トップページ 日程表 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 3日目 2011年3月5日(土) ティベリア←→ゴラン高原 モーニングコールは7時なのでギリギリまで寝ていたいのに、5時半頃に目が覚めてしまい、それっきり眠れません。カーテンを開けるとさすがにまだ薄暗い。起きて準備を始めました。 今日はガリラヤ湖を北上して、キリスト教の教会などを見た後、さらに北上してゴラン高原を半周して、ガリラヤ湖の東側に出て、湖を南のほうから回ってこのホテルに戻ってくる予定です。途中、国立公園などがあるので春の花が期待されます。 毎朝、イスラエルに来たい 昨夜食べたホテルのレストランのさらに奥にある明るく広い部屋で朝食です。写真下を見てください。これは朝食が並んでいる台です。この広さを見ただけでもものすごい品数なのがわかります。 うまそう!新鮮な野菜、何種類ものチーズ、ヨーグルト、パンも何種類もあります。どれもこれもうまい。ただし、マーマレードだけは昨日のホテル・タルのが絶品でした。これから動くのだから、胃腸の弱い私があまりたくさん食べるのは良くないのはわかっていても、つい一皿だけでは足りず、おかわりをしました。 「毎朝、イスラエルに来たい」、これが私の心からの、いや胃袋からの感想です。 考古学公園とガリラヤ湖畔の散歩 朝の散歩に考古学公園に行ってみることにしました。私は遺跡には興味がない人間ですが、『地球の歩き方 イスエラル』によれば、ホテルのすぐに隣にあることになっているからです。これなら湖畔に散歩に行く途中です。遺跡は確かにすぐそばにありました(写真下)。 十字軍によって作られた教会の跡だそうです。しかし、ごらんのように、遺跡といわれなければ通り過ぎるくらい小さな公園で、壊れた柱がいくつか飾ってある程度で、見るべき物はありません。朝早いこともあり、観光客は私以外誰もいません。 公園の中に観光案内所があるが、この時間ですから、開いていません。気になったのは、遺跡の高さです。写真下左は、道路から撮った公園の様子です。手前に階段があるように、周囲から見てだいぶん低い位置に遺跡があります。わざわざ低い位置に建物を造ったとは思えませんから、当時のこのあたりはこの位の高さだったのかもしれません。 考古学公園の南側に十字軍の作った城壁があり、「The Ancient Wall」という看板もあります。 その城壁が写真下左です。これも看板がないとただの城壁として通過してしまいそうです。城壁は百メートルほど湖側まで続いています。おそらく当時はさきほどの教会の高さだったろうから、この城壁は数メートルほど埋もれているのでしょう。 写真下左は北側の歩道から見た城壁です、写真下右の車が停まっているあたりが城壁です。『地球の歩き方 イスラエル』の地図で見ると、この駐車場のような広場も考古学公園の一部になっています。しかし、ごらんのように、ただの空き地です。 駐車場の遺跡を見ていてもしかたないので、駐車場の向こうに見えるガリラヤ湖の岸辺に行ってみました。 波もなく、のんびりした雰囲気です。ただ、上下の写真を見てもわかるように、岸は共有地にはなっていないようで、寸断されており、岸辺を散歩するというわけにはいきません。 周囲には、ナノハナ、シュンギク、ホトケノザなどが咲いています(写真下)。 写真上下 Sinapis alba(『イスラエル花図鑑』p.122) 写真上 Chrysanthemum coronarium (『イスラエル花図鑑』p.94) 写真上Lamium amplexicaule (Wildflowers of 通りの植え込みにはバラが植えられています(写真下左)。旅行中、あちらこちらで見かけました。バラは気候的に合うのかも知れません。ホテルの近くにはブーゲンビリアが満開です(写真下右)。 春の花である菜の花が咲いている一方で、バラが咲き、夏の花のブーゲンビリアが満開です。イスラエルは緯度が熊本と同じだそうですから、それほどおかしくはありません。 出発に先立ち、武田さんがホテルの周囲を案内してくれました。ホテルの裏側、湖側にはユダヤ教の教会であるシナゴーグがあります(写真下左)。しかし、素人目にはただの民家にしか見えません。キリスト教の教会と違い、ユダヤ教のシナゴーグは、我々のイメージでいうと公民館のような所です。独特の格好をした聖職者たちもいました(写真下右)。 シナゴーグをすぎて湖のほとりに行きました。途中の道の両側には屋台が並んでいます。どうやら、夜になるとここはにぎわうようです。しかし、まだ朝ですので、人通りもまばらです。 山上の垂訓教会 ホテルを出て、車は一路、ガリラヤ湖に沿って北に向かい、山上の垂訓教会を目指します。道はよく整備されています。 道の両側には菜の花が一面に咲いています。日本と違い、菜の花の畑はほとんど見かけず、これらは土手や空き地に、自然に生えています。 湖から少し山のほうに登ったところにある山上の垂訓教会に到着。ここはイエス・キリストが山上垂訓と呼ばれる有名な説教をした場所だと言われています。二千年も前のことですから、誰もここが本当にその場所なのかはわかりません。だから、これ以外にも山上の垂訓の場所だと言われている所があるそうです。 「山上の垂訓」 カール・ハインリッヒ・ブロッホ画(ウィキペディアより転載) この教会は1930年に作られた八角形の、ちょっとかわいい教会です。 中に入ってみましょう。すっきりと小ぎれいで、特にどうだということもありません。 周囲は回廊になっており、そのアーチが美しい。晴れて、ガリラヤ湖が眼下に広がり、ここにテーブルを出して、お茶でも飲んだら、最高でしょう。 教会の中からシスターが出て来て、観光客たちに静かにするように呼びかけました(写真下左)。周囲には、私の写真には写さないようにしているものの、巡礼者や観光客の数が多いので、自ずと騒音があります。庭にある看板には犬、ミニスカート、飲食、タバコ、そしてなんと拳銃が禁止とあります(写真下右)。唯一、丸印がついているのは「沈黙」だけです。たしかに、イエスの垂訓を聞くのにうるさくては聞こえません。 日射しが強いので庭の木陰では、賛美歌なのか、歌っているグループもあります(写真下)。声を聞くと、どうやら日本人のグループもいるようです。 巡礼者や観光客に開放されている場所は教会とその周囲だけですから、一周するだけなら、15分もあれば見終わってしまいます。 写真下のおしゃれな建物は駐車場のそばにある売店兼トイレです。トイレもここまできれいな建物だとちょっと入ってみようという気になります。 店にはワインやオリーブオイルなどを売っています。お土産ではなく、自分用に欲しいが、持ち帰ることを考えると手が出ません。 駐車場の湖側の斜面は耕され、手前にはブーゲンビリアなど花が植えられ、その先には菜の花畑が広がっています。 花を見ながらの散歩 武田さんによれば、ここからガリラヤ湖畔まで歩いて降りる道があるといいます。ところが、どういう訳か、その道には柵が作られ、鍵がかかっています。しかし、すぐそばの民家の間から降りていけるようです(写真下左)。写真下右の黒い犬クンも「降りて行ける」と言っております(笑)。 なだらかな丘が続き、畑と野原にどこもここも一面に花が咲いています。一番目立つのが黄色い菜の花です。 丘陵を道は下っていき、振り返ると、先ほどまでいた山上の垂訓教会が菜の花の間から見えます(写真下)。 道の両側には菜の花だけではなく、様々な花が咲いています。写真下のフウロソウは山上の垂訓教会に行く途中の道にも咲いていました。ピンク色のフウロソウはあちらこちらで見かけましたが、薄紫のは少ないようです。 写真上 Erodium gruinum (Wildflowers of Israel) 写真上:Salvia horminum (『イスラエル花図鑑』p.67) 写真上右 Corydalis triternata (Wildflowers of Israel) 写真上 Scandix iberica
(『イスラエル花図鑑』p.171) 黄色い花はナノハナが目立ちますが、シュンギクもまたたくさん咲いています(写真下)。 日本ではシュンギクは野菜です。しかし、イスラエルの旅行中の食事にはシュンギクらしい食べ物はありませんでした。 アネモネは数は多くないのに、色が強烈なので、遠くからでもよく目立ちます。 写真上 アネモネ・コロナリア(『世界の山草・野草』p.105) 毛虫君もがんばっております(写真下)。 写真上 Ferula communis (『イスラエル花図鑑』p.98) アザミもいくつかありますが、いずれも開花前です。武田さんによれば、写真下右は聖母マリアの名前を持つアザミです。学名にマリアの文字があり、一般名も「Our Lady's Thistle」というのだから、聖母のアザミというところでしょうか。花は3〜5月に咲くとあります。あちこちで見かけましたが、残念ながら、花は咲いていませんでした。 写真上右 Silybum marianum
(『イスラエル花図鑑』p.74) 丘を下るにつれてガリラヤ湖が近づいてきて、小さなハイキングも終わりです。 カペナウム ガリラヤ湖の道沿いに少し東に行ったところにカペナウムという遺跡があります。ここはイエスが一時住んでいたシナゴーグの跡だそうです。遺跡によくあることで壊れた建物が残っているだけです。 瓦礫よりも、入り口の見事なブーゲンビリアをご覧ください。石の壁と灯りと花の組み合わせがなかなか美しい(写真下右)。 内側のほうが日当たりが良いのか、花が見事です(写真下左)。乾ききった遺跡の石ころだらけの地面からもたくましく植物が生えています(写真下右)。 ネコもいます。遺跡よりもずっとおもしろい。最初は木陰に休んでいたのですが、他のネコでもいるのか、激しく何かを威嚇していました。よく見ると、日本のネコとは模様も違い、大きいような気がします。 遺跡とネコの写真だけだと静かな場所かと錯覚されたかもしれません。実は観光客でごった返しています(写真下)。私が遺跡巡りが苦手な理由の一つです。 パンと魚の奇蹟の教会 湖沿いに西に少し戻り、「パンと魚の奇蹟の教会」と呼ばれるキリスト教に関係した教会に行きました。イエスが2匹の魚と5つのパン(five loaves and two
fish)を増やして5千人に分け与えて奇蹟を示した場所に建てられた教会だそうです。 五つのパンと二匹の魚の奇跡を表すイコン (Wikipediaから転載
http://en.wikipedia.org/wiki/Feeding_the_multitude) 奇蹟を示したから救世主であるという発想はどういうものでしょう。聖書には、奇蹟を見て信仰を表明した者をイエスが拒絶する場面すらあります。 この教会でおもしろかったのは写真下右の窓です。どうやら、半透明な石材をそのまま窓ガラスとして使ったようです。 ここも中庭の回廊が白いアーチです。仏教と違い、キリスト教は建物などが美しい。回廊の梁にツバメ(?)が巣を作っていました(写真下右)。 写真下左は庭に植えてあった樹木の花です。昨日の朝、海岸で見かけた松のような樹木です。しかし、赤い花が咲いているのを見ると、どうも松の仲間ではなさそうです。 教会を後にして、ゴラン高原を目指して北上します。今日の予定では、教会の見学はこれで終わりで、後は花を見るだけです。私はホッとしました(笑)。 進行方向右側の畑の向こうに白い雪をいただいた山が見えて来ました(写真下)。レバノンとシリアの国境にあるヘルモン山(2,814m)です。道路の両側には畑が広がります。しかし、働く人の姿はほとんど見えません。写真下左は珍しい光景です。イスラエルの農業は機械化が進んでいるのが理由のようです。 キブツのホテルで昼食 昼食を取るためにハゴシュリムのHagoshrim Kibbutz Hotelに到着(〜13:52)。ここはキブツが経営する四つ星ホテルです。(http://www.zimmer.co.il/galil_lang.asp?Site_ID=324&lang=10) キブツとはイスラエルが開拓をするために作った農業共同体で、私物を認めない共産主義的な組織です。しかし、ある程度の私物を認めるキブツが現れるなど、次第にそのあり方も変わりつつあります。こういうホテルやレストランの経営など積極的な事業展開をしているキブツもあるようです。 広大な敷地の中にコテージ風の客室があります(写真下)。ここに一泊したいような素晴らしい環境です。 ロビーは広く、デザインもすっきりしています(写真下左)。看板の下にHagoshrim Kibbutz Hotelと書いてあります。 写真下右はロビーの裏口です。壁などもたいへんおしゃれにできています。写真下右は男子トイレの入り口です。突き当たりに灯りがあり、植物が置いてあり、なかなか良い雰囲気です。 我々が到着した時にはまだレストランが始まっていませんでした。イスラエルを旅行して、しばしば十二時になってもまだ準備ができていないことが多いことに驚かされます。日本なら十二時のレストランは満席です。しかし、イスラエルでは、写真下左のように、最初は我々しかいませんでした。 レストランはロビーのある建物の奥にあります(写真下左)。窓からは雪をいただいたヘルモン山が見えます(写真下右)。 ここでもバイキング形式で目移りするほどたくさんの食材が並んでいます。 写真下左は私の食後のデザートです。こういうデザートも好きなだけ食べられますから、白人の太ったオバサンが皿に何個もケーキやアイスクリームを乗せて食べている光景は迫力があります。私も真似したいが、胃腸がついていかないので、いつも一個で我慢します。 写真下の紅茶は別料金を取られます($2)。ケーキは十個食べても昼食代の中に入っているのに、紅茶を頼むと別料金を取られるのです。お金を取るなら、ちゃんと紅茶を出して持ってくるべきだろうに、持ってきたのはお湯の入ったコップとティーバッグです(写真下右)。しかも、どこのホテルでも部屋においてあるいつものティーバッグです。お茶などが無料なのは朝くらいで、夕飯になるとお茶も出ません。イスラエルでは昼や夜にお茶を飲むという習慣がないのかもしれません。いずれにしろ、イスラエル人がお茶もなしにケーキを食べるのはすごい。 お化けツクシ 食後、武田さんの案内でホテルの敷地内の花を見るために散歩することになりました(-13:50)。ホテルの敷地は広く、植えたのから自然に生えている物など、様々な花が咲き乱れています。 写真下のアネモネはいずれも花壇に植えられていたものです。これまで見たアネモネは赤かそれに近い色が主で、青や白は初めて見ました。 写真上下:アネモネ・コロナリア(『世界の山草・野草ポケット事典』p.105、『イスラエル花図鑑』p.8) 写真下のスイセンは花壇に植えられていたものです。残念ながら、今回の旅行で見たスイセンはこれだけでした。 写真下左の木にはイチジクが幹に直接実をつけています。写真下右はバナナのような葉の植物で大きな花をつけています。 写真下はまるでサクラのようなアーモンドの木です。ホテルの入り口付近で満開になっていました。幹線道路を走ってる時も、畑などに咲いているのがみられます。ここのは特に素晴らしい。 写真上下:Amygdalus communis(『イスラエル花図鑑』p.136) 写真下の樹木は、幹が白いのを見ればわかるように白樺です。ブーゲンビリアのような熱帯性の植物が花を咲かせる一方で、白樺のような北方系の樹木もあるという不思議な国です。 小川のそばにパピルスが植えられています。エジプトはすぐそばだから、生えていても不思議ではありません。ただし、野生なのかどうかはわかりません。 写真上右:Arum hygrophilum(『イスラエル花図鑑』p.209) 一番驚いたのが、大きなツクシとスギナです(写真下)。写真に撮ってしまうと、その大きさが今ひとつわかりません。ヌイグルミと一緒に写真を撮っている人の腕や手の大きさとツクシを比較してください。日本のツクシなら十センチほどなのに、倍はあります。ツクシはかわいいというイメージがあるだけに、ここまで大きいと、まるで恐竜時代のツクシみたいです。 ツクシがその大きさならスギナも負けていません(写真下)。50cmはあるでしょう。広がっている様子が巨大なムカデのようで、ちょっと不気味です。今回の旅行でもっとも強烈な印象が残った植物がこのツクシとスギナです。 ここのルピナスは植えられたものかもしれません(写真下)。しかし、昨日もそうでしたが、昨日と今日走った範囲では、野生と思われるルピナスが道端などに生えています。図鑑を見ると野生種が何種類かあるようです。 芝生の中に生えたシクラメンです。写真下右は花ではなく消火栓です(言われなくてもわかる)。なかなかおもしろい格好をしていて、シクラメンとイメージが似ていると思いませんか。 アネモネの公園 食事をしたホテルのすぐそばにあるホーシャット・タル キャンプ地(The Horshat
Tal Campground )にアネモネを見にいきました(13:57〜14:29)。 ここは入り口で入場料を払うようになっており、周囲はフェンスがあって公園として整備されています。その公園内の草地に一面にアネモネが咲いています。 どこに行っても被写体だらけです。ネット上での旅行記を読むと、同じ時期に来た時にはすでに花は終わりかけていたようです。今年は寒いので、開花時期が遅れ、我々は花の盛りに訪れることができたようです。 こんな素晴らしいお花畑にたった三十分しかいられないというのも、とても残念です。丸一日いられるような所です。私がこの時回れたのは公園のごく一部でした。昼食をとったホテルからは歩いても来れる距離ですから、やはりあのホテルに一泊したいところです。 元々、アネモネが咲いていたのか、それとも人工的に植えて増えたのか、よくわかりません。ただ一つ道端など咲いているアネモネと大きく違うのは、色々な色の花が混ざっていることです。 昨日も車から時々アネモネが咲いているのが見えましたが、そのいずれもが赤です。白や薄紫は見かけませんでした。ところが、ここでは、白や薄紫が珍しくありません。 写真上下 アネモネ・コロナリア(『世界の山草・野草』p.105) アネモネというと、私はアズマイチゲやキクザキイチゲなどのキンポウゲを思い浮かべます。これらのキンポウゲは白や薄紫のどちらかというと控えめで、弱々しい花です。しかし、ここにあるアネモネは色も形も強烈に自己主張しています。 キャンプ地と名前がついているくらいで、家族がバーベキューをしています。 アネモネばかりに目が行きますが、他にも花を咲かせている草花がたくさんあります。 写真上右 Arum hygrophilu (Wildflowers of Israel) 写真上 Anthemis palestina (Wildflowers of Israel) 一面のアネモネに後ろ髪を引かれながら、ゴラン高原をさらに東に進みます。 バニアス 牧神を祭ったというバニアスに到着(14:39〜15:17)。ヘロデ大王(在位:紀元前37年 - 紀元前4年)が作ったパン(牧神)を祭る宮殿だそうです。パン(またはパーン)はギリシャ神話などに出てくる神で、元々祭られていたのでしょう。それにしてもユダヤであるヘロデ大王がこれを作ったということはローマへの忠誠を示すためでしょうか。 この後の旅行でもヘロデ大王が作った遺跡がいくつか出てきます。彼は敵対する相手だけでなく、身内すらも片っ端から殺した偉大な大王様(?)です。どうしてたくさん人殺しをした人が大王なんでしょう?小市民の私には理解しがたい。 遺跡の手前には川が流れていて、かなりの水量です。ヘルモン山からの湧き水がやがてガリラヤ湖に至り、やがてヨルダン川になります。日本人にはどうということない光景ですが、イスラエルではこんなふうに大量の水が出て流れているのは珍しいようです。国境に近く水の少ないイスラエルの水源であることから、軍事的にも重要だそうです。 川にはクレソンなどの水草が生えていますから、水はそれなりにきれいです。 遺跡の手前は公園のように整備されていて、家族でバーベキューなどを楽しんでいます。 殺戮を繰り返した大王の作った建物の遺跡なんてただの石の山で、そんな所に牧神はいません。彼は周囲のお花畑で午睡を楽しんでいるにきまっている。 ここで一番目立つのはサクラソウのようなルコティアの群生です。崖の上のほうまで一面に生えています。イスラエルのあちらこちらで見かけます。 写真上 ルコティア・ルナリア Ricotia lunaria (『世界の山草・野草』p.101) 写真下は写真上のルコティアとそっくりの花ですが、よく見ると花弁が五つですから、別な花です。図鑑を見ると、こちらもルコティアのように群落するようです。 写真上 Silene aegyptiaca (Wildflowers of Israel) 岩の上にシクラメンが咲いています。一株しかみつかりませんでした。他の人の旅行記を読むと、この近くはこういった野生の花が咲き乱れているようです。 ここでもアーモンドが桜みたいに満開で、大きな木になっています。 Amygdalus communis (『イスラエル花図鑑』p.136) 写真下の白い花はトイレのそばに生えていたものです(と、花の美しさをそぐようなことを書く)。 写真上 Allium neapolitanum (Wildflowers of Israel) 写真上 Corydalis triternata (Wildflowers of Israel) 写真上 Lamium moschatum (Wildflowers of Israel) オデムの森(Odem Forest) バニアスを後にして、道は次第に高度を上げてマスアダという街に着きました(15:35)。この街の近くに小さなシクラメンが咲いている場所があるというのです。 マスアダの街を通り過ぎてオデムという街に行く道をしばらく進むと、道路の右側には林が広がっていて、ここにも家族連れで遊びに来ている人たちがたくさんいます。武田さんによれば、このオデムの森の中にシクラメンがあるというのです(15:42-16:07)。しかし、写真下のように、公園には直接車で入り込んでいるし、ゴミが散乱していて、とてもこんな所に珍しい花があるようには見えません。 皆さんでバスの窓から林の中を見てもシクラメンらしい姿は見つかりません。降りて、捜すことにしました。すると、すぐに足下に見つかりました。樹木の下の落ち葉の中に、小さな花が咲いています。こんなに小さくては車から見えないはずだ。 写真上下 Cyclamen coum (『イスラエル花図鑑』p.31) 最初見たとき、スミレかと思いました。日本の道端に咲いているスミレくらいの大きさで、雰囲気もそっくりです。しかし、花の形や葉を見ると、まさにシクラメンです。 我々が車を降りてすぐにシクラメンが見つかったということは、森全体に生えているのでしょう。オデムの森は車で通過した範囲だけでもかなり広い森ですから、相当な数が生えていることになります。森が広いから、もしかしたら、きちんと保護されている場所があるのかもしれません。車で見た範囲では看板すら出ていませんでした。 シクラメンはとても可憐なのに、写真下左のように、その周囲はゴミだらけです。イスラエルは自然保護には力を入れているが、日本と同じで、人々の意識はまだまだのようです。人々が勝手に集まってくる場所らしく、これらのシクラメンが保護されている様子はありません。 本間さんがベロニカらしい青い花を見つけました(写真下)。大きさも雰囲気もイヌフグリ程度の小さな花なので、本間さんに言われるまで、あることすら気がつきませんでした。しかし、大半がすでに地面に花を落としています。まだ花が新しいところを見ると、今日、日中に咲いていたようです。 写真上下:Veronic syriace
(『イスラエル花図鑑』p.205) ここは林の中で日陰なこともあり、花はどれも小さく、地面にはいつくばるように捜さないと見つかりません。 写真上左 Corydalis triternata (Wildflowers of Israel) 展望台 車は元の道に戻り、今度はゴラン高原を南下します。道を走っていると目の前に通行を妨げるかのように、石積みの壁が現れました。 写真上左を上空から見た写真が写真下です。わざと道を逆S字に曲げてあり、敵が攻めてきた時には石垣を崩して戦車などが通れなくしたようです。このあたりは国境から数キロです。 クネトラ展望台で休憩です(16:29〜)。のどかな夕方のゴラン高原が広がり、おそらく向こうに見える丘などはシリアなのでしょう。ここで戦争があったといった緊張感はありません。しかし、実際には日本の自衛隊も駐屯している地域です。 北には雪をいただいたヘルモン山が見えます(写真下左)。道端にも小さな花が咲いています。車で走った周囲の雰囲気からは、このあたりは手つかずの自然が残っており、花を見に何日か泊まりがけで来る価値がありそうです。早く、争いを終わりにして、自然を売り物にした観光のほうが全員の利益になります。 写真上右 Chrysanthemum coronarium (『イスラエル花図鑑』p.94) 写真上 Lamium amplexicaule (Wildflowers of Israel) ほとんど車が通らないゴラン高原の道路をかなりの速度で走り抜けていきます(写真下)。おもしろいのは、前後に何の建物もないのにジョギングしている人がいたことです。武田さんに質問すると、おそらく駐屯している軍人ではないかとのことでした。 ノブ保護区の白いアヤメ 白いアヤメを見るためにノブ保護区(Iris Bizzot Nov Reserve, 17:05-17:23)に立ち寄りました。道端に看板が出ていて、「Haspin」という地名と、「Grant Duff’s Iris」というアヤメの名前が書いてあります。あたりは遠くに建物や林が見える程度の湿地帯です。道を右に曲がり入ったすぐそこに旗の立っている駐車場があり、家族連れらしい車が一台停まっているだけで、誰もいません(写真下)。その彼らも我々と行き違いに行ってしまいました。 他の公園もそうだが、実にあっさりしていて、ごらんのように駐車場と旗と看板しかありません。 湿地には人が通ったためにできた道らしいものがあります。そこを行くと、すぐに白いアヤメの群落が見えました。花を見るのにはちょうど時期に来たようです。 写真上下:イリス・グラントデュフィ(『世界の山草・野草』p.102) 背丈は20〜30cm程度で、小柄なアヤメです。イスラエルのアヤメを今回の旅行で何種類か見ましたが、いずれも日本の水辺に咲くアヤメとは違い、小型の物が多いようです。色は白というよりも薄い黄色です。 この広大な湿地に群生しているとすればかなりの量です。道を少し外れるとあちらこちらにぬかるみがあるような湿地帯です。昨日見た黒いアヤメは乾いた所に生えていたが、こちらは日本のアヤメと同じで湿気を好むようです。 白いアヤメだけでなく、他の所でも見られた紫のアヤメも、数は少ないがあります(写真下)。 写真上Gynandriris sisyrinchium (Wildflowers of Israel) 写真 Asphodelus ramosus (Wildflowers of Israel) ここにも赤いアネモネがあります。いずれも夕方なので花が閉じられています。ただ、色が他の地域が真っ赤なのに対して、ここはどれもピンクがかった赤です。 写真上 アネモネ・コロナリア(『世界の山草・野草』p.105) 写真下の植物はまだつぼみで、図鑑を見ると4〜5月頃に黄色い花を咲かせるようです。 写真上 Asphodeline lutea (Wildflowers of Israel) 写真上 Erucaria hispanica (Wildflowers of Israel) 写真下左は枯れたアザミのように見えます。ただ、後で図鑑で調べると、こんな感じのアザミがあるようで、もしかしたら、これは枯れたのではなく、間もなく花をさせようとしていたのかもしれません。ここだけでなく、あちらこちらで見られました。 あたりはすっかり夕暮れになり、花の撮影にはだんだん厳しくなってきました。私は湿地の中を最後まで歩き回ったので、戻った時には靴に泥が大量についていて、一人では落としきれず、武田さんに手伝ってもらいました。 サルマーンさんの展望台 運転手のサルマーンさんがびっくりする所に案内すると言います。車は舗装された道から外れて少し登り、小さな公園のような所に到着しました。人々がバーベキューをしています(写真下)。顔ぶれを見ると、職場の集まりではなく、家族の団らんです。通りかかると、「おい、食べていけよ」というように陽気に声がかかり、実際、ご馳走になった人もいました。 旅行していて、イスラエルは、ユダヤ人もアラブ人もこういうフレンドリーな人が多いというのが印象でした。 ここはガリラヤ湖を一望できる展望台(Offir展望台)でした。イスラエルを良く知る武田さんでさえここに来るのは初めてだそうです。夕暮れのガリラヤ湖の全景がきれいに見えます(写真下)。皆さん、サルマーンさんのプレゼントに感激です。 車はガリラヤ湖の東側を南下して、湖を半周して、すっかり暗くなった西側のティベリアに戻りました。 ホテルに戻り、夕飯です。昨夜の安息日と違い、客の数も少なく、静かに食べることができます。 果物の中に赤いリンゴを見つけました(写真下)。今回の旅行では青いリンゴはよくありましたが、赤いリンゴは少ない。両方とも手のひらにはいるほどの小さなリンゴで、味は悪くありません。 トップページ 日程表 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 |