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瀧山のヤマスカシユリ

 

 

 瀧山にヤマスカシユリが生えているという情報を見て、天気予報から2018720日に出かけました。日本海の海辺に生えるスカシユリは珍しくないが、山に生えるスカシユリは少数です。

 瀧山(りゅうざん)なんて、山形市に住んでいる人でもない限り、知らない山で、蔵王にあります。瀧山はリュウザンと読みます。「瀧」はタキなのに、どうしてリュウと呼ぶのか、変です。前は「タキの山」と呼んだそうで、なおさら変です。私の推測ですが、誰かエライ立場にある人が、瀧をタキと読めず、リュウの読んだのが始まりではあるまいか()

 

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 写真下は十月の瀧山を西側の山形市側から見た姿です。中央の一番高い山が瀧山の山頂で、1362mですから、山としてはそれほど高くはありません。また、地形を見てもそれほど大変ではなさそうですが、西側(姥神口)から登ると、山頂に近づくにつれてロープにつかまらないと登れないほど急斜面が続きます。

 

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 下の地図は「やまがたの山」というホームページにある瀧山に登る三つのコースです。この中でコース[]の蔵王スカイケーブルコースは距離は長いが、初心者向きだとありますので、山登りが目的ではなく、体力のない私は迷う事なく、このコースに決定です。

 

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(http://yamagatayama.com/?p=119)

 

 ところが、問題がありました。夏の間、蔵王スカイケーブルは運行されていない。そこで、下図(左が北)の右にある蔵王中央ロープウェイで鳥兜山まで登り、さらに中央第一リフトに乗り換えてドッコ沼まで行き、そこから歩いて蔵王スカイケーブルの中央高原駅に行くことにしました。

 

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 ロープウェイとリフトの往復料金は1300+500円です。ロープウェイの第一便は8:30なので、これに合わせて、蔵王温泉の東側にある駅に到着(写真下)。広い駐車場があるのは助かる。

 

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 8:30の第一便はたった一人の客を乗せて出発です。写真下の眼下に見えるのは蔵王温泉街です。山の斜面に樹木がない部分はスキー場のゲレンデです。斜面のいたる所にこういう「剃り」が入っています。

 

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 雲の向こうに頭を出しているのはたぶん月山でしょう(写真下)

 

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 10分ほどで鳥兜山にある駅に到着。鳥兜山は1387mあり、1362mの瀧山よりも高い。だから、瀧山まで橋をかけてくれれば簡単に行けます()

 

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 写真下の駅の壁に掲示された瀧山の断面図を見て驚きました。巨大な山の一部が爆裂して吹き飛び、瀧山(竜山)や今いる鳥兜山はその火口の外輪山の一つだというのです。つまり、蔵王温泉は爆裂した火口の底にあるらしい。私は火口の底で温泉に入っていたのだと知って、頭がクラクラしました()

 

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 下の地図の赤の点線は、私が山頂を適当につないで引いた火口の淵と思われる部分です。これから私が鳥兜山から瀧山に行くのは、この火口の外輪山を半周することらしい。山頂付近が吹き飛んだのだから、これはカルデラだと思うのですが、どこにもカルデラという説明はありません。

 

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 ここからリフトに乗り換えて、せっかく登ったのに下ります。

 

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 下の地図で、右下の鳥兜駅からリフトで下りた後、歩いてドッコ沼や左下の中央高原駅を通過して、ようやく瀧山の登山口に到着しました(9:10)

 

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 スキーのコースが縦横無尽に切り開かれているので、登山口がわかりにくい。

 

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 ゲレンデにたくさん生えていて目立つのが写真下の白いキクの仲間です。これは外来種のフランスギクではあるまいか。蔵王では幹線道路で良く見られ、人とともに入り込んだように見えます。これがフランスギクなら、ここは標高1300mもあり、冬は大雪が降りますから、この植物の適用力に驚かされます。同時に、生態系への影響が危具されます。そうでなくても、蔵王の高山植物は衰退している。

 

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写真上 フランスギク(仏蘭西菊)

 

 写真下のイネ科の植物もフランスギクの間で良くみられるから、あるいは外来種かもしれません。イネ科の植物は花が冴えないので、ついて撮るのを忘れてしまう。

 

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 道でフランスギクの次に良く目立ったのがウツボグサで、これは幸い外来種ではありません。

 

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写真上下 ウツボグサ(靫草)

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 山道は尾根に沿って上下するだけなので、歩くのは楽です。しかも、わりと最近、草刈りされたらしく、刈られた草がまだ青い。登山者にはありがたい。

 

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 道は楽なのに、周囲は樹木が多く、視界が良くありません。たまに写真下のような風景が見えるが、大半は写真上のような林の中です。花が目的の私は気にならないが、ネットを見ると、登山が目的の人たちから評判が悪い。そのせいか、往復ともまったく人とは会いませんでした。この登山ルートはあまり人気がないらしい。

 

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 クルマユリです(写真下)。私の家の近くの山にも少し残っています。意外にも陽当たりの良い場所に咲いています。ただ、樹木が伐採された所に咲いているから、元々は木陰に生えていたのかもしれません。

 

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写真上 クルマユリ(車百合)

 

 写真下はヨツバヒヨドリかと思いましたが、葉が三つに分かれていますから、フジバカマで、蔵王では良く見られます。

 

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写真上 フジバカマ(藤袴)

 

 写真下のノリウツギも花盛りです。高山植物というよりも、山地で良く見られる花です。

 

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写真上下 ノリウツギ(糊空木)

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 写真下はガマズミの仲間のように見えます。この時期、樹木で似たような花が多い。

 

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蔵王山という山はない

 瀧山は蔵王にある山です。ここ数年、この蔵王の呼称について議論が起きました。蔵王山は蔵王ザンと呼ぶのか、蔵王サンと呼ぶのか、という議論です。

 

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写真上 ホタルブクロ(蛍袋)

 

 2015年に蔵王の火山活動が盛んになった時、ニュースで蔵王山を「蔵王ザン」と報じたのを聞いた山形市の人たちが、「蔵王サンではないか」と申し入れたようです。ところが、蔵王の東側の宮城県側では、蔵王ザンと呼んでいたようで、数年後、両者を併記するということで決着したようです。

 

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写真上 ツルアリドオシ(蔓蟻通し)

 

 この議論そのものに私は首をかしげました。なぜなら、私は蔵王を蔵王山と呼んだことはなかったからです。改めて国土地理院の地図を見ると、確かに蔵王山と書いてあります(下図)

 

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 しかし、もう一度地図を良く見てください。蔵王山と書かれた場所は山の頂上ではありません。つまり、このあたり一帯を指して蔵王山と書いてあるだけで特定の山の呼称ではありません。蔵王を知らない方は、富士山のような一番高い山があり、それが蔵王山なのだろうと思うでしょうが、そういう山はありません。蔵王山の一番高い山は、地図の左上にある熊野岳(1840m)で、蔵王山とは呼びません。

 

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写真上 イブキジャコウソウ(伊吹麝香草)

 

 蔵王連峰とでも呼ぶのが正しく、ウィキペディアにもそのように記載されています。蔵王連峰は略して蔵王です。蔵王連峰のことを国土地理院は蔵王山と記載したから、こんな無意味な論争を引き起こしてしまった。

 

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 蔵王山を何と呼ぼうが、そもそも蔵王山などという単独峰はありません。蔵王山の呼び名を議論するよりも、国土地理院の記載を蔵王山から蔵王か蔵王連峰に変更するように求めるべきです。観光で人を呼ぶのに、蔵王(ZAO)という簡単で覚えやすくインパクがある素晴らしい名前があるのに、なんだって蔵王山なんて用いようとするのでしょう。

 

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写真上 ナンブタカネアザミ(南部高嶺薊)

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たった一本

 目的のヤマスカシユリがありました(写真下)。木陰の土手に咲いています。残念ながら、周囲を見ても一本しかありません。中部から東北の山岳に生えていて、当然、準絶滅危惧種になっています。海岸で見たスカシユリに比べて背が高く、葉が細長い。

 

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写真上下 ヤマスカシユリ(山透百合)

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 斜面で一本スカシユリを見つけたので、気分良く、他にもないかとキョロキョロと見ながら道を進むと、なんと瀧山の山頂に着いてしまいました(11:03)

 

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 頂上までの間にスカシユリが咲いているはずなので、私は見逃がしたか、一本しかないかどちらかです。後者ならけっこうショックなのだが、実はこれでした。下山途中も丁寧に見たつもりだが、やはりあの一本しかありませんでした。

 

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 同じ道を戻ります。たいてい、同じ道を戻ると来た時よりも長く感じられるが、今回はなおさら遠く感じました。

 

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写真上左 タカネアオヤギソウ(高嶺青柳草)、写真上右ヤマブキショウマ(山吹升麻)

 

 瀧山は1362mと山としてはやや低いこともあり、生えているのも亜高山地帯の植物が多く見られます。

 

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コバノイチヤクソウ(小葉の一薬草)

 

 

仙人沢のヤマスカシユリ

 ヤマスカシユリをたった一本しか見られず、残念なのか、あるいは一本見つかったのだから、良しとするべきか、少々がっかりしながら、下山して、もう一カ所、ヤマスカシユリがあるという仙人沢に向かいました。

 

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 蔵王温泉から車で二十分ほど蔵王ラインを南に走ると、仙人沢という谷にたどり着きます。

 

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 蔵王ラインから仙人沢の川に沿って登山路がありますから、これを数百メートル上流に行くと、ヤマスカシユリが見られます。

 

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 こんなふうにヤマスカシユリのある場所を具体的にネットで公開してしまって、大丈夫かと心配されるかもしれません。心配無用で、なぜなら、千人沢のヤマスカシユリは崖に生えており、対岸から見られるだけで、近づくことができないからです。採るのは命がけです。

 

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 ヤマスカシユリが生えているのは、登山路とは沢をはさんで北側の険しい崖です。近づくためには北側の崖の上から下りるか、南側から沢にいったん下りて、そこから急な崖を登る以外に方法はありません。現実には樹木が生い茂っていますから、南側から沢を降りること自体が難しい。岩場を登るような技術を持っているのならともかく、普通の人にはどちらも無理です。

 

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 幹線道路から遠くないここにヤマスカシユリが残ったのも誰も近づく事ができないからでしょう。対岸まで距離があり、しかも、山道のある南側も樹木が生い茂っているので、撮影さえも難しい。

 こちらから見ると垂直に切り立ったような崖ですから、たまたま岩の隙間に種が落ちて少しずつ増えて行ったのでしょう。

 

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 今年は海辺と山の両方のスカシユリと見ました。前から、なぜ両方にあるのだろうと不思議に思っていました。スカシユリは海辺にもあるのだから、高山植物ではありません。海辺と山に残ったのは、周囲に背の高い樹木が生えていないからでしょう。低地でもこういう条件を満たす場所があるのに、低地で絶滅した理由は何なのでしょう?

 

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