剤などを使うようになったので、むしろ珍しい植物になってしまいました。

 

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 庭に生えていたこのリンドウを私はかなり気に入っていたのに、残念ながら、引越しの時、移植に失敗しました。移植に適さない時期に引越ししたからでしょう。山野で見つけても、自然に生えているのを引っこ抜くのはためらわれるし、量販店で売られているのはいずれも栽培用に品種改良されたリンドウばかりです。

 

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一輪咲の菊

 菊は園芸植物としては優れています。晩秋で他の花は終わり、霜が降りそうなくらいの寒い時期まで菊は花を咲かせ続け、白、赤、黄色と花の色も形も種類が多く、何よりも丈夫で育てやすい。

 

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 畑に菊が掘り起こされ放置してありました。持ち主に聞くと、邪魔なので捨てるつもりだというので、私はすべてもらい受けました。菊がかわいそうだし、もったいないと思ったからです。長く放置したらしく、葉など茎から上はほぼ枯れて、根も空気にさらされて乾いています。これは無理かなと案じながらも、畑に植えるというよりも、土の中に埋めるという感じで植えたところ、翌年には少しずつ花を咲かせ始め、その丈夫さに改めて驚きました。

 

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 私の実家が花づくりの農家でしたから、菊は重要な栽培品でした。自然に咲かせれば秋に咲く菊も、八月の旧盆の頃に合わせて咲かせ、出荷時には戦争状態になります。枯葉を取り、一輪咲の菊は葉の根元から出た他の芽を取り除きます。菊は除虫菊があるように、虫を避けるために葉や茎に独特の強い匂いがあり、毎日、菊の出荷で嗅いでいると頭が痛くなるほどで、今でも菊の匂いは苦手です。

 

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 花屋で売っている菊は一輪咲があります。しかし、菊は一つだけ花を付ける種類はありません。ここにある写真のようにすべてたくさんの花を付けます。ではどうやって、一輪咲にするのか?

 菊が成長する途中で真ん中の芽以外の他の芽を取ってしまうのです。「芽欠き」といい、すべて手作業です。他の芽を欠くことで、一本だけの太い茎になり、一つの花に栄養が集中して大輪の花を咲かせます。一輪咲は不自然な姿で、そのおかげで私は生活ができただけに、今でも菊の一輪咲は苦手です。

 

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 公務員宿舎が廃止になり、残されたキクを掘り起こしたことがあります。けっこう量が多く、一本でも多く助けてやりたいが、時間がかかる。丁寧に掘り起こすよりも、茎を少しずつ引っ張っるだけでも採れることがわかり、目に付いたキクのほとんどを採取できました。その数日後にはその場所はブルドーザーで整地されました。

 

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シュウメイギク

 借りた家の敷地に秋になるとシュウメイギクが花を咲かせました。ここだけでなく、120戸ほどある団地全体のあちらこちらにシュウメイギクが咲いていました。シュウメイギクは野生ではないものの、これだけ広く見られることから、人が植えた後、綿毛の種が飛んで自然に増えたのでしょう。

 

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写真上 シュウメイギク(秋明菊)

 

 このシュウメイギクは建物の北側のあまり日当たりの良くない場所であるにもかかわらず、かなり元気がよく、花もたくさん咲かせていました。調べてみると、シュウメイギクはこういう湿気のある半日陰を好むようです。日本は湿気が多く、酸性土壌なので、シュウメイギクには合っていたのでしょう。

 

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 日陰でもこれだけ花を咲かせる丈夫な植物であるのを見て、私はもっと増やそうと、あちらこちらに植え替えをしました。後にこの団地は廃止されたので、残されたシュウメイギクを大急ぎで移植することになりました。

 

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 シュウメイギクは横に根がのびて増えるので、そういう根は簡単に採れます。しかし、古い根を掘るのはかなり大変で、痩せた粘土質の土壌の中に、木のような太い根が深く生えていました。とうてい掘りきれず、あきらめて根を引っ張って途中から切ったのに、植えて何年かたつと花を咲かせ始めました。

 

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 シュウメイギクの英語名はJapanese anemone Japanese thimbleweedなど、まるで日本の固有種のように扱われますが、原産は中国で、日本にはかなり古い時代に入ったと言われています。日本に入ったというのは、荷物に種が紛れ込んだという意味なのか、それとも誰かが意図的に持ち込んだという意味なのか、調べてもわかりません。花の美しさからは後者のような気もします。

 

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 シュウメイギクの原種を初めて見たのは中国四川省の東チベットでした(写真下)。川のそばや、写真下のように山の斜面で見かけました。これらは日本のシュウメイギクのご先祖さんです。見かけたのが標高17003000mの高地ですから、冬の厳しさは日本の比ではありません。それが今では日本の蒸し暑い夏も乗り切るのですから、大変な適用力です。

 

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写真上 Anemone tomenrosa

 

 チベットのシュウメイギクも日本のそれと外見はほとんど差がありません。写真上の中国のシュウメイギクは正真正銘の野生ですから、元々の色が薄いピンクなのでしょう。

 

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 シュウメイギクは主に花の色が薄いピンクと白、八重の濃いピンクがあります。団地のあちこちに残されていたシュウメイギクをブルドーザーでつぶされる前に、大急ぎで引っこ抜いて自分の所に移植したので、花の色や形の確認ができず、花が咲き始めてから、三者が混ざっていることに初めて気が付きました()。私個人の好みはここにあるような一重の薄いピンクです。

 

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 シュウメイギクは菊という名前が入っているが、キクではなく、キンポウゲ科のアネモネの仲間です。原産地の中国では「秋牡丹」という名前で、菊は名前に入っていません。なぜか日本では貴船菊(キブネギク)などと別名も菊の名前が付いています。花を見ても、ましてや葉を見たら、とうていキクの仲間には見えない。

 

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 花弁に見えるのはガク片で、花弁はないというから、おもしろい。キンポウゲの仲間にはこういうのが多く見られます。進化の過程で何があったのでしょう?

 

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嫌われ者

 嫌われ者のセイタカアワダチソウです(写真下)。花自体は群生するとそれなりにきれいなのに、他の植物を駆逐し、また一時は花粉症になるという汚名まで着せられ、いよいよ嫌われました。セイタカアワダチソウの花粉は飛びませんから、花粉症の原因という説は冤罪なのにいまだに信じている人が多い。

 

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写真上下 セイタカアワダチソウ(背高泡立草)

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 この植物は強いというよりも強烈です。庭に出てきたので引っこ抜くと、うまい具合に根ごと取れました。これで大丈夫と思ったら大間違いで、根は横に放射状に広がっているようで、しっかりとそこから芽を出して成長を始めます。これを根絶するには、地上部を6月と9月に二度草刈りするとあります(『草と緑』小西真衣、2pp.20-35,2010)。つまり、徹底的に草刈りをくり返すと消えるのですから、実はそんなに難しい植物ではありません。世の中には草刈りくらいでは根絶できない植物がいくらでもあります。

 

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 セイタカアワダチソウは前は「要注意外来種生物」だったのに、今は「生態系被害防止外来種」です。これは「特定外来生物」ほど凶悪ではないが、それに準じる要注意植物という意味です。ずいぶん強烈な外来種なのにトップクラスではないのには理由があります。

 

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 セイタカアワダチソウの天敵は、なんと本人です。根から他の植物の成長を阻害する化学物質を出して、競争相手のススキなどを駆逐するが、その化学物質が増えすぎると今度はセイタカアワダチソウそのものの発芽を阻害してしまうという。(『図説 日本の植生』沼田眞、岩瀬徹、講談社、p.250)

 

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 セイタカアワダチソウが一時よりも勢力が衰えたのは化学物質による自家中毒などいくつかの要因があります。自分の敷地に生えられては大迷惑で、私は見かけたら、迷いもためらいも躊躇もなく、慈悲も憐みもなく、すぐに引っこ抜きます。それでいて、空き地などに一面に広がるセイタカアワダチソウを撮影するためにわざわざ探しに出かける()。好き嫌いはともかく、一面に広がるセイタカアワダチソウは秋の風物詩の一つです。

 

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 嫌われ者でありながら、ミツバチが蜜を集めるのに重要な花のようです。花を咲かせているからといって蜜を出すとは限らず、その点、秋の終わりにもセイタカアワダチソウは蜜を出し続けます。大規模に花を咲かせるのでミツバチにとってはありがたい存在です。残念ながら、養蜂家にとってはかならずしもそうではありません。

 

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 セイタカアワダチソウの蜂蜜には悪臭ともとれる独特の匂いがあるために日本では嫌われ、蜂蜜の好きな私は見たことがありません。セイタカアワダチソウの花そのものは嫌な匂いではないのに、蜂蜜になると独特の匂いがする。匂い成分を調べると、セイタカアワダチソウに含まれていない成分で、蜜を採取する際の蜂の出す物質と化学反応をおこしているようです。実際、養蜂家のネット上での書き込みを見ると、蜂蜜よりも巣に臭いが漂うので、すぐにわかるとあります。

 せっかくの蜂蜜なのだから、何かうまい利用方法はないものでしょうか。人間は身勝手な生き物だから、役立つとわかれば、評価が逆転するかもしれない()

 

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