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カモシカが三匹

2015

 

 

 毎年、春には山形に行き、春の妖精たちと会うことにしているのですが、今年は雑用が立て込んで例年よりも行くのが遅くなりました。

 

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 四月の後半は春も盛りで、カタクリが最盛期です。

 

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 同じ花でも少し角度を違えるとまた違った表情があります。

 

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 カタクリは東京の練馬区や板橋区にも自生地がありますから、関東では普通に見られた植物なのでしょう。

 

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 万葉集では、大伴家持の次の歌の「堅香子(かたかご)」がカタクリだと言われています。

 「もののふの八十娘子らが汲み乱ふ 寺井の上の 堅香子の花」 

 ネットを見ると、堅香子はカタクリではないという説もありますが、私はカタクリでも良いと思います。なぜなら、家持は水汲みに来たたくさんの若い娘たちを見て鼻の下をのばして堅香子の花に例えているのだから、若い女性たちを連想させるような、群れて美しく咲く花という条件にカタクリは合っています。

 

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二輪草

 春も本格的になってから咲くのがニリンソウです。この沢では四月の中旬以降です。イチリンソウよりもやや小型の花を咲かせ、その名前どおりに、葉の根元から二つの花が付きます。

 

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 二つ目の花が咲くのがずれることも多いので、私の見た範囲では、花が二つ咲いているのはむしろ少ないように感じます。花弁のように見える白い部分は実はガク(花被片)で、花弁はないそうです。そのため稀に緑色した花が見つかることがあるそうですが、私は見たことがありません。

 

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 川の近くなど湿度のある所に群生しているのが多い。たいてい毒のあるキンポウゲの仲間にしては珍しく、熱を通すと食べられるそうです。しかし、葉がトリカブトに似ていることから、採取には警告が出ています。話は簡単で、採取しなければ良い。

 日本中に分布しているとはいいながら、ネットでの書き込みを見ると、ニリンソウは明らかに減少しています。食料のなかった時代ならともかく、単なる習慣や嗜好でこういう草花を減らすのはやめるべきです。

 

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 伝統や慣習を理由に未だにイルカやクジラを日本は獲る習慣があります。

 食料が足りないなら私もそれらを食べるでしょう。子供の頃、クジラを食べた記憶があります。だが、今はイルカやクジラは食べなくても間に合う。諸外国からの非難に伝統を盾にしてただ抵抗するのではなく、もっと現実に合わせて、柔軟に対応するべきです。

 

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 地球の歴史を見ても生き残った生物はたいてい柔軟に食料を見つけた種類です。頑固に一つの食べ物に固執したら、その食べ物がなくなった時、その種は絶滅するしかありません。もう少し現実と時代にあった選択をするべきです。

 

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 時期を前後して咲く同じキンポウゲのアズマイチゲ、キクザキイチゲは花そのものがきれいなのに対して、ニリンソウはどちらかというと群れて咲く姿が美しい。

 

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 写真下のニリンソウは花弁の端がほんの少しピンク色になっています。

 

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 ニリンソウがあるようにサンリンソウもあるそうですが、私は見た事がありません。と言うよりも、そこまで丁寧に探したことがない。

 

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 ニリンソウは日本全国から中国などの大陸のほうまでかなり広く分布しているが、ネットを見ると、どこでも減っているようで、この地域でも例外ではありません。どうしても絶滅が近づくとあわてて危惧種指定されることが多いようだが、ある特定の地域での減少も危機の一つとみなし、採取や、農業や土木による破壊などを禁止するべきです。

 

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カモシカだ!

 私が花の撮影をしていたのは、谷を作った小さな川のほとりです。気配を感じて、川の向こうの山の斜面を見ると、カモシカがこっちを見ていました。

 

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 私がカメラを構えても、カモシカも興味津々にこちらを見ています。川のそばの山と言っても、私のいる側にはすぐそばに住宅があるくらいで、近くには車も普通に走っており人間の気配の強い場所です。

 

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 写真上は今回見かけたカモシカ、写真下は昨年このすぐ近くで二度見かけたカモシカです。上と下が同じカモシカかどうか、はっきりしませんが、良く似てはいる。

 

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写真上 2014年の春()と夏()に会ったカモシカ

 

 写真下は縄張りを示すために樹木に臭いをつけているところでしょう。

 

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 木立が邪魔なので、何とか近づきたいが、間に川があるので簡単ではありません。カモシカがいる側はかなりの急斜面です。

 

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 カモシカは振り返りながら、斜面を登って行き、見えなくなりました。

 

 

カモシカが二匹!

 再び花の写真を撮っていると、また川の向こうの斜面にカモシカがいる。戻って来たのだ・・・二匹に増えています。

 

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 興味津々にこちらをじっと見ています。春先なので毛がふさふさして、特に左側のカモシカは白い。

 

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 カモシカは群れで行動する動物ではありませんから、親子でしょうか。左側の白いカモシカは角が小さいから、子供かもしれません。カモシカの親子は一年間は一緒にいるそうで、親子なら、そろそろ子離れの時期です。

 右側はさっき一頭で見かけたカモシカかだろうか?

 

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 写真下左が先ほど一頭で見たカモシカ、写真下右(写真上右)が二頭で見かけたカモシカのうちの一頭です。似ているが、良く見ると、額の茶色い部分の形が違い、また角の形が違うようにも見えます。しかし、その違いは顔の角度や陽の当たり方による違いかもしれず、良くわからない。

 

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↑さっき見たカモシカ    ↑二匹連れの一匹

 

 カモシカは同性同士は縄張りが重ならないといいますから、さっき見かけたのはオスで、こちらが母親と子供かもしれません。

 

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 カモシカは野生動物にしては人間を恐れないので、写真を撮る者にとってはありがたい。

野生動物との共存は難しく、この地域にもイノシシの被害が出ていて、彼らを駆除しようとしています。イノシシは足が短いので、雪の多いこの地域では生息が難しいと言われていたのに、増えているようです。

 

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 二頭とも川に入り、下り始めました。時々、川のそばの草などを食べたり、私の様子を振り返りながら、少しずつ下流に進みます。

 

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 私が川に入って追いかければ逃げるだろうから、先回りしようと、川の周囲の林の中を急いで下りました。いました。先回りに成功です(写真下)

 

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 私が彼らの進む方向に現れたせいか、川から上がり、山の斜面を登り始め、やがて林の奥に消えて行きました。

 

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ガマガエル

 カモシカのいなくなった沢は再び静かになりました。

 

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 沢の近くにシダが青々と生い茂ると、万葉集の、

「石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも」

という歌をいつも思い出します。

「さわらび」とはワラビだというのが国語の先生の解説でしたが、私はこれはワラビではなく、普通のシダのことだと思います。なぜなら、ワラビは水のそばに生えていることは少ないからです。

 

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 ここの写真を見てもわかるように、歌に歌われたような春先に勢いよく葉をのばし、「萌え出づる春」になるのはワラビではなく、他のシダです。

 

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 沢を登り切った所に池があり、真ん中にも不動明王が祭られています。池は周囲の杉などの葉がはいって、すっかり浅くなっているのに、なくなりもせず、このままの姿です。山道が整備されず、ここまで訪れる人も少なくなったのが幸いで、今回もゴミはほとんど落ちていませんでした。

 

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 何十年か前、市内の中学生がここに遠足に来てゴミを捨てて行ったので、私はその中学校に抗議をしたことがあります。引率の先生が、車も入れないこんな所にゴミを捨ていくように指示したと生徒から聞きました。しかも、それが理科の先生だと聞いて、失笑しました。

 

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池ができているくらいだから、水が多く、コケが生えています。コケは小さいからどれも同じに見えるが、良く見ると、何種類もあります。ほとんど名前はわかりませんので、名前は全部「たぶん」です。

 

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 写真下のコケは、ゲゲゲの鬼太郎の目玉親父がついていることから、たぶんタマゴケでしょう。

 

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 写真下はウロコが特徴のたぶんハイゴケでしょう。

 

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 写真下はたぶんミズゴケで、手で絞れるほど水か出てきます。

 

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 写真下はたぶんヒノキゴケ。

 

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 写真下は造園などでも使われるたぶんスナゴケでしょう。

 

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 池にはヒキガエルが棲んでいます。まるで瞑想をしているようにジッとしている()

 

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 写真下はもっと下流の水路で見つけた大きなカエルで、これもヒキガエル?

 

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 この沢にはサンショウウオも棲んでいたのだが、砂防ダム(写真下)などを作ったことも原因となって激減し、今では春先の卵さえも見られなくなりました。

 

 

 

 写真下は十年ほど前に撮ったサンショウウオの卵です。今は同じ池では卵は見られません。サンショウウオは姿からトカゲのようにみなされて嫌う方もいますが、トカゲ同様に害のない生き物です。手の上に乗せたことがありますが、まるでゼリーのような感触でした。

 

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