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ヒマラヤの青いケシ

6日目 2015710()

青いケシ

 

 

また霧雨

 六時前に起きました。気温が12.5度でかなり寒い。昨夜は寝る時、湯たんぽで寝つきは良かったが、湯たんぽが冷めた夜中に寒さで目が覚めました。緊急保温用のアルミのシートを寝袋の中に入れたら、保温は効いたが、汗で内側が濡れてしまいました。しかし、体調はほぼ戻ったのが何よりです。

 今日は、いよいよこのツアーのメインである青いケシの中でも、グランディスという珍しいケシを見に行きます。

 

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 天気が良ければ、早く起きて周囲を散策したいくらいだが、天気はごらんのように、昨夜の強風と比べればやや収まったが、それでも風は強く、深い霧と霧雨で、とても出かけられる状況ではありません。こんな所で道に迷ったら、下手すれば遭難します。

 テントの中はすべて濡れたままなので、温度以上に寒く感じます。まもなく朝食なので、調理用のテントに行きました(写真下)。ここはテントの中で唯一、火を使っているから、暖かい。スタッフが朝食を調理中です。

 

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グランディス

 今でも十分に天気は悪いが、山の天気は午後のほうが荒れるかもしれないから、とにかくグランディスを見に行こうと出発しました(7:50)。場所については詳しくは申し上げられません。幹線道路から山道に入り、そこからは村長さんとガイドのバサントさんを先頭に、前の人を見失わないように、登っていきます。標高は軽く4200mを越えていますから、息が切れる。

 

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 ありました。人の背丈とあまり変わらないくらいの大柄なケシが沢に沿って生えて、花を咲かせています。

 

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 最初にグランディスを見た時、他の青いケシと出会った時に比べると感動が今一つでした。花は大きく、背丈も人間と同じくらいまで伸びるので見事ではあるが、天気の悪さが足を引っ張っています。。

 

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写真上下 Meconopsis grandis var. orientalis

(Flowers of India)

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 雨が花のイメージに大きくマイナスしている。ケシはピンクと青が混ざっていると案外きれいな色を出します。だが、天気のせいで色が冴えない。

 

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 写真下の花など、青の周囲にピンクが混ざり、これで陽が差せばかなりきれいなのでしょうに、残念です。

 

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 お客さんの一人がヤブの向こうから私を手招きします。もうグランディスの写真も撮り終えていたので、何か別な花があるのだろうかと付いて行きました。そこはあまり人が踏み入れたことはないらしく、道もないひどいヤブ状態で、枝に引っ掻かれ、小川に足を突っ込みながら行くと、そこにもグランディスがありました。

 

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 先ほどの所で撮ったグランディスもピンク色が混ざっているのがあったが、ここのはもっとピンク色が強い。きれいなピンクのケシです。私のグランディスに対する評価は一気に変わりました。

 

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 グランディスは青いケシの仲間ですから、ピンク色の青いケシです。

 

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 こちらの群落は先ほどの群落と極端に違うわけではないが、ピンク色が強い分、だいぶん違った印象を与えます。私は手招きしてくれたお客さんにお礼を言いながら、写真を撮りました。先ほどの場所と違い、他のお客さんがいないので、自由に撮りやすい()

 

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 グランディスばかりに気を取られ、すっかりご紹介するのを忘れていましたが、すぐそばに昨日も見た大柄な黄色いケシのパニクラタもあり、見事に咲いています、これを見ると、ケシが上から下に順序良く花を咲かせているのがわかります。

 

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写真上 Meconopsis paniculata

(Flowers of India)

 

雨の山を散策

 せっかく来たのだから、ケシだけではもったいないので、周囲の山を散策することになりました。

 

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 七月のヒマラヤ高地ですから、花がたくさんあります。天気が良ければという愚痴をこぼすのはやめて、花の写真を撮りましょう。

 

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写真上 Lilium nanum

(Flowers of India)

 

 雨のせいなのか、ちょっと低い所は川が流れ、湿地帯になっていて、そこに昨日も見かけた黄色いサクラソウがたくさん生えています。

 

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写真上下 Primula. dickieana.

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.269)

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 写真下はチベットでは良くみかけるネパレンシスで、アロエの葉みたいにトゲがあるので識別がわりと簡単です。ここまで立派でまとまって咲く被写体は初めてです。

 

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写真上 Acanthocalyx Nepalensis

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.126)

 

 斜面にたくさん咲いている黄色のはノイバラ?かと思ったら、白いシャクナゲです。

 

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写真上下 Rhododendron lepidotum

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.333)

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写真上 Bistorta viviparai

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.662)

 

 

四千メートルのヒル

 小さい花も多いので、地面はグシャグシャだが、撮影するために私は例によって地面に横になります。すると、またしてもヒルに食いつかれました。昨日は三千メートルで、今日は四千メートルの高山でヒルに食いつかれ、今までの最高記録です。こんな厳しい環境の中でヒルは頑張って生きているのだ。身体が冷えただけでひっくり返る私に比べて、ヒルは素っ裸でスゴイ()。ヒルのツメの垢でも煎じて飲みたいところだが、彼らは歯はあってもツメはなさそうです。

 

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 後で皆さんに、三千メートルでも四千メートルでもヒルに食いつかれたと自慢しましたが、誰もうらやしましいという人はいませんでした。もちろん、私以外は誰も吸われていません。どんなもんだい、オレ様だけだ()

 

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 帰国後、ブータンに詳しい方に、高山でヒルに吸われた話を質問したのですが、知らないとのことでした。これを聞いて私はますます最高記録保持者であると自覚しました()

 旅行会社から、もっと低いところからヒルが付いてきたのではないか、という意見をもらいました。

 可能性の一つは二日前のディーランで、標高1700mですから、ヒルがいてもおかしくないし、私は朝、山を散歩し、しかもその後下着以外は取り換えていませんから、付いて来た可能性は十分にあります。しかし、そうなると、ヒルは二日間、私の衣類に潜んでいて、丸一日後の昨日の朝と、二日後の今日の昼近くになってようやく身体まで到達したことになり、ちょっと時間がかかりすぎる。朝の散歩では雨具は付けていませんから、衣類についていたとすれば、もっと早く吸い付いてもよかったはずです。

 

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 二つ目は、昨日の標高3100mのシャングリラ付近で付いて来た可能性です。昨日の朝のヒルは、露出した腕の部分に吸い付いていたし、私は写真を撮るために何度も地面に手を近づけて葉などにも触れているでしょうから、この時付いても不思議ではありません。また、カッパを着ていましたから、この時カッパについたヒルが、今日の朝から動き出し、ようやく今ごろに身体にたどり着いたとみれば時間的にもありえます。

 ただ、この二つ目の説の欠点は、ヒルが3100mの高地にいたという点です。他の人たちに聞いても、そんな高山にヒルがいるなんて聞いたことがないという。いずれにしろ、私が三千メートル、四千メートルの高地でヒルに血を吸われたというギネスブック並の記録保持者となりました()

 

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写真上 Gypsophila cerastioides

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.645)

 

 写真下の花など、元々湿地帯に咲く植物なのか、それとも雨で水溜りになっているのか、よくわからない。

 

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写真上 Pycnoplinthopsis bhutanica

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.536)

 

 花弁を良く見ると、内側が薄い緑色になって、まるで血管が通っているみたいです。

 

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 山の斜面を横に歩いているだけなのに、足元はグチャグチャですから、登山靴は水をしっかりと吸い取って重い。

 

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写真上 Rhododendron anthopogon

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.334)

 

 昨日も見たセーターを着たアザミです。やはり咲いていません。

 

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写真上 Cirsium eriophoroides

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.67)

 

 コリダリスの仲間が咲いています。葉が細かく分かれておらず、昨日、崖で見たのとは違う種類のようです。

 

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 黄色いコリダリスは一株しか見つかりませんでした。

 

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写真上 Corydalis linarioides

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.565)

 

 写真下は日本で言えばヤマヒコノリやハナゴケなどの地衣類でしょう。なかなか見事に育っています。他の植物に先駆けて厳しい環境でも育ち、しかも排気ガスなど汚染に弱いので、環境の指標にもなります。

 

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 昨日セラ峠で見たセンブリの仲間です。ここでも斜面に群落しています。クリスマス・ツリーを連想します。

 

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写真上 Swertia hookeri

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.246)

 

 いつものように私はだんだんグループから遅れていきます。雨さえ降っていなければどうということはないが、霧()がかかって先が見えない四千メートルの山の上であまり遅れるのは危険です。

 

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 写真下はイグサの仲間だそうです。あちらこちらに群れて咲いていて、単子葉植物にしてはなかなか花がきれいです。

 

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写真上 Juncus Ieucanthus

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.737)

 

 チベットでは良く見かける黄色いスミレです。

 

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写真上 Viola bifora var.hirsuta

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.362)

 

 写真下は最初見た時、花弁が落ちて、ガクだけになった花かと思ったが、写真右など良くみればわかるように、真ん中の花には黄色い花弁がつき、その斜め上にはついていませんから、これで開花した状態のようです。

 

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 写真下のキジムシロの仲間は判定が難しい。

 

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写真上 Potentilla contigua

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.444)

 

 写真下は花だけ見ると写真上と似ていますが、まったく別種のキンポウゲの仲間で、雰囲気的には日本のウマノアシガタに似ています。

 

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写真上 Ranunculus potaninii

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.633)

 

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写真上 Bistorta griffithii

(『ヒマラヤ植物大図鑑』p.659)

 

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ブータンのケシの谷

 十時半頃、キャンプ場に戻ってきました。私は真っ先に厨房テントに行きました。自分のテントに戻っても寒いだけでほとんど意味がない。昨日、身体を冷やして危ない思いをしたので、少しでも身体を温めたほうが良い。

 

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 厨房テント内では昼食の料理中で、私が中で暖を取っていると、ガイドのバサントさんが飲み物をもってきてくれました。温かい飲み物は有り難い。

 

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 バサントさんから意外な話が聞けました。彼はここからブータンとの国境を越えて、山の斜面の片側に青いケシが、もう片側には黄色いケシが一面に咲いている峠にイギリス人(スコットランド人)を八年くらい前に案内したことがあるというのです。地図を見ると、ここから南に数キロもいくとブータンです。しかし、ブータンは別な国だから、税関もないこんな山の中で、どうやって国境を越えるのだ?

 バサントさんからの答えは簡単で、勝手に入った、とのことでした()。この返事は私にバカ受けしました。

 しかし、その後、携帯電話が発達すると、ブータン人から垂れこまれて、今では行くことができないそうです。このブータンの携帯電話事情を裏付けるような話がネット上にありました。ブータン研究家の藤原整氏によれば、201511月にバンガジャンから南西方向にあるブータンのメラ村で調査したところ、村では五年前から携帯電話が使えるようになったというのです。(http://www.junkstage.com/fujiwara/)

 後日、ブータンに詳しい方にこのケシの話をすると、その地域はブータン側からも入ることは可能だとのことでした。私の頭の中では両斜面に咲く青いケシと黄色いケシが風に揺られていました()。しかし、寒いだけでひっくり返るような軟弱な私にはそこまで行くのはちょっと無理です。

 

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12時から食事です(写真上下)。食堂テントには暖房はありませんから、私はぎりぎりまで厨房テントの中でぬくぬくしていました。

 

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午後の青いケシ

食事を終えて、昨日も見たメコノプシス・ベラという青いケシを見に午後二時頃に出発しました。崖っぷちに生えているので、元々近づきにくい上に、この雨と霧です。

 

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 写真下の花の中に虫がいます。雨宿りをしているのでしょうか。毎日、こんな天気では虫たちも晴れるのを待ってはいられないのでしょう。

 

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写真上下 Meconopsis bella

(Flowers of India)

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 天気は相変わらずの霧雨で、三時半頃、早目に切り上げてキャンプ場に戻りました。

 

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 写真下の真ん中はテント場の「石畳の道」です。この道は重要で、奥にある私のテントに行くのには石を踏みながらいかないと靴が泥だらけになります。

 

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 おやつです(15:47)。温かく甘いチャイはうまい(写真下右)

 

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 この頃、ちょっと空が明るくなったので、このままなら私は近くを散歩しようかと思い準備を始めました。明日はここを去るから、時間が惜しい。ところが、たちまち天気は悪くなり、雨がひどくなりました。他の人のテントが水浸しになり、大騒ぎです。散策はあきらめて、五時半には夕飯を食べ、さっさと寝ることにしました。

 

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 写真上はテントの天井で、外に出て花の写真を撮りたいのに、寝ているしかない私が見ている風景です()。テントに雨が当たり、風が強いと激しく揺れます。

 

 

 

 

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