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雪ふるキルギスに初夏の花

6日目 2019614()

タムガ バルスクーン溪谷 カラコル

 

 

 朝、五時すぎに起きました。部屋の温度は21.1℃ですから、暑くも寒くもありません。今日は今回のツアーのここから南東方向にあるバルスクーン溪谷(Barskoon)に行き、花を観察します。特にキンポウゲの仲間のリラキヌスはここでしか見られない花で、今回のツアーのおしらせにも載った花です。

 

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 昨日、周囲を散歩してもおもしろくなかったので、朝の散歩はやめて、ゲストハウスの庭を散策することにしました。

 

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 庭の作りは特別なものではありませんが、そこに唐突にユルタがあるのがキルギスらしい(写真下)。これも客室なのかもしれません。

 

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 ネコ君からは「なんだよ、お前」と睨まれました(写真下左)。カメラのレンズが彼らには大きな眼に見えるからでしょう。イヌ君は雪山を眺めている(写真下右)

 

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 食事を終えて、予定どおりに八時にゲストハウスを出発しました。晴天の青天です。

 

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 晴れて、イシク・クル湖の上には雪山が浮かび上がっています(写真下右)

 

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 湖の上に少し雲があるが、雪山には雲はありません(写真下)

 

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 ガソリンスタンドで給油です(写真下)。ビシュケクあたりで見たガソリン価格は40ソム(80)前後で、ここの価格も一番上にある92番のガソリンは37.5ソムですから、いくぶん安い。地方のほうが輸送費がかかるはずなのにガソリンが安いとは驚きです。

 

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 車はここから湖を離れ、写真下の天山山脈に向かって進みます。見えている一番高い山は4485m、さらにその後ろの山は4672mもあります(写真下)。この国では4000mはそれほど特別ではありません。

 

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 キルギス自体が天山山脈にある国ですから、このまま天山山脈を直線で南に300km横断すると、中国のゴビ砂漠に着きます(下図)。そのコースをたどってキルギスまで来たのが玄奘三蔵です。629年、彼は中国側から入り、4285mのベデル(Bedel)峠を皮切りに、いくつもの峠を越え、最後にバルスクーン峠を越えて、キルギスに入っています(「三蔵法師の歩いた道」長澤和俊、青春出版社)

 彼が行こうとしたインドとは方向がだいぶん違うが、当時はこのように遠回りをするのが正しい道だったのでしょう。彼はイシク・クル湖の南側を、ちょうど私たちが通ったのと逆方向に行き、さらにウズベキスタンのタシケントやブハラにまで行っています。彼の知力と体力は桁違いで、脱帽です。

 

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ランチボックスと敷地面積

 バルスクーン(Barskoon)の住宅街にあるゲストハウス(Makedon Guest House)で昼食用のランチボックスを仕入れます(8:29)。予約はしていただろうが、作っている最中か、これから作るのでしょう()。三十分ほど待たされました。

 

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 ここはバルスクーンの大通りなので、出勤や通学の人たちが通ります。

 

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 周囲は静かな住宅街で、建物は普通の家に見えます。だが、実は日本とは大きく違う点があります。

 下の衛星写真のように、計画的に作られた街で、通りに面して住宅は隣接しているが、奥に敷地が長く、反対側の建物までは100m近くもあります。おそらく旧ソ連時代に作られたのでしょう。

 

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 道路に囲まれた1区画の長さを測ると260m×130mで、そこに20戸あるらしいから、単純に割り算するなら、一戸あたりの敷地面積は26m×65m=1690(500)です。

 日本の総務省の統計では、日本の戸建ての敷地面積は100300(3090)が約半数を占めますから、単純に真ん中を取るなら200(60)が日本で平均なのでしょう。都心でもない限り、私の周囲でも建売はたいていそのくらいの面積ですから、ここの敷地面積は何とその8倍です。日本では農家でもない限り、普通のサラリーマンが500坪の敷地に住むなどありえません。建物は平凡だが、実は日本とは比較にならないほどの「邸宅」に住んでいるのです。

 

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 日本は平地が国土の三割しかなく狭いから土地が高い、というなら、キルギスはほとんどが天山山脈の中で、これまで見て来たように山だらけ、それも標高が高いから日本よりも条件が悪い。

 キルギスの一つ大きな違いは人口密度が桁違いに小さいことです。それだけ見るなら、日本は人口を減らすべきでしょう。老後の年金を生み出すために子供を産めなどという考えは時代錯誤で、それなら育てやすい環境を作り、教育費に投資するべきなのに、待機児童の問題は何十年たっても解決できず、高校の授業料の無償化を政争の材料にしているレベルです。

 

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 日本の家ともう一つの大きな違いが写真下で、作りかけの家の壁は植物の繊維の混ざった土壁です。この上からさらに漆喰を塗るのでしょう。一つのブロックの厚さが30cmくらいあるから、断熱性や防音はかなり良いでしょう。日本の建物の防音面は絶望的です。

 

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 写真下はこの日、泊まったカラコルのホテルの近くで見かけた建築中の建物です。同じように、壁は長方形の土のブロックを重ねて作っています。日本の土壁は土蔵があるくらいで、あまり発達しませんでした。湿気が強いから難しいのでしょうか。

 

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 すべての家屋が土壁ではなく、写真下右の廃屋はレンガを使い、また写真下右は木造です。

 

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 ランチボックスはまだらしいから、住宅街の花を見てみましょう。ゲストハウスの反対側の家は空き家らしく、ヨモギなどの雑草が生い茂っている(写真下)

 

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 写真下は白い花が見事に広がっています。東ヨーロッパから西アジアが原産とあるから、あるいはここも元々あったのかもしれません。北米などに広がっています。

 

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写真上 Lepidium draba

 

 写真下のアブラナは世界中どこにでも、もちろん日本にも生えています。

 

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写真上 Discurainia sophia

 

 こんなふうに空き家になり、かつては子供たちが遊んだ庭には草木が生い茂り、彼らの思い出さえも忘れさられて行く光景はわりと好きです。

 

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道端の男女比

 通りの電柱には人の顔写真などが三色の旗と一緒に下げてあります。キルギスでは有名な人たちなのでしょう。ただ、キルギスの旗は赤と黄色なので、緑が入っている理由がわかりません。

 

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 おもしろいのは男女の数です。私が適当に撮っただけですから、これだけで比較するのは無理があるが、それでも、男性5人、女性4人です。写真上の2枚あるヘルメットをかぶった軍人はTagay Biyという16世紀の英雄で、さらに別な男性二人は1700年生まれですから、3人の男性は古い時代の人たちです。女性は、写真下左のジャニル・ミルザ(Janyl MyrzaжаHыл Mыpза)1617世紀の伝説的な英雄で、後の3人は1900年代の人たちです。

 つまり、近代では男女の数がそれほど差がない。これはたぶん旧ソ連時代の共産主義が男女平等だったからでしょう。

 

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 日本は2019年6月で、45都道府県の中で女性知事は東京都と山形県のたった2人です。その山形県も県議会議員になると女性は5%以下で、全国平均の10%という情けない数字よりもさらに情けない。このどれもが異常な数字です。大学の医学部入試で男女差別していた件も、結局、大学関係者は誰も処罰されていない。

 

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 私は男女平等の人権擁護をしているのではなく、こういう差別が経済や医療などの様々な分野の発展を妨げており、最終的に私の財布や健康を直撃して実害があるから言っているのです。男女差別をしている政治家や識者のオエライさんたちが自滅するのは自由だが、私を巻き込まないでくれという意味です。

 

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黄金のバルスクーン溪谷

 道は山の間のバルスクーン溪谷に入り、それまでの舗装道路から、デコボコ道になりました(写真下)。でも、ホコリはそれほど舞っていないのには理由があります。

 

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 ここで大活躍しているのが散水車で、散水しているので道路はホコリが立たない。

 

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 散水用の水は山から流れ出るミネラルウオーターです(写真下)

 

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 私たちの前を走る緑色の3号車は排気ガスがひどく、後ろをついて行きたくない(写真下)。コイツ、日本車の恥だよな。ホコリと排気ガスで窓も開けられないので、ホコリだけでもなくなると助かります。

 

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 少しだけ観光客用のユルタが見られます(写真下)。予想したよりも少ない。

 

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 ここは人類初の宇宙飛行をしたユーリー・ガガーンが好んで訪れた溪谷として有名で、彼のモニュメントもあるはずなのに、気が付きませんでした。

 

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 もう一つバルスクーン溪谷が有名なのは、クムトール(Kumtor)という世界有数の金鉱山があることです。カナダの会社が採掘していて、取り分を巡ってキルギス側ともめました。キルギスのGDPの一割を占めて、国の経済がこの鉱山一つに大きく依存しているのですから、もめるはずです。

 皆さんもこの溪谷が黄金の塊だと聞いて、見方が変わったでしょう?私も金塊が落ちていないかと道端の石ころに目を凝らしました()

 

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 てっきり大型トラックが出入りしているのかと思ったら、見かけたのは写真下のタンクローリー車が5台ほど道端に停まっていただけです。1998年にはトラックが横転して積んでいたシアン化ナトリウムが流出し、先ほどランチボックスを受け取ったバルスクーンの住民5000人が避難したそうです・・・このタンクローリーはその薬品を積んでいる?!なんでもいいから、早く通り過ぎましょう。

 

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最初の花の観察

 本日の最初の花はアヤメです(9:27)。姿は日本のアヤメそのままだが、背は低く、写真下段左の約15cmのボールペンと比べてもわかるように、ほぼこんな程度の高さです。

 

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写真上 Iris ruthenica

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 東ヨーロッパから中央アジアまでの広い範囲に分布します。イギリスでは永遠のアイリス(ever blooming iris)、またロシア・アイリス(Russian iris)、巡礼者アイリス(pilgrim iris)、ハンガリー・アイリス (Hungarian iris)などとさまざまに名前を付いているところを見ると、かなり一般的なアメヤのようです。

 

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 写真下はマメの仲間で、白地の花弁の先だけ紫色で、なかなかオシャレ。このあたりで標高2600mほどです。

 

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写真上 Astragalus alpinus

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トロリウス・リラキヌス

 白いヒツジが門番をしているゲートを通過(9:44、写真下右)。たぶん、昨日、イシク・クル湖の展望台でも見たマルコポーロという野生のヒツジです。ここからがいよいよ本格的な上り坂です。

 

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 森林限界を越えたので、樹木は一本もありません(写真下)

 

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 雪の迫る斜面で花を探します。このあたりで標高3700mですから、富士山の山頂近くの高さです。空気が薄いのは、言われなくても、息が切れて頭がクラクラするのでわかります()

 

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 本日の目的の一つであるリラキヌスが斜面に一面に咲いています(写真下)

 

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写真上下 Trollius lilacinus

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 トロリウスはキンポウゲの一種で、日本のキンバイソウの仲間です。中央アジアから天山山脈の東のシベリアやモンゴルにも生えています。旧学名はヘゲモネ・リラキナ(Hegemone lilacina)という奇妙な名前で、名前を変えてもらって喜んでいるでしょう。

 

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 園芸種のトロリウスはたいてい黄色か薄黄色なのに、ここのは目立たない白です。キルギスの固有種でもなく、高山植物としてはありふれた姿の白い花をどうして騒ぐかは、写真下のように花を上からよりも、横から光を通して見るとわかります。

 

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 横から見ると、花弁の根元に微妙な青が混ざっているのがわかります。すべての花がそうではなく、しかも、その青色も花によって微妙に色が違うことは後でご紹介しましょう。

 

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 ハエが停まっています(写真下)。身体のテカリ具合から、ミツバチではなくハエです。普段なら、ハエなど嫌いだが、こんな高山で受粉を手伝っているハエを見ると、「がんばれよ」と言いたくなる()

 

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 写真下は612日に、ソンクル湖の近くでも見かけた花で、これでアブラナの仲間だというから、驚きです。中央アジア、アフガニスタン、ヒマラヤ、ロシア、モンゴルなどに分布します。

 

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写真上 Chorispora bungeana

 

 写真下はムラサキの仲間で、学名に天山の名前が付いているくらいで、キルギスと南に隣接するタジキスタンなど限られた範囲に分布するようです。

 

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写真上 Eritrichium tianschanicum

 

 写真下は小さなネコメノソウの仲間で、中央アジアよりも、ロシア南部とチベットに分布します。この植物の抽出液に胃癌細胞を死滅させる効果があるという研究があります(Pharmaceutical Biology, 54, 7, 1133-1139, 2016)。小さいがエライ奴なのかもしれない()

 

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写真上 Chrysosplenium nudicaule

 

 写真下左で倒れている人は雪山の遭難者ではありません、という皮肉っぽい表現をすることはご本人に同意をいただいていて、花の写真を撮っているところです。高山に限らず、小さな花を撮影する時は、寝っ転がるのが身体を安定するのに良い方法です。ただし、低い山ではダニなどの虫が恐い。

 

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 写真上の人が腹ばいで撮っているのが、写真下のサクラソウです。日本のサクラソウに比べて、大柄で色も姿も自己主張が激しい。

 

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写真上下 Primula nivalis

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 中央アジアからモンゴル、新疆、ロシアでは北極圏まで分布します。

 

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雪山と湖

 急斜面を登り終わると、雪山の見える平原といってもいいような平らな大地に出ました(写真下)。ここがバルスクーン峠らしい。今回のキルギスでしばしば峠と呼ばれる所を通過しても、どこがそれなのかわからないことが多かった。ここのようにこの平らな部分が峠のようです。

 

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 車を降りた所は、雪山に囲まれた標高が3800mほどの平原です。

 

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 目の前には雪に覆われて半分凍りついた湖があり、その向こうには4500mの山々が連なっています。富士山の頂上よりも高いわりには広々として起伏も少なく、私たち以外は誰もいないから、このままの天気なら、丸一日歩き回るのにはちょうど良いような場所です。

 

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 たぶんここは山に囲まれた盆地のようになっており、長年かけて周囲からの土砂が堆積して平地を作り、流れ出る川が少ないか、無いから、そこここに湖ができたのでしょう。

 

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 湖の大半は凍っているようで、雪に覆われたままで、泳げる雰囲気ではない()

 

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 荒涼として草は枯れた色をしていても、春先のように、探すとあちこちに花が咲いています。

 

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写真上 Oxygraphis glacialis

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 このOxygraphisの仲間はユーラシアに六種類あり、ここにあるのがもっとも分布が広く、中央アジア、ヒマラヤ、モンゴル、ロシアに分布します。

 

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 写真上と違い、写真下は日本にもあるキンポウゲと同じ仲間で、いかにも高山植物という雰囲気です。

 

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写真上 Ranunculus transiliensis

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 日本のミヤマキンポウゲと花の雰囲気は良く似ているのに背丈が低いのは、こちらのほうが厳しい環境だからでしょう。

 

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 写真下は開花前のキンポウゲだと思い込んで写真を撮りましたが、良くみると花弁が四枚しかないネコノメソウの仲間です。中央アジアからロシア南部、モンゴルかけて、また東チベットから雲南などに分布します。

 

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写真上 Chrysosplenium nudicaule

 

 キバナノアマナの仲間が咲いています(写真下)。日本のそれと姿や大きさも似ているが、花弁の裏が茶色なのが違います、

 

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写真上下 Gagea emarginata

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 写真下はユキノシタの仲間で、中央アジアからチベットにかけて分布します。

 

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写真上 Saxifraga macrocalyx

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 アズマギクもまた高山植物らしい姿で、これはヒマラヤ、チベットなどに分布します(写真下)

 

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写真上 Aster asterodes

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 写真下は名前がわかりません。午前中に見たEritrichium tianschanicumに似ていますが、花の付き方や葉の形が違います。

 

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 葉に白い毛があり、保温の役割をしているのでしょう。白い花が白い雪山と似合う。

 

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 先ほど群落で見たリラキヌスがここにも生えています(写真下)。背景の白い山だけでなく、周囲の枯れた葉が、この花と奇妙にマッチしています。

 

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写真上下 Trollius lilacinus

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 写真下の左右で微妙に花の色が違うのがおかわりでしょうか。こんなふうにこの花は簡単ではありません。後で、もっと明瞭な違いをお見せします。

 

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 松森さんが遠くから呼んでいます。何か見つけたらしい。湖に突き出た崖の下に咲く黄色いネギの仲間です。

 

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写真上 Allium semenovii

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 中央アジアの天山山脈やヒマラヤにかけて分布します。これまでもピンクや茶色のネギを見て来たように、中央アジアはネギの原産地です。前にテレビ番組で、モンゴルで原種の玉ネギを取って来て食べるという企画があって面白かったが、できれば見るだけで食べないでほしい()

 

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 写真下はこれまでも何度も登場したサクラソウで、キルギスではかなり一般的らしい。小さくて可愛らしいのでサクラソウというイメージそのまんまです。

 

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写真上下 Primula algida

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 写真下は花の色が濃厚なだけで、たぶん上と同じ種類です。

 

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 写真下はマメの仲間で、葉は白い毛に覆われ、コロニーを作って少しずつ増えていくなど、いかにも高山地帯に咲く花という印象です。

 

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写真上 Oxytropis chionobia

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 天山山脈を中心とする中央アジアに分布します。

 

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 山の上の方に登った植物ガイドの竹野さん(仮名)が呼んでいます。息切れしながら、斜面を登る。612日もソンクル湖に行く途中で見かけたキタダケソウの仲間です(写真下)

 

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写真上下 Callianthemum alatavicum

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 かなりの急斜面のガレ場にキタダケソウが一面に生えています。すぐ上の岩場が崩れてこの斜面ができたのでしょう。土が固まっていない所も多く、足をかけるとズルズルと滑ってしまい、キタダケソウを巻き込まないように気を使います。

 

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 キタダケソウの仲間は日本では三種類あり、キタダケソウが南アルプスの北岳の固有種、あとの二種類も北海道の特定の山にしか生えておらず、いずれも絶滅危惧種です。

 

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 北岳にはわずか600株しか残っていないという。減った最大の理由は盗掘です。山野草を育てるという番組や本があるが、個人的には大反対です。山野で生き残った花を都会で育てようとすることが間違っている。もっと監視や盗掘の罰則を厳しくするべきなのに、環境省は予算も関心もない。若い頃はそういう現状に怒りを覚え、素人なりに何かできないかと努力したが、年を取ったせいか、人間は愚かなのさと、皮肉っぽく諦めて、自分だけでも花を踏まないように気を付ける。

 

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 日本では見ることが難しいから、キルギスまで来て見ることになりました。キタダケソウの仲間はアジアからヨーロッパの山岳に分布していて、このalatavicumも中央アジアとチベットから雲南にかけて分布しています。612日にも少し見かけたことから、日本のようにある特定の山にだけ生えているのではなさそうです。

 

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 夢中になって撮っていて、気が付くと、他のお客さんがすでに下山して静かになっただけでなく、先ほどまでは青空もあった空がすっかり黒い雲で覆われています(写真下)

 

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 車に戻って昼食です(14:41)。外で食べてもいいのだが、寒い。どうせ車の中で食べるなら、私はぎりぎりまで花の写真を撮り、走っている車の中で食事を取ることにしました。

 

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 走る車の中で食べている間にも天候は悪くなり、周囲の山にも雲がかかり始め、やがて雪がぱらつき始めました(写真下)

 

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リラキヌスの色

 雪など気にせずに花の撮影です・・・と言って、車から降りたのは私と竹野さんだけで、他の皆さんは車の中です。写真下のように、何もない泥の平原のようですが、実はリラキヌスのお花畑です。皆さん、すでに午前中に撮ったから、いらないというのでしょう。いえいえ、アレはアレ、コレはコレです。

 

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 ここのは午前中よりも花弁の青味がはっきり出ている。午前中は強い日差しの中だったのに、今は曇り空ですから、光量が足りない分、色がとばず、微妙な中間色も出ているのでしょう。

 

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写真上下 Trollius lilacinus

 

 この花の特異性は写真下で、左が青味をおび、右は少し緑色が混ざっています。

 

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 写真下左は緑色が強くなり、写真下右は黄色みをおびています。

 

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 写真下左はほとんど白と言ってもいいでしょう。

 

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 写真下左は少し赤味をおびて紫色が混ざり、写真下右は傷み始めているのか、花弁のフチが赤味を帯びています。

 

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 色の微妙な違いをもたらしているのは曇天と、もう一つが天気が常に変化していることです。空が完全な曇りではなく、雪がちらつくのに時おり薄日が差し、すぐにまた暗くなるなど、目まぐるしく変化して、同じ花でも違って見えるのです。

 私一人だけ、他のお客さんを待たせたまま、雪の中で寒さに震えながら、目まぐるしく変わる花の色に夢中になっていました。なにせ空気が薄くて、酸素不足に弱い私の脳味噌はハイな気分になっているので、目の前の花たちのうつろう美しさに夢中で、他の人のことなんかきれいに忘れていました()

 

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キンポウゲのお花畑

 キンポウゲの咲く斜面を登ります(写真下)。雪がちらついて寒く、高山病の初期症状で頭はクラクラし、少し登ると息が切れる。せっかく上がったのに、下りてまた上らなくてもいいように、周囲の地形を良く見ながら登る()

 

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 晴れていたら、きれいなお花畑で、大の字に寝たら気持ちが良いだろうに、ちょっと残念な天気です。

 

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 この黄色い花は先ほど湖の近くで見たのと同じキンポウゲです。

 

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写真上 Ranunculus transiliensis

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 高山の定番のエーデルワイスが少し咲いています(写真下)。ネット上のキルギス旅行記にエーデルワイスがさかんに出て来ていたのに、今回の旅行ではあまり頻繁ではありませんでした。

 

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写真上下 Leontopodium ochroleucum

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 写真下のスミレもこれまでも出てきたことがあります。数は多くありません。

 

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写真上 Viola kunawurensis

 

 前にも何度か出て来た黄色いシオガマギクの仲間です(写真下)

 

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写真上 Pedicularis oederi

 

 ここから先は初めてお目にかかる花たちです。

 まずはフデリンドウのような小さなリンドウです(写真下)。中央アジア、チベット、ヒマラヤ、そしてそのままの横幅で北のロシアを北極海まで縦断するような、つまり中央ユーラシアに分布します。小さいがすごい。

 

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写真上 Comastoma falcatum

 

 写真下のマンテマの仲間は、主な分布は北極海を囲むように、北欧、ロシア北部で、キルギスは例外的な飛び地になっています。氷河期が終わり、ここに取り残されたのでしょう。おい、がんばれよ。

 

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写真上 Silene wahlbergella

 

 ヒナギクのような花が咲いています(写真下)。子供の頃、これと似たようなヒナギクが園芸種として花壇の定番で、どこにでもはびこっていたのに、今はまったく見ない。花はどこに行った?

 

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バルスクーン溪谷からカルコルへ

 目的の花はすべて見たので、雪の中、山を下ります(16:25)

 

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 山を下りるにつれて雲から出たので、晴れてきました(写真下)

 

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 美しい雪山の撮影のために車を停めました(写真下)。雪山は遠くから見る分にはいいのだが、雪が降るのはあまりうれしくない。

 

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 車はイシク・クル湖の南を走る幹線道路に戻り、今日の宿泊地のカルコルを目指します。

 

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 先ほどまでは雪の中で震えていたのが信じられないくらい、のどかな風景の中を走ります(写真下)

 

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 子供はロバに乗り、大人は馬に乗る(写真下)

 

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 カラコルの街中に入ってきました(写真下)。目についたのが、写真下右の看板で、真ん中に戦車があり、右側に勲章をつけた軍人が写っていますから、彼を称えているのでしょう。しかし、良くわからないのが、そのマークです。

 

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 写真下が写真上を拡大したもので、赤い星がいくつもあり、戦車にも赤い星が付いています。赤い星は共産主義の象徴で、しかも、写真下左の赤い星の中にある鎌と金槌のマークは旧ソ連とその連邦で使われたものです。何の看板なのか字が読めないのでわからないものの、今日のキルギスに旧ソ連寄りの看板があるのには驚きです。今回の旅行で見かけたのはここくらいでした。

 

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高山病はどこに行った?

 カラコル(Karakol)のゲストハウスで夕飯です(19:22)。ここは今日の宿ではなく、夕飯をとるだけです。庭にトイレがあるというので案内してもらい、外から写真を撮るだけで戻りました()

 

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 参加者の全員がそろって夕飯です(写真下)。私は目の前のこの光景が信じられない。私たちは今日4000m近い山々を歩いて来たのに、全員がここで夕飯を食べているからです。これはこれまでの私が高山地帯を旅行した経験ではありえないことで、10人いれば、たいてい一人か二人は高山病で夕飯など食べられる状態ではありませんでした。

 

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 ここ数日2000mの山々を旅して、平地からいきなり4000mに来たのではなく、順応しやすいということあるにしても、イシク・クル湖が1600mですから、2400mも上がったことになるのです。

 

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 一番不思議なのは、高山病に弱い私が普通に動いていたことです。これまでの経験から、私は3000mを越えたあたりから酸素を吸うと順応できるので、今回も酸素を準備してきました。息切れや軽い頭痛といった高山病の初期症状は出ていたが、そこまでなので、使っていません。私と同じように高山病にかかりやすいお客さんがいて、やはり初期症状は出ているのに、普通に食事をしています。

 気が付かずに、高山に順応しやすい行動を取っていたことになります。それが何なのか、仮説はいくつか思いつくが、「実験データ」がまだ足りない。

 

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 食事を終えて、今日の宿泊予定のカラコルのホテルGreen Yard Hotelに着いたのはだいぶん暗くなってからでした(20:44、写真下)。しかも、予約の手違いがあり、部屋が足りず、松森さんだけは近くのホテルのオーナーの家に泊まることになりました。

 

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 予約の手違いでだいぶん時間がかかってから、部屋が決まりました。建物に入る時には、ここでもスリッパに履き替えます。写真下が私の部屋です。

 

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 ここはホテルなので、設備はしっかりしていて、私の部屋は何の問題もありませんでしたから、個人的な評価は4.0で、満足とします。だが、予約がうまく取れていなかったり、他の人たちの部屋はお湯が出にくいなど、いくつか問題があったようですから、少々、甘く点数を付けています。ゲストハウスが続いたので、ホテルだと良く見えます()。ここに二泊します。

 

 

 

 

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