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チリ・アンデスの奇妙なスミレたち

8日目    20191217()

サンティアゴ ロンドン

 

 夜中の1:30にホテルからバスが出るというので、私は1:00に起きるつもりでタイマーをかけて外出着のまま寝ました。ところが、ホテルのフロントから0:40にしっかりと電話がありました。私は頼んでいませんから気を使ってくれたのでしょう。昨夜は10時頃に寝て数時間しか眠っていないので、もうろうとしています。

 私を含めた4人は予定どおりにバスに乗り、2時前には空港に到着しました。ここでツアーリーダーの松森さん(仮名)を探さなければなりません。昨夜、アメリカ経由で帰国する3人と一緒に来て、彼らを見送った後、空港に残っているからです。

 

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第一幕:寛容と忍耐と粘り

 間もなく松森さんと合流すると、なんと、アメリカ経由で出発したはずの3人のお客さんもいるではないか!どうなっているのだ!?

 昨日、英国航空からの連絡で、アメリカン航空の3人分の座席を予約したという話だったので、実際に空港に来てみると、登録されておらず、乗せてもらえなかったというのです。完全に英国航空側の手配ミスです。しかし、彼らに謝罪や代わりの飛行機の提案を期待しても無理で、自力で何とかしなければなりません。

 つまり、ここからが寛容と忍耐と粘りの勝負です()。松森さんが登場手続きのカウンターにいる職員相手に交渉し、全員が朝の飛行機に乗り、日本まで帰りたいのだというのを理解させるのにかなりの時間がかかり、私たちだけで窓口一つを一時間近くも占領していました。彼はしばらくの間、端末のモニターをにらんで、ようやくチケットを発行してくれました。

 

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 しかし、日本までのチケットを発行してもらったのは一人だけで、残り7人はロンドンまでのチケットしか取れません。一人だけ取れて、どうして後の7人が取れないのかと追及するのは無理というよりも無駄で、ロンドンに着いてから「仕切り直し」をするしかありません。

 英国航空側から遅れたBA0250便に乗れというメールが来て、しかも遅れただけで予約した同じBA0250便にそのまま乗るのだから、どうしてこんなに時間がかかるのかと腹が立ちそうになるが、そこは寛容と忍耐と粘りです()。私などまだホテルで眠れたから良かったが、アメリカ経由の話で騙された4人は搭乗を拒絶されて、一晩空港にいさせられたのですから、腹立たしいかぎりでしょう。

 

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 英国航空BA0250便はボーイング787で、予定では5:57にサンティアゴを発ち、14時間20分飛行の後に22:49にロンドンに到着予定です。寛容と忍耐と粘りの戦いでクタクタになって、ようやく自分の座席にたどり着きました()。私たちは後ろの座席だったので、いくぶん空いており、三座席の真ん中の席には人が来ませんでした。今回の旅行の4便の中では長いほうの飛行時間なので、隣に人がいないと本当に楽です。

 

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 写真下のイギリスの有名な俳優を使った安全のためのビデオはそれなりに良い(写真下)。機長の挨拶はマイクの使い方が下手で、音が割れて聞きにくい。あのひどい音に本人は気が付かないのだろうか。いつも思うのですが、スピーカーは進歩していない。

 

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 予定よりも遅れて、飛行機は6:59に夜明けのサンティアゴを離陸しました(写真下)

 

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 離陸するまで慌ただしく、チリとお別れをする余裕もありませんでした。2015年に来た時には、こんなに早くもう一回来るとは思っていませんでした。四年前はサンティアゴの北のアタカマ砂漠などの花で、今回は南のロゼットヴィオラで、季節と場所が違うからまったく別な花たちを見ることができました。朝のきれいな風景を見ながら、すばらしい草花のあるチリとさようならです。

 

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 離陸して一時間ほどで朝食が出ました(8:19)。もうブラジルの上空を飛んでいるらしい。

 

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 睡眠不足で疲れて身体がだるいが、中途半端な眠りばかりなので、寝付けません。こういう時は映画が一番なのだが、モニターの具合が悪く、タッチパネルがいかれている。おまけに来る時の二便で、優先順位の高い映画は観てしまったから、日本語で観たことがない映画というと残り少ない。

 

『トールキン 旅のはじまり』(Tolkien、アメリカ、2019年)

 映画にもなった『指輪物語(The Lord of the Rings)』の原作者であるトールキンの半生を描いた映画です。正直なところ、『指輪物語』は暗くて戦いばかりで、私の好みには合いません。映画でも人間や人生の象徴的な意味を描写するのではなく、見せ場が原作と同じ戦闘シーンなので、軽薄さに少々うんざりさせられました。今回の映画で、彼が第一次世界大戦の悲惨な体験をしているのを観て、なぜ彼の物語があんなに暗くて、戦争ばかりなのか、その背景がわかったような気がしました。

 

The art of racing in the rain』(アメリカ、2019年)

 死ぬ直前の犬が、レーシングカーのドライバーである主人と家族を、犬の視線で思い出すという設定が面白い。しかも、彼は自分は人間に生まれ変わると信じている。実際にそうなったという結末はいただけないが、キリスト教にはない輪廻を当たり前のように描写しているのは興味深い。仏教の輪廻観では動物と人間の違いはありませんから、犬が人間に、人間が犬に生まれ変わることは容易にあります。だから、動物をいじめたり、スポーツや面白半分で殺すなど考えられません。

 

『カールじいさんの空飛ぶ家』(UP、アメリカ、2009年)

 この映画のモニター上のタイトルは「美女と野獣」でした()。「美女と野獣」を観ようとしたら、このアニメが出てきた。操作ミスかと元に戻って何度か試したが、結果は同じでした。昔一度観たことがあって、再度見てもなかなか良かった。こういう映画の大きな欠点は、ハッピーエンドである点です。

 

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Wikipediaから転載

 

 

また10時間食事無し

 スナックと飲み物が出ました(15:13)。朝食が出た後、初めて出た食べ物です。往復で毎回このペンステートのプリッツェルが出ましたが、お腹が空いていてもあきらめるくらい、私の味覚ではこのイギリスのプリッツェルはマズイ。もっとも、アマゾンの評価を見ると、おいしいという人もいるから人それぞれです。

 

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 この後、食事が出たのは、18:15でした(写真下)。最初の食事が出たのが朝の八時(8:19)、二度目の食事が夕方の六時(18:15)で、10時間の間、出たのは上のスナックだけです。つまり、昼食がない。元々、この飛行機は夕方チリを出発する夜間飛行なので、写真下の二度目の食事は朝食の予定だったのでしょう。ただ、現実は朝出発して日中の飛行なので、14時間に及ぶ飛行で食事が2回しかでないのも奇妙だし、時間的にも昼食が出ないのはいくらなんでも変です。これは来る時の飛行機でも説明したように、航空会社の利益のための合理化という名前のサービス低下で、客の胃袋など二の次です。

 来る時の英国航空で体験させられたので、私は旅行中に配られたお菓子を持ち込んで、お腹が空いた時にはそれを食べていました。

 

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 この英国航空のこの便への評価は五段階評価の一番下のEです。飛行機が遅れたことはしかたない事情だが、それに対する空港での対応や、ロンドンなどこの後の対応を含めて大きな問題があり、航空会社に苦情を言いたいほどひどい。

 

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 食事が終わる頃、飛行機はイギリスに入り、間もなく、ロンドンの灯りが見えてきました(写真下)。ほぼ予定どおり、ロンドンのヒースロー空港に到着しました(イギリス時間22:21、チリ時間19:21)。ここで時計を3時間進めます。

 

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第二幕:寛容と忍耐と粘り

 ここからが寛容と忍耐と粘りの第二幕の始まりです。明日の帰国便と今日のホテルを確保しなければなりません。これらはもちろん英国航空側が準備するのが当たり前なのだが、その当たり前がなかなか通用しない。

 ・・・いや、そんなことはないか。空港内に入るとすぐに乗客の名前を確認しながら何か配っているらしい(写真下)。私は英国航空への低い評価を上げようかと思ったが、必要ありませんでした。私たちの分はなかったからです()。私たちは飛び入りで乗ったのではなく、最初からこの便に乗ることになっていたし、また14時間も前に搭乗したことを確認したはずなのに、こんな程度の準備もできていない。

 

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 無能、非効率と怒りたくなるのは忍耐と寛容でおさえて、手続きのできる窓口の場所を聞いて、空港内の電車で移動します(写真下)。ヒースロー空港は巨大空港なので、地下鉄で結ばれています。

 

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 飛行機到着から一時間以上にもわたり松森さんが駆け回ってようやく明日の飛行機と今日のホテルを確認しました。私は口の中で「寛容と忍耐と粘り」と呪文のように唱える()

 英国航空側から食事代金として空港で使える10ポンド(1400)の商品券が配られたので、私たちは空港内の店で水や食べ物を買いました。釣り銭は出しませんから、店側は大喜びです。

 

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 幸いなのは、指定されたホテルは空港に隣接した建物にあり、建物の中を移動するだけで済んだことです。普通は空港からホテルまでのバスにどこで乗るかなど、ひと仕事になります。

 

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 ホテルは空港の第五ターミナルに直結するHotel Sofitel London Heathrowで、五つ星ですから、宿泊費は聞くまでもなく高いでしょう。

 ホテルのフロント(写真下)で鍵をもらい、部屋の場所を聞いて探したが、わからない。「寛容と忍耐と粘り」と呪文を唱えてから、フロントに戻ってもう一度聞くと、聞き違いの理由がわかりました。彼は「リフト」と言ったのを、私は「レフト」と聞き間違えたのです。リフト、つまりエレベーターで行けというのを、レフト、つまり左に曲がったから、探せないのは当たり前です。頼むから、英語でしゃべってくれ()

 

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 写真下が私の部屋で、この部屋にたどりついたのは、空港到着から三時間後の夜中の0時半過ぎでした。部屋の広さも設備も申し分ありません。個人評価は、ここは余裕で4.0で十分に合格です。

 

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 洗面室が広いのが良い。バスタブが左にあり(写真下左)、それとは別にシャワー室が右側にあります(写真下右)。ここでゆっくりできないのが残念です。

 

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 シャンプーや石鹸はもちろん、バスローブもあります。ここに泊まった8人の内、一人だけ成田までのチケットが取れてしまったお客さんは、預けた荷物をヒースロー空港で受け取れませんでした。手荷物だけで宿泊していますから、バスローブなどがあると助かるでしょう。でも、さすがに歯ブラシがない、と書いたら、後日、このお客さんから、手荷物で歯ブラシを持っていたので、問題なかったという連絡がありました。

 

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 明日の成田行きは昼頃の便なので、朝はゆっくりと寝ていられます。寛容と忍耐と粘りの長い一日でした。そして、これもまた旅です。

 

 

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