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台湾の植物と自然観察

5日目 2023624()

台北→羽田

 

 六時起床。出発前の天気予報はほぼ外れて、最終日も晴れました。

 

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 今日は旅行の最終日で、下の地図のように台北市内の植物園や花市などの観光です。飛行機は夕方の便で、台北松山空港は市内にありますから、ほぼ丸一日観光することができます。

 

 

 ホテルの朝食は6:30からです。私は朝食の写真だけ撮って、散歩に出かけます(写真下)。出発が8時なので、朝食を取っている時間はありません。結局、五日間の旅行でホテルでの朝食は一度も取れませんでした()

 

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 ホテルは台北市内の中心部で、目の前には高速道路の高架があり、緑は少なく、面白みは少ない(写真下)

 

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 しかし、その高架通りにも「生ビール 冷えてます」「橋下ガード酒場」「一番搾り」など、日本語で書かれた庶民的な店があります(写真下)

 

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 周囲は区画整理され公園化されて(写真下左)、大きなビルが建っているが、庶民の暮らしも残っています(写真下右)

 

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 庶民は草花を植える。日本では室内の観葉植物のポトス(Epipremnum aureum)が屋外で生育しています(写真下右)

 

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 写真下右は南アフリカ原産のアスパラガス・メイリー(Asparagus densiflorus)という観葉植物で、日本でも屋外で育つそうです。

 

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 歩道に、たまたまプルメリアの花が落ちたか、それとも誰かが置いたか(写真下)。私は手を触れていません。台北の朝の謎です()

 

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 散歩には向かない都会のど真ん中で、朝食を抜きにして行こうと思ったのは、写真下の道教の寺院「福佑宮」があったからです。ホテルの周囲では唯一の寺院で、ストリートビューで見た時、庶民的なので、好感が持てました。

 

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 管理人らしいオジサンに写真を撮っていいかときくと、なんと、日本語で返事が返ってきました。東京の世田谷区で生まれ育ったそうです。堂内に入っていきなり目立つのが金色の柱で、金色の板に寄進者たちの名前が入っています。

 

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 ここも神様の像がたくさんありすぎて、どれが何なのかさっぱりわからない。たぶん、真ん中の一番奥が本尊なのだろうが、これも蛍光灯管の乱立でまぶしくて良くわかりません。

 

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 管理人のオジサンにもらった福佑宮を紹介した冊子に載っているのがここの本尊の「福徳正神」のようで・・・わりと庶民的な顔です()。昨日紹介したように、彼は実在した張福徳という税関係の役人で、善行を為したので、商人からは人気があります。昨日、墾丁から台南市にバスで移動する途中で、建物の上に座る巨大な福徳正神を二度見かけました。

 

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写真上右 『福佑宮 農民暦』(財団法人福佑宮、2023)

 

 この冊子によれば、この廟は清朝の道光年間(1821-1850)から始まり、写真下左は1955年に修復された時の記念写真です。それが70年ほど後には写真下右のように原型を留めないほどに過剰な装飾に包まれています。何度見比べても、同一の建物には見えない。特に、写真左の左にある2mほどの塔が70年後には、台北は亜熱帯なので本堂の屋根よりも高く成長して、煙突までついています()

 

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鄭成功

 急ぎ足でホテルに戻り、予定どおりの時間にホテルを出発(8:03)。最初に台北市内の北にある開臺聖王成功廟に行きます。

 

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 開臺聖王成功廟の入口で鄭さんが迎えてくれました(8:29)。鄭さんは湯浅先生の大学時代の教え子です。

 

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 開臺聖王成功廟とは鄭成功(1624-1662)を祭った廟です(写真下右)。昨日も安平古堡などで紹介したように、彼は台湾を占領したオランダ軍を破ったことから、台湾では英雄として崇拝されています。日本とも関係が深く、母親は日本人で、彼は長崎で生まれ、近松門左衛門の「国性爺合戦」は鄭成功がモデルです。

 

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 鄭一族の子孫は世界中にいて、この廟は子孫たちに寄付を呼び掛けて作られました。ただ、建築は一時中断して、放置されていたこともあったようです。案内してくれた鄭さんは、名前どおりの鄭成功の子孫で、この廟を建築したのは鄭さんの父親です。

 

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 ただ、鄭成功の記録を読む限り、彼は性格がきつく、処罰は冷酷非情で、敵は皆殺しにして、捕虜にした女性を性的な奴隷にするなど、いくら敵を殺すのが仕事の軍人でも、私とは馬が合いません。廟に入ったので、帽子をとって挨拶はしましたが、気の弱い私は目を合わせないようにしました()

 

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 台湾で鄭成功を英雄視するのが正しいのかどうか、外から見ると疑問があります。鄭成功はオランダ人を追い出して台湾を解放した人物には間違いないが、彼が忠誠を誓ったのは明(13681644)であって、台湾ではありません。鄭成功が台湾に来たのは、清(16441912)との戦いに大敗して、自軍の立て直しのために台湾にいたオランダ軍を破って追い出しただけで、台湾の解放が目的ではありません。つまり、台湾を外国の支配から解放した偉大な英雄という評価は正確とは言えない。

 

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 私は血生臭い英雄が苦手なので、廟の外に出るとホッとします。ここは台北市内を眺められる山の上にあるので眺望は良い(写真下)。台北市の街中のすぐそばにあるのに、開発が禁止されているので、自然環境が保たれています。

 

 

 近くの道は尾根沿いのハイキングのコースにもなっています(写真下)

 

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瑞明農場の見学

 私たちの目的は鄭成功よりも、すぐそばにある鄭さんの瑞明農場を見学することです(写真下)。これも鄭さんの父親が創設したものです。

 

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 鄭成功の廟から事務室まで、山の斜面に沿って下りていきます(写真下)

 

 

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 道はアスファルトで舗装され、道の所々に休憩できる設備もあります(写真上下)。ただ、そのどれもが、使われなくなってからしばらくたっています。山道の両側も、私たちのために昨日草刈りをしてくれたそうです。

 

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 合歡山で食べたレンブ(蓮霧)を動物が食べた跡です(写真下左)。下半分しか食べていないのは、そこだけおいしいのか、あるいは行儀が悪いだけか。

 

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 写真下は、花弁の先がとがっていることからノボタンで、台湾でも名前は野牡丹です。台湾に自生しますから、ここにあるのが野生でもおかしくはありません。ただ、全体的な印象では、植えたものではないかと思います。

 

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写真上 野牡丹(Melastoma candidum、ノボタン、野牡丹)

 

 道端のヤブの中にパイナップル(鳳梨)が実を付けています(写真下左)。野生なはずはなく、周囲はパイナップル畑ではなく、ただの森です。写真下右は中南米原産のランタナで、外来種として世界中から嫌われています。

 

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 コチョウラン(Phalaenopsis aphrodite、胡蝶蘭)のようなランが木に括りつけてあります。日本の林なら不自然なのに、ここではそれほど違和感がありません。

 

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 写真下左は、日陰のために花が少なくなったサンタンカでしょう。写真下右のハイビスカスはインド洋諸島やハワイ諸島が原産と言われていますから、これも人間が植えたものです。

 

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 写真下のギコウボクは台湾での栽培の歴史は300年に及ぶといっても、中国南部からインドにかけてが原産地ですから、これも外から持ち込まれた樹木です。

 

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写真上 玉蘭花 (Michelia × alba、ギンコウボク、銀厚朴)

 

 山道はうっそうとした自然林の中にあるが、道路脇にある植物や花は野生ではなく、大半は植えたものです。それも計画的というよりも、かなり適当に植えて、手入れもされないまま残ったように見えます。

 イシガケチョウ(イシガキチョウ)が停まっています(写真下)。日本でも近畿地方以南に棲息するらしく、北方民族の私は日本では見たことがありません。この蝶だけは完全に野生です()

 

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写真上 網絲蛺蝶 (Cyrestis thyodamas formosana、イシガケチョウ、石崖蝶)

 

 折り返し点の事務所に到着して、エアコンの効いた部屋でライチと飲み物で休憩です(写真下、10:00)

 

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 壁にはこの農場のこれまでの活動記録があります(写真下)。ここを訪問したのか、日本の皇族や政治家の写真もあります。今は人手が足りず、休園状態になっているらしい。ただ、農場と言っても、往復した山道を見ただけなので、具体的にどんな活動をしていたのか、私は最後まで良くわかりませんでした()

 

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 鄭さんにとって恩師の湯浅先生が訪問したので、とても丁寧な対応で、台湾名物のパイナップル菓子のお土産までいただきました。

 

 

國立故宮博物院

 開臺聖王成功廟の近くにある國立故宮博物院に行きました(10:4711:45)。私は三十年前、ここに来たはずなのに、まったく記憶にありません()。植物とは関係ない観光をするのは、飛行機が羽田発着に変更になり、時間に余裕ができたからです。それなら、この後の花市や植物園にもっと時間を取ってほしかった。

 

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 この博物院で一番有名な「食材」が、石で作られた豚肉(肉形石)と白菜(翠玉白菜)です。食べ物であるという点がいかにも中国らしい。豚肉は飾られているのに(写真下左)、白菜はアメリカに出張中だという。写真下右の黄さんの隣にあるのがその白菜の写真で、実物は18.7cmというから、こんなに大きな白菜ではありません。

 

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 いずれも原石の特性を巧みに活かした彫刻で、白菜をバッタとキリギリスが食べています。この二点に清明上河図という風景画を加えて、この博物院の三大至宝とされています。たぶん、二大至宝では収まりが悪いから三大にしただけで、人気と知名度はこの二点です。驚くことに、これほどの傑作なのに、製作年も作者の名前も残っていない。腕の良い職人という肩書だけで一生を終えたのでしょう。

 皆さんに至宝の数々を紹介するのも手だが、それなら博物院のホームページのプロが撮った写真を見たいほうがきれいです。

 私が紹介する傑作は写真下で、寝ている子供と同じポーズを取る女の子で、一瞬の芸術と思ってシャッターを切った。実際は、女の子は解説を聞くためにヘッドホンを手で押さえているだけです()。でも、まるで子供と同じ方向に頭を傾げて、手を枕にしているように見えて、面白い瞬間です。

 

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 もう一つが写真下の絵です。これは美術品ではなく、展示物のために制作された通路の飾りです。花が描かれていることもあって、展示物よりもこちらのほうが気に入りました。複数の画家が系統だって描いた絵の印刷物でしょうから、ある時期が過ぎれば、廃棄されてしまうのでしょう。

 

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 中国の伝統的な画材を取り入れながら、しかも現代風におしゃれにアレンジされています。この博物院には値段も付けられないようなお宝がたくさんあるのに、こんな絵に興味を持つのは私くらいでしょう()

 

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 漢字圏の人にとって有利なのが、漢字が絵の装飾の一部になることです。ただ私は漢字は嫌いで、中国から輸入された文化の中で、最悪が漢字だと思っています。日本人の誰一人、完全に読み書きのできない文字って、文字としての価値があると思いますか?文字は意志疎通の手段であって、学者や文人の権威や自己満足の道具ではありません。小学生に平仮名と片仮名、さらに膨大な漢字を覚えさせる時間で、日本人はどれほど損をしていることか。

 

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 アーチ型の緑の回廊から、川を行く帆掛け船を眺める(写真下)。遠くには山が霞んでいます。回廊の前の庭には牡丹などの花が咲き乱れ、大きな蝶が飛んでいます。

 

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両足の招き猫

 國立故宮博物院で見学を終えて、市街地の「馬來亞餐廳」で昼食です(12:33、写真下)。けっこう、慌ただしい。

 

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 このレストランの入口にも神様が祭ってあります(写真下)。たぶん、後ろの仏画は観音、手前の像は媽祖でしょう。

 

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 写真下左の供物として置いてある花は、先ほど、鄭さんの農場で見た玉蘭花(ギンコウボク)の花のつぼみのよう見えます。ギンコウボクはとても良い香りがするそうです。

 

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 今年はウサギ年なのでいくつか飾りがあります。写真下左で、ウサギの間にあるのは、「寶()」という文字の下に、何か別な文字を左右に重ねています(写真下右)。「招財進寶」の四文字を合成した中国の縁起物らしい。

 

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 写真下右では「福兎迎祥」とありますから、幸運のウサギが吉祥を招くという意味か、兎年だから幸福が来ますようにとも取れます。日本ではこんなふうに干支のウサギを御利益の対象にしているのはあまり見かけません。同じ干支なのに、国によって微妙な違いがおもしろい。

 

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 台湾の招き猫は両足で招くらしい(写真下)。ちょっと欲張りすぎで、相撲じゃあるまいし、片足のほうが猫らしい。

 

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 台湾での食事もこれが最後です(写真下)。今回の旅行では4日間、昼食が一日の最初の食事になってしまいました。

 

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 店の名前がマラヤレストランなのに、普通の庶民的な中華料理です。

 

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建國假日花市

 土曜日と日曜日に開催される花市に行きました(13:4714:26)。私たちが泊まったホテルからは歩いて来られる距離です。写真下が出入口です。

 

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 写真下は1994年に台湾を訪れた時に撮った建國假日花市の様子です。

 

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 写真上でもわかるように、高速道路の高架下で行われる花市で、今は両側を緑のビニールで覆っています(写真下)。道路の下でも、車の騒音や振動は気になりません。

 

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 亜熱帯らしくランが多い(写真下)。私は野生のランを見ると感動するのに、派手な色の栽培品を見ても感動がイマイチなのはどうしてなのだろうと、いつも考えるが、理由がわからない()

 

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 観葉植物も当然多い。温かいから育ちやすいのでしょう(写真下)

 

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 今回の旅行で見たのは樹木が多かったので、台湾では草花よりも樹木が人気かと思ったら、ここは樹木の店が少ないのは意外です(写真下)

 

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 日本の輸出品の一つになっている盆栽も、本家は中国です(写真下)

 

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 日本でも写真下のような小型の多肉植物が一部で人気があり、希少品はすごい値段で取引されていると聞きます。もし、珍しいのを見つけたら、一攫千金です。これは冗談ではなく、今回参加したお客さんの中にも園芸業者が何人かいて、話を聞いても、目の付け方が違う。

 

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 予想と違ったのが写真下の水生植物や水草で、探すのも大変なくらい少ない。ここは亜熱帯や熱帯だから、水生植物は一年をとおして屋外で成長できるはずです。

 

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 もう一つ、意外に少なかったのが切り花で、暑いから長持ちしないのでしょう(写真下左)。ずいぶん形のそろったランやユリの切り花があると思ったら、造花でした(写真下右)

 

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 植木鉢、花瓶など花や植物に関連した商品も売られています。写真下右はヒョウタンで、赤い紐が括りつけられているから、何か慶事に使うのでしょうか。

 

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 植木鉢などに置くのか、アニメのキャラや動物のフィギュアや、おとなしい鳥も売られています(写真下)

 

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 写真下左のお茶屋は、茶葉ではなく、飲み物として売っています。今回の旅行では残念ながら、台湾のお茶はうまく手に入りませんでした。

 

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 写真上左の店では飲んだ後の容器のゴミ袋が準備してあります。会場ではゴミの分別も行われ清潔です(写真下)。私たちが行ったのは午後で、しかもこれだけの客が来ているのにゴミ袋にはあまりゴミがないのがおもしろい。テレビで、京都などの観光地で、食べ物のゴミなどを道端に捨てる観光客のマナーの悪さが取り上げられていました。しかし、食べ物を売りながら、ゴミ箱を準備しないのも変です。

 

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 次の交差点近くでは花だけではなく、食べ物が売られています(写真下)。花も食べ物もゆっくり品定めをしてみたいが、見学時間は40分と短い。早足で往復したのに、集合場所に最後に着いたのは私でした。

 

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台北植物園

 観光地の最後が台北植物園です(14:34)

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 日本の植民地時代に作られた植物園で、台北の中心部に位置するせいか、それほど広くはありません。私たちは下の地図の東側の文學植物區から入り、荷花池を回り、療養庭園を通り、雙子葉植物區を一周しましたから、全体の四分の一くらいを散策したことになります。

 

 

 入るとすぐに荷花池があります。荷花とはハスのことで、残念ながら、まだ花の季節ではありません。植物園内にはいくつか池がありますから、元々ここは水が豊かだったのでしょう。

 

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 写真下は、日本ではウォーターレタスと呼ばれる浮草で、水面を覆いつくして生態系を壊すので、特定外来生物というワルに選定されています。浮草なのにサトイモの仲間だというから驚きます。熱帯地方では珍しくない植物で、どこが原産なのかわかりませんから、台湾では外来種ではないかもしれない。

 『台北植物園自然教育解説手冊()(行政院農業委員会林業試験所、2000年、50ページ)でわざわざこの水草が紹介されていますから、ここでは駆除対象にはなっていないようです。

 

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写真上左 大萍(Pistia stratiotes、ボタンウキクサ、牡丹浮草)

 

 植物園内は整備され、人々の憩いの場になっています。無料開放されていることもあり、緑豊かな公園という印象です(写真下)

 

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 生い茂る樹木の一部には看板があります。目立つのが黒板樹で、カメラに入りきらない(写真下)。黑板樹は東南アジア原産で、台湾に持ち込まれたのは1943年と新しいのに、30mほどにも育つので台湾では街路樹に利用され、珍しくありません。名前どおりに黒板に使ったのは、成長が早くて木が柔らかく、ほんのり香りがするからだそうです。ただし、白い樹液には毒性があります。

 

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 木に張り付いている巨大なカタツムリはアフリカマイマイです(写真下)。恐いのがこのカタツムリの寄生虫で、カタツムリが通った跡の粘液に触っただけで人間は寄生され、脳に達して髄膜脳炎を起こすという不気味な生き物です。アフリカマイマイが大発生して動植物を食い荒らし生態系を破壊するなど、世界の侵略的外来種ワースト100に選ばれるほどで、札付きのワルです。

 これを1932年頃に食用に台湾に持ち込んだのは日本人の学者で、台湾では今でもこれを食用しているという。この植物園でずいぶん目につくから、駆除対象にはなっていないようです。こんな危険な生き物を野放しにして、子供が面白半分に触ったらどうするのだろう。動植物の専門家のいる植物園だから、コイツの危険性を知らないはずないのに、ずいぶん大らかな話です。

 

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写真上 非洲大蝸牛(Achatina fulica、アフリカマイマイ)

 

 時期のせいもあるのか、花は多くありません。写真下のヒゴロモコンロンカはアフリカ原産の園芸種です。

 

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写真上 血萼花(Mussaenda erythrophylla、ヒゴロモコンロンカ、緋衣崑崙花)

 

 写真下のアンスリウムは南アメリカ原産の園芸種です。台湾では南部の高雄などでアンスリウムが栽培され、日本などにも輸出されています。

 

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写真上 火鶴花(アンスリウム)

 

 写真下左は8000以上もの園芸種があると言われるハイビスカス、写真下右は午前中の鄭さんの農場でも見たノボタンです。

 

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写真上左 朱槿(ハイビスカス、ブッソウゲ、仏桑花)

写真上右 野牡丹(Melastoma candidum、ノボタン、野牡丹)

 

 昨日、墾丁の海岸で良く見かけたオオハマボウの花が落ちています(写真下)。見上げても、この一輪が最後だったらしく、どこから落ちたのかもわかりません。

 

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写真上下 黄槿(Talipariti tiliaceum、オオハマボウ、大浜朴)

 

 写真下左のコウトウシランはだいぶんくたびれていて、すでに右先端には実が付いています。本当はもっときれいなランです。写真下右はシュウカイドウの仲間で、八重山諸島、台湾、フィリピンに自生します。

 

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写真上左 紫苞舌蘭(Spathoglottis plicata、コウトウシラン、紅頭紫蘭)

写真上 蘭嶼秋海棠(Begonia fenicis、コウトウシュウカイドウ、紅頭秋海棠)

 

 写真下のタカサゴコウゾリナは台湾、沖縄など南西諸島、中国大陸、東南アジアからインドなどかなり広い範囲に自生する草花で、植物園側が植えた草花ではなさそうです。ただの冴えない雑草だが、やっと自然の草花に出会ったような感動がある()

 

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写真上 毛氈草(Blumea hieraciifolia、タカサゴコウゾリナ、高砂髪剃菜)

 

 写真下は、台湾にいるリスだからタイワンリスです。ニホンリスよりもかわいくないことと、日本では関東以南で野生化して食害がおきて、特定外来生物として害獣扱いなので、印象は悪い。タイワンリスは、アジア全体にいるクリハラリスが台湾で進化した固有亜種だと聞くと、ちょっとだけ立派に見える。

 

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写真上 赤腹松鼠(Callosciurus erythraeus thaiwanensis、タイワンリス、台湾栗鼠)

 

 タイワンリスがジャックフルーツを食べています(写真下左)。ジャックフルーツはインドなどが原産で、台湾ではありません。私は日本で冷凍でしか食べたことがない。

 

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写真上 波羅蜜(Artocarpus heterophyllus、パラミツ、菠蘿蜜)

 

 林の中を鳥が餌を探していて、人を恐れる様子はありません(写真下)。ズグロミゾゴイのまだ幼鳥で、日本では八重山諸島、中国南部、東南アジア、インドに分布します。

 

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写真上 黑冠麻鷺(Gorsachius melanolophus、スジグロミゾゴイ、頭黒溝五位)

 

 歩き回ったのは植物園の一部にすぎず、また花があまり咲いていませんでした。亜熱帯や熱帯性という点を除けば、植物園というよりも、自然豊かな公園という雰囲気です。

 

 

昔なつかしい土産物屋

 最後に免税のお土産屋に連れていかれました(14:33)。黄さんにとっても大事な収入源なのでしょう。店内は広々として、表示にも日本語があって(写真下右)、日本語のできる店員がいて、客一人に店員一人が付いてきます・・・うっとうしい()

 

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 昔のパックツアーではこういうスタイルが良くありました。旅行会社と現地ガイドが店と契約して、連れて来た客数や売り上げに応じて利益を得る方法です。まだこういうやり方が残っていたのだ。

 昔のパックツアーの添乗員の中には悪質なヤカラがいて、客に「街中は泥棒やスリがいて、街の店で買うと騙されて、ひどい目に遭います」と脅かして、旅行会社が契約している店に連れて行くのです。当然、商品の値段は高い。

客からは不評なことが多く、こういう販売はしませんと宣言する旅行会社もありました。実際、私が参加したここ十数年の他のツアーでは、お土産を買うのに旅行会社と利害関係のないスーパーなどに案内されるのが普通でした。

 観光地を慌ただしく次々と巡り、最後に旅行会社が契約している店に連れていくという、一昔前のパターンを思い出しました。台湾の旅行業界では今でもこういうやり方が主流なのか、少し皮肉を込めていうなら、私には昔なつかしい()

 

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台北松山空港から帰国

 すべての観光を終えて、台北市内の台北松山空港に行きました(16:16)。羽田空港と同じで市内にあるので楽です。

 

 

 台北松山空港に着いて手続きを終えて外を見ると、地面が濡れている。雨の隙間をかいくぐるように、最後まで雨に降られることがありませんでした。

 出発する前に調べた天気予報では、旅行の前半は曇り、後半は雷雨などの雨と出ていたので、雨具だけはしっかりと準備しました。そのために防水カメラを準備したお客さんもいたし、私も防水カメラはいつでも使えるようにポケットに入れてありました。幸い、雨具も防水カメラを使うこともなく、晴れ女、晴れ男に感謝です()

 

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 飛行機はかなり混んでいて、一番遅い私が手続きをした頃には窓側も通路側も席がなく、通路から二番目の席になりました。今時、座席の予約ができない飛行機など最悪です。幸い隣は同じツアーの人だったので、園芸関係の会社経営について面白い話が聞けて、三時間はあっという間にすぎました。

 

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 中華航空C1222の機体はエアバスA330-300で、台北を18:05に発って、3時間の飛行の後、羽田に日本時間22:05に到着予定です。来る時と同様に、団体チケットだから座席の予約が取れないという点で、この飛行機に対する個人評価は五段階のD「不満足」とします。

 

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 飛行機は台湾からほぼ直線的に飛行していたのに、静岡県の南あたりから、急に蛇行を始めたので(下図)、私は、制御が効かなくなったのかと、ちょっと不安になりました。周囲に雨雲もありませんから、天気のせいではありません。たぶん羽田空港が混んでいるので、到着を遅らせようとしたのでしょう。ただ、実際はほぼ定刻に到着しました。

 

 

 今、税関ではVisit Japan Webの利用を推進しています。これは税関申告を手際よく行うために、スマートフォンを利用して事前登録するものです。しかし、簡略化というより、スマートフォンとQRコードを無理にでも使おうとした印象です。ネット上で事前申告して、パスポートを読み取らせれば本人確認ができるはずで、わざわざスマートフォンとQRコードを使わせるのは奇妙です。パスポートの外務省と、税関申告の財務省の縦割り行政の弊害ではないかと疑ってしまいます。

 私のように税関申告するほどの物を持たない人間には、手書きに比べてネットで登録するのに時間がかかり、便利さも利益もない。税関が、客の便宜や税関申告を簡略化するためではなく、自分たちのデジタル化の推進を証明するために作った制度のように見えます。

 

 

東京駅八重洲口で一晩

 羽田空港は混雑していたらしく、飛行機到着時間は予定どおりだったのに、荷物が出てくるのが遅く、羽田空港を出る頃には夜11時をすぎてしまい、つくばエクスプレスの最終便には間に合いませんでした。コロナ前は東京駅からつくば市までの夜間の高速バスも出ていたのに廃止され、私は帰れない()。羽田空港に戻ることもできず、結局、東京駅の八重洲口で、始発電車までの数時間を待つことにしました。

 交番の警察官に、始発まで座れるような場所はないかと質問すると、目の前の植え込みの石垣の縁か、その先にある石のベンチしかないという。石のベンチに座っていると、後ろの植え込みの中からはゴキブリが、足元にはネズミまで出て来ました。私は彼らと仲良しになるつもりはないので、コンクリートの石垣に座ることにしました(写真下)。このコンクリートの縁は斜めになっているので、ひどく座りにくい。雨カッパを座布団代わりに使ったので、今回の旅行で初めて雨具が役立ちました()

 

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 四時少し前に駅のシャッターが開いて、中に入ると、ほとんど人がいない。東京駅は多くの人で大混雑するのしか見たことがなかったので、同じ場所とは信じられない光景です(写真下)。今なら、走っても人に当たらない()

 

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 つくばエクスプレスの、見事に誰もいない始発電車の先頭車両に乗ったのも初めてで(写真下)、すっきりした車両だと気が付きました。5日間の旅行なのに実質7日間で、台湾旅行そのものは楽なのに、羽田空港までの往復が大変で、次からは避けたい。

 

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 今回は三年半ぶりの海外の植物の旅で、2019年まで利用したネイチャリング事業部の旅行のように朝から晩まで花を探すのと違い、一般的な植物の観光旅行だったので、肩に力が入らない旅でした。また、晴れ女と晴れ男のおかげで、隙間をぬうように雨を避けられました。

 お気に入りだったネイチャリング事業部の花のツアーがなくなり、代わりは未だに見つかっていません。無い物ねだりをしても始まらないから、募集している花のツアーから選ぶしかないのでしょう。

 今回の旅行でかかった主な費用は次のようになっています。

 

 主な内容

金額 ()

備考

旅費

248,000

客が16人をこえたのでこの値段

旅行会社の包括手続き手数料

4,400

内容はわからない

一人部屋(4)

44,000

一泊平均22,000円になる

空港税

8,910

羽田空港4,050+松山空港4,860

 燃油サーチャージ

18,600

募集時32,000円だったのが下がった

旅行保険

5,380

AIG損保(旅行会社経由)

羽田空港までの往復料金

3,760

電車などの運賃 (670+1,210)×2

荷物の宅配

5,040

ABC空港宅配サービスの往復

合計

338,090

 

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