花のサハリン紀行 5日目 2017年7月18日(火) ユジノサハリンスク市内観光 朝、六時半頃に起床。前日までの二日間、添乗員のモーニング・コールでやっと起こされたので、すっかり自信喪失して(笑)、この日も七時半のモーニング・コールをお願いしていましたが、幸い必要ありませんでした。ちなみにモーニング・コールをお願いしたのは二十人の客の中で、私を含めて二人だけです(笑)。 外はどんよりとした曇り空で、空気はひんやりしています(写真下)。後で長袖のワイシャツ一枚で散歩に出かけたら、肌寒く感じました。 本日は旅行最終日で、午前中ユジノサハリンスクの観光と買い物をした後、昼過ぎに帰国します。 七時からいつものホテルのレストランで朝食です。出発が十時と遅いせいか、客足は少ない。 教会でミサ 今回は同じホテルに四泊もしながら、ホテル周囲の散歩がほとんどできませんでした。今日が最後なので、気になっていたホテルの南にあるロシア正教の教会(Voskresenskiy Kafedralnyy
Sobor,
Воскресенский
Кафедральный
Собор)の写真を撮るつもりで出かけました。 1990年に建築されたばかりの比較的新しい教会です。写真下右は後ろから見た教会です。少しだけ緑の入った青い屋根がきれいです。 今日は火曜日ですから、閉まっているだろうと思ったら、信者らしい人たちが中に入っていきます。 中に入るとミサの最中で聖歌が流れています。司祭や聖歌隊の姿は見えないが、聖歌が石作りの建物に良く響いて、おごそかな雰囲気を出しています。歌は女性の高音域がきれいでうまい・・・まさかCD? 本堂はそれほど大きくなく、たぶん百人くらいしか入れないでしょう。普通の教会と違い、椅子席がない。ネットで調べると、ロシア正教では椅子席がないのが普通のようです。 参拝者は二十数人で、圧倒的に女性が多いのはここも同じです。女性は全員がスカーフをかぶっています。ロシア正教など東方系のキリスト教は女性がスカーフをかぶるのが良くみられます。イスラム教の影響なのだろうか?年齢は中高年が多く、若い人はいません。ミサの最中にも、時々、人が出入りします。 司祭がカメラを手に乗せている私の前を何もいわずに通り過ぎました。『地球の歩き方』では、ここは一般の観光客も入れるとありました。 参拝者のほとんどは立ったままです。右脇にベンチがあり、お年寄りが座っているので、私もそこに座り、しばらく見入っていました。つまり、年寄りが二人ベンチに座っている(笑)。時々、そのお年寄りも立ち上がるので、私も失礼にならないように、意味はわからないまま、いっしょに立ちあがる(笑)。 まだミサが続いている中、教会を出て、ガガーリン公園に行きました。 公園の中に遊具施設があります。早朝なので、もちろん動いていないし、誰もいません。こういう遊具施設が動いて子供たちが騒いでいる時はウキウキして楽しく感じるのだが、キャクラクターもすべて静止したままなのを見ると、祭の後のような奇妙な寂寥感が漂っています。と言っても、それはここに漂っているのではなく、私が勝手にそう感じているにすぎない(笑)。 ディズニーのキャラクターが使われているが、安くない著作権料は払っているのだろうか。 お土産屋 公園からホテルの前を通過して土産物屋に行きました。ホテルの近くの観光客相手の土産物屋「ゲルメス」が、通常10時開店のところを私たちのために特別に9時から店を開けてくれるという(写真下)。添乗員の上田さん(仮名)が頼み込んでくれたらしい。 店内は広くはなく、陶磁器がたくさん並んでいます。青い色は私の好みなので、つい見入ってしまいました(写真下)。ロシアらしいおおらかな作りが多いなかで、花柄の繊細なティー・カップがあり、値段もそれほど高くないので買いました。帰国後、値段を調べると、ネット上でのメーカー直売値段よりも安かった。お土産屋は値段が高いと思っていたが、ここはそうでもなさそうです。 クレジット・カードで購入したので「1ルーブル=1.92円」で、さらに安くなりました。成田空港での換金は「1ルーブル=2.4円」ですから、現金で払うと25%も高くなります。 プーチン大統領の写真があるのはわかるが、トランプ大統領まであるのがおもしろい(写真下)。大統領選でのロシア疑惑はどうなったのでしょう。 自由市場で買い物 ホテルを十時に出発。飛行機は午後の便なので、それまでの間、観光と買い物です。まず市場に行きます。蜂蜜を売っているというので、私はわざわざ現地通貨を残してあります。 表通りでは衣類を中心に売られています(写真下)。 建物の中は食料品の小さな小売店が並んでいます(写真下)。 まず目についたのが、写真下のカラフトマスです。どうですか、これ。熟成していて、うまっそう。 カラフトマス以外にも魚介類が豊富です(写真下)。 肉類も多く、ハム、ソーセージの種類が多い(写真下)。 意外にも、チーズは数も種類も多くはありません(写真下)。 日本や韓国の食品も売られていますから、現地に滞在している日本人は助かるでしょう(写真下)。 蜂蜜を売っている店が清掃と消毒のために閉鎖されていて、ワシリーさんが急きょ近くのスーパーに連れていってくれて、蜂蜜を見つけ、無事買いました。 市内観光 買い物を終えて、市内観光をします。平日の午前中なので、たぶんこの街の普段の光景なのでしょう。日本と大きく違うのが、人間の数が少ない事です。これなら、満員電車なんてありえない。 街中で赤ん坊を連れた人たちが少なくない(写真下)。乳母車が珍しくありませんから、街の作りが乳母車でも問題がないのでしょう。日本は歩道も狭く、段差が大きく、こんなふうに乳母車を楽に押せる場所が少ない。 平日なので小学生のような子供たちは見かけないが、若い人たちの姿も少なくありません。 街角のゴミ箱も曲線を巧みに取り入れています(写真下左)。日本もこういうふう余計な所にオシャレになってほしい。写真下右のポスターは、ロシア語のキルリ文字が絵と組み合わせるとなんかオシャレに見えますね。 観光の最初はユジノサハリンスク駅の構内にある鉄道歴史博物館(Музей
Сахалинской
Жулузной
Дщроги)で、これは道端から見えるのでバスに乗ったままの見学です(写真下)。雪が多いだけあって、除雪車が4つもあります。車両はそんなに多くないが、保存状態は良い。 日本から寄贈された「キハ58」があるという。たぶん、写真下の黄色とオレンジに塗られた車両でしょう。 ユジノサハリンスク駅のすぐ東側にあるレーニン広場に行きました。ここにも左手にゴキブリを叩くための帽子を持ったレーニン像があります(笑)。写真下右のレーニンの似顔絵のある建物の1870とはレーニンが生まれた年です。このレーニン広場は生誕百年を記念して1970年に作られました。 近年、噴水や花壇やベンチなどを設置して改装されたといいますから、前はもっと暗い雰囲気だったのでしょう(笑)。レーニンの像がなければ、市民の憩いの公園という雰囲気です。 公園の清掃や剪定をしている人たちがいます(写真下)。いずれも韓国系と思われるような東洋人です。 ロシア正教の大聖堂 ホテルの南東にあるロシア正教の大聖堂を見に行きました。 Cathedral of the Nativity(Собор
Рождества
Христова)という名前のようですが、はっきりしません。この教会は2012年から工事が始まり2016年9月に完成したばかりというから、湯気が出るほど出来立てのホカホカです。高さが77mでほぼ20階建のビルくらいです。 ロシア正教の教会は他のキリスト教に比べて暗い威圧感がなく、キノコのような屋根がなかなか可愛らしい。しかし、ここの大聖堂のデザインは今一つ私の好みに合いません。お金をかけてこれだけの建物を建てるならもう一工夫あっても良いような気がします。 教会の前の広場は花が植えられ、写真下の円筒状の花はベゴニアをタワー状に積み上げたものです。 入口の門の装飾がきれいです(写真下)。この門を開けて、馬車に乗った王女様が出てきたら、なかなか素敵でしょう。 そのきれいな門を折れた古い角材と小汚い紐で縛っている。この組み合わせもなかなか良い(笑)。 ここで私の好みにもっとも合ったのは、駐車場にある売店のテントの青で描かれた模様です(写真下左)。カニや魚、奥のほうには花の模様があります。こういう模様のコーヒーカップや皿なら買いたい。同じ駐車場にあるプレハブの窓の模様もなかなか良い(写真下右)。 樺太神社跡とトイレ 次に訪れたのが大聖堂の北にある栄光広場(Ploshchad’Slavy,
Площадь’Славы)です。2013年に完成したというから、まだ新しい。胸像がたくさん並んでおり(写真下左)、戦勝記念碑もあります(写真下右)。戦勝とは、第二次世界大戦で日本に勝ったという意味です。 ホテルからはすぐそばなので、私は朝の散歩の候補にあげて、暇なら来るつもりでいました。優先順位が低かったのは、ストリート・ビューで写真下の風景を見て、わざわざ来る価値はないと思ったからです。来てみて、やはりわざわざ散歩で来なくて良かったというのが私の感想です(笑)。 ここは日本統治時代、樺太神社があった場所です(写真下右)。写真下左の奥に見える階段は、写真下右の鳥居の向こうに見える階段と位置はほぼ同じで、階段自体はこの公園を2013年に作る時、作り直されたものです。ずっと奥のほうにあった本殿は取り壊され、宝物殿だけが残っていて、ゴミが捨てられるなどひどい状態であることがネット上の旅行記でも記述されています。これから日本からの観光客がたくさん来れば、その整備も進むかもしれません。 写真上右 旧樺太神社(ウィキペディアから転載) ここでの私の関心は写真上左にも見える写真下の青いトイレです。栄光広場、戦勝記念碑なんてすごい名前の場所で2013年に完成したばかりなのに、トイレがこれ??今回の旅行では街中の有料トイレなど、先進国にしては公衆トイレの事情がイマイチだというのが私の感想でした。そこにこのトイレ。ここは市内でも中心部にあり、道路も建物もきれいに整備されています。そこの公共施設のトイレがこれとは、ひどい。トドメの一撃のようで、私はあきれました。巨大な大聖堂や銅像を建てる前に、まず公衆トイレをきちんと整備するべきです。 二十分で日本上空 買い物と観光を終えて、市の南にある空港に向かいます。 ホムトヴォ空港(Аэропорт
Хомутово, Khomutovo Airport)に到着(12:03)。まるで裏口のようなドア一枚の入口から入ります。荷物検査をするためにわざと狭い入口から人を入れているのでしょう。もちろん、その後に飛行機に乗るための荷物検査は別にあります。テロ対策とはいえ、もう少し間口を広くできないものか。 待合室は狭く、一機分の客しかいないのにけっこう混んでいる(写真下)。待合室にはカフェがあり(写真下左)、最後に残ったルーブルで買い物をして使い切りたいので、私の小銭の残金を店員に見せたところ、笑われ、返されました(笑)。 バスに乗って飛行機まで移動します。写真下の空に写っている黒い影はUFOではなく、バスの窓の汚れです。 飛行機は来た時と同じヤクーツク航空(Yakutia Airlines)のR3549便、機体はスホーイ・スーパージェット100型(SSJ100)です(写真下)。 空港のカウンターで座席が決まるので早く並びたいのに、私は蜂蜜をスーツケースに詰めなければならない。取れた座席が20Fで来る時とほぼ同じ席です。添乗員の上田さん(仮名)がワガママな客のために席の交換を申し出てくれましたが、左右は逆でも後部の窓側という希望どおりなのでこのままで行くことにしました。 ほぼ予定どおりの時間に離陸(13:41)。サハリンは緑が多いのがわかります。 眼下に島が見えます(写真下)。たぶん利尻島です(14:01)。写真下右の、利尻島の右側に雲に覆われた礼文島がほんの少し見えています。たぶん飛行機の真下は北海道で稚内あたりの上空を飛んでいるのでしょう。離陸してわずか二十分くらいですから、いかにサハリンが近いか実感させられます。 利尻島が見えたのが飲み物と(14:21)、軽食が出る前でした(14:37)。 天気はそれほど悪くないのに、飛行の途中でエアーポケットに入り、機体にかなりの衝撃があり、ギョッとしました。これまでも飛行機では何度かエアーポケットに入った経験があります。昔、ジェットコースターに乗ったみたいに、身体が椅子から浮き上がり、機内は悲鳴とすすり泣きに包まれたことがありました。こんなふうに飛行機が上下するとか、激しく揺れるというのがこれまで経験したエアーポケットです。 しかし、今回はこれまで体験したことのない衝撃でした。まるで車が路上の段差にぶつかった時のようなガーンという衝撃で、それもたった一度です。高度が高いから鳥と衝突した可能性は低い。他のお客さんと「なんだ?今のは」と不安そうに目を合わせる。幸い、それ以上何も起きませんでした。 ほぼ予定どおりに成田に到着しました(日本時間13:31、サハリン時間15:31)。 この日、関東地方は落雷ばかりか、ヒョウまで降り、樹木が倒れるなど大嵐で、翌日19日には梅雨明けが宣言されました。 五日間という短い旅行で、特別な花を狙っての旅行でもなかったので、最後まで肩に力がはいりませんでした(笑)。一緒に旅行した人たちの名前も大半は覚えないままで、花を見ながらの気軽な避暑にはちょうど良かった。成田からたった二時間で行ける近場ですから、皆さんもぜひ訪れてください。隣人なのだから、もっと交流することはお互いに有益です。
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