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フクジュソウ 2013

- 減らない放射能汚染 -

 

 

フクジュソウは野生?

 毎年、東北の春を訪ねています。今年はフクジュソウの咲く山を訪れました。六年ほど前にたまたま迷い込んだ山の斜面にたくさんフクジュソウが生えているのを見つけました。

 以来、何度かこの斜面を訪れるのですが、道が途中で消えているので、毎回迷います。

 

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 問題はこのフクジュソウは自然のものなかどうかという点です。東北地方なので自生のフクジュソウがあってもおかしくありません。しかし、この周囲の山で野生のフクジュソウなど見たことがないからです。

 

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 ここは写真下のように、北下がりの山の斜面がぽっかり空き地になっています。周囲が杉などの植樹と、雑木が生い茂っているのに、ここだけが空いています。おそらく畑として開墾した跡なのでしょう。

 

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 たまたま通りかかった地元の山菜採りの人たちに聞くと、やはり土地の所有者がフクジュソウを植えて、それが広がったのではないかとのことでした。

 

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 写真下は2007年に初めてここに来た時の様子です。ちょうど時期が良かったのか、斜面に一面に咲いていました。

 

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 以後、何度かここを訪れましたが、訪問した時期がまずいのか、花の数が一番多かったのは2007年でした。写真下は今年の状態で、いずれも林との境にある花で、開けた斜面には数が少なくなったような印象です。

 

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2年目の放射能

 私は東北に行くのに常磐道を通り、いわきから磐越道に乗り換え、福島県の郡山で東北道に乗り換えます。毎回、このルートを通る時、車に写真下の放射線の線量計を乗せたまま走っています。

この放射線計測器は日本のメーカーである堀場が作った「環境放射線モニタ PA-1100 Radi」です。東日本大震災後、海外メーカーの線量計が出回っており、その計測値の正確さを疑う声もあります。しかし、このメーカーはこの分野ではそれなりに信用のおける機器を出していますから、かなり正確な値でしょう。

 

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環境放射線モニタ PA-1100 Radi(堀場)

 

高速道路で計測した結果が下図です。パーキングエリアやインターチェンジの近くで停車した状態で計測した他に、走行中の値も含まれています。高速道路を走行中に最大の値を示されても、車を停めるわけにいかないばかりか、むしろ私はアクセルを踏みます。

この線量計は同じ場所に数十秒立ち止まることで正確な値が出てきますから、走っている車からでは具体的にどこの場所の数値なのかはわかりません。しかし、逆に言うなら、その地域の平均値のような値が出てくることになります。

 

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20134月の計測値(数値の単位はμSv/h)

 

 常磐道で茨城県を北上すると、福島原発に近づいて行きます。しかし、必ずしも放射線量は上がりません。むしろ、茨城県中部の水戸の放射線量は茨城県南部よりも低いくらいです。北茨城市に近い関本パーキングエリアでは0.091 μS v/hですから、茨城県南部よりもむしろ低い。

 

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写真上左 ヤマネコノメソウ

 

 茨城県いわき市の近くで常磐道から磐越道に乗り換え、郡山に向います。この間は阿武隈パーキングエリアが0.081μSv/hと低いかと思うと、その後で0.607μSv/hというかなり高い値も計測されるなど、まだら模様で、郡山に近づくにつれてほぼ0.3μSv/hくらいになります。

 

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 郡山の北にある安達太良山パーキングエリアでは、レストランなどの建物の中に入ると0.05μv/hと値が外の半分以下になります。たぶん清掃を徹底した効果なのでしょう。

 郡山を出て仙台方面に向けて走ると、二本松近辺で放射線量の最大値があります。昨年2012年末は0.83μv/hを記録するなど、ずっと0.8μSv/hを越える値を示していました。

 その後、再び下がりはじめ、福島西のインターチェンジで0.24μSv/h、すぐ北の吾妻パーキングエリアで0.41μSv/hなど比較的高い値を示します。しかし、国見や白石で0.3μSv/h前後なのを最後に、宮城県では値がしだいに低くなり、時には0.05μSv/hを割ることもあります。

 

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写真上 ショウジョウバカマ

 

本当に低くなっているのか

 原子力規制委員会によれば、原発事故後、放射線量は4割減少したといいます(朝日新聞、201366日、朝刊)201111月と20133月の比較ですから、約1年半です。

 一方、私の計測は約一年間です。計測方法も精度も違うから両者を一概に比較はできないが、それにしても一年半で4割近くも減ったというのは、私の実感としてはありません。

むしろ予想よりも低くなっていない。時間がたてば放射性物質も雨や風で拡散して、時間とともに薄らぐのではないかと予想していました。しかし、一部で値が下がっている地域もあるが、大半の地域はほとんど値に変化はありません。減少はしているが、その早さはきわめてゆっくりです。

 

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写真上 エンレイソウ

 

 高速道路の車の上から放射能を計測するという大まかなやり方ではあるが、それでも国の示した基準値である0.23μSv/hを軽く越える地域が大半です。線量計を見ながら、正直な感想を言うなら「よくここに住んでいるなあ」というものです。住民にはひどい言い方なのは知っています。しかし、国か示した屋外での0.23μSv/hを越える地域がこれだけあるのに、そのまま住み続けるというのはどういうものでしょうか。

 

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写真上 キバナノアマナ

 

 

基準値は安全値ではなく危険値

 私なら基準値を超える場所に住むなど論外です。年間1mSvという基準は、これ以下は安全だというのではなく、これ以上は危険だという意味です。20mSvは放射線業務の従事者の基準値で、1mSvは一般民衆の基準値で、国際放射線防護委員会による勧告値です。しかし、少量の放射線の影響についてははっきりしておらず、明瞭に被害が出る値を基準にしているのですから、これは安全基準というよりも、危険基準です。

 

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写真上下 エンゴサク

 

 年間1mSv、屋外で1時間あたり0.23μSvを受け入れるとしても、私が通過した高速道路のかなりの地域がこの基準値を超えていることになります。こういう所に住んでいて、ほんとうに大丈夫なのでしょうか。チェルノブイリの例などを見ると、私ならたぶん逃げ出します。ましやて、小さい子供をここで育てるのは論外です。

 

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原発を再開?

 放射能とは関係なしに、春の妖精たちが今年もやって来ました。カタクリやキクザキイチゲの咲く林の中もまた放射能値が基準値以下とはいえ、事故前よりも高くなっています。

 

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写真上下 カタクリ

 

 私が驚くのは、これだけの大災害を出しておきながら、まだ原発を動かそうとしていることです。「羮に懲りて膾を吹く」という諺があるように、一度大火傷をしたら、次から過剰なくらい用心深くなるのが普通なのに、一年もたつと、原発再開を認めるような風潮がだんだん強くなっていったのには驚きました。2013年現在で、日本人のほぼ4割が原発再開に賛成しているという調査結果に、私は自分がエイリアン(異邦人)のような錯覚を覚えます。今では政府は原発廃止どころか、成長戦略として「原発活用」を明言しています。

日本人はどうなってしまったのでしょう。まるっきり学習効果がないのか。

 

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 原発以外に電力供給の方法がないとか、新しい技術を編み出す力がないというならともかく、いくらでも他の方法で供給できることは、最初の年に原発がなくても乗り切ったのを見れば十分です。一部で計画停電もあったが、2年目にはそれすらありませんでした。つまり、原発がなくても大丈夫だと実際に証明されたのです。

 これだけ明瞭な「実験結果」が出ているにもかかわらず、成長戦略のためには原発を再開しないといけないとは、何を根拠にしているのでしょうか。成長戦略が理由ではなく、先に原発再開があり、成長戦略を「人質」にしているようにさえ見えます。成長戦略の中に脱原発技術を入れるべきです。

 

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写真上下 キクザキイチゲ

 

原発がなくても発電はできる

 日本の技術力をもってすれば原発などなくても発電くらいできます。シェールガスなど新しいエネルギーも登場しています。もっと日本人は自分たちの力に自信を持つべきです。原発なしというのは先進国の中では初めて進もうとする道なのだから、平坦であるはずはなく、二酸化炭素の問題など難題があります。だが、越えられないほどの難所でもありません。技術的な問題ではなく、原発を推進する方向でエネルギー計画を進めてきたから、それを変更するのが大変なだけで、技術的には可能です。

 

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 風車や地熱など、日本がトップクラスの技術を持ちながら、国内では活かされないままです。発電量が小さいなどと批判する人もいるが、発電施設を作るような政策をしなかったことが原因です。

風車などはよく「風任せだ」という批判を聞きます。しかし、ドイツはこの問題をすでに解決していて、それは全国を送電網で結ぶことで、風か吹いている地域とそうでない地域の落差を解消したのです。

 

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 ところが、日本はドイツを真似することができない。発電や送電が電力会社ごとに分かれており、しかも狭い日本の東西で電圧も周波数も違う。周波数や位相をそろえるという、高校生が物理の実験でやっている程度の内容を未だに解決できない。素人が見ても、技術の問題ではなく、縄張りや既得権という政治や経済的なものなのがわかります。

 

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 原発を捨てるなら先進国の中で初めてです。実におもしろい挑戦であり、日本人が初めて切り開く道です。物まねばかりと言われた日本が、世界で初めての新しい道を切り開くことができる。どうしてこんなすごいチャンスを活かそうとしないのか。そのための新しい技術が生まれ、世界的な市場を作り出すでしょう。

 

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原発は非経済的

 ところが、政治家やマスコミの一部などが声高に「原発を再開しろ、節電はもう嫌だ」と騒いでいる。原発によるひどい被害が今でも報告され、原発難民が三十万人もおり、原発がなくても何とかなることが実際に証明されているのに、まだやるという。

 彼らは原発再開によって何か利益を得るのでしょう。成長戦略に必要だとか、いかにも現実的な内容を言うが、まったく逆です。原発崩壊でどれほどの金銭的な打撃を被ったか、正確には計算すらできない。日本は原価方式ですから、それらは発電コストに反映されます。つまり、原発の発電コストは計算できないほど高いのです。

 

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原発は経済的に見てもまったく合いません。極めて値段の高いエネルギー源です。

それらを誤魔化して、いかにも経済発展には必要であるかのように嘘をついて、原発を再開したがるのは、それによって自分たちの利益を得られる人たちがいるからです。

 

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 原発から出る放射性物質のゴミの捨て場すら決まっていないのに、十万年も汚染が続くゴミをこれ以上作り出すのは無責任です。放射能を無害にする技術は今のところありません。今自分たちが電力を得れば、今経済的に発展すれば、子孫や地球に生きる生物にどんな悪影響を与えようが知ったことではないという発想は、あまりに自己中心的ではありませんか。

 

 

 

 

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