蔵王 2014年 コマクサを見に行こう コマクサを見ようと蔵王に行きました。 蔵王はスキーで有名な山で、下の地図のように、宮城県と山形県の境にあり、仙台市や山形市から簡単に行ける距離にあります。東北をご存じない方は、仙台市と山形市の位置関係を見て驚く人が多い。山形市は仙台市よりもずっと北にあるかのように錯覚しているからです。だが、御覧のように、東西でわずか五十km程度しか離れていません。 山形新幹線もあるので、蔵王のハイキング程度なら東京から日帰りで行けます。 がら空き駐車場 2014年7月30日(水)、天気予報どおりに、雲はあるが、朝から晴れています。天気は明日から下り坂らしいから、さっそく出かけましょう。車で山形市から国道12号(蔵王エコーライン)を登り、約一時間半ほどで、刈田駐車場(蔵王高原刈田駐車場、1600m)に到着しました。広々とした駐車場に私の車を含めて数台しかありません(写真下左)。車で来る観光客の多くが、御釜を見るのが目的なので、さらに蔵王ハイラインという有料道路を通り、その先にある有料駐車場(蔵王刈田岳山頂有料駐車場)に停めるからです。 ここは今日だけでなく、よほど客がいないらしく、写真下右の店らしい建物は閉店してしばらくたっているようです。いつも思うのだが、欧州のアルプスなどを見習って、もう少しオシャレな建物を造れないものだろうか。廃墟になっても絵になるような建物を造ってはどうかという意味です。 本日のルートは、刈田駐車場から登り、御釜の西側の外輪山である「馬の背」を北に向かい、そのあたりでコマクサを探し、熊野岳(1841m)に行った後、引き返し、今度は南の刈田岳(1758m)に寄ります。赤い線は私が実際に歩いたルートです。標高だけ見ると一見大変そうですが、晴れさえすれば山としては楽で、初心者が気軽に歩けるコースです。と思って行ったのですが、後半が大変でした。やはり山を甘くみてはいけない。 今いるのが、下の案内板にある「現在地」です。ここはリフト(蔵王刈田リフト)があり、これを利用する人も多いが、私は花の写真を撮るのが目的なので、リフトの右側に見える「登山道」を登って、お釜に向かいます。この登山道にも花が見られるとネットに書き込みがあったからです。 ところが、登山道がどこにあるのかわからず、私はリフトの乗り場に行き、売店の人に聞きました(写真下左)。建物の右側のそばでした。 このリフトを巡って、昔、山形県と宮城県が境界を巡って裁判になったことがあります。三十年近くも争われ、最終的に決着したのが1995年です。県境を確定していなかったという行政の初歩的な失策なのだが、そこに様々な利権、利害、面子がからみ、無益で無意味な争いに発展しました。 花の撮影開始 では、出発です(8:28)。リフトとほぼ並行して細い山道があります(写真下)。 道の両側にある花でまず目立つのがアザミです。蔵王にはザオウアザミという固有種もあるそうですが、ここのは普通のナンブタカネアザミ(南部高嶺薊)ではないかと思います。この後の植物の名前も素人判断ですから、信用しないでください(笑)。 ヤマブキショウマ(山吹升麻)が咲いています。 低地なら雑草にすぎないシロバナニガナ(白花苦菜)もここでは高山植物のような顔をしている。 シロバナニガナに比べてハナニガナ(花苦菜)は数も少ない(写真下)。いずれも低地でも良くみられるいわゆる雑草です。 低地でも春先に見かけるタニウツギ(谷空木)です。さすがに花は終わりかけらしく、ほんのわずかしかありませんでした。 写真下の花はネバリノギラン(粘芒蘭)でしょうか。ランという名前はついているが、いわゆるランの仲間ではありません。 ハクサンチドリ(白山千鳥)が咲いています(写真下)。蔵王ではたいへん良くみかける花です。残念ながらピークはすぎていて、枯れかけた花弁がついている個体が多い。日本では中部から北に分布するランの仲間です。 ウラジロヨウラク(裏白瓔珞)が少し花を咲かせています(写真下)。これも日本では中部地方から北にかけて分布する植物です。 エゾノマルバシモツケ(蝦夷丸葉下野)はちょうど盛りのようです(写真下)。日本では本州中部よりも北に分布し、これでもバラの仲間です。 たまに人とすれ違う程度で、この登山路はほとんど人がいません。 オンタデ(御蓼、写真下)があちらこちらにあります。今回歩いた範囲では場所を問わず、よく見かけました。この植物は高山の荒地にも真っ先に根を下ろすそうです。派手な花ではないが、人目を引きます。 こちらも高原の定番のイブキトラノオです(伊吹虎の尾、写真下)。ヒョウモンチョウは近くまで寄って撮ることができるチョウです。 花の中にはピンク色もあります(写真下左)。 アキアカネはもう山を下りてしまったのか、あまり多くありません(写真下左)。 アカタテハは地面の色と溶け込んで、ご本人は隠れているつもりですから、こちらも気が付かないふりをしてあげましょう(写真下右)。 ハハコグサの仲間のヤマハハコです(山母子、写真下)。低地に生えていたら、あまり目立たないだろうに、高山に生えていると写真を撮ろうという気になるからおもしろい。 登るにつれて周囲の植物は人の背丈よりは低い程度になり、視線を遮るほどではありません。 写真下はシシウドやシラネセンキュウにしては小さいから、たぶんミヤマトウキです(深山当帰)。ここは20~30センチ程度の小型のものが多。背丈の低さが環境の厳しさを表しています。 写真下のようにイネ科の植物もあるのだが、花がきれいでないので、つい撮らない。 写真下はたぶんガンコウラン(岩高蘭)というツヅジの仲間ではないかと思われます。花は春から初夏なので、そろそろ実がつきはじめていいくらいの時期なのに、まったくありません。 山頂に近づくにつれて、瓦礫が多くなり、風が強いのか、上のガンコウランの他に低い樹木が地面を覆っています。ハイマツ(這松)らしいが、よくわかりません。 馬の背を北に行く 登り始めてちょうど一時間ほどで「馬の背」の道に出ました(9:25)。馬の背とは、お釜である噴火口の外輪山です。火口の縁なので平らで、観光客も来るので一部は歩道が整備されています。 登山者は平日なのでそれほど多くありません。このあたりまでは登山者だけでなく、一般の観光客も来ます。人が多いので当然花も少ない。 「馬の背」から東側にお釜が見えます。一般の観光客がここまで来る目的はもちろんこのお釜です。ただ、御嶽山が噴火した後、2014年10月に山形大学の先生がお釜の水面に白濁があるのを撮影していますから、蔵王もいつ噴火してもおかしくない山です。 私が歩いている馬の背がちょうど山形県と宮城県の境界で、お釜は宮城県にあります。 崖の下にまだ雪が残っていますから根雪ですね(写真下右)。 こんな山の上の石ころだらけの場所にカメムシがいます(写真下)。普段見慣れているカメムシと違い、緑色です。写真下左など、緑がなかなか美しい。エゾアオカメムシといい、全国の山地で見られます。 馬の背の北側から崖になっており、そこを登ります(写真下左)。斜面は瓦礫でできていて、歩きにくい(写真下右)。 斜面を登り切ったあたりに避難小屋があります(写真下、10:17)。これはもちろん、蔵王が現在も活動している活火山だからです。 避難小屋から左(西)は後で行く熊野岳、左(東)は御釜の北側の「ロバの耳」ですが、落石注意の看板が出ています。そちらにもコマクサがあると聞いていますが、落石が怖いので、やめておきましょう。周囲の石を見ても簡単に崩れそうです。 私は北蔵王に続く縦走路をまっすぐ降りていきます。と言っても、写真下左の山の頂上のように見えるあたりまで行くだけです。このあたりの斜面にコマクサが生えているからです。 コマクサ ありました。本日の目的のコマクサ(駒草)です。 姿形といい、生えている場所といい、いかにも高山植物というイメージです。 斜面にはけっこう群落しています。と言うよりも、人通りの多い登山路から遠ざかるにつれて数が増える。古老たちに聞くと、昔は今の比ではないくらい生えていたそうです。 たくさん花の咲いている株は古くなり始めていますが、小さい株は今がちょうど盛りの個体が多い。つまり、株が大きい個体が先に咲き、小さい個体は後で咲くということでしょうか。 団体さんが私を追い越し、私と同じように、コマクサが終わるあたりまで行って(写真下左)、戻ってきました(写真下右)。写真下の真ん中あたりがロープが張られた山道で、両脇の瓦礫の間にコマクサが生えています。 コマクサはわざわざ瓦礫が転がっているような厳しい場所を選んでいます。ここなら競争相手はほとんどいません。他の植物が生えていない場所を選んで生えているので写真を撮るのにはとても楽です。 根は地上部に比べてだいぶん深いそうですが、それでもこんな岩ばかりのところでは水が不足します。コマクサの葉に霧が当たると水滴ができて、根本に流れたのを吸収するそうです。だから、あんなにパセリのような細かい葉に分かれているのでしょう。 コマクサは日本では中部から北海道、さらには千島列島やカラフトにもあるそうです。やはり氷河時代には地続きだったのでしょう。氷河時代に大陸から渡ってきたとされています。しかし、コマクサそのものは大陸にはありません。つまり、ほとんど日本の固有種と言ってもいいくらでしょう。 胃腸や結核の薬草として採られたこともあったそうです。アルカロイド系の毒素を含んでいますから、かえってお腹をこわすように気もしますが、効果があったのか、中央アルプスなどは採りつくされ、全滅した地域もあるそうです。 群馬県にある本白根山のコマクサは1954年頃からの個人の活動で復活させたものだそうです。自然保護の意識の薄かった当時の活動は容易ではなかったでしょう。 (http://d.hatena.ne.jp/akagi39/20050716/1293205665) 人間の手で絶滅させたのなら、人間の手を復活させるべきでしょう。この蔵王を含めて、東北のコマクサは絶滅危惧種に指定されています。単に指定して、マニアのボランティアに任せるのではなく、行政が積極的に予算をつけて増やし大群落を復活させるべきです。 ここにあるコマクサは薄いピンクが大半です。しかし、ネットで観ると、赤に近い色から、またシロバナコマクサという白い種類もあります。私が昔から見ていたコマクサはこういう薄ピンク色ばかりだったので、コマクサを「高山植物の女王」と言うのを聞いて、不思議に思っていました。高山植物のプリンセスならわかるが、女王には見えなかったからです。 コマクサの写真は一般にたくさんの花を付け、色の鮮やかな個体が好まれます。そこで、私はヘソを曲げて、と言うか、もともとヘソが曲がっているので、蔵王らしい薄ピンクの、それも花の少ないのを専ら写すことにしました。小さくて、はかなげで良いですねえ。 私がコマクサの写真を撮っていると、二人組の女性の方たちが話しかけてきました。見せてもらったのがコマクサの種です(写真下)。枯れた花弁の中に黒い光沢のある種が入っています。植物の大きさのわりには種は普通の大きさです。花の咲いている時期からすでに実ができているのだ。こんな花が庭に咲いたらきれいだが、高山でなければ育たない植物です。 花を見ると、花弁の上の所に穴が開いているのが良くあります(写真下)。たぶん、これはミツバチが蜜を吸うために開けた穴です。花を見るとどこが入口なのか良くわからないし、長くて幅も狭いからハチが入り込むことができず、面倒だからと穴を開けたのでしょう。たしかにこれだけ奥に蜜があると、蝶々のように嘴が長くても届くのでしょうか? 穴を開けた犯人のミツバチが飛んでいます。蜂蜜にはいつもお世話になっております。ミツバチ君、がんばってくれ!コマクサの蜜ってどんな味なのだろう。駒草蜂蜜・・・うまそう、でも高そう。 この道はこのまま何十キロもある北蔵王の縦走路です。コマクサの写真も一通り撮り終えたので、道を先ほどの避難小屋まで引き返し、熊野岳にある蔵王山神社(熊野神社)に向かいます(12:13)。 道は山にしては平坦で、なだらかな丘のようです。 このあたりの登山路の周囲にもコマクサが生えています(写真下左)。しかし、当然、立入禁止です(写真下右)。コマクサの盛りの時期には監視員がいると聞いていますが、今日は見かけません。コマクサの保護地に人間が入ると数が減るし、中には盗掘するような不心得者もいます。 蔵王山神社で昼飯 熊野岳の山頂にある蔵王山神社(熊野神社)に到着しました(12:31)。山頂と言っても、どこが山頂かはっきりとしないような広場の真ん中に神社があります(写真下)。 石垣の細い参道を通り(写真上右)、その石垣に囲まれた境内に入ります。境内には社務所らしい建物(写真下右)と本殿(写真下左)があります。まずは山の神に御挨拶しましょう。 神社よりもさらに西側にあるピークでたくさんの登山客が食事をしているようです(写真下左)。あそこのほうが見晴らしがよさそうだが、たくさん人がいるようなので、私は人のいない神社から南側の斜面で食事を取ることにしました。 食事も終わり(13:01)、道を引き返して、写真下左に見える馬の背を通って、真ん中の山の上に小さく見える刈田嶺神社を目指します。 来た時と違い、南側の斜面を下りていきます。写真下のように、瓦礫の斜面で、人が立ち入れない分、いかにも何か花がありそうです。 崖の瓦礫の中にミヤマコウゾリナ(深山顔剃菜)が群生しています(写真下)。今回はここでしか見かけませんでした。本州中部以北に分布します。 ここも残念ながら、ハクサンチドリ(白山千鳥)は盛りがすぎています。 白いランがあります(写真下)。ハクサンチドリの仲間のオノエラン(尾上蘭)のようで、こちらはちょうど盛りです。本州中部から北部にかけて分布するが、どうやら減っているようです。今回のハイキングでもハクサンチドリはあちこちで見かけたが、オノエランはここだけで、生えている場所も狭い範囲でした。 写真下は花だけ見るとツガザクラみたいですが、葉が丸いからアカモノ(赤物)、別名イワハゼ(岩黄櫨)でしょう。時期が遅いらしく、これ一つしか見つかりませんでした。 お釜を左手に眺めながら、馬の背を南に戻ります。 目的地は、写真下の山頂に小さく見える刈田嶺神社です。 刈田嶺神社で道を聞く 刈田嶺神社に近づくにつれて、登山客ではない一般の観光客が増えてきます(写真下)。神社のすぐ裏手にある有料駐車場まで車で来た人たちです。 坂道を登ると、頂上にある刈田嶺神社に到着です(14:20)。先ほどの熊野神社に比べて駐車場から近いこともあり、社も大きく、売店もあり、観光客で賑わっています(写真下)。 私はここから有料道路(蔵王ハイライン)を横切ってまっすぐ登山道を下り、国道12号(蔵王エコーライン)まで降りて刈田駐車場に戻るつもりでした。しかし、登山道なんて誰も歩かないらしく、案内板もない。私は神社の手前にある売店の人に、エコーラインまで降りるのにはどこに行けば良いか、と質問しました。 店のオジサンは私の質問が聞こえなかったのか、返事がありません。もう一度質問をすると「大黒天のほうだ」とぶっきらぼうに答えて、さらに質問しようとすると、背を向けてしまいました。朝、リフト乗り場で道を聞いた時は、女性店員がわざわざ外に出て案内してくれたほど親切だったので、あまりの落差に驚きました。 このオジサンの返事がこの後、私に悲劇をもたらすのだが(笑)、とにかくオジサンの指さした大黒天駐車場を目指すことにしました。山頂が広場になっていて、そこに大黒天という看板が出ていますから(写真下左)、そちらに進みました。もっとも、その道を進むと「クマ出没注意」という看板もあります(写真下右)。私は今回は熊鈴は持ってきていないので、どうようかとちょっと立ち止まってしまいました。 山道は場所によっては階段もついているなど、迷う心配はなく、クマもいそうもない(写真下)。ただ、方位磁石で確認するまでもなく、私が車を停めた刈田駐車場とは完全に逆の方向に進んでいます。 道は最初のうちは整備された山道で、下りだということもあり、歩きにくくはありません。道の両側には植えたみたいにヨツバヒヨドリが生えている(写真下)。人間が道を作ってくれたので陽当たりが良くなったのでしょう。 これまでとは違う花が咲いているが、刈田駐車場からはどんどん遠ざかっているので、私は引き返そうかと思いました。ちょうど二人の女性が登って来たので(写真下左)、質問してみると、やはりこのまま道は東に降りて、刈田駐車場とは正反対の方向に行くことになるという。 引き返そうかと思ったら、彼女たちは「この先にコマクサがたくさん生えていますよ。興味ないですか?」という。興味ないどころか、そのために今日来たのですから、お礼を言って、私はそのまま降りていくことにしました。かなり遠回りになるが、コマクサがあるというのに、聞いていて見ないで帰るなんて悪いことはできません(笑)。 またコマクサ 女性たちと会ったところから少し行くと、さっそく道の脇にコマクサがありました。 ここも瓦礫ばかりで、他の植物がない場所に忽然とコマクサは生えています。写真下など、これだけたくさん花をつけているのだから、年月を経た株なのでしょう。群れて咲いているのも美しいが、こんなふうに周囲にはほとんど草も生えないような場所に、ポツンとたった一株だけ生えているのもコマクサのすごさを良く表しています。 さらに行くと、いかにもコマクサが好きそうな土砂崩れを起こした斜面がありました。そこにコマクサがたくさん生えています。しか、ここでも株の大きい個体は枯れかけた花がついているので、良い被写体が多くありません。 大黒天駐車場に到着 国道12号(蔵王エコーライン)に面した大黒天駐車場に到着(15:20、写真下左)。駐車場といっても、まさに車を停める広場があるだけです。私は持ってきた1リットルの水の残りもわずかで、駐車場というから自動販売機を期待したのだが、ありません。写真下右の地図の大黒天が現在いる所で、私は刈田峰神社から降りてきたところです。この地図は、おおよそ右上が北です。地図では刈田峰神社からここまで40分とありますが、私は写真を撮りながら下りてきたので、一時間かかっています。 私が車を停めた刈田駐車場は刈田峰神社から見て正反対の方向ですから、これからエコーラインを歩いて刈田駐車場まで行くしかありません。今回の登山で最も疲れたのはこの四キロほどの道でした(笑)。山岳道路とはいえ舗装され、坂が急なわけではないから、歩く分にはたいしたことはないのだが、アスファルトを登山靴で歩くとどれほど歩きにくいか実感しました。 アスファルトの自動車道を歩くのは足と心理的にはかなり疲れる道だが、しかし、収穫もありました。それが写真上下のアサギマダラ(浅葱斑)です。山の上のほうでも飛んでいたが、花のない所では風に煽られて飛んでいってしまうし、樹木や草木が生い茂っていると撮影が難しい。その点、道路に面して生えている花に止まるので撮影がとても楽です。アサギマダラは近づいてもすぐには逃げないので、撮影しやすいチョウです。 ヨツバヒヨドリ(四葉鵯)の蜜を吸うアサギマダラという組み合わせは良く見られます。アサギという薄い水色がきれいですね。私には高山のチョウというイメージです。 平地でアサギマダラはあまり見られません。アサギマダラは秋になると南西諸島や台湾まで移動することがあるそうです。アメリカのオオガバマダラも季節ごとに世代を繰り返して大移動するというから、マダラチョウは旅行が好きなようです。 写真下はヤマブキショウマにとまるアサギマダラです。 他にもヒョウモンチョウ(豹紋蝶)やチャバネセセリ(茶羽挵)がヨツバヒヨドリの蜜を吸っています。 写真下はゴマナ(胡麻菜)でしょうか。数は多くありません。 写真下は道路の側溝近くに生えていたキクの仲間で、イワギクのようです。車で来る途中でも道端にお花畑を作っていました。標高が千メートルを越えたあたりから現れ、今回は道の近くでしか見かけませんでした。 はるか彼方に山々が見えます。蔵王連峰だけでなく、南にある飯豊連峰や吾妻連峰が見えているらしい。どれがどれなのか、わかりません。 写真下はボケ写真ではありません(笑)。夕方の赤い光が雲の間を通って、かすかに色がついている程度に曇っています。私が肉眼で見たのもほぼこんな感じです。 山々が重なって日本画のような美しさです。アスファルトの道路は歩きにくいが、景色は素晴らしい。先ほど、車に乗った観光客に道を尋ねられたので、途中まで乗せてくれと頼もうか迷いましたが、この景色が見られたのだから、歩くのが正解でした。 山の斜面を見上げると、松が一方向に枝をのばしているのがわかります。ここはいつも日本海側から強風が吹いていて、冬には彼らは樹氷になります。私が歩いている道が標高1600mほどで、このあたりが森林限界のようです。 やっと戻って来た 大黒天駐車場から一時間、出発点の刈田駐車場までやっと戻ってきました(16:21)。道路脇に花が咲いています。駐車場の少し下に湿原がありますから、その一部なのでしょう。今日は湿原に寄っている時間がないので、道端の花の写真だけ取りました。 まず目立つのが黄色いキンコウカです。和名の漢字は金黄花と金光花の二種類あり、どちらも成り立ちそうです。日本では中部から北の山の湿原に生えています。 ヤブの中にトキソウが咲いています(写真下)。高山だから、ヤマトキソウ(山朱鷺草)でしょうか。薄いピンク色がきれいですね。 湿原に近いらしくモウセンゴケ(毛氈苔)があります。葉の先にあるネバネバの液体で虫を捕獲します。コケではなく、ウツボカズラの仲間ですから、花を咲かせるはずです。 写真下のモウセンゴケの真ん中から先が丸まったワラビのような茎がのびています。他の植物の芽かと思ったら、写真上のモウセンゴケでも見られることから、花芽かもしれません。 写真下は葉などの雰囲気からニワゼキショウの仲間かと思ったのですが、花の形から見ると、そうでもなさそうです。これは花が閉じた状態なのかもしれません。 本日のハイキングもこれで終了です。最後に水が足りないままアスファルトを歩いたのはくたびれましたが、天気もまあまあで、クマにも会わなかった(笑)。ただ、コマクサを見るにはもう少し早いほうが良かったかもしれません。次回はもっと早く来ましょう。 |