ガラス小物 - ガラスの日常雑器 - エミール・ガレの作品に代表される1900年前後の欧州で作られたガラス器の美しさは感動ものです。しかし、それらはいずれも高額な値段であり、とても手に入りません。でも、私たちの日常生活でもきれいなガラス器があります。0円から高くても数万円程度の庶民に買えるようなガラス器です。 洗面所用八点セット 私にとって値段の高かったほうから紹介しましょう。アンティークショップで売っていたガラス器の8点セットです。説明書には「1950年代に洗面所などで使用されていたもの」とありました。大瓶に印刷している文字がフランス語であることから、フランス語圏で使用されていたもののようです。ボトルの一つの内側には石けんのようなものがこびりついており、水を入れて洗っても落ちませんから、飾りというよりも、実用品だったようです。 私の目を引いたのは、形もさることながら、ガラスの色です。この後紹介するガラスも、私の好みで青いガラスが多い中、こういう青色だけは他にありません。私も他では見たことがありません。 私の財布の言い分では値段が高かったにもかかわらず(世間相場からみて高いわけではない)、清水の高舞台から飛び降りるつもりで(笑)買うことを決心したのはこの独特の青色の美しさに惹かれたからです。 構成は次の8個です。 栓ボトル 大 2 栓ボトル 小 2 コップ 1 歯ブラシ入 1 香水瓶 1 大瓶 1 栓ボトル2組4個 形が最もきれいなのが4個の栓のついたボトルです。 ガラスコップ ありふれた形のように見えますが、横断面が単純な円ではなく、コップに縦に模様が入るように、いくぶん角張っています。単純だが、凝った作りです。 大瓶 この大瓶には買った時から、栓がありませんでした。おそらく、コルクだったのでしょう。他の瓶などがわりとおしゃれなのに、この瓶だけは形が実用的です。 この瓶には「Sirop de Ratanhia」と文字が白抜きで印刷されています。フランス語のようです。Ratanhiaとは英語のRhatanyで、日本語ではラタニアと呼ばれる植物のようです。ラタニアは南米原産のマメ科と植物と、ヤシ科のラタニア属というのがあります。しかし、たぶんこの瓶の記載はマメ科のほうでしょう(下図)。マメ科のラタニアは根から採った汁が歯磨きやうがい薬に使われていたようです。つまり、これは「ラタニア液」が入っていて、うがいに使ったようです。 (Wikpediaから転載) 歯ブラシ入 横幅が20cmほどの歯ブラシなどの入れ物かと思われます。私はこの入れ物に「砂漠の湖」と名前を付けました。その理由は後でお目にかけます。 香水瓶 香水を入れる瓶でしょうか。買った時は空気を送るゴムがなく、口の部分にゴムの断片が付着しているだけでした。そこで、市販のゴムのついいる香水瓶を買って、取り付けてみました・・・大きさのバランスが悪い(笑)。最近はこういう方式の霧吹きが少なくなってしまいました。 太陽光をあてて、影を作って遊んでみましょう。 歯ブラシ入れはまるで砂漠の中のオアシスの水みたいにきれいです。水面が風でゆらゆらとゆれているような雰囲気です。 ガラスの中に気泡が入っていて、ガラスの表面も平らではないから、模様が映し出されています。手作りの不均一さが作りだした模様です。 フランス製のコップ アンティークショップやスーパーで売っていた現代物のコップとティーカップです。いずれもフランスのあるガラスメーカーの商品です。ここのメーカーから出てくるガラス器は形、大きさ、ねじりをいれた模様など、私の目には完成度の高い日常雑器に見えます。 実際に使っていました。しかし、使えば当然壊してしまい、今ではそれぞれ1~2個しかありません。値段も手頃で、下の緑色のコップは売れ残って値下げをしたため、100円で買いました。 ガラスコップ2個 これは飲料用のコップではなく、ローソクを入れるためのコップのようです。アンティークショップから買った現代物です。ショックだったのは、色違いを3つ買って家に戻り、荷物を置いたら、床にぶつけて一つを壊したしまったことです(笑)。二つを比較してみると、緑色のほうはねじりが入ってるが、赤のほうは入っていないなど手作りのせいか、微妙に形が違います。 このコップは芳香剤用に使っています。市販の芳香剤は私の好みにあいません。そこで保冷剤の中身を出して、そこに香水を混ぜ、必要に応じて水を加え、割り箸などで攪拌してできあがりです。芳香量の調整のために上にアクリル板を乗せます。 百円ショップのガラス器 シンプルなデザインが気に入りました。アイスクリーム、ヨーグルト、果物など乗せると涼しそうです。 ミルク入れのガラスコップです。この器の美しさは、下半分にあるヒビでしょう。ヒビが入っているのに、どうして液体が漏れないのでしょう。百円にしては完成度が高い。 酒 瓶 次の3種類の瓶はいずれも市販されていた酒瓶です。中身を楽しみ、外も楽しめるから、二度おいしい。 写真上右の二つの瓶を良く見ると同じ群青色でも微妙に違いがあります。 キャンディー入 アンティークショップで売っていた現代物のガラス器です。下の写真ではまるで金属の容器みたいに見えませんか。目で見た時の印象をもっともよく表している写真です。 私がこの器を買った理由も、この金属のような変わったガラスの反射光にひかれたからです。ガラスはかなり薄く、軽く、繊細な作りです。 下の写真のように、金属的な光の中に微妙な青紫が混ざっているのがおわかりでしょうか。 値段は安かったので、店にあった二つを買いました。 たぶんキャンディー入なのでしょう。蓋がとれます。 最初の写真のように金属的に光るガラスですが、光のあて加減でまた別な姿になります。 太陽光をかざすと、影がまたとてもきれいです。 金属蓋のついたインドの小瓶 ブータンの首都・ティンプーで買ったお土産物です。インドでは同型の物がたくさん売られていますから、ブータン製ではなく、インド製でしょう。上の金属の蓋が外れ、中に小物を入れるようになっています。蓋が斜めになっているのはご愛嬌です。 私が買ったのは、本体のガラスが青でできているからです。インドでは青いガラスの物が探せませんでした。こういうガラスの使い方はインド的で、日本ではまず見かけません。 氷コップ 以前持っていた大正から昭和初期にかき氷を食べるのに使った水玉模様のガラスコップです。ネットで手にいれたものです。氷コップは一つの分野をなしているほどで、当時の日常雑器が、品質の良いものなら何万円もの値段で取引されています。色がはっきりしたコップが多い中、これはぼけたような水色が出ています。 氷コップは上のコップの部分と、下の台座の部分が別々の色のガラスでできており、両者を接着してあります。私が気に入っているのは、ぼけたような水色の上の部分です。 小物入れと香水瓶 アンティークショップでアンティークとして売っていた水色のガラスの容器と香水瓶です。水色と乳白色が混ざったようなガラスがたいへんきれいです。奇妙なことに、現代物でこういう色のガラスを見たことがありません。現代物では乳白色の物はあるが、水色が混ざっていないのです。こんなにきれいなのに、どうしてガラス作家が作ろうとしないのか、不思議です。 これらの器を見ていると、薄く濁った水の中をのぞきこんでいるような錯覚を覚えます。興味深いのは、これらは欧米で作られたらしいことです。欧米人は色彩のはっきりした物を好むのかと思っていました。宝石ならルビー、サファイア、エメラルドといった透明で明瞭な色です。一方、日本人はオパールのような透明でも非透明でもなく、光のあて加減で微妙に色が違うような宝石を好むものだと思い込んでいました。 このガラス器はどうみても「オパール系」です。地域や時代を超えて、似たような好みの人たちがいるのは興味深いことです。 |