花のサハリン紀行 1日目 2017年7月14日(金) 成田 → ユジノサハリンスク 梅雨だというのに毎日のように猛暑が続いている中、涼しいサハリンに避暑に行きます。 本日は、成田からサハリンのユジノサハリンスクまで行きます。わずか二時間ほどの飛行なので、飛行機に乗る時の「さあこれから忍耐の時間だ」といういつもの緊張感はありません。下の地図などをみると、札幌を中心に見れば、成田よりもユジノサハリンスクのほうが近い。 前からカムチャツカ半島などの花を見たいと思っていました。ところが、花を見るツアーはどれもが山小屋に宿泊することになり、自分のイビキはうるさくないが、他人のイビキはうるさい(笑)。眠れなくなり、睡眠不足に弱い私は忍耐の旅行になってしまいます。 そこに旅行会社からパンフレットが届き、「花のサハリン紀行」というタイトルにひかれて行くことにしました。わずか5日間の旅行で、片道が二時間ほどと国内旅行並で、旅費が二十万円と安く、気軽に行けそうです。サハリンは日本が統治していた時代もあるから、ちょっとノスタルジーに浸ることもできます。 今回の旅行参加者は、添乗員の上田さん(仮名)を含めて女性12人、男性9人で満席です。男女比が半々というツアーは珍しい。さらに私が参加する旅行にしては珍しいことに、若い人が何人か参加していました。土日をはさんで期間が短いからのようです。 チケットを受け取りゲートに行くと、そこはバスで移動するゲートです(写真下)。四月に来た時も、成田空港は激しく混んでいて、全日空の飛行機に乗るのに空港内をバスで移動しました。 今回は、空港内はどちらかというと空いており、混んでいるからではありません。たぶんヤクーツク航空(Yakutia Airlines) が新参のマイナーな航空会社だから、建物に直接接続する枠をもらえないのでしょう。ヤクーツク航空によるユジノサハリンスクとの定期便ができたのは今年になってからです。このツアーも定期便の就航に合わせて企画されたものです。 写真下左が私の席です。通路をはさんで左2席、右3席で、満席ではないが、それなりに混んでいます。幸い、私の席の隣には人が来ませんでした。 私の座席は下図のように一番後ろです。成田のチェックインでできるだけ後ろの右側の窓側の座席を希望すると、受付の女性は私の言葉を無視して、会社側があらかじめ決めた左側の座席のチケットをよこしました。私が「いや、右側がほしい」というと「ない」という。すると、別な男性職員が来て、一番後ろの席を取るようにいいました。飛行機はしばしば最後部の席は空けておくことがあり、この会社もそれをしているのでしょう。空けておきたがる理由を目の前で見ました。 私たちのグループの他のお客さんが、一番後ろの左側の席が空いているのを見て、そちらに移りました。ところが、客室乗務員が元の席に戻るように言いました。空いている席なのだから、何の問題もないはずなのにずいぶん強権的で感じが悪い。またしてもソ連時代の嫌な雰囲気です。 一番後ろの座席を開けさせたのは、自分たちが荷物を置くのに使うからです。その証拠が写真下で、お客さんを追い払って荷物を置いています。飛行機は狭いから一番後ろの席を客室乗務員が利用するのは珍しくないが、お客さんを追い払ったのを見たのは初めてです。美人の客室乗務員の金髪の中に角が隠れているらしい(笑)。 ヤクーツク航空のR3550便は予定どおりに離陸しました(16:57、予定16:50)。機体はスホーイ・スーパージェット100型(SSJ100)です。2008年が初飛行ですから、わりと新しい飛行機です。日本でも三菱重工が百人程度の乗客を乗せる中距離旅客機、いわゆるリージョナル・ジェットを就航させようとしていますが、このスホーイはまさにその分野の飛行機であり、ライバルです。 ソ連時代からの純国産をやめて他国の協力を求め、最初から国際的な販売することを目的として作られた飛行機だという。航空機でも最も競争の激しい分野に参入している飛行機なので、私は乗る前から興味津々でした。 特に旅客機として変わった様子もないなと思いながら、外を見ると窓がひどく汚れている(写真下)。これは窓から外を見ている写真で、窓の向こうに翼が見えています。それも中途半端ではない汚れ方です。テッシュペーパーで拭こうとしても落ちない。二重窓の内側が汚れているのです。いったいどうして密閉されている内側がそんなに汚れるのか? 理由が写真下です。機内の壁の継ぎ目が壊れている。隙間からのぞき込むと写真下右のように、断熱材のような物がはみ出て、その向こうに窓の外ガラスが見えます。室内の空気がそのまま入り込みますから、ホコリがついて汚れても不思議ではありません。破損は内壁だから安全上は問題はないが、日本の航空会社ならクレームがつくでしょう。 この飛行機はネットでの座席予約もできず、事前に会社側が座席を勝手に決めているにもかかわらず、客にはそれを教えようともせず、客室乗務員は客よりも自分の都合を優先し、内壁が壊れて窓が汚れている。この飛行機に対する個人評価は、必要最小限を満たしているだけなので往復ともにCとします。 写真下右の壁の隙間からはみ出ているのは断熱材だと思うが、触った感じもただのビニール製に見えます。火災を考えたら、ガラスウールなど燃えない材料を使うべきだと素人は思います。 ほぼ予定どおりに飛行機は成田を離陸しました(16:57)。汚い窓から見ると、風景も汚く見える(笑)。 飲み物が出て(17:33)、続いて軽食が出ました(17:48)。旅行会社からは夕飯にこの軽食しか出ないので、成田空港で少し食べておいたほうが良いという注意が出ていました。 この飛行機の評価をCにしたのはかなりおまけしています。なんと機内にモニターがない。普通、短距離の国際線だと個々の座席のモニターがなくても、天井からモニターがぶら下がっているものです。モニターがないので、飛行機がどこを飛んでいるかさっぱりわからない。私の座席の窓は汚れているので、地上が良く見えず、なおさらわからない(笑)。 モニターもなく、外の風景も良く見えないとなると、たった二時間の飛行時間でも時間が余ります。機内誌は、美人のお姉さんがハワイにいるような魅力的な表紙なのに、日本語はもちろん、英文もありません(写真下)。たかだか二時間の飛行でこんなに時間が余ったのは初めてです。 この旅行のチラシが送られてきたのが1月末で、その直後に私が問い合わせた時にはすでに申込者があり、2月1日には20人の満席に「残席わずか」になりました(下図)。私は名簿順から推測して7番目に申し込んだようです。 コースは6月と7月の二つあり、アツモリソウにも魅力を感じるが、私の場合、特定の花が目的ではありませんので、花の多い季節を選びました。 アツモリソウのコースも満席、そして7月のコースも満席になりました。 一枚のチラシだけで満席になった人気の理由の一つは料金でしょう。カムチャツカ半島は夏の花で有名だが、5日間で30~40万円が当たり前です。サハリンとカムチャツカ半島では場所が違うから比較できないが、20万円は安い。 もう到着 予定よりも早い18:39にユジノサハリンクスのホムトヴォ空港(Аэропорт
Хомутово, Khomutovo Airport)に到着。実質の飛行時間は二時間弱です。新幹線なら東京から名古屋くらいです。ここで時計を二時間進めて、現地時間は20:39です。夜八時すぎだというのに、ごらんのように、日没前でまだ明るい(写真下)。それもそのはずで、日本と経度はそれほど変わりません。前は時差は1時間だったそうで、それを千島列島などに合わせて、強引に2時間進めたようです。 空港は写真上右の建物を見てもわかるように、日本で言えば地方空港くらいの大きさで、建物内部もいたって狭く、人も少ない(写真下)。 覚悟していたわりには入国の手続きはそれほど面倒なことはなく、入出国用のカードを出国までなくさないようにということくらいです。まもなく空港の建物を出て(写真下左)、迎えの大型バスに乗りました(21:21、写真下右)。 ホムトヴォ空港はユジノサハリンクスの南にあるので市内まではそれほど時間はかかりません。 道路事情も良く、時間も時間なので渋滞もありません(写真下)。 バスで三十分ほどでユジノサハリンスクの中心部にあるガガーリン・ホテル(GAGARIN HOTEL)に到着。ガガーリンとは世界で初めて宇宙飛行をしたガガーリン(Yuri Alekseyevich Gagarin)からとった名前です。 写真下が私の部屋です。ここに四泊なので、移動がなくてとても楽です。部屋は十分に広さがあり、シングル・ベッドとセミダブル・ベッドがあります。シングルのほうに寝て、セミダブルに物を広げるので便利でした。 緑茶と紅茶は無料だが、冷蔵庫の中身と、インスタントコーヒーとお菓子は有料で値段がついています。もちろん私は手を出しません。インスタントコーヒーは自分で持ってきているし、この種のお菓子はまずいに決まっているからです(笑)。 紅茶はAHMADで世界有数の紅茶ブランドです。緑色のほうはGreenfield社のFlying Dragonという名前の緑茶で、この会社はロシアのお茶メーカーです(写真下)。総じてティーバッグの緑茶はまずいことが多いのですが、このお茶は飲めました。厳密には緑茶ではなく、中国湖南省の黄茶のようです。お勧めですので、一度飲んでみてください。 ペットボトルのミネラルウオーターはないが、廊下に浄水のサーバーが置いてあって、これは便利(写真下右)。お茶を飲むのには湯沸かし器に、歯磨きなどの洗面にはペットボトルに詰めて使いました。ぜひ他のホテルも真似してほしい。 バスタブもついており、お湯も出て、衛生面も問題ありません。シャンプーと歯ブラシもあります。しかし、シャワーの隣に壁に取り付けられたボディ・シャンプーの容器があるだけで、中身がない(笑)。しかも、上田さんをつうじて入れてくれるように催促しても、ついに入りませんでした。 もう一つの問題がエアコンです。窓の脇に写真下のような床置き式のクーラーがあるが、役に立ちません。部屋の大きさに冷房能力が追い付かない。通常のエアコンのように室外機で熱交換するのと違い、外に熱くなった空気を捨てているから、これでは部屋に廊下の空気が入り込んでしまい、冷房効率が悪い。本格的なエアコンがないのは、ここでは冷房が必要なのは一年のうちほんのわずかだからでしょう。私も東北育ちなのでわかります。しかし、この到着日と次の日はかなり気温が高く、冷房が必要でした。九階なので窓を開けると涼しい風が吹いてくるが、騒音があるので夜寝る時は開けたままは無理です。 石鹸や冷房の問題がなければ、評価は十分に4.0が取れるホテルです。この二点はホテルの基本的な要素ですから、本来なら減点ですが、私の部屋はとても眺めがよかったので、おまけして4.0とします。 なんの音? 荷物を広げて、ようやく寝ようしたのは夜中の12時少し前でした。ベッドにつくと、遠くから太鼓を激しく叩くような音が響いてきて、眠れない。三十秒から一分ほど続いた後、いったん止むが、少したつとまた鳴りだす。これを繰り返すものだから、最後に時計を見た時は、一時半を過ぎていました。窓を開けると下を走る車の音や、ビルの上にあるエアコンの室外機の音がひどく、少々暑いが閉めているが、太鼓のような低い音は、音というよりも振動のように伝ってくるので、窓を閉めても効果がありません。むしろ、他の音が遮断された分、太鼓音だけが浮かびあがる。 イメージだけでいうなら、ディスク・ジョッキーが流すような大音量の「ドンドンドン」あるいは「ドドド」という早いテンポの音で、それが繰り返される。しかも、時々、リズムが変わったりしますから、やはり音楽でしょう。 窓を開けてどこから来ているのか確認しようとしてもよくわからない。可能性があるとすれば、ホテルにディスコ(古いなあ)のような店があり、そこで出している音が建物を伝わっているもしれません。 翌朝、朝、五時頃、この太鼓音で目が覚め、音は五時半くらいまで続きました。 朝食時にこの話を他の人にすると、なんと、誰も聞いていない!私の両隣も他のお客さんがいるのに、誰もそんな騒音はなかったといいます。「おれは幽霊の太鼓を聞いたのか」と驚きましたが、そうでもないことは後にわかりました。 翌日の土曜日の夜は同様にこの太鼓音に悩まされましたが、日曜日と月曜日の夜は音がありませんでした。私の妄想なら四日とも聞こえていいはずなのに、休みの前日に聞こえて、平日の前夜には音がなくなったということは、大音量で明け方まで騒いでいたとみれば説明がつきます。 騒ぐのはしかたないとしても、私のショックは、私以外は、あれだけの音(振動)を誰も聞いていないという点です。私が普通の人よりも音に神経質なのは認めるが、それにしても、睡眠を妨げるほどの音を他の人が誰も聞いていないのを知って驚きました。建物の内部からの音で、たまたま構造的に私の部屋にだけ音が届いたという可能性もあります。 |