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東チベットの青いケシ

3日目 2019720()

林芝 ←→ 魯朗

 

 朝、6時半頃に起きました。室温は23.2℃で、エアコンの温度設定をいくら高くしてもこの温度です。カーテンを開けると、曇り空です(写真下)。この時期のチベットは雨が降っていないなら、合格です。

 

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 本日は、昨日のセチラ峠のさらに北側の魯朗(ルラン)に行き、青いケシやサクラソウを探します。

 

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 七時半からホテルのレストランで朝食です(写真下)

 

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 出発まで時間があるのでホテルの周囲を散歩します。下図の青い線が散歩コースです。

 

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 昨夜は、音楽の騒音で夜中に叩き起こされて、しばらく眠れませんでした。その騒音源が写真下の建物です。いろいろな店の入っている雑居ビルで、ディスコのような店からの騒音でしょう。部屋を変えてもらいましたから、問題はありません。中国人は特に音量に鈍感です。

 

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 朝まだ早いせいもあり、店は半分も開いていません。中国はこれだけ広いのに北京時間が標準になっていますから、八時と言っても、太陽の位置から言うならまだ六時くらいでしょう。この時期の林芝で太陽が昇るのは七時少し前、日の入りは夜八時すぎです。

 

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 日本と同じように不動産屋の窓に貼られた広告はマンションの販売らしい(写真下)。例えば「3階、73平方メートル、2室1庁」で73万元(1168万円)で、これがこの地方では相場らしい。広告の右下に大半が「70年」、一部には「40年」と書かれています。おそらく、所有権の賞味期限かもしれません。つまり、買った人の人生分くらいの所有権という意味でしょう。

 

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 歩道の半分は駐車場になっています(写真下)1000万円のマンションやこれらの車がこの街の経済状態を表しているのでしょう。

 

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 日本ではまず見かけないオート三輪です(写真下)。中国ではどこでも普通に走っています。

 

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トイレと冬虫夏草

 予定どおり9時にホテルを出発して、昨日と同じようにまずセチラ(色季拉)峠を目指します。厚く覆われた雲を見て、今日も曇りか雨だとこの時は思いましたが、この後、少し回復しました。

 

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 昨日も来たセチラ峠(標高4540m)に到着して、ここでトイレ休憩です(10:06)。富士山よりも高いところにあるトイレです。

 

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 売られているのが冬虫夏草です(写真下)。スポーツ選手が摂取していたことがきっかけになり、人気になり、中国では高騰したままです。写真下左で、潘さんに緑色の服を着た人が勧めているのが冬虫夏草です。

 

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 冬虫夏草を売っている写真下を見た時、私は「おお中国だ!」と感激しました。なぜなら、いずれもトイレの前、というか、トイレの中で、雨よけのためでしょう。写真下左の男性の後ろはトイレの手洗いで、当然、臭いが漂っている。トイレの前で口に入れる物を売るという感覚はたぶん日本人にはないでしょう。ところが、次の日、ここに来ると、冬虫夏草はほとんど売れていました。

 

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 四千メートルの山道を自転車で駆け上がる人たちもいます(写真下)。前にチベットに来た時も、成都から拉薩まで自転車で行く人たちがたくさんいました。約2000kmという距離もさることながら、ここのように4000m級の峠をいくつも越えるのだから、冒険旅行という言葉のほうが合っているでしょう。

 

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 今日、最初の花の観察は紫色のサクラソウで、崖の斜面に群落しています。標高4000m前後のチベット南東部で見られます。

 

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写真上下 Primula cawdoriana

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 写真上の一眼レフと、下のコンパクト・デジカメでは花の色が違います。写真上のほうが肉眼で見た色に近い。

 

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 花の付け根に穴が開いているのが多く見られます。これは虫が蜜を取るために開けた穴です。ズルをしたのか、あるいは筒状の花に入れない大きな昆虫が開けたのでしょう。花弁の縦の長さは1cm少々ありますから、たぶん前者です。

 

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 写真下はキキョウやホテルブクロの仲間で、雲南からアフガニスタンまでのヒマラヤの南部に分布します。花が小さくて、撮りにくい。

 

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写真上 Campanula aristata

 

 写真下のウメバチソウ(バイカソウ)は学名に中国(chinensis)という名前が入っていて、実際、チベット、雲南、四川など広い範囲の中国と、その地続きのミャンマーやネパールなどにも分布します。

 

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写真上 Parnassia chinensis

 

 写真下はマンテマの仲間で、中国名は墨托蠅子草と、文字から受ける印象はあまりきれいではない。ほぼチベットを含め中国の高山に分布します。

 

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写真上 Silene namlaensis

 

 ピンク色のランです(写真下)。チベットだけでなく、ヒマラヤの南側のインド、ブータン、ミャンマーなどに分布します。ネット上のKew Scienceでは、さらに中国をまたいで、朝鮮半島からロシアの極東シベリアまで広く分布するとあり、またFlowers of Chinaでは日本にもあるとしています。学名のPonerorchisはニョホウチドリという名前で日本にも分布していますが、同じ名前のランは探せません。

 

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写真上 Ponerorchis chusua

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 ピンク色のネギの中まで、花は終わりかけています(写真下)。中国名は「太白韭」で、チベットやヒマラヤなど広い範囲に分布します。

 

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写真上 Allium prattii

 

 写真下のキクの仲間は中国名が「小舌紫菀」で、これもチベットからヒマラヤ南部など広い範囲に分布します。

 

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写真上 Aster albescens

 

 

魯朗国際観光小鎮

 セチラ峠を降りて魯朗(ルラン)という観光地に到着しました(写真下)。このあたりで標高3400mです。

 

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 このあたりを魯朗、周囲に海のように森林が広がっていることから魯朗林海と呼び、また、入口近辺の塔には魯朗小鎮とあります(写真上左)

 

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 観光用の馬は大人気で(写真下)、私もちょっと乗ってみたい。

 

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 「花海牧場」というきれいな名前が付いているのに、花はほとんど見当たりません(写真下)

 

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 こちらは弓技で、けっこうにぎわっています(写真下)

 

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 ピクニックで来ている人たちもいます(写真下)

 

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 露店もあります。写真下左は「蔵玉加工」と看板がありますから、チベット()の宝石くらいの意味でしょう。

 

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 街の中にはアクセサリーなどを売っている売り子たちがいます。でも、あまりお客さんがいないのか、暇そうで、写真下左はサイクリングで来たお客さんと立ち話をしています。

 

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 下の看板には「魯朗国際旅游小鎮全景尋覧図」と題してこのあたりの数キロ四方ほどが描かれています。当然、ここが魯朗だと思いますよね?

 

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↑ 看板に描かれた魯朗の鳥瞰図

↓ 同じ方向から見たgoogleの衛星写真

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 ところが、ここの元々の地名は拿哥(nage)で、魯朗ではありませんでした。しかも魯朗鎮という村は、ここからさらに北に20kmほど行ったところにあります。ここは魯朗小鎮と区別しているが、衛星写真で見ると、小鎮のほうが大きい。魯朗とは、チベット語で「龍王の谷」くらいの意味だそうで、魯朗とは下図の緑色の広い範囲も指し、同時に観光開発されたこの街(魯朗小鎮)も指します。

 

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 この街の開発の様子がネット上の衛星写真に残っています。下の二枚の衛星写真は魯朗のほぼ同じ地域で、開発前と後です。比較すれば一目瞭然で、大規模な観光開発が行なわれ、真ん中を北に流れる川をせき止めて、湖を作ったのがわかります。

 

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↑ Bingの衛星写真

↓ Googleの衛星写真

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 魯朗の観光開発が決まったのは2011年で、広東省などからも約32億元(512億円)が投じられた結果、地元の人たちの2500人の雇用を造り出し、それまで年収が一人当たり2千元だったのが、2万元になったと言われています。昔の日本の所得倍増計画だけでも人々が浮足立ったのに、収入が十倍になり、人もまばらなこの地域で2500人の雇用を生み出すというのはすごいことです。

 

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 経済的に豊かな省に、独占的な権益と引き換えに投資を呼びかけ、少数民族のいる地域を経済発展させるという手法で、いわゆるアメとムチの政策のアメです。道路脇の標語などに表れているように、この国の政府に逆らったら生きて行くことさえも難しくなるが、従えば十倍の収入が得られる。金持ちの民主国家が理想で、貧乏な独裁国家は誰も選びたくありませんが、貧しい民主国家と金持ちの独裁国家の選択を迫られると、人間は案外、後者を選ぶことは、世界にいくつも実例があります。

 

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 ここが一般公開されたのが2016年というから、まだ新しい。そのせいもあるのか、緑が少ない。周囲にこれだけの森林があるのだから、もっと植樹すればいいのに、あまり見かけません。

 

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 写真下は敷地内に植えられていた数少ない樹木で、たぶんこの近くの山に生えている野生のバラです。

 

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 通路と建物は計画的に作られているので、整然としています。建物はどれも新しく立派なのだが、色々なチベット様式の寄せ集めのような気がします。テーマパークで世界の色々な建物があるのを見ているみたいで、目が落ち着かない()

 

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 川がすぐそばを流れているので、敷地内に水を採りこんでいるのはよいが、どれも緑色に濁っていて、流れもなく、あまりきれいではありません。水草でも植えて庭園にすれば水も浄化して一石二鳥です。日本ではホテイアオイが河川で爆発的に増えて大迷惑というニュースがありました。しかし、写真下のような閉鎖的な池で管理すれば水質浄化に役立つし、また寒い地方では簡単に絶滅しますから、意外に使いやすい。

 

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 川をせき止めた人工湖に行ってみましょう(写真下)。ホテルのそばのニャン河の河原と違い、花もないが、観光客も少ないのが良い。この魯朗国際観光小鎮は観光用に造られていますから、乗馬や弓など遊ぶには事欠きません。ホテルがあるから何泊かしたいような場所です。

 

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 魯朗の街中の散歩を終えて、昼食です。魯朗石鍋王總店(魯朗石)という店の名前を見てもわかるように、名物の石鍋の専門店です。店の看板には漢字の上にチベット語の表記があります。

 

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 レストランはかなり広く、川に沿っているので眺めも良い。

 

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 フロントには財布を持った招き猫もいます(写真下)。招き猫は日本がオリジナルです。

 

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 トイレは入口が開けたままなので、中国風の衝立があるなど、ちょっと気を使っています(写真下)。もちろん、ドアのないニーハオ・トイレではありません。

 

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 トイレを見たところで、昼食はルランの名物のトリの石鍋です。石鍋から微量元素が出て、とても身体に良いとされています。

 

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 石鍋は私たちが泊まっているホテルのロビーでも展示、販売されていました(写真下)。写真下右の「墨脱石鍋」は2,380(38,080)で、普段私が使っている1000円のステンレスの鍋とはえらい違いです。

 「墨脱石鍋」はチベット自治区の墨脱(Medog)県の特産品としてのブランド名です。石鹸石(皂石、ソープストーン)と呼ばれる柔らかい石で、石にしては熱の伝わりがよく、焦げ付きが少ないなどの特徴があり、チベットでは、石器時代から使っていたそうです。

 

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 食事を終えたので、また花を探しに出かけましょう。

 

 

魯朗林海の花

 最初に見つけたのが黄色いシオガマギクの群生です。奥のほうは牧場らしいが、手前の足元は湿地帯というほどではないが、かなり水分が多い。

 

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写真上下 Pedicularis longiflora var. tubiformis

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 チベット、ヒマラヤ、中央アジアなど広い範囲に分布しているので、ここのように、牧場などの草原で目に付きますから、たぶん家畜は食べないのでしょう。

 

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 もう一つの黄色いシオガマギクです(写真下)。周囲にシダのように広がっているのが葉です。

 

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 三つ目のシオガマギクの仲間です(写真下)。こんなふうにチベット圏はシオガマギクの仲間が多い。

 

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写真上 Pedicularis corymbifera

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 白と赤紫の組み合わせがきれい。チベットと四川省などに分布します。

 

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 写真下もシオガマギクの仲間です。

 

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写真上 Pedicularis roylei

 

 写真下左は学名そのままの「チベットのサクラソウ」で、チベットの南側、ブータン、シッキム、インドなどに分布します。

 

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写真上左 Primula tibetica  写真上中 Senecio raphanifolius  

 

 日本ではフウロソウは高山植物だが、チベットではありふれた花で、あちらこちらで見かけます(写真下)

 

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写真上 Geranium donianum

 

 

集落の周囲 その1

 チベット人の集落があります。家はどこも立派で、けっこう豊かな雰囲気ですから、これも魯朗の観光施設ができたおかげでしょうか。

 

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 家の屋根の作りがおもしろい。屋根が乗っているだけで、横がふさがれていないので、写真下など家の向こう側が透けて見えます。強風で屋根を持っていかれないのだろうか。

 

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 集落の中にも様々な花が咲いています。ホテルの庭もそうだったが、涼しいから、すでにコスモスが咲いています。ただ、種類なのか、環境なのか、日本のコスモスよりも背が低い。

 

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 集落の近くですから、自生種と外来種が混ざっていて、区別がつけにくい。

 

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写真上右 Eschscholzia californica

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写真上 Halenia elliptica

 

 シソやサルビアの仲間が何種類か見られます。写真下のサルビアの仲間は建物の壁などのそばに生えていますが、栽培品ではなく、自生種でしょう。

 

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写真上 Nepeta souliei

 

 紫と白の配色がなかなかきれいです(写真下)。東チベットから隣接するインド、そしてネパールやパキスタンなどヒマラヤ地域に分布します。

 

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写真上 Nepeta lamiopsis

 

 写真下はオドリコソウと似ていますが、Phlomisというちょっと違う仲間です。

 

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写真上 Phlomis medicinalis

 

 写真下左もシソの仲間ように見えます。

 

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              写真上右 Prunella vulgaris

 

 写真下はネパールの東のブータンや雲南、四川省に分布します。十年ほど前、四川省の理塘の近くの道路脇に群生していて、ちょうど陽ざしがこの濃い紫の中を通過して、透明感があってきれいだったが、うまくその雰囲気が出せませんでした。

 

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写真上 Salvia castanea

 

 写真下はチベットでは良くお目にかかる植物です。

 

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写真上左 Potentilla griffithii     写真上右 Cynoglossum amabile

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 写真下は花の印象が見るからにハコベの仲間で、茂り方も日本のハコベに似ています。

 

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写真上 Stellaria congestiflora

 

 ツリフネソウの仲間です(写真下)

 

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写真上下 Impatiens fragicolor

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 写真下は日本にも亜高山や高山に生えているオタカラコウ(雄宝香)です。日本にも分布するくらいで、ヒマラヤから東アジアにかけて広く分布します。雄宝香よりも御宝幸とでも名付けたほうが、ありがたみが増える。

 

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写真上 Ligularia fischeri

 

 

集落の周囲 その2

 ギシギシが赤い花を咲かせてお花畑を作っているのに、まじめに写真を撮るのは私くらいです。ギシギシは花が咲いていても枯れていても、あまり区別がつかない。

 

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 同じタデの仲間でも、イヌタデの仲間は花がきれいなので、皆さん写真を撮る。

 

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写真上下 Bistorta macrophylla

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 このイヌタデの仲間は、チベットやヒマラヤ全域で良く見られます。

 

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 赤やピンクのイヌタデの間に白いのが混ざっています。

 

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 これはイヌタデではなく、日本でも亜高山や高山に生えているイブキトラノオです。単独だとイマイチだが(写真下)、イヌタデと混ざるときれいです(写真上)

 

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写真上下 Bistorta vivipara

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 こちらもタデの仲間です(写真下)

 

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写真上 Aconogonon polystachyum

 

 ツリガネソウの仲間は花が小さく背が高いので、写真が撮りにくい(写真下)

 

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 写真下の中国名は「白花刺参」で、たぶん葉にトゲがついているからでしょう。チベット、四川、雲南などにも分布します。

 

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写真上下 Acanthocalyx alba

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 写真下の画面から飛び出すような色のキキョウの仲間は、チベット圏よりも、雲南やミャンマー、東インド、ブータンなどのヒマラヤ地域に分布しています。私は十年ほど前、インドのガンガリアの花の谷と呼ばれる所で見かけました。

 

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写真上 Cyananthus lobatus

 

 日本の高山でも良く見かけるキバナノコマノツメで、仲間ではなく本人です(写真下)

 

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写真上 Viola biflora

 

 

ヤナギランとノトリリオン

 集落の近くにあったのがヤナギランの群落です(写真下)

 

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写真上下 Epilobium angustifolium

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 日本のヤナギランと同じで、アジア、ヨーロッパ、北アメリカなど非常に広い範囲に分布します。チベットでは道端などに良く見かけます。

 

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 写真下はもう少し上のほうで、まだ一部しか咲いていません(写真下)。満開になったら、さぞ見事でしょう。

 

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 ヤナギランの間に咲いていたのが、ノトリリオンというユリではないユリの仲間です。ノトリリオンという綺麗な名前の学名の意味は「偽のユリ」だそうで、そんなのはユリを基準にして人間が勝手に言っているだけで、本物です。

 

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写真上下 Notholirion bulbuliferum

 

 チベット、雲南、ブータン、ネパールなどヒマラヤに分布します。ノトリリオンという種類はほぼこの地域にのみに分布します。これまでもチベットで私は何度かお目にかかりました。

 

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 1メートル前後が多く、背が高いものだと人の背丈ほどもあり、一言で言えば、とても立派な花です。

 

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 薄紫から、ピンクに近いような色まであり、また花の内側と外側でも色が違います。

 

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 ネットでの解説によれば、球根のまわりに子球という分身ができるというのと、普通に種ができるという記述がありますから、両方で増えるのでしょう。自分の畑にノトリリオンを生えてみたいが、四千メートルの高地にある植物ですから、まず無理です。

 

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 ナヤギランとノトリリオンの共演です(写真下)

 

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畑と野原の花

 村の周囲は麦畑や野原が広がり、野原には花が咲いています。

 

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 斜面がなだらかで、お花畑の中を歩いているとホッとしますね。半日くらい散歩してもいいような所です。

 

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 日本のアズマギクよりもやや背が高い(写真下)。チベットと、ブータンやネパールなどヒマラヤ地域にも広く分布します。

 

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写真上 Aster diplostephioides

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 ランが何種類かあり、まずピンク色のランです。本日の最初の花の観察をした崖の所にもありました。

 

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写真上下 Ponerorchis chusua

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 二つ目の写真下の白いランは一本しか見つかりませんでした。ハエと一緒に記念撮影です。この二つ目までなんとか区別がつくのだが、次からは似たようなランが続き、混乱しました。

 

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写真上 Gymnadeniaの仲間

 

 三つ目の写真下のやや黄緑色のランは何本かあるが、これも数は少ない。

 

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写真上 Herminium monorchis

 

 四つ目の写真下のランは、花は茎とほとんど同じ薄緑色なので、あまり冴えません。印象では日本のトンボソウ(Platanthera ussuriensis)を連想させます。

 

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写真上 Platanthera chlorantha

 

 五番目が写真下で、四番目と同じかと思ったら、別種だという。しかも、こちらはチベットやヒマラヤはもちろんのこと、ユーラシア、欧州、北米に分布します。

 

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写真上 Malaxis monophyllos

 

 写真下はソクシンランの仲間で、ランという名前が付いていてもランではありません。ここなど東チベットから東の四川、雲南などに分布します。六月に行った雲南でも、湖の岸辺にこの仲間が咲いていました。

 

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写真上 Aletris alpestris

 

 ここでは草原に群落して、写真左はピンク色の本物のランと共演です。

 

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 エンゴサクで、日本に比べて背が高い(写真下)。東チベットから四川、雲南にかけて分布します。

 

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写真上 Corydalis kokiana

 

 チベットはきれいなマメの仲間が多い(写真下)

 

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写真上 Gueldenstaedtia himalaica

 

 マメは種類が多く、当然、名前のわからないことが多い。

 

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 ドライフラワーのようなヤマハハコの仲間がきれいに咲いています。

 

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写真上 Anaphalis nepalensis

 

 写真下はいわゆるエーデルワイスで、ここでは数が少ない。

 

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 紫色のアヤメが他の花とお花畑を作っています。

 

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写真上下 Iris chrysographes

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 チベットというよりも、中国南西部からミャンマーにかけて分布し、ここのは普通の紫だが、普通は黒に近いような色のようです。

 

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黄色いサクラソウ

 小川に沿って大柄な黄色いサクラソウが咲いています。花を見ながら、きれいな水が流れる音を聞いているのは心地よい。写真を撮るのを忘れて、ボーッとしてしまいそうです。

 

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写真上下 Primula florindae

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 小川のそばに生えるのは偶然ではなく、このサクラソウは川のそばなど湿気のある場所に生えます。1メートルくらいまで大きくなるのも、水分を十分に取れるからでしょう。

 

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 午前中は少し雨がぱらついていたのに、午後になって、この時期のチベットにしては珍しく、青空が見えてきました。

 

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 上流にはもっとサクラソウがあるかと期待して小川沿いにヤブを越えていくと、柱が一本立っていて、その先はすべて草刈りされていて、何もありませんでした(写真下)。集落からそれほど離れていないし、麦畑も近くにあるくらいだから変でもないのだが、期待しただけにショック。小川のそばだけでも刈り残してくれればいいのに。

 

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 写真下はMaianthemumの仲間らしいが、Maianthemumが日本のマイヅルソウの仲間と聞いてビックリ。マイヅルソウは日本では亜高山に生える小さな花で、こちらははるかに大きい。

 

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 写真下はチベット、雲南、ブータン、ミャンマー、シッキム、インドなどヒマラヤの南側に分布します。写真上の植物と同じで、日陰の茂みの中にありました。

 

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写真上 Streptopus simplex

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 ハナウドの仲間が立派な花を咲かせています(写真下)

 

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 写真下の中国名は川西毛冠菊で、チベットやネパールに分布します。

 

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写真上下 Nannoglottis souliei

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 色がちょっとボーッとした感じのアザミです(写真下)。この地域以外では、雲南からシッキムなどのヒマラヤ地域に分布します。

 

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写真上 Cirsium eriophoroides

 

 写真下のシャクナゲは、チベットというよりも、雲南からブータン、ミャンマー、ネパールなどヒマラヤの南側に分布します。見た目は日本のツツジです。

 

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写真上 Rhododendron lepidotum

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川べりの青いケシ

 支流の小川はやがて広い川に流れ込みます。川べりに沿って、歩いてみましょう。昨日もあったカラマツソウの仲間が涼しそう。

 

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写真上下 Thalictrum diffusiflorum

 

 花がきれいなので、園芸用に販売されているようで、これが庭の木陰に咲いていたら、絵になりますね。

 

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 花弁の根元が赤い黄色いサクラソウが咲いていて、これはここだけでした(写真下)。チベットから雲南、ミャンマーなどのヒマラヤに分布します。ネットでの説明では湿地や沼地に生えるとあります。ここは湿地というほどではないが、近くに川も流れていますから、条件に合います。

 

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写真上 Primula chungensis

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 川沿いの林のあちらこちらに青いケシが生えています。青いケシは高山の厳しい環境のガレ場に生えているイメージだが、このケシは、昨日と同様にこういう林の中を選んだようです。

 

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写真上下 Meconopsis baileyi

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 写真下くらいになるとピンク色が強くなり、薄紫に見える。

 

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 ここも花よりも上に種が付いている二番咲が半数くらいあります。

 

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 陽ざしを通すと、水色がきれい。

 

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 青いケシは静かなことが多いのだが、ここのはガヤガヤとみんなで楽しそうに話をしている。

 

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 写真下のケシは花弁が二枚しかありません。この川沿いのケシたちはほぼ四枚です。花弁の根元を見ても、花弁が取れた様子はなく、よくわからない(写真下右)。オシベはまだ黄色いで、花弁が落ちるほど古くありませんから、もし二弁なら、かなり珍しい。

 

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 小川のそばにはシオガマギクがまとまって咲いています(写真下)

 

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 さらに先に進むと、一面に薄黄色のサクラソウが生えて、甘い香りを漂わせています。

 

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写真上下 Primula alpicola

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 牛もいるが、たぶんサクラソウは食べないのでしょう。

 

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 潘さんがドローンを使ってお花畑にいる私たちを撮影するという(写真下)。中国はドローン大国です。

 

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青空の青いケシ

 六時をすぎて、そろそろ戻る時間なのだが、この時期のチベットにはめったにない青空なので、潘さんに、青空を背景にして青いケシの写真が撮れるような所に連れて行ってくれと頼みました。彼ならどこに青いケシが生えているか熟知しているからです。

 

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写真上下 Meconopsis prainiana

 

 今回の旅行では二種類目の青いケシです。

 

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 背が高いと1メートル近くもあり、花の上に空を向いた種ができていますから、大半が二番咲です。

 

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 基本は水色に近い青で、そこにピンクが混ざっているのがあります。

 

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 他にも花はあるのだが、どうしても青いケシを優先してしまいます。

 

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写真上左 Potentilla fruticosa

 

 セチラ(色季拉)峠でトイレ休憩です(写真下)。トイレの前の冬虫夏草の販売はもう終わったのか、暇そうです(写真下右)

 

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 陽がだいぶん斜めになった山を下りて林芝に戻ります(19:02)。遠くに、林芝の中を流れるニャン河が光って見えます(写真下右)

 

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 街中に戻ると、交差点でバイクが倒れていて、交通事故だ(写真下)

 

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ゆで汁で餃子

 夕飯は潘さんお勧めで、「河南水餃」の餃子です。ここは店の看板の上にチベット語での表記があります。写真下右は食堂の厨房です(19:43)

 

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 最初に出てきた飲み物は、ここでもお茶ではなく餃子のゆで汁です(写真下左)。予想のままの味で、餃子を食べながら、これを飲むのはなかなか勇気がいる()。チベットはお茶の産地ではないから、お茶を飲む習慣がないのかもしれません。

 

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 餃子は何種類かあるのだが、見た目が同じなので、区別がつきません(写真下)

 

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 餃子以外の食べ物はすべて辛いので、私は餃子だけ食べる。

 

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 食後、ホテルに戻りました。ホテルが同じなのは楽で良い。明日は朝も早くありませんし、昨夜と違い、騒音の心配もないから、ゆっくりと眠れます。エアコンがないので、毛布一枚を余分にかけて寝ました。

 

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