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台湾の植物と自然観察

1日目 2023|620()

羽田 台北 台中 埔里

 

 台湾の植物と自然観察ツアーに出かけます。お客さんは17人で、添乗員の古澤さんと植物ガイドの湯浅先生が加わって総勢19人です。私は全員が初対面ですので、お客さんの名前と顔を覚えるのは最初から諦めました()

 

 

初日のホテルは羽田空港

 出発の二カ月ほど前、二度目のお知らせの日程表を見てビックリ。予定していた飛行機が欠航したため、出発が成田空港から羽田空港に変更になっているだけでなく、出発時間が早まり、帰国便の到着時間が遅くなっている!集合時間が朝545分ですから、当日つくば市から行くのは無理で、前日から羽田空港に泊まり込むしかありません。

 つくば市からの羽田空港への直行バスは夜間はないので電車を利用し、つくば駅までのバスも時間外なので、リュックサックを背負って夜道を自転車で行きました。スーツケースは出発の3日も前に宅配業者に渡さなければならず、直前まで荷物がまとまらない私にとっては試練でした()。羽田空港は都内からは便利だろうが、つくば市からはお金と時間と労力がかかるので、私は羽田発の海外旅行は普段は選択の対象外です。

 

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 前日19日の夜、つくば市を出発して、電車とモノレール(写真上)を乗り継いで羽田空港に着いたのは夜11時前でした。出発ロビーに行ってみると、ものすごい混雑です(写真下左)。出発予定を見ると、夜中の1:30に出発する飛行機もあります(写真下右)。都心にある飛行場なのに夜中まで飛んでいるとは知りませんでした。

 2010年に茨城空港ができた頃、羽田空港の夜間の離発着は無理だろうから、隙間をついて茨城空港が24時間空港の役割をすれば、海外からの国際便がたくさん来るはずだと提案したことがあります()。日本には24時間空港がないのが、国際的にはとても不利です。

 真夜中に着いた旅客は翌朝まで茨城空港や周辺にいるから、経済効果も大きい。つくばエクスプレスを茨城空港まで延長すれば、成田と羽田に次ぐ、首都圏空港というよりも、この二つの空港を食うほどの離発着があるはずです。

 茨城空港は自衛隊の百里基地があり、軍民両用です。24時間体制がとれれば、国家が緊急事態に陥った時でも、即座に運用できます。

 

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 出発ロビーの三階が混んでいるので、二階の到着ロビーに行くと、座席が空いていて、私と同じように一晩をここですごそうとする人が少しいます(写真下左)。三座席を一人で占領できるので、横になれる。少しウトウトしかけると、子供たちが自走式のスーツケースに乗って騒ぎ出した(写真下右)。当然、こういう子供たちの親は注意しない()

 

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座席予約ができない

 五時前に周囲の動く音で目が覚めました。旅行会社から、集合時間は朝5:45で、今は羽田空港が混んでいて、出国手続きに長蛇の列ができるから、早目に来てくれと言われていました。私は預けていたスーツケースを受け取り、五時すぎには三階の出発ロビーに行きました。

 すでに何人かのお客さんたちは来ていて、全員集合はせず、自己紹介は今日の夜ということで、集まった人からチェックインして、出発ゲートを目指しました。入管も税関もほとんど客はおらず、私は順調に通過して、144番ゲートに着くと(5:48、写真下)、早すぎて誰もいない()

 

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 飛行機は中華航空C1223で、羽田を07:55に発って、3時間40分の飛行の後、台湾の台北市にある松山空港に10:35に到着予定です。機体はエアバス社のA330-300で、座席が横に2:4:2なので、私のお気に入りの飛行機です。

 

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 機内はそれなりに混んでいます(写真下)。コロナがやや沈静化したので、旅行客が戻ってきたのと、円安で旅費が高いので、近場の台湾や韓国などが旅行先として人気なのでしょう。

 

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 この飛行機への個人的な評価はちょっと厳しく、五段階のD「不満足。改善するべき問題がある」です。理由は座席予約の問題です。旅行会社から航空券の予約番号などを聞いて、出発の48時間前に有料の座席予約をとろうとしたら、航空券が団体用であることを理由に拒絶されました。

 すぐに旅行会社に連絡して、予約を取ってほしいと依頼すると、旅行会社からも予約が取れなかったという。団体を理由に個人で予約が取れない航空会社は初めてで、今時こんな簡単なこともできないのは客へのサービス意識が低く、かなりの減点です。

 当日、チェックインで申し出ると、私の希望の43Kは先に取られて、二つ前の41Kになりました。幸い、隣に人がこなかったので、往きは楽でした。

 

 

 飛行機はほぼ予定どおり、薄曇りの羽田空港を7:53に離陸しました。

 

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 雲の間から、黒富士が見えました(写真下)。右側の座席の特権です。

 

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円安と物価高

 離陸して五十分ほど後に食事が出ました(8:39)。これが朝食兼昼食になりました。理由は後でお話します。

 

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 新型コロナのおかげで、私は海外旅行など201912月を最後に論外になりました。一年くらいは我慢すれば何とかなるだろうと思っていたら、三年半たってしまいました。「コロナ君、いい加減にしてくれたまえ」と文句を言っていた()

 コロナは良くも悪くも世の中を変えてしまいました。コロナが始まった頃、保健所が大混乱した様子が伝えられ、役所がファックスやフロッピーでやり取りしているという話を聞いて絶句しました。日本のデジタル化が遅れているのは、スーパーのレジで、若い人も現金を使っているのを見ればわかります。ファックスやフロッピー、ハンコなど、これが今の日本の経済力や科学技術力のレベルを表わしています。コロナに時代遅れを突きつけられたようなものです。

 

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 昨年の年末、2023年は旅行を再開できそうなので、各社のツアーの価格を調べて驚きました。値上がりは予想以上で、例えば50万円のツアーに、燃油サーチャージと一人部屋がそれぞれ10万円、合計20万円が加わると70万円のツアーになってしまう。

 逆風の一つが円安です。コロナ前は1ドル110円前後だったのに、旅行が始まる頃には140円と円安が進みました。三割近くも安くなり、来日する観光客が順調に増え、日本の株や不動産は割安感から買われて、株価は3万円代に入り上昇中です。逆に日本人にとっては海外旅行が遠のき、旅行客の数がコロナ前の半分程度でのび悩んでいる。

 

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 もう一つの逆風が石油などのエネルギー高騰です。撃墜されると恐いので名前は出さないが、どこかの愚か者が戦争を始めたおかげで、原油が1バーレル80ドルをこえ、航空券の燃油サーチャージの高騰に驚かされました。燃油サーチャージだけで10万円を超えるなど、一昔前ならこれだけで香港や韓国のツアー代金に匹敵するような価格です。

 問題の根本にあるのは日本の国力、特に経済力の衰退のようです。円安や戦争のおかげで日本の株が買われて、浮かれている人たちがいるが、国力自体は落ちていることを示すのが次の一覧表です。

 

項 目

日本の世界

ランキング

備考(調査した団体)

国の借金

1(GDP比で261%2023)

経済が崩壊した2位のギリシャでさえも177%

一人あたりの

名目GDP

31(2023)

2001年は日本5位、2010年は14位で続落中

国際競争力

35/64ヵ国中(2023)

経済パフォーマンス、政府の効率性、ビジネスの効率性、インフラの4つの因子の比較(スイスのInternational Institute for Management Development

平均年収

21/38ヵ国中(2022)

日本は2000年までは2位だった(OECD)

科学技術力

13(2023年、続落中)

科学技術論文の国別ランキング、「トップ10%論文数」で、2005年までは4

世界人材ランキング

43/64ヵ国中(2023)

企業に必要な人材を育成し惹きつけ維持できるか(スイスのInternational Institute for Management Development

大企業時価総額ランキングの上位50

1/50社中(2023)

1989年には日本は32社あった

 

 上の一覧表を見れば、日本のあらゆる分野で凋落しているのが数字の上でもはっきり出ています。GDPが世界第3位だといっても、一人当たりのGDPは下落続行中で、まもなくドイツやインドに抜かれるでしょう。

 科学技術の凋落は二十年前から始まっていて、電気自動車に乗り遅れ、時代錯誤の原子力発電を運転期間を延長するどころか、さらに建設しようという動きがあるなど、残念ながら日本の将来に明るいニュースはありません。

 どうして?という疑問に次のランキングが参考になります。

 

項 目

日本の世界

ランキング

備考(発表団体)

高齢化率

1(2023)

全人口で65歳以上が占める割合

性差別(ジェンダーギャップ指数)

125/146ヵ国中(2023)

経済・政治・教育・保健の四分野での性の格差の少なさ(世界経済フォーラム)

女性の働きやすさ

28/29ヵ国中

(2023)

男女の賃金格差や労働参加率の差など10の指標で評価(イギリスの経済誌「エコノミスト」)

理系女性割合

38/38ヵ国中(2021)

高等教育機関の卒業・修了生に占める女性の割合(OECD)

 

 日本が先進国と名乗れないほどの女性差別の国であることが数字の上からもはっきりと表れています。日本の低迷が女性差別だけが要因ではありません。ただ、人口の半分を差別して、働きにくくすれば、経済的にも発展しないだろうと、容易に推測できます。

日本国憲法では男女平等なのに、同じ憲法で日本国の象徴と定められた天皇が、皇室典範では男系男子だというのだから、皇室典範は憲法よりも上にあるらしい。日本国の象徴で男女差別をしているのですから、世界に向けて、日本は男女差別の国だと高らかに宣言しているようなものです。

2018年には、東京医科大学を含めた9つの大学医学部で、女子の受験生に不利になるようにしていた不正入試が発覚しました。この憲法違反の行為を決定した学長や教授などが処罰されたという話は聞きません。働きたい女性を働かせない扶養控除の制度で106万円と130万円の壁は撤廃されず、税金が不足している時に補助金を出すという。小手先、付け焼刃、目先の利益、無能無策の政策しか出せない政治家を日本人は選んでいます。

 

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 三時間の飛行で観た映画が「長ぐつをはいたネコと9つの命」で、これは「長ぐつをはいたネコ」(アメリカ、2011)の続編です(写真下)

主人公のプスは前作と同様にアントニオ・バンデラス(Antonio Banderas)が声優です。彼が前作の映画の映像を元にしてプロモーション・ビデオを作ってYouTubeで公開しています。残念ながら、飛行機の中ですから日本語吹き替え版しかありません。皆さんはぜひ彼の声で観てください。今回の作品もそれなりに優れているが、前作があまりに良くできていたので、つい比較してしまいます。

 

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「長ぐつをはいたネコと9つの命 (Puss in Boots: The Last Wish)(アメリカ、2022)

 

 

松山空港の撮影禁止

 離陸から三時間少しで、台湾が見えてきました(写真下)。数枚ほど写真を撮った後、私は撮影を中止しました。着陸予定の台北の台北松山空港(臺北松山機場)は軍民共用なので、上空からの撮影が禁止されているからです。

 

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 どの程度の禁止事項なのか、2019年に空港など関係者に直接調べた人がいます・・・スゴイ。「とりひこライフ」というブログを書いている方で、結論は、空港の上空からの撮影が禁止されているだけで、空港内はおおむね禁止はされていないようです。

 飛行機は少し早めに台湾時間の午前10:16(日本時間11:16)に台北松山空港に着陸しました(写真下)。実際の飛行時間が3時間23分ですから、台湾はほんとうに近場です。

 

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 空港で台湾元に換金します。窓口が二つあり、換金率の悪いほうが人が並んでいいないので、私はそちらで換金しました(写真下)。円安の影響で、ネットで見ると、四年前の2019年には1台湾ドルが3.5円程度だったのが、今は4.6円もします。空港での私の換金率は4.86円でしたから、この旅行記では5円で換算しています。

 

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 私たちが乗るバスは2016年製でまだ新しい(写真下)。問題は27人乗りだという点です。日本人が19人、台湾のガイドを加えて20人ですから、「一人窓側一座席」は無理です。これは明日621日に行く合歡山の山道は狭いのでこの中型バスになりました。

 

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 日本にいる時、私は旅行会社に、合歓山の時だけ中型バスで残りの4日は大型バスにするか、座席が平等になるようにグループ分けしてはどうかと提案しました。社長から、客は常連が多いので必要がない、という返事でした。しかし、今回を含めて、客の譲り合いの精神に任せたままでうまく行った例を見たことがありません。

 

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 今日はバスで、台湾中部の台中市で珍しい樹木を二つ観察した後、宿泊地の埔里(プーリー)に向かいます。

 

 

 

台湾有事と株の売却

 写真下がガイドの黄さんで、日本語のおしゃべりもジョークもうまい。巧みな反応から頭の回転の速い人だとわかります。印象的なのは、彼が中国の脅威を強く感じている点です。気持ちはよくわかる。私も今回、台湾を選んだ理由の一つが「台湾有事」です。

 

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 中国が台湾の併合を目指して、軍事侵攻するのではないかと危惧されます。習近平氏は毛沢東に並ぶ存在になるつもりだという説が正しいなら、毛沢東が最後の中国皇帝ではなかったらしい。

 

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 習近平氏は隠然たる権力を握っている長老たちに、中華民族の偉大な復興を目指すと宣言して説得したのでしょう。大中国を造るのに避けられないのが領土や国境の問題で、香港は強圧的な方法で中国化に成功し、南沙諸島などの「中国の赤い舌」も順調にのばして、この功績で習近平氏は三期目に入れました。

 ロシアやインド、ブータンとの国境問題はくすぶっているが、それほど目立ちません。一方、国際的にも目立つのが台湾です。アメリカの戦略国際問題研究所が、2026年に中国が台湾に進攻するというシミュレーションを発表し、台湾の国防部が8月に出した「中共軍力報告書」では2027年までに台湾有事が起きる推測しています。

 

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 今回の旅行の一カ月ほど前に、ショックなニュースが伝わってきました。今年に入って日本の株価が上昇した理由の一つが、アメリカの著名な投資家ウォーレン・バフェット氏が日本株を買ったことだという。

 株投資の素人の私がショックだったのはそれではなく、彼が世界最大の半導体メーカー「台湾積体電路製造(TSMC)」の保有株をすべて売却したという点です。彼は自分で調査して納得した株だけ買い、長期的に保有することで成功したという。その彼が台湾の有力で有望な株を売却したということは、台湾有事で経済的な大打撃が起きると予想していることを意味します。

 

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 バスから台北郊外を列車が走っているのが見えます(写真下)。桃園国際空港(台灣桃園國際機場)と台北市を結ぶ鉄道(桃園機場捷運)で、20173月に正式開通したというから、最近のことです。私たちが到着した台北市内の台北松山空港と桃園国際空港は、歴史や位置がちょうど羽田空港と成田空港の関係に似ています。

 

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 高速道路から見る台湾の風景は日本とそれほど変わりはありません(写真下)

 

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 日本と違うのが写真下で、日本の寺と違い、屋根がオレンジ色なので数は多くないが、目立つ。写真下の上段は仏教寺院で、屋根飾りが派手なのが道教寺院ではないかと思われます。

 

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 もう一つ、日本と違うのが、住宅地の屋根に乗せられた貯水タンクです(写真下)。集合住宅など一軒分ずつ貯水タンクが列をなしている。水道の水圧が低いので汲み上げているようです。この方式は、普段は不便だが、災害時には非常に有効でしょう。

 

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サービスエリアの樹木

 昼食のために竹北市にあるサービスエリア「湖口服務區」に立ち寄りました(12:16)

 

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 写真下左がトイレの建物全体で、おもしろいのが、建物の外から直接入る個室があることです。写真下左の左側に二つドアがあるのが男性用で、個室に大小両方の便器があるトイレは初めて見ました(写真下右)

 

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 建物の中に飲食店や土産物店があって、キティちゃんたちが活躍しています(写真下)

 

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 今日の昼食は旅費に含まれていないので、各人が自分で食べることになっています。大半のお客さんが写真下左の吉祥食堂で麺類を注文しました。料理ができると写真下右の呼出機が鳴ります。

 

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 写真下左がお客さんが注文したものです・・・台湾に来て最初の食事がカップラーメン!?もちろんインスタントラーメンではなく、使い捨て容器を用いているだけです。私は機内食を食べてお腹が空いていなかったところに、建物に入った時の食べ物の独特の匂いに食欲をそがれ、さらに他のお客さんが注文した食べ物を見て、あまりの「色気」のなさに食欲をなくし、注文しませんでした()

 

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澤民大樟

 台湾に来て最初の観光が、台中市の北にある「澤民大樟」と呼ばれるクスノキの大木です。クスノキは台中市の東に隣接する南投県の県木に指定されています。

 

 

 写真下がそのクスノキで、上よりも横にも枝がのびていて、全体像を写すのは無理です。高さ18m、地上に見えている幹の周囲は最大8.5mで、人の大きさと比べても巨木なのがわかります。

 

写真上 樟樹(Cinnamomum camphora、クスノキ、樟、楠)

 

 下の衛星写真で赤い丸で囲った部分がクスノキのある公園の全体です。赤丸で囲った部分の緑はほぼこのクスノキ一本の葉ですから、枝の広がりの直径は50mほどあることになります。周囲はブドウなどの果樹園が広がっている農村地帯で、自然そのままの樹木は周囲には見当たりません。

 

 

 クスノキは写真下左のように二本あるように見えますが、写真下右でお客さんが指さしているあたりを見ても、つながっています。ネットの解説によれば、クスノキが生えていた所に泥が貯まり、幹が土で埋もれてしまい、二本の枝だけが露出して、まるで二本の木のようになったという。Y字の下半分が土に埋もれ、私たちは上半分を見ているというのだから、地面の下にこの二本を合わせたような巨大な幹があることになります。そこで両方合わせて幹回りを測ると16.3mで、これが本当の太さです。

 

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 幹のように太い枝はキノコの笠のように広がっていて、赤い鉄柱で支えられています。しかし、この後で見た別なクスノキから推測すると、枝は地面まで落ちるのが本来の姿で、支柱で支えるのはよけいなお世話です。このことは後で見たクスノキで説明します。

 

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 一時、シロアリや害虫のせいで樹木が弱ったことがあったようです。写真下右が効果があった治療法で、中興大学園芸学部の劉東斉准教授からの提案で、竹筒を地中に差し込んで空気を送るという方法です。この方法は日本の樹木医も関わったとも言われますが、ネット上では確認できません。

 

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 敷地の隅にクスノキを守るための2011年~2020年までの活動が紹介されています(写真下)。しかし、表面はコケなどの汚れでわかりにくい。

 

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 これは台彎老樹救援協會という組織の活動で、樹木の治療の様子を知りたかったのに、ホームページには具体的な内容は載っていません(下図)

 

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上図 台彎老樹救援協會のホームページから転載

 

 このクスノキを守る方法は簡単で、今、観光客が立ち入っている場所を全面的に立ち入り禁止にすればいい。これだけの大きな樹木なら、根が周囲に広く張っているはずで、観光客はその根の上を歩いて、土を踏み固めている。今、立ち入り禁止にしているのは幹からせいぜい数メートルで、これでは樹木の大きさからいって、ほとんど意味がありません。

 

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 最悪なのはクスノキのすぐそばに建てられている廟です(写真下)。大張公福徳廟が樹木信仰のためにクスノキのすぐそばに建てられています。石でできた重い建物ですから、人間なら足を踏んづけられているようなもので、クスノキにとってもありがたくないはずです。

 

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 地元の人たちは大張公福徳廟管理委員会を作り、樹木への信仰を含めた保護活動をしています。

 

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 クスノキの木陰の下では近所の人たちが将棋を指していて、ここが観光地だけではなく、近所の人たちの憩いの場になっているのでしょう(写真下)。しかし、本当にクスノキを神として崇めて保存したいなら、写真下の建物をすべて公園内から外に移転して立ち入り禁止にするのが、竹筒を差すよりもはるかに効果的でしょう。

 

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 枯れた枝を剪定した時、枝の年輪は500年だったことから、このクスノキの樹齢は1000年以上と言われています。

 

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 道を隔てて、土産物屋が並んでいますから、それなり数の観光客が来るようです(写真下)。写真下右は店で売られているマダラのヒョウタンで、私は最初見た時、ヒョウタンだとわかりませんでした。

 

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五福臨門神木とライチと咖啡

 二カ所目のクスノキは、台中市の石港鎮龍興村にある五福臨門神木です。

 

 

 ここもまた写真下の赤丸で囲んだように、村の中で公園になっています。

 

 

 写真下が五福臨門神木のクスノキで、倒木ではありません()。倒れた木が枯れることなく、枝をのばして成長することがありますから、この木もそうなのだろうと思ったら、違っていた。倒れたのではなく、これが本来の姿なのです。

 湯浅先生に、クスノキとはこんなふうに横にのびるものなのかと質問すると、普通はまっすぐ上に成長するといいます。そうか、コイツも変わり者の少数派なのだと妙に親近感を覚える()

 

写真上 樟樹(Cinnamomum camphora、クスノキ、樟、楠)

 

 写真下で左側の太い樹木が元になって、右側に枝()がのびて、地面にいったん下りて、そこからさらに立ち上がり、まるで大蛇が地面を這っていくように延びているのです。

 

 

 枝()が地面に下りている典型が写真下で、幹は手前()からのびて矢印の部分で地面に着地し、さらに奥に向かって立ち上がって延びていき、これを繰り返す。蛇がクネクネとのたうつのを縦にしたような姿です。

 

 

 下図のように、()地面に着地して足場にして態勢を安定させています。たぶん地面に着地した部分は根を出して固定し、水や栄養を吸い上げているはずです。巨木の多くが上に向かう幹と根で身体を支えているのに対して、これは腕を広げて支えているようなもので、非常に安定がよくなり、台風などで倒れる心配がなくなります。また左側の本体が枯れても生き残れます。このクスノキは上と横にのびるという二つの生存手段を併用している賢い樹木です。

 

 

 最初に見た澤民大樟で、枝が地面に落ちないように鉄の柱で支えていたのは、クスノキからみたら、よけいなお世話、大迷惑な話です。彼らは地面に枝()を下すことで、樹木を安定させ、森に確実に広がるのです。ここのクスノキにも写真下のように余計なお世話をしています()。幸い、ここは支柱が少ない。

 

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 前のクスノキ同様にここも公園化されています(写真下左)。客は私たちしかおらず、屋台が一軒あるだけです(写真下右)

 

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 クスノキはやはり神格化され、樹木の前に祭壇が設けられています(写真下)。ただ、前のクスノキのような廟などの重量物がないのは幸いです。

 

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 写真下の湯浅先生と一緒に記念撮影をした女性が、この土地の所有者の奥さんです。湯浅先生の様々な質問にも丁寧に答えていました。土地は私有地のままで、公園と樹木は公的な組織が管理するという面白い仕組みで、日本も真似ができそうです。

 

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 彼女は公園の地続きで喫茶店を経営していて、中興大學が認定した有機豆のコーヒー「鴞咖啡」を勧めます(写真下)。鴞とはフクロウのことらしい。

 

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 しかも、コーヒーを頼めば、建物のそばに生えているライチ(茘枝)が食べ放題だという!!私はすぐに彼女が好きになりました()。ライチが食べ放題!!この一言にお客さんたちも元気になりました()。暑い上に、前に見たクスノキと同じなので、皆さんの反応はいまひとつでした。

 地元の人が高い木になっているライチを採ってくれました(写真下左)。横に延びてもクスノキから採れるのは食べられない樟脳ですから、やはりライチのほうが良い。

 

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 湯浅先生によれば、このライチは古い品種で、市販されているライチはもっとおいしいという。ただ、私と何人かのお客さんは、翌日市販のライチと食べ比べをして、ここのライチに軍配をあげました。あっさりと甘いだけの市販品に比べて、こちらのほうが酸っぱさがあり、私の好みには合う。

 暑さを避け、採りたてのライチと有機豆の鴞咖啡という奇妙な組み合わせで、心地よい休憩です(写真下)

 

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 写真下左で、私の鴞咖啡の向こうに写っているのがクスノキで、鴞咖啡を飲みライチを食べながら観察するのが正しい鑑賞方法です()。写真下右が鴞咖啡の豆で、鴞咖啡は苦みが少なく、軽い酸味なので飲みやすい。日本語では珈琲、中国語では咖啡だと黄さんに言われてから、両者は字が違うことに気が付きました。

 

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台中市から埔里へ

 コーヒーでライチを食べ終えて、台中市を南に縦断した後、東にある今日の宿泊地の埔里(プーリー)に向かいます。

 

 

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 台中市(臺中市)は人口280万人の大都市で、最高気温は一年を通して30℃をこしています。首都の台北市は土地の値段が高いで住みにくく、人口はこの台中市に抜かれてしまいました。

 

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 台中市を縦断し終えた頃に、埔里に向かう表示が出てきました(写真下左)。高速道路を下りて、国道6号で進むと、ビル群は消えて、住宅地や田畑が広がる郊外に出ます(写真下右)

 

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 道の両側の山にたくさんのビンロウ(檳榔)ヤシが植えられています(写真下)。東南アジアではビンロウの実は覚醒作用のある嗜好品で、かなりの需要があるらしく、山のあちらこちらに見かけます。自然に生えているように見えるのもすべて植林です。

 

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埔里に到着

 本日の宿泊地である埔里(プーリー)の鎮寶大飯店に到着しました(18:29)。入口やロビーは石造りで高級感があります。

 

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 写真下はエレベーターの階数を表わすボタンで、4階と14階がない。17階まであるが、この建物は15階建てです(写真上左)。台湾では4という数字が嫌われ、理由は日本と同じで「死」と発音が似ているからで、逆に好かれる数字は9だという。

 

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 ホテルのレストランで食事です(18:57)。レストランは広々として、我々以外は誰もいない(写真下)。私にとっては台湾での初めての食事です。

 

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 日本で食べる中華料理とあまり変わりないので、食べやすい(写真下)。私にとっては辛いのがないのが助かるし、味付けも見た目ほど濃くありません。

 

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 海外の中華料理でいつも悩まされるのが、取箸と皿の数です。それぞれの料理には取箸が付いていない。各人に小さな取り皿が一枚しか配られないので、これでは料理の味が混ざってしまい、食べにくい。海外の中華料理ではほぼ例外なく、日本人は箸、スプーン、皿の追加を何度も頼むことになります。

 

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 料理でお客さんたちの一番の関心は埔里の特産だというマコモです(写真下)。新鮮なので生食で、見た目どおりの、癖のない、あっさりとした食感と味です。

 

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 写真下は来る途中で見た埔里のマコモ畑で、台湾では「茭白」と呼ばれ、埔里は台湾でも一大産地です。

 マコモ(真菰、Zizania latifolia)はイネ科の植物で、沼地などに生えているのをみかけます。ただ、日本のスーパーでマコモが売られているのは見たことがありません。山形県酒田市では、冬に飛来する白鳥の餌としてマコモを植える活動をしています。餌付けでは人間が餌をやらなくなると白鳥が来なくなるので、白鳥が自分で餌を採れるようにとマコモを植栽しています。

 

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 写真下が私の今日の部屋で、広さや設備、衛生などは問題ありません。スーツケースを広げる余裕も十分で、ベッドが二つあるので荷物を広げるのに使いやすい。バスタブも付いています。

 

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 お茶、ミネラルウォーター、湯沸かしポット、テッシュペーパーもあり、洗面所には石鹸、シャンプー、歯ブラシ、スリッパからクシまで二人分そろっていて、自分のを使わなくても良いので楽です。

 

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 部屋にあるミネラルウォーターのラベルには「埔里の水」と日本語の名前が使われています(写真下)

 

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 ここまでなら、このホテルへの個人的な評価は、五段階評価の4.0「特にマイナス点がない」を余裕で取れたでしょう。だが、エアコンが壊れていた。温度設定をいくら低くしても、27℃から下がらない。本当に27℃ならそんなに暑くは感じないはずで、普段の自分の部屋の温度からすると30℃くらいあります。エアコンが壊れていることに気が付いたのは夜遅くで、黄さんを起こすのも心苦しいので、一晩、寝苦しい夜をすごし、翌日、部屋を変えてもらいましたので、評価は3.0「問題がある」です。

 ここに二泊します。

 

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