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地中海に咲く花 ゴゾとマルタ

6日目  2024323()

イムディーナ、ディングリ・クリフ、チャドウィック

 

 いつもより早く五時に起床。夜明けは六時頃ですから、外は当然、暗い(写真下)

 

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 雲が多く、日の出は見られません(写真下)。ただ、天気は悪くなさそう。

 

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 今日はイムディーナという街の観光をした後、ディングリ・クリフとチャドウィックで花の観察をします。

 

 

 

マノエル島

 昨日より起床を30分早めたのは、朝の散歩に時間がかかりそうだったからです。行先は、昨日行ったヴァレッタとスリーマの間にあるマノエル島(Manoel Island)です(下図)

 

 

 島と言っても、橋があるので歩いて行けます。ただホテルからは距離があり、島の中頃にあるゲートまで30分くらいかかります。往復に1時間、花を見るのに1時間とすれば、2時間かかります。今日は9:00出発ですから、8:30までにホテルに戻るのには、遅くても6:30に出ないと間に合わない。

 

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 昨日到着した船着き場で、マノエル島の中にあるゲートまでの1/3を通過したことになります。朝焼けの湾に沿って、急ぎ足でマノエル島まで南下する(写真上下)

 

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 下の地図の青い線が私がマノエルを散歩した跡です。

 

 

 マノエル島の中頃にあるゲートにいたマルタ猫に朝の挨拶をするまでに、ホテルから30分近くかかりました(写真下)

 

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 ゲートから入って、まず目についたのが、アカシアの仲間です(写真下)。ゴゾでも見かけた樹木で、ここは島中に広がり、勝手に街路樹になり、一部では林になっています(写真下の下段)

 

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写真上下 Acacia cyanophylla

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 黄色い花が柳のように下がり、なかなか見事です(写真下左)。いかにも昔から住んでいるような涼しい顔をしているのに、実はオーストラリアから人間が持ち込んだ外来種で、地中海全域に広がっています。

 アカシアの葉にしては柳みたいに細長い。これは葉ではなく、葉そのものは退化して、葉の根本の柄(葉柄)が葉のようになったという(写真下右)。たぶん、葉からの水分の蒸発を減らし乾燥に適応したのでしょう。

 

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 マメ科の植物なので貧栄養の土でも平気、砂漠のような水の少ない環境でも平気、オーストラリア原産らしく山火事にも強く、ついに2019年にはEU(欧州連合)から侵略的外来種とみなされ、移植や繁殖も禁止されました。コイツは見た目よりもワルらしく、本当は全部伐採するべきなのでしょう。でも、すっかりマノエル島の風景になっていて、楽しそうに咲いている()

 

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 梅かと思うような濃いピンク色の花が咲いています(写真下)。日本ではセイヨウハナズオウ、西洋では「ユダの木」と呼ばれ、あのキリストを裏切ったユダが首を吊った木と言われています。これはフランス語の「ユダヤの木」から誤って派生したらしいから、この木にしてみれば大迷惑な話です。マルタでは街中でも見かけます。

 

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 アーモンドの花が咲いています(写真下)。いつも食べているアーモンドなので、丁寧に挨拶をする()。ただ、ここの樹木は手入れされていないせいか、花の付きが悪い。

 

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写真上 Prunus dulcis

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 写真下は小さく可愛らしい花で、地中海ではアフリカや西アジアまで分布します。珍しくないのに、私は今回の旅行でここで初めて見ました。

 

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写真上下 Cerinthe major

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 散歩でマノエル島の花を見に行くのを決めたのは昨日でした。現地ガイドの牧口さん(仮名)から、マノエル島をジョギングしたことがあると聞いたからです。マノエル島を日本で調べた時、衛星写真から植物が生えているのはわかったが、ゲートがあるので入れないのだろうと思い込んでいたのです。実際には一般市民にも開放された公園のようです。

 

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写真上 Diplotaxis tenuifolia

 

 ゴゾと違い、スリーマのホテルの周囲は散歩としては面白くない。昨日の朝、海岸を散歩したのも、日本でいくら調べても、花が見られそうな場所がなかったからです。スリーマは海岸通り以外は、ストリートビューで見ても集合住宅が並んでいるだけで、3泊もするのに、散歩する場所がないことに困っていました。牧口さんがジョギングの話をしてくれたおかげでマノエル島で花を楽しむことになりました。

 

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写真上 Convolvulus elegantissimus

 

 ヤブの中の細い道を歩き回っているうちに、黄色い大きな花に出くわしました(写真下)。今回の旅行ではマルタに到着した319日にカリプソの洞窟の近くで見ました。こんな大きくて目立つ植物なのにマルタの植物図鑑にはありません。ベンケイソウの仲間の、観葉植物に使われるアエオニウムで、原産地は大西洋上のカナリア諸島ですから、ここと環境が似ていたので、栽培品が野生化して生き残ったのでしょう。

 

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写真上下 Aeonium arboreum

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 写真下右を見てもわかるように、ここは砦だった建築物の一部で、放置されたので、長年かけて植物たちが生い茂った。アエオニウムが生えていたのはここだけですから(翌日、他にもあるとわかった)、ここが要塞として使われていた頃に誰かが植えたのが長年かけて広がったのでしょう。外来種でも、ボコボコとここまで広がれば見事なものです()

 

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 写真下がアエオニウムのそばにあるマノエル砦で、1700年代前半にポルトガル人によって造られました。上から見ると、四角の星型をした要塞で、函館の五稜郭と同じで、外からの敵と戦うのに有利な形をしているのでしょう。

 

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写真上 Malva arborea

 

 下の絵はWikipediaに紹介されている1800年代に描かれたマノエル島の遠景だという。たぶん、ホテルのあるスリーマから南のヴァレッタ方向を見た景色で、島の丘になっている部分にマノエル砦が描かれています。驚くのは、島全体に樹木が描かれていないことです。島に上陸した敵が隠れる場所がないように丸刈りにしたらしい。

 

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写真上 Silene colorata

 

 マノエル砦が廃墟になったのは、第二次世界大戦でイギリスがここを基地として使っていたのを、ドイツ軍が空爆して破壊したからです。つまり、八十年近くも放置されているから、自然が少しずつ蘇り、今では様々な花が咲いている。

 

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写真上 Orobanche muteli

 

 マルタは地中海の真ん中ですから、繰り返しこの島も戦いの場となったのでしょう。今も地中海の東端のガザでは殺戮が繰り返されている。軍事技術が発達したイスラエルらしく、AI(人工知能)を使って、効率よく殺戮と破壊をして戦果をあげています。

 ユダヤ人はナチスドイツによってゲットーに隔離され、ガス室に送り込まれて大量殺戮をされたのに、今度は彼らがガザという閉鎖地域にパレスチナ人を追い立てて飢えさせ、子供の頭の上に爆弾の雨を降らせて殺戮している。人間は加害からも被害からも何も学ばない、と他人を批判するだけでは足りないので、少額を国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に寄付しています。

 

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写真上 Gladiolusi talicus

 

 マノエル島の東端の海岸に出ました。海底ケーブルがあるから、イカリを下すなという看板らしい(写真下左)。写真下右の海辺の人は太陽が昇る東を向いているので、イスラム教の朝の礼拝かと思ったら、すぐそばにYoga Maltaというヨガ教室があるらしい。邪魔しないように静かに通過します。

 

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 岸辺にもこれまで何度かお目にかかった花がたくさん咲いています(写真下)

 

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写真上 Glebionis coronaria       写真上 Diplotaxis tenuifolia

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写真上 Reseda alba            写真上 Bituminaria bituminosa

 

 散歩中、写真下の人と何度も出会うので、声をかけると、彼は鳥を撮影しているそうです。大きな白レンズを付けたカメラは鳥を追いかける人の定番のスタイルです。

 

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 島を一周してホテルに戻る途中の街中は、ジョギングをする人、出勤をする人、店の外で朝食を取る人など、朝の風景です(写真下)

 

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 ホテルに戻り(8:16)、昨日と同じ二階のレストランで朝食です。今日は散歩に時間がかかり、朝食も取れないかもしれないと覚悟していました。

 

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イムディーナまでの道

 予定通りに9時にホテルを出発して、イムディーナという古い街を観光します。

 

 

 ゴゾと同様に、道の両側に松が植えられています(写真下左)。剪定しなくても、盆栽風に曲がっている()。朝の散歩で行ったマノエル島でもマツが花を付けていました(写真下右)

 

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写真上 Pinus halepensis

 

 イムディーナの手前で、街全体を見上げる場所で停車しました(写真下)。丘の上にあるのを見てもわかるように、敵が攻めてくることを前提にして作られた街です。水の供給が大変だったでしょう。

 

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 ここで目を引いたのは建物よりも、マルタでは珍しい看板です(写真下)。子供向け商品の宣伝かと調べてみると、小児ガンの治療を助けるPuttinu Cares Foundationという組織の看板でした。公益性があるから、看板として認められたようです。

 

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 道路の脇にも様々な花が咲いています(写真下)

 

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写真上 Diplotaxis tenuifolia        写真上 Fumaria bastardii

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写真上 Borago officinalis         写真上 Papaver rhoeas

 

 

イムディーナ

 イムディーナ(L-Imdina)の入口に到着(9:42)。ここは昔、マルタの首都だった街で、首都が昨日観光したヴァレッタに移ったので、住人が減り、「静寂の街(Silent City Mdina)」と呼ばれるようになったそうです。ただ、その遷都が何年のことなのか、解説を読んでもわからない。たぶん1600年前後らしい。

 

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 上下図がイムディーナの街全体で、下図の右側が私たちがいる入口で、3つある門の中で一番大きな門(Main Gate)です。町全体が城壁に囲まれた要塞で、マノエル砦もそうであったように、手前の堀に突き出た構造で、敵が攻めて来た時、反撃しやすい。今でこそ観光客が押しかける「静寂の街」だが、彼らは年中、戦争ばかりしていた。

 

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 城壁にある門の手前は堀のように低くなっていて(写真下)、門以外からは敵が侵入できないようにしてあります。

 

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 橋を渡って入る門の入口を狭くして(写真下右)、敵が一気に入ることができないような構造です。石の橋が造られたのは1700年代で、それ以前は跳ね橋でした。門の内側には三人の守護聖人のレリーフがあり、その一人の聖アガタ(St. Agatha)など、聞くに堪えないような残虐な目にあっていて、紹介する気にもなりません。

 造りを見ただけで、ここで長年何があったか、現地ガイドの牧口さんの説明を聞かなくてもわかります。私が観光地が苦手なのは、このように街の入口からして血の臭いがするからです。

 

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 城内に入れば、早速、これまでどれほど人を殺したかという歴史の看板や(写真下左)、人形付きで人殺しの道具を陳列しています(写真下右)。花が咲いていても目に入らない彼らは、他にすることがなかったのでしょう()

 

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 通りは写真下のように、蜂蜜色の建物と石畳で統一され、電柱も電線もありませんから、中世の街中を歩いているようで、これがこの街の観光地としての魅力です。

 

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 だが、通りに面して、まるで城壁にドアだけ付けたようで、公共の建物以外は、一階にはほとんど窓がありません。街に敵が侵入しても、一階のドアを閉めてしまえば、しばらくは籠城できます。ベランダのついた二階の窓は少ししかないから、ベランダは後世に取り付けたのでしょう。

 

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 石造りだから、ベランダの取り付けなど難しそうだが、今でも、写真下のように建物の修理や改装が行われています。

 

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 工事の許可証と、エレベーターの設置など工事内容が記載された書面で(写真下左)、昨年11月から始まったこの工事は、今日どんな工事をしているのかも掲示されています(写真下右)。景観を重視する観光地ですから、内部の工事でも審査と許可が必要なのでしょう。日本の観光地ももう少し見習ってほしい。

 

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 ここは観光地なので、店がたくさんあります。ただ、日本の観光地のように安っぽい建物や、派手な看板を連ねて景観を損ねることはありません。

 

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 写真下左はレストランの案内看板で、レストランの多くは路地奥にあるので、看板がないとどこにあるのか、どれがそれなのか、わからないほど目立たない(写真下右)

 

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 イムディーナはガラス工芸が有名だというので、店に入ってみました(写真下)。残念ながら、私の好みに合うガラスはありませんでした。

 

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 写真下左はガラス工芸店にいた首の長いマルタのキリン猫です。イムディーナのマルタ猫は首の長さは普通で、ヒモが付けられる首輪をしている(写真下)。猫に首輪を付けたり、ヒモでつないだりするのは、自由気ままな野良猫しか見ていない私には違和感があります。

 

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 ヨーロッパの街並みはきれいなのに、いつも気になるのは樹木など緑が少ないことです。ここも同様で、樹木は数えるほどもありません(写真下)

 

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 ベランダや通路などには植木鉢もあるから、草花に関心がないのではありません(写真下)

 

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 街中の通路でたった一カ所、草花が地植えしてあったのが写真下です。名前のわからない小さな紫色の花が咲いています。

 

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 ここは一般人も300人ほど住んでいるが、通路には高い塀と閉じられたドアしかないので、中は見られません。たまたま住宅地の中を見られたのが写真下の二カ所です。

 

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 街中を馬車で観光するのも人気があります(写真下)。御者が中世の格好をしたらもっとおもしろい。

 

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 街中はどこもきれいで、馬糞はもちろん、ゴミ一つ落ちていないのは、写真下のような裏方たちが頑張っているからです。

 

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 建物よりも、ドアに取り付けられたノッカーが面白い(写真下)。ヨーロッパでは良く見られます。写真下左で牧口さん(仮名)が立っているのは貴族の屋敷の前で、今でも中に末裔が住んでいるから、ノックすれば出てくるかもしれないとのことでした。ノックして、中世の甲冑で身をかためた貴族が出て来たら、何と挨拶していいのかわからないので、やめておきましょう()

 

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 貴族の館だけでなく、街中のドアにもこの凝ったドアノッカーが付けてあって、感心するのは、特注品なのか、同じ物がほとんどないことです(写真上下)

 

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 ノッカーはほぼ青銅か鉄なのに、写真下左のイルカは真鍮です。私が気に入ったのは写真下右の魚で、頭と眼をもっと大きくて恐そうな深海魚にして、ノックしようとした人が深海魚に睨みつけられて、触るのをためらうようにしたら楽しい()

 

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 表札や看板の多くは瀬戸物で、宗教的な物が多い(写真下)。下段のようにマリアが多い中、写真下右は珍しくイエス・キリスト本人です。マルタに来てから、しばらくぶりでお会いしたような気がします()

 

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 通りの名前を示す看板も瀬戸物でできています。英語表記だから観光化されてから貼られ、何度も貼りなおしたらしく、その跡もあります。

 

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 イムディーナの入口とは反対側にあるバスティオン広場(Bastion Square)からは遠くの海まで見えます(写真下)。ここが標高200mほどの高台であることが理由で造られた街だとわかります。やはり気になるのが、水はどうやって手に入れていたのだろう?

 

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ディングリ・クリフの礼拝堂

 イムディーナの観光を終えて(11:14)、花を見るためにディングリ・クリフ(Dingli Criffs)に向かいます。

 

 

 ゴゾと同じで、マルタも南側の海岸に花が多いようです(写真下, 11:36)

 

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 崖の近くにはお花畑が広がっています(写真下)。道路のすぐそばで、ゴゾよりも観光客が多いせいか、踏み荒らされています。

 

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 これまでもゴゾなどで見て来た花がここにもあります(写真下)

 

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写真上 Hypericum aegypticum      写真上 Erica multiflora

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写真上 Anthemis urvlileana          写真上 Lotus cytisoides

 

 写真下は今回、初めて見るゴマノハグサの仲間で、地中海だけでなく、欧州では一般的な植物です。

 

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写真上 Scrophularia peregrina

 

 写真下のロムレアは、花弁が少ない珍種かと撮ったが、良く見ると6枚あります。

 

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写真上 Romulea variicolor

 

 駐車場のそばに出店まであります(写真下)。花を見に来る客相手にしては、ずいぶんとにぎやかだと思ったら、理由が目の前にありました。

 

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 崖の端に建つ写真下の小さな礼拝堂です。聖マグダラのマリア礼拝堂(St. Mary Magdalene Chapel)で、復活祭にあわせてお祭りが行われているらしい。せっかくですから、入ってみましょう。

 

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 おや!これはすごい。堂内には、キリストの生誕から復活までの様子を描いたミニチュアが展示されています(写真下)。ドール・ハウスのキリスト教版です。見た目だけでいうなら、かなり新しい。

 牧口さんに聞くと、地元の人たちだけで飾り付けをしているそうで、これだけの物を作るのも維持するのも大変でしょうから、少額、寄付しました。

 

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 写真下左が堂内のすべてで、10人も入れない。これは復活祭の時だけの展示のようです。チャペルの名前にもあるように、イエスの信者の一人であったマグダラのマリアを祭っているらしく、奥にかけられた絵は(写真下)、復活したイエスがマグダラのマリアに赦し(ゆるし)を与えている姿です、と書きながら、キリスト教徒ではない私には赦しとは何を意味するのかわかりません。

 礼拝堂の名前からして、この礼拝堂の主人公はまたしてもイエスではありません。

 

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テーブルの番号

 礼拝堂の近くのレストランThe Cliffsで昼食です(写真下、12:02)

 

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 このスレトランで真っ先に目についたのが写真下左で、番号の書いてある小さな石がテーブルの上に置いてある。これはテーブル番号です。マルタは川が少ないから、たぶん海で丸くなった白い石灰岩の石を拾って来た。客が「これ、いったい何だろう?」と面白がって触るから、数字がかすれている。

 

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 石に興味を引かれている間に出てきた料理が写真下で、アーティチョークです。固い先端を切って、縦に二つ切りして茹でた後にオリーブオイルを付けて焼く。下段の写真は、翌日マルシャスロックの朝市で見かけたアーティチョークです。

 

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 写真下右はマルタ名物のウサギ肉の入ったパスタです。私はウサギを飼っている知り合いがいて、絶交されると困るので、食べませんでした。

 

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蜂のラン

 元々の午後の予定は、このままディングリ・クリフで花を見る予定でしたが、添乗員の野田さん(仮名)が客の希望を聞き取り、花と観光の二手に分かれました。野田さんは客の要望に応じて、実に良く細かい気づかいのできる人です。

 私は昨日と同じ「花の三人組」()で、ゴゾと同じ植物ガイドのスティーブン(Stephen)さんに付いて行きます(写真下)

 

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 新しいランです(写真下)。ゴゾでも見た蜂の姿を真似たランの仲間で、この種類は初めてです。蜂の姿を真似たランが何種類もあるということは、マルタは蜂の仲間が多く、逆に蝶などが少ないのでしょう。

 

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写真上 Ophrys iricolor subsp. vallesiana

 

 写真上のように黒っぽい紫色だけでなく、写真下のように白く粉を吹いたような色のもあります。

 

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 写真下の真ん中や右のように、一本の中に両方の色の花が咲いているのもあります。時間とともに色が変わるのだろうか?

 

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 スティーブンさんがくれた一覧表ではこれを固有種と紹介しています。しかし、このランはマルタの北にあるコルシカなど近隣の島にもあるというから、固有種とはいいがたい。実際、スティーブンさんのホームページではこれを準固有種(Subendemic)としています。違いはこれだけではありません。

 

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 スティーブンさんが今回くれた植物の一覧表ではこのランはOphrys vallesianaとなっています。だが、ネットで検索しても、この名前では出てきません。買ったばかりのスティーブンさんの著作Orchids of the Maltese Islands”で調べても、ない!本人の著書に載っていないなんて、どうなっているんだ?

 

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 実はOphrys vallesianaはこのランの古い学名(Basionym)でした。そのことをスティーブンさんは本で丁寧に一覧表を作って解説しています。おそらく昔は一種類として独立していたのが、研究が進んで、Ophrys iricolorの亜種(subsp.)とわかり、現在の名称になったのでしょう。

 ただ、素人には古い学名など興味がないし、スティーブンさんのホームページでも現在の学名で紹介されていますから、統一するべきでしょう。

 

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 ゴゾでも蜂のランを見て気になったのが、葉が枯れ始めているのがあることです。このランも開花時期は34月とありますから、今が盛りです。良く見ると、根本の葉が黄色くなって枯れているだけでなく、すでに真っ黒になった古い葉も根本に残っています。全部そうではなく、写真下右のように緑色のもあります。

 

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 葉が枯れているのは去年のがそのまま残っているからでしょう。マルタでは霜が下りないという当たり前のことを思い出しました。

 

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 ゴゾでも見たランが一株だけあります(写真下)

 

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写真上 Serapias parviflora

 

ネナシ老人

 スティーブンさんが案内するだけあって、ラン以外にも、ここは昼食前の場所よりも花がたくさんあります。写真下はゴゾでも見た小型のアヤメです。

 

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写真上 Moraea sisyrinchiumI

 

 写真下はフィールド・マリーゴールドと呼ばれ、ヨーロッパでは中央から南部まで良く見られます。

 

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写真上 Calendula arvensis

 

 小さなキンポウゲが咲いています(写真下)。数は多くありません。地中海を真ん中に南ヨーロッパや北アフリカなどに分布します。

 

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写真上 Ranunculus paludosus

 

 写真下の赤い糸がからまったような物が植物だという!?赤い色からわかるように寄生植物で、そっくりの日本のネナシカズラは赤ではなく黄色です。

 

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写真上 Cuscuta epithymum

 

 この寄生植物とは初対面ではなく、二日前の21日、ゴゾのカーラで花を見かけています(写真下)

 他人の栄養を横取りするとはケシカン奴!と声高に叫びたいが、よく考えてみれば、年金で暮らしている私もネナシカズラならぬネナシ老人です。だから若者よ、選挙には絶対に行かずに、黙って働いて、働かない老人を養ってくれ()

 

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水辺の草花

 ディングリ・クリフからスティーブンさんの車で移動して、イムディーナの北西にあるチャドウィック湖(Chadwick lake)で水辺の花を探します。

 

 

 昨日と同じチャリオットが走っています(写真下左)。二日続けて見かけのだから、マルタでは普通にチャリオットが走っているらしい。馬糞の始末はどうしているのだろう?道端に馬糞は気が付きませんでした。

 川の少ないマルタでは風車で井戸水を汲み上げています(写真下右)

 

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 マルタも中心部から少し外れた街には出窓が多く、古い町並みが残っています(写真下)。車が停まる狭い道路を大型の路線バスが通行するのは大変そう(写真下右)

 

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 チャドウィック湖(Chadwick lake)に到着(14:49)。写真下が湖の一つです・・・えっ、これが湖??幅約20m、長さ約80mくらいですから、川をせき止めて作った溜池で、日本ではこれを湖とは言わない。

 

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 上の衛星写真のように、川に沿って数キロにわたり、たくさん溜池があり、それをlakesと呼んでいるようです。そのいくつかが写真下の水溜まりで、水が澱んで濁っており、ミドリモのような藻が浮いている。これで水辺の花などあるのだろうかと、ちょっと不安がよぎりました。

 

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 先ほどのディングリ・クリフでスティーブンさんから、この後、別なランを見るか、それとも水辺の花を見に行くか、選ぶように言われました。私はすぐに水辺を選びました。ランは何種類か見たが、水の少ないこの島で、彼がわざわざ候補に挙げるくらいだから、一見の価値があると思ったからです。

 

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 「花の三人組」の一人の島川さん(仮名)はランを希望していたのに、私の選択に妥協してくれたので、水辺の花がたくさん見られるか、気がかりでした。そして、写真下のシュンギク(クラウン・デージー)の咲く遊歩道を進むにつれて、私の不安と気がかりは現実のものとなった()

 

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 写真下左は皆さんも食べたことがあるクレソンで、セリと同じで水辺が好きで、山形でも野生化しています。写真下右は、日本の田んぼに生えるウマノアシガタやキツネノボタンに相当する植物で、ヨーロッパでも同様に、水辺で普通に見られます。

 

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写真上 Nasturtium officinale   写真上 Ranunculus muricatus

 

 写真下は、日本ではオオカワヂシャという奇妙な名前で呼ばれている帰化植物で、地中海は原産地です。水辺で良く見られます。

 

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写真上 Veronica anagallis- aquatica

 

 写真下は残念ながら葉だけです。西はカナリア諸島、北アフリカ、地中海、コーカサスに分布するサトイモの仲間で、ミズバショウのような白い花(正確には葉)を咲かせるので、園芸種として利用されています。サトイモの仲間ですから、湿気を好む植物です。

 

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写真上 Arum italicum

 

 写真下のカヤツリグサの仲間はwater rushという名前どおりに水辺を好み、南ヨーロッパ、アフリカから西アジアまで広く分布し、日本にも来ています。

 

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写真上 Cyperus longus

 

 写真下もヨーロッパ、北アフリカ、中央アジアまで広い範囲に分布する水辺の植物です。これでも、一応、花が咲いています。

 

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写真上 Scirpoides holoschoenus

 

 写真下はカヤツリグサの仲間で、ヨーロッパから中国まで広い範囲に分布し、これも水辺の植物です。花盛りです()。ただ、水辺の植物と言えるのはここまでで、種類は少ない。

 

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写真上 Carex otrubae

 

 写真下は種を水鉄砲の原理で遠くまで飛ばす植物で、320日、ゴゾの朝の散歩でも見かけたように、乾いた場所でも生育します。

 

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写真上 Ecballium elaterium

 

 写真下左は日本にも帰化していてオトメフウロというきれいな名前をもらっていまます。

 

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写真上 Geranium dissectum

 

 写真下右のエキウムの仲間も地中海では一般的な植物で、写真上下とも水辺を好む植物ではありません。

 

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写真上 Echium parviflorum

 

 写真下はアレキサンダー(alexanders)という名前が付いているくらい地中海では一般的な植物で、水辺の植物ではありません。

 

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写真上 Smyrnium olusatrum

 

 写真下左は栽培品で良くみられるアカンサスで、スティーブンさんの手の先に花の茎が出ているが、まだ花は咲いていません。写真下右のフマリアもゴゾですでに何度か出てきていて、両者ともに水と関連した植物ではありません。

 

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写真上 Acanthus mollis       写真上 Fumaria bastardii

 

 写真下左はアブラナの仲間でヨーロッパから中国まで広く分布し、写真右はセイヨウカラシナの仲間で、世界中に広がっていて、原産地は地中海だと言われています。正直なところ、アブラナの仲間は区別がつきません。

 

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写真上 Brassica rapa subsp. sylvestris           写真上 Sinapis alba

 

 ここで初めて見る草花や水辺の草花もあるものの、どれもかなり一般的です。スティーブンさんはランの本を書いた専門家なのだから、ランを希望した島川さんの選択のほうが正しかったようです。

 まだ4時すぎで明るく、もう一カ所くらい花が見られそうだが、ヨーロッパでは5時までしか仕事をしませんから、このままホテルに戻ります。

 

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ティニエ要塞

 ホテルに戻り、5時から、野田さんがホテルの近くのスーパーに案内してくれました(写真下)。マルタにしては大きなスーパーで、品物も豊富です(写真下)。私はすでにゴゾでお土産を買ったので、店を一周しただけで、何も買わずに店を出ました。

 

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 外は明るく、夕飯は7時からで、このままホテルに戻るのはもったいない。散歩の候補にあげていたティニエ要塞(Fort Tigné)に行ってみることにしました。下の地図を見ても、簡単に行けそうですよね。結果から言うと、中には入れませんでした()

 

 

 ホテルからは海岸に沿って遊歩道がありますから(写真下左)、南東方向に行けばいいだけです。ところが、写真下右の所で遊歩道が終わっている。左側が遊歩道、右側の道は車専用で、この後、地下トンネルになりますから、人は入れません。

 観光地なのに、こんな所で遊歩道が終わるのはおかしいと、引き返して周囲を探していると、若い人たちが遊歩道に降りていきます。老人は柔軟性がなくなっているから気が付かなかっただけで、若者なら脇道を見つけられるかもしれないと、彼らが戻ならかったら、後ろを付いていくつもりで待っていたら、すぐに戻ってきました。やはり、ここで行き止まりです。

 

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 海岸は進めないので、写真下左の立派なショッピングセンターを経由して要塞に行くつもりが、私は南下してビーチに出てしまいました。対岸には昨日行ったヴァレッタの街が見えます(写真下右)

 

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 ビーチ沿いに立派な遊歩道があって(写真下左)、上の地図の赤丸の所まで行くと、要塞の建物が見えました(写真下右)。しかし、門が閉じられています。ネット上でも中に入れなかったという書き込みがありました。

 

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 要塞に行きたかったのは、自然が残っている可能性があったからです。遊歩道の脇に地中海の海岸で見られる花が咲いています(写真下)

 

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写真上 Matthiola tricuspidata

 

 夕方の海辺で若者が海水浴をしたり、女の子たちが酒を飲んで騒いでいるのは平和な光景です(写真下)

 

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マルタ料理

 タ・クリス(Ta' Kris)というレストランで夕飯です(18:58)。店は昨日ヴァレッタから乗ったフェリーの港の近くで、通りからの店の入口はとても狭い(写真下左)。入口から実際の店までの狭い通路にも席があり(写真下右)、次回二人で来たら、この席を選ぶことにします()

 

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 ここはマルタ料理を出す店で、夕食の時間らしく、店内は客で混んでいます(写真下)

 

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 9時すぎにホテルに戻り、明日は帰国なので、荷物をまとめます。今回、ベッドのシーツ交換を断ったので、ちらかしたままで楽でした。野田さんがシーツ交換を断っているのを見て、こういう手があったかと初めて気が付きました。長年、こんな簡単なことに気が付かなかったなんて、我ながら鈍い()

 

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