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10 3日目 2009年7月15日(水) 康定→雅加埂→公塔→丹巴 寝過ごした 八時から食事なので、七時に起きるつもりでした。朝、時計を見るとまだ7時36分・・・え?!わっ、ヤバイ、寝過ごした! 実は、早朝から騒音があり、耳栓をして寝直したのです。効果てきめんで、目覚ましの音に気がつかなかったようです。あわてて飛び起きて食堂に行き、烏里さんに、寝過ごしたので出発を10分でいいから遅らせてくれるように頼みました。朝食もそこそこに部屋に戻り、急いで荷物をまとめました。と言いながらも、しっかりと窓の外の写真だけは撮りました(写真上)。 8:39に予定どおり(?)に出発。今日はまず康定の近くの雅加埂という峠に行き、高山植物の撮影をします。車が康定の街を出て谷沿いに南に進むと意外な光景が広がっていました。新しい街が建築中なのです(写真下)。 人工的に計画された街なので、人通りもまばらなのに、どれもこれも新しい建物ばかりです。上の写真右は後で谷の対岸から撮ったもので、これは全体の一部にすぎず、大規模な開発です。康定自体も新しいきれいな街なのに、さらに造ろうというのです。康定には雅安から高速道路と鉄道が引かれる予定があるから、こういう将来を見越して、ここは山が多いので、康定の街を改造するよりも、新しい街を造ってしまおうという計画なのでしょう。 我々の車は新しい街を通り過ぎ、そのまま雅加埂への山道を進みます。すると、その突き当たりにある谷でもなにやら土木工事が盛んに行われていました。 何を造っているのかはわかりませんが、ただ道路を整備するだけにしてはずいぶん大規模に斜面を削っています。新しい街と関係した工事をしているのでしょう。数年後に新しい街とこの谷に来たら、びっくりするような光景が広がっているかもしれません。 しかし、我々が見たいのは造成開発された街ではなく、自然と花です。造成されている谷の山の向こうに、白く雪をいただいた山が見えました(写真下左)。 道は昨日の工事だらけの悪路とは比較にならないほど快適です。高度が上がるにつれて、道の両側には様々な高山植物が見え始めました。しかし、帰りに同じ道を戻るので、まずは峠の一番上を目指します。 雅加埂の青いケシ 峠の一番上で車を停めました(9:43, 3810m, 写真下)。ちょっと霧が出ていますが、撮影にはそれほど困りません。 まだ、シャクナゲの花が残っています(写真下)。 一番の目的である青いケシが早速みつかりました。いつ見ても可憐です。季節もちょうど良かったようです。 写真上:メコノプシス・ランキフォリア (『世界のワイルドフラワー Ⅱ』p.142、『雲南花紀行』p.103) ここの青いケシはやや小柄で、青というよりも紫がかった色をしています。青いケシは登ってくる途中にはなく、この峠の一番高いところにしかありません。 おもしろい格好をしたユリもありました。図鑑では見たが、本物は初めてです。花弁の先が合わさったままで、これで開花した状態です。下山する途中にもっとありましたから、後でさらにお目にかけましょう。 写真上:リリウム・ロフォフォルム (『世界のワイルドフラワーⅡ』p101.) ポテンティラ・フルティコサ・リギダ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.436) ボネロルスキ・クスア (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.696) 峠付近で目立つキンポウゲは白と青の色が二種類あります(写真下)。形がそっくりですから、おそらく同じ種類で色が違うだけなのでしょう。青を見ると、一瞬青いケシかと思うような色をしています。シャクナゲの間から茎をのばして花を咲かせています。 アネモネ・オブトゥシロバ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.620、『中国秘境に咲く花』p.34) 同じキンポウゲでもこちらはもっと小柄で地面に近い所に生えています(写真下)。下山途中のもっと低い所にもたくさん生えていました。 トロルリウス・ラナンクルロイデス (『中国秘境に咲く花』p.41) 写真上:アスター・スーリエ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.88、『中国秘境に咲く花』p.79、『世界のワイルドフラワーⅡ』p.88) ゲンティアナ・チュンティエネンシス (『雲南花紀行』p.118) 写真上:アレトリス・パウキフロラ (『世界の山と高山植物のアルバム』) ユンクスの仲間 (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.736) サクラソウが満開です。烏里さんによれば、春から秋にかけて、かなり長い期間にわたってサクラソウは咲いているそうです。 写真上:プリムラ・ステノカリクス (『世界の山草・野草ポケット事典』p.182) 土手一面に咲いている姿はとにかくきれい。 同じサクラソウでもこちらはちょっと地味な色です(写真下)。高い所ではこういう紫色ですが、もっと低い所に生えると青紫になります。 写真上:プリムラ・ケルヌア (『世界のワイルドフラワーⅡ』p.86 ) ゲラニューム・ムーピネンセ (『中国秘境に咲く花』p.91) 写真上:ソロセリス・ヒルスタ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.69) カルダミン・タングトルムまたはカルダミン・マクロフィラ・ポリフィラ (『中国秘境に咲く花』p.96または『ヒマヤラ植物大図鑑』p.534.、『雲南花紀行』p.152) 写真上:ゲンティアナ・プルゼワルスキイ (『世界のワイルドフラワーⅡ』p.81) ケラスティウム・ケラスティオイデス (『ヒマヤラ百花』p.68,117) 中国高山植物園 来た道を少し引き返し、石碑が建っているあたりで記念撮影をしました(写真下)。 石碑には、「康定・雅加埂 中国高山植物園 海抜3830米 甘孜州登山訓練基地」と刻んであります。つまり、このあたりが植物の保護区だという意味のようです。周囲はコンクリートの杭を打ち、柵が設けてありますが、写真を撮るのに邪魔なだけで、ほとんど役立っていません。人間というよりも、放牧された牛などが入り込まないようにするためのものでしょう。 この後、下山しながら、何度も車を止めては撮影をしました(12:17)。 道路を造るために削られた崖は、自然破壊ではあるものの、花の撮影には案外便利なことがあります。道路のすぐそばだというのと、植物が少ないので、特定の花が見事に咲いていることがあるからです。その典型が下の写真です。 写真上:ロディオラ・クァドリフィダ (『世界のワイルドフラワーⅡ』p.92 ) 道路の土手に一面に咲いているのを下から撮りました(写真下)。工事で他の植物がなくなり、特定の植物だけが残っているので、被写体としては便利です。 写真上 リグラレア・ラティリグラタ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.103) 写真下は別な所で撮ったもので、写真上と同じ種類かと思っていたら、よく見ると、花の付き方が違います。写真上は茎に花が一つだが、写真下は茎にいくつも花がついています。 写真上:リグラリア・フッケリ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.103) 写真下は写真上と同じ所に生えていたものです。てっきり同じ種類かと思ったら、葉の形が違います。写真上はフキのように丸く、写真下はやや細長い。 写真上 リグラレア・ツァンカネンシス (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.104) 写真下のダイオウが一面に生えている所もありましたが、ちょっと距離があり、近寄れませんでした。中国では「水大黄」というそうです。 レウム・アレクサンドラエ (『世界のワイルドフラワーⅡ』p.74、『花の回廊』p.5、『雲南花紀行』p.149) サクラソウも何種類かあり、あちらこちらに群落しています。 一つ目は、峠の上にもあった紫のサクラソウです(写真下)。峠よりも花も多く、色も薄紫で、今回の旅行中ではここが一番きれいでした。周囲に草が多いと、花の茎が1m近くものびます。しかし、ここは比較的陽射しもあり、周囲にライバルが少ないせいか、バランス良い大きさです。 写真上:プリムラ・ケルヌア (『世界のワイルドフラワーⅡ』p.86、『雲南花紀行』p.123 ) 写真下は小川が流れているあたりに多い黄色のサクラソウです。背丈は70-80cmくらいまでなるなど、大柄で迫力があります。 写真上:プリムラ・シッキメンシス (『中国秘境に咲く花』p.47、『世界のワイルドフラワーⅡ』p.83、『雲南花紀行』p.128、『エベレスト花街道を行く』p.24)、 黄色いサクラソウに負けないくらい大きさのピンク色のサクラソウもあります(写真下)。黄色と同じ小川のそばに生えていました。写真を見てもわかるように、これらの周囲には他の花たちが足の踏み場もないほどに咲いています。 写真上:プリムラ・セクンディフロラ (『世界のワイルドフラワーⅡ』p.85、『雲南花紀行』p.127) 写真下は峠で見たのと同じ小型のサクラソウです。色はピンクです。 写真上:プリムラ・ステノカリクス (『世界の山草・野草ポケット事典』p.182) 下のサクラソウは今回お気に入りの一つで、他のサクラソウに比べて、花の色が微妙に違います。 写真下はさらに山を下りたところに生えていたオレンジ色のサクラソウです。一本一本ももちろんきれいですが、一面に生えているとなかなか強烈です。斜面に生えていると、オレンジの色の絵の具を筆に付けて飛ばしたかのように、色が浮き上がってみえます。 プリムラ・ブレヤナ (『雲南花紀行』p.125) トロルリウス・ラナンクルロイデス (『中国秘境に咲く花』p.41) アネモネ・リブラリス var. フロレミノール (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.615、『中国秘境に咲く花』p.35) カルサ・バルストリス (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.590、『中国秘境に咲く花』p.36) 道の周囲は高山植物だらけ 道路のそばなどにアヤメが生えています(写真下)。色は紫というよりも、黒に近いような強烈な色です。山道に沿って生えている光景は一服の日本画のような構図です。 写真上:イリス・クリソグラフェス (『世界のワイルドフラワーⅡ』p.112 ) モリナ・クルテリアナ(またはコウルテリアナ) (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.125、『世界のワイルド・フラワー』p.79) ゲラニウム・レフラクトゥム (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.387、『エベレスト花街道を行く』p.43、『エベレスト花の道』p.69) 写真下は目の覚めるような真っ青なコリダリスです。 コリダリス・パチケントラ (『雲南花紀行』p.146) 同じコリダリスに黄色のもあります(写真下)。 写真上:コリダリス・リナリオイデス (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.565、『中国秘境に咲く花』p.27) レオントポディウム・ストラケイイ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.80、『世界のワイルドフラワーⅡ』p.89) 写真上:オキシトロピス・ラッポニカ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.416) ステルレラ・カマエヤスメ または キングドニア・ユニフローラ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.364、『中国秘境に咲く花』p.105、『世界のワイルドフラワーⅡ』p.125、『花の回廊』p.90、『雲南花紀行』p.161) 写真上:リリウム・ロフォフォルム (『世界のワイルドフラワーⅡ』p101. 、『雲南花紀行』p.130) 峠の頂上付近で見かけた変わった形のユリです(写真上下)。下記の写真のユリの花には緑色の葉っぱのようなものがついています(写真下左)。花弁の一枚が緑色なのか、それとも、先祖返りしたガクなのか、わかりません。すぐ隣の花は普通です(写真下右)。 写真下はもう一つの変わり種です。このユリは普通は花の色が黄色なのに、この株は赤茶けています。古くなって枯れ始めたとのかと思いましたが、左側の花はまだ若いようですから、これが花の色のようです。 ゲラニューム・ムーピネンセ (『中国秘境に咲く花』p.91) 写真上:サルヴィア・ワーディー (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.202、『花の回廊』p,32) ゲンティアナ・チュンティエネンシス (『雲南花紀行』p.118) 下の写真のリンドウは色が違うだけで、姿形は上とよく似ています。別種なのか、それとも単に色違いなのかよくわかりません。 ペディクラリス・ムッソティ・ロフォケントラ (『花の回廊』p.12) 写真上:ノトリリオン・ブルブリフェルムまたはノトリリオン・カムパヌラトゥム (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.748、『花の回廊』p.123、『雲南花紀行』p.185、『エベレスト花街道を行く』p.39、『世界の山草・野草ポケット事典』p.195) パルナッシア・キネンシス (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.475) ペディクラリス・モンベイギアナ (『世界のワイルドフラワーⅡ』p.105) 左:ローザ・ウィルモッティアエ、右:ローザ・オーメイエンシス (『中国秘境に咲く花』p.101) ロードデンドロン・ファエオキスム var
アググルティナータム (『中国秘境に咲く花』p.59) ビオラ・ビフローラ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.362、『中国秘境に咲く花』p.92、『エベレスト花街道を行く』p.48) エピロビュム・アンガスティフォリウム(ヤナギラン) (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.352、『花の回廊』p.18) キノグロッスム・アマビレ(?) (『花の回廊』p.18) 七月なのに小川にはオタマジャクシがいます。 街の食堂で昼食 峠を降りて、昼食のために街の通りの小さな店に入りました(写真下、14:55 2785m)。 外見からはとても食堂には見えません(写真上左)。看板を見ると、炒飯や包子などの字から、どうやら食堂らしいことがわかる程度です。普通のパックツアーではまず立ち寄らないような所ですし、滅多にない経験なので、私は興味津々です。 中は十畳程度の広さで、入り口が調理場になっており、奥に小さいテーブルが三つあり、十人も入ると満席になるような店です。女性が二人で食べ物を作っています。大木を輪切りにしたらしいまな板と、そこに突き立てた包丁がたくましい(写真下右)。 お姉さんがすでに出来上がっている餃子のようなものを湯でています。お姉さんはこれからお出かけするような服装で、料理を作る時の服装に見えません。また食堂の外見とも合いません。でも、これがここでの正しい服装なのでしょう。 出て来たのは、餃子をたれの中に漬けたような食べ物です(写真下)。たれの色の割には塩分が薄いのに最初驚きました。だが、かき混ぜて食べると、色どおりの塩見になりました。まあ、特にうまいもまずいもありません。 食事を終えて、向かいの店で、水2本を3元(45円)で買いました(写真下)。下の写真のように、どれが店かよくわかりません。建物にかけてある看板の左の窓の中が店です。窓からのぞき込んで買い物をします。食堂といい、店といい、地元の人を相手にしているからこんな造りなのでしょう。 食事を終えてようやく本日の目的地の丹巴に出発です(15:09)。と言っても、康定からはまだ5kmも来ていないから、これからおそらくは200km以上も走らなければなりません(地図下)。高速道路や日本の道路なら大した距離ではありませんが、これまでの様子から見て、悪路が予想されますから、どう見ても、到着は夜中になります。 どこもかしも道路工事中 出発して1kmもいかないうちに早速道路工事で通行止めです(写真下、15:16、2930m)。今までの道路工事から見て、一度通行止めになると、最低でも三十分、長い場合には1時間待たされます。結局、1時間近く待たされました。開通した時間から逆算して、おそらく三時にここは閉鎖になったのでしょう。我々は一番間合いが悪い時には到着したことになります。 烏里さんはこの工事の情報をつかんでいたので、二時までにここに通過するつもりでいたようです。しかし、山での撮影が長引き、1時間遅れてしまったために、足止めを食うことになりました。なにせ、山での撮影を長引かせた犯人の一人は私ですから、何も言うことはありません(笑)。待つことにしましょう。 炎天下、ひたすら耐えます。バイクで家族旅行をしているらしい白人のグループもいます(写真下左)。こんな山の中の悪路を子供連れで走っているのだから、たくましい。 炎天下、耐えること約1時間、ようやく開通しました(16:06)。猛烈な悪路を走って十分もしないうちにまた通行止め(16:16-16:25)。さらに恒例の通行止め(16:54 3749m)。通行止めも写真の撮影には役立つと割り切って、待ちます。下の四枚の写真は続き写真で、だいたい横幅が270度くらいの風景です。 折多山の青いケシ 通行止めの場所から一気に斜面を登り切ると、ようやく折多山の峠に到着しました(17:16,4130m)。ネットでの情報では、この折多山の近くに康定空港が作られ、2007年には成都からの試験飛行が終わったとありました。しかし、午前中から空を見ていても、飛行機らしい姿はまったく見かけませんでした。 自転車でここまで来た人たちが山頂で休憩しています(写真下左)。道を走っていると自転車で旅行している若者をけっこう見かけます。道路はどこもここも工事だらけですから、車が通るたびに猛烈なホコリです。なによりもここは四千メートルです。私は酸素を吸いながらよろよろと歩いているのに、彼らはこの高地を自転車でここまで登ってきたのです・・・すごい。 峠の頂上には仏塔があり、周囲が一望できます(写真下)。 本日の予定からいったら、ここまででまだ2割も走っていません。さあ、遅れを取り戻すためにも一気に丹巴まで・・・ではなく、この峠でまたしても、一時間ほど花の写真を撮りました。 五時すぎでも、ここは中国でも西のほうなので、まだ十分に陽が高い。ちょっと風がありますが、天気も良く、撮影には好条件です。 早速、青いケシが見つかりました。ここもどちらかというと、小柄な紫色のケシです。青いケシがみつかると、もう全部の苦労が報われたような気になるから不思議です。しばらく見ほれていたいところですが、あまり時間もありません。 写真上:メコノプシス・ランキフォリア (『世界のワイルドフラワー Ⅱ』p.142、『雲南花紀行』p.103) 写真上:シレネ・カンツェエンシス (『世界のワイルドフラワー Ⅱ』p.76) 斜面に生えている花はどれも小型で、しゃがんで写真を撮ります。撮り終えて、ここが四千メートルの高地であることを忘れて、うっかりそのまま立ち上がったりすると、クラクラとめまいがします。スローモーションのつもりで、ゆっくりと身体を起こし、それから頭を上げます。 シャッターを押す時は手ぶれしないように、息を止めますから、シャッターが押しおえた後は、百メートルを全力疾走したかのような呼吸になります。 アスター・スーリエイ (『中国秘境に咲く花』p.79) 写真上:オキシトロピス・ラッポニカ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.416) ポテンティラ・フルティコサ・リギダ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.436) アレナリア・ブリオフィラ (『花の回廊』p.1) ケラスティウム・ケラスティオイデス (『ヒマヤラ百花』p.68,117) 白い花が「アネモネ・リブラリス var. フロレミノール」 (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.615、『中国秘境に咲く花』p.35) 黄色い花が「トロルリウス・ラナンクルロイデス」 (『中国秘境に咲く花』p.41) ペディクラリス・ムッソティ・ロフォケントラ (『花の回廊』p.12) 写真上:ペディクラシス・ケイランティフォリア (『中国秘境に咲く花』p.125、『ヒマラヤ植物大図鑑』p.161) こんなふうにきれいな高山植物がたくさん生えている場所なのに、実はゴミだらけです(写真下)。観光客が落としたゴミの他に、タルチョと呼ばれる経典を印刷した紙が無数に周囲に散らばっていて、それはもう見苦しい。紙ですから、いずれは風雨にさられて消えるでしょうけど、それまでの間、強風にあおられ、あちらこちらに飛び散ります。チベット仏教では、風が経典をはためかせるとお経を読んだのと同じ功徳があるとしているらしく、こういう峠などに飾ってあります。山を汚さないことのほうが大きな功徳が得られるような気がします。 もっと写真を撮りたいが、これから先が長いので、心残りながら折多山を後にしました(17:56)。 タルチョで商売繁盛 道路は相変わらずの悪路に加えて、所々で工事中です。 新都橋(18:52 3300m)に到着して、ようやくアスファルトになりました。ここからはミニヤコンカという山が見えるはずですが、雲が多いので今日は無理です。我々は大幅に予定より遅れていますから、街を通過して、川蔵公路をひたすら北に向かいます。アスファルトになったのは一部分で、まだまだホコリだらけの悪路が続きます。 休憩(19:15)。曇っているが、夕暮れ時ののどかな草原が広がっています(写真下)。草原は黄色い花が一面に咲いています。ここもまた三千メートルの高さですから、草原に生えている花もまた高山植物です。 道路の進行方向の北の山の斜面が色鮮やかに染まっています(写真下)。折多峠でも見かけたタルチョと呼ばれる経典を印刷した旗を山一面に飾っているのです。遠くからこれだけに見えるのですから、タルチョが飾られているのは相当な広さです。 この前後の道からも、タルチョを飾った山や祈りの文字が飾られているのが何カ所が見えました(写真下)。 地元の人たちの信仰心かと思ったら、これは商売で、タルチョを山の斜面に飾ることを有料で請け負っているとのことでした。そう言われてみると、商売繁盛なのか、道から見える家はどれもとても立派です(写真下)。 塔公(ターゴン)に到着(19:50)。ここでようやく康定から百キロほど来ました。さすがに八時近くですから、もう薄暗くなり始めています。お寺の門前町で、観光もできますが、我々はトイレ休憩だけです。 トイレは有料で、入口には女性たちが編み物やおしゃべりをしています(写真下)。トイレ番にしては数が多いと思ったら、トイレの後ろに馬がたくさんいましたから、馬で観光案内をしている人なのでしょう。 塔公は、七世紀に作られた塔公寺というチベット寺(サキャ派、花教)が中心の街です。先ほどと同じように、山の斜面にタルチョが飾られていて(写真下)、数が多いから、けっこう商売繁盛のようです。 道沿いにお寺などが見えます(写真下)。烏里さんによれば、写真下右のお寺など新しく作られたものだそうです。観光で参拝者が増えて、新しい寺院を造るだけの余裕ができたのでしょう。 そういう世俗よりも、トイレの向こうには切り立った山が雲間から出ています(写真下)。雅拉山(ヤーラー,5820m)でしょう。我々はこの後、あの山の左側(西)を通って、山のむこうの丹巴に向かいます。推定で70-80kmあります。では、またホコリだらけのデコボコ道を走りましょう。 雷雨の中を走る 3760mの峠を通過(20:00)。と言っても、外は暗くて、風景はよくわかりません。 八美(ガルタル)を通過(20:57、3460m)。だが、もちろん、真っ暗で何も見えません。最初遠くで雷が鳴っていたが、だんだん近くなり、ということは我々が近づいたのでしょうけど、やがて雨が降り始めました。時々、雷があたりを照らし出すので、ここが山の中だということがわかります。相変わらず、四輪駆動車が壊れるのではないかと思うほどの猛烈な悪路で、穴を避けて道路を右に左にハンドルを切ります。暗くなってどんなにひどい状態か見えないのが幸いです。 3350mの仏塔のある峠を通過(21:21)。烏里さんによれば、このあたりにも花が咲いているそうです。地図では、「中国香格里拉高山植物園」とあります。では、さっそく降りて花の写真を・・なんてことはありません。ひたすら丹巴にむかって降りていくだけです。 このあたりから丹巴まではたいへん風光明媚な地域です。雷の光で時々風景が見えるだけで、風光明媚というわけにはいきません。道路は今までよりはいくぶん舗装している部分が多く、周さんもひどくなった雨の中、必死に車を走らせます。彼の運転技術はなかなかなものです。 標高2200m頃と、丹巴まであと少しと迫ったころでしょうか、後ろの席からライトに照らされた前方を見ていると、道路の右側に赤い柱が立っているのが目に入りました。「あっ」と私は思わず声を出し、周さんも急ブレーキをかけたが間に合いません。車は大きくバウンドして、眠っていた人たちも飛び起きました。どうやら、道路に大きな穴が開いているので、警告のための赤い杭を立てたらしいが、日中ならともかく、夜では、すぐ近くまで来ないと気が付きません。幸い誰もケガはしませんでした。 23:30にようやく丹巴到着。雨もほとんどやんでいます。午前様を覚悟していたので、今日中に到着できたのは幸いでした。 我々はひたすら急いでいたし、途中には食堂もなく、夕飯を取っていませんから、これから夕飯です。ホテルに行く前に食事を取ろうと烏里さんが食堂を探したのですが、さすがにこの時間では開いている店が多くありません。それに私などあまり遅い時間に油っこい物を食べるのは避けたいので、他の人も、店でスナックでも買ってホテルで各人がとるのはどうかと提案し、日本人の客三人はそれで夕飯を済ませることにしました。 私はビスケットと、日本ではまず飲まないコーラなどを買いました。時間がずれているせいか、私の胃袋はもう眠ってしまったらしく、空腹もあまり感じなかったので、コーラを飲んで夕飯としました。 今日、泊まる予定のホテルは、我々の到着が遅かったのでキャンセルされてしまったようで、別なホテルに変更になりました(写真下)。 ホコリの中を強行軍だったので、シャワーを浴びて早く寝たいと、シャワーの栓をひねっても水しかでません。少し待ってみたが、やはり水しか出ない。翌朝、女性たちに聞くと、水しか出ないのであきらめたとのことでした。 私はあきらめずに、服を着なおして一階の受付まで行きました。しかし、服務員は英語も日本語もわからず、私は中国語ができないから言葉は通じません。部屋まで来てもらい、シャワーから水を出し、「お湯がでない」と日本語で言いました。彼は中国語でしゃべり、水を腕につけて何か身振り手振りで話をします。どうやら、しばらく出せばお湯が出ると言いたいようです。彼はそう言って、ニコニコ笑いながら出ていってしまいました・・・おいおい、笑って済まされることか。 五分ほども水を出したのに水しかでませんでしたから、まさかと思ったが、ここはパンダのいる中国です。ものは試しとシャワーを出したまま洗面をしながら待つこと約十分。なんと生ぬるいお湯が出てきたではありませんか・・・やっぱり、パンダのいる国だ。もっとも、いくら出しても生ぬるさはそのままで、風邪を引きそうなので、頭を洗うのはやめて、軽くあびるだけにしました。 ここは珍しく、トイレが洋式ではありません(写真上左)。写真の右側の床に埋め込んであるのが便器です。公衆トイレではいわゆる和式は珍しくありませんが、ホテルで和式は初めてです。しばらくぶりで使ってみて、和式とはこんなにも使いにくいものだと気が付きました。 トップページ 日程表 1 2 3
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