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10 5日日 2009年7月17日(金) 海子溝(日隆) 起床(6:15)。残念ながら雨が降っています。明け方から小降りになったとはいえ、やみません。 私も天気と同じように体調がイマイチです。二日前から喉が痛く、うがいをしたが効果がなく、どうやら風邪をひいたようです。喉が痛く、だるいだけで、熱は出ていないようですから、今流行っている豚インフルエンザではないようです。 今日は、日隆のすぐそばにある海子溝という山に行き、高山植物を見る予定です。雨は土砂降りではないので予定どおりの時間に出かけることにしました(8:38)。 ホテルが面している谷の反対側(南側)に登山口があります。海子溝景区集票処で入場料を払います(写真下左)。烏里さんを除く三人は馬に乗って登山するので、その周囲で待っていた馬を雇いました。馬代は一人120元(1800円)で、私はさらに荷物を持ってもらうポーターも雇ったので、50元(750円)追加です。 馬代は、海子溝は奥が深いので、どこまで行くかにもよります。我々が行く距離なら150元くらいだとネット上の旅行記に書いてありました。どうやら、客が少ないので値下げしているようです。 今日の予定は下記のように、石板熱まで行き、同じルートを戻ってきます。海子溝の一番奥までは20kmもありますから、我々はそのほんの入り口に登るだけです。 海子溝景区集票処 →1km→ 齊戒坪(仏塔) →1km(0.7km)→ 鍋庄坪 →0.7km→ 朝日坪(仏塔) →1.6km→ 石板熱 斎戒坪と鍋庄坪との間が1km(0.7km)と二種類あるのは、現地の看板がそうなっていたからです。斎戒坪の看板には鍋庄坪まで0.7kmとあり(写真下右)、鍋庄坪の看板には斎戒坪まで1kmとありました(写真下左)。往復した感じでは行きと帰りでは道が違うことはなさそうですが、細かいことには気にしないことにしましょう。 我々三人は馬に乗って、烏里さんは歩いて出発です。前日、馬を利用するかどうかが話題になりました。私は馬に乗り、荷物を背負ってくれるポーターも雇ってほしいと頼みました。荷物は必要最小限ですから、馬に乗ればポーターなどいらないようですが、帰りは花の写真を撮りながら、徒歩で下りるつもりなので、その時に荷物があっては撮影に邪魔なので、ポーターが必要だったのです。海子溝はこの登山口から尾根の端にある斉戒坪あたりまで登るのがきついと旅行記に書いてあったので、体力の温存のためにも、他の三人が徒歩でも、私は馬で行くつもりでした。 こういう現実的な理由もさることながら、昨年のインドの花の谷以来、一年ぶりの乗馬で、私はちょっとワクワクしています。インドの馬と同じように、ここの馬も小型でおとなしそうです。出発して間もなく、馬子が「おまえ勝手にやれ」とばかりに私に手綱を渡しました。「おいおい、仕事しろよ」と言いたかったが、おとなしそうな馬なので、手綱を操ってみることにしました。もちろん、何も言うことは聞いてくれませんでした(笑)。 斎戒坪にある一つ目の仏塔を通過(9:10、写真下)。このあたりから、尾根に沿って、北東の方向に進みます。 馬に乗ったのは三人で、烏里さんは馬に乗らないのに、なぜか空の馬が一頭付いてきます。烏里さんが疲れて乗るのを期待していたのか、それともこの四頭は一緒に行動しているのか、よくわかりません。烏里さんは馬には最後まで乗りませんでした。 馬はかなりの速度で登りますから、途中で中国人の登山グループを追い抜きました。彼らは普通の登山の速度です。ところが、烏里さんは三千メートルの高地で馬や馬主と同じ速度で付いてくるのだから、すごい健脚です。 道は馬が通れるだけの幅があるものの、雨が降り続き、ぬかるみがそちらこちらにあり、おおよそ歩きたい道ではありません。他の二人も馬にしてよかったと言っていました。 鍋庄坪に到着して休憩です(9:22)。表示には「斎戒坪まで1km, 朝日坪まで0.7km」とあります。 馬も草を食べて休憩です(写真下)。私の乗った馬は、歩いている最中も気に入った草があると立ち止まって道草を食べ始めます。私も特に急ぐ旅ではないし(笑)、食事の邪魔をしては悪いので、手綱を引っ張ったりはしません。馬主が気が付いて追い立てるまで、彼はゆっくりと食事をしています。 土砂降りよりはまだましだ、という程度の天気なので、人間は今ひとつ元気が出ません。ところが、下の犬を見てください。馬主の飼い犬らしく、丸一日我々と登山を共にしました。犬クンはとても楽しそうです。みんなと一緒に山を登るのがとてもうれしいらしく、この天気に気持ちの沈みがちな人間様に比べて、雨すらも楽しそうです。 周囲は一面のお花畑です。晴れたらもっとすごいのだろうなあとつい思ってしまいます。 写真上:ポリゴナム・スファエロスタキウム (『中国秘境に咲く花』p.71、『ヒマヤラ植物大図鑑』p.662) 私がポンポングサと呼んでいる白い毛玉のような花と(写真上)、薄紫色のアズマギクがあちこちに咲いて(写真下)、お花畑を作っています。 周囲を丁寧に見ると、馬上からでは気がつかないような花がたくさんあるのがわかります。 写真上:コドノプシス・ネルボサ (『世界の山草・野草ポケット事典』p.165) 写真上:サルヴァナ・ワーディー (『花の回廊』p,32) 写真左:スクテラリア・ヒィペリキフォリア (『世界の山と高山植物のアルバム』) 写真上右:ステルレラ・カマエヤスメ または キングドニア・ユニフローラ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.364、『中国秘境に咲く花』p.105、『世界のワイルドフラワーⅡ』p.125) 雨に濡れた花はきれいでも、雨そのものはありがたくありません。とにかく、目的地まで行くことにします。最初に比べ、尾根に沿って進むので、道はそれほど険しくはありません(写真下)。しかし、泥道ですので、日本人三人は引き続き目的地まで馬に乗りました。 朝日坪を素通りして、石板熱に到着しました(10:42)。烏里さんによれば、ここから先しばらくは似たような風景なので、日帰りコースとしてはここまでで十分ではないかとのことでした。 小雨が相変わらず降り続いています。花はたくさんあるものの、撮影条件としてはけっして良いとは言えません。これだけ曇天だと、写真を撮っても発色もよくないだろうし、何よりもカメラが雨に濡れるのが怖い。私のカメラは防水ではありませんから、小雨の中、撮影を続けるのは電気製品には最悪で、下手すれば壊れます。しかし、ここまで来て、撮らないわけにはいきません。 私はカメラにタオルを巻き付けて撮影を始めました。皆さんも小雨の中、どうしても写真を撮りたい時には試してみてください。これまでカメラをビニールの袋に入れたりといろいろ試してみた結果、もっとも簡単で確実なのが、カメラをタオルで巻いてしまう方法です。 一眼レフなら顔を洗う程度のタオルをレンズのほうまで軽く巻いてかけて、露出するのはファインダーなど一部だけにします。 ビニール袋に入れるのは短時間はともかく、時間がたつにつれて、水滴が内側に入り込んだ時、もろにカメラに水がついてしまいまいす。しかも、濡れた事に気が付かないで使っていたりすると、いつの間にかカメラ全体が濡れてしまいます。 こういう点、少しの雨ならタオルが水を吸収しますから、カメラに湿り気は伝わっても、濡れるほどではありません。専用のカメラジャケットなどを持っていなくても、タオルや、小型のカメラならハンカチ程度でもかなり水滴は防げます。 では、撮影開始。あたり一面、花だらけです。 ステルレラ・カマエヤスメ または キングドニア・ユニフローラ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.364、『中国秘境に咲く花』p.105、『世界のワイルドフラワーⅡ』p.125) この花はたいへんおもしろい。本で調べるジンチョウゲの仲間だという。花の色を見て下さい。花が咲く前は黄色やオレンジ、花そのものは白と紫と赤が混じるので、色の違う花が混在しているかのように見えます。 写真上:サルヴィア・ワーディー (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.202、『花の回廊』p,32) レオントポディウム・ストラケイイ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.80、『世界のワイルドフラワーⅡ』p.89) 上下の写真はいわゆるエーデルワイスです。上左が開花する前、上右が開花し始めたところ、下左が開花し終えた頃、下右は実がつきはじめた頃のようです、と適当なことを申しあげているだけで、上と下では別種かもしれません。 写真下は来る途中の斜面一面に咲いていたポンポンクサです。 ポリゴナム・スファエロスタキウム (『中国秘境に咲く花』p.71) ペディクラリス・クラノロファ (『天の花回廊』p.12) 写真上:オキシトロピス・ラッポニカ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.416) 写真:スクテラリア・ヒィペリキフォリア (『世界の山と高山植物のアルバム』) 写真上下:アスター・スーリエ または アスター・ファレリー (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.88、『中国秘境に咲く花』p.79、『世界のワイルドフラワーⅡ』p.88) 写真上と下は一見、同じ花のように見えますが、花びらが違います。上は花びらに横幅かあるのに、下は糸のように細く、ヒメジオンのような花弁です。種類が違うのか、それとも単なる変種なのかわかりません。 写真上:ペディクラリス・インテグリフォリア(『ヒマラヤに花を追う』p.46) 写真上:ペディクラリス・デンシスピカ (『世界の山と高山植物のアルバム』) 写真上:ゲラニューム・ムーピネンセ (『中国秘境に咲く花』p.91) 斜面の木陰に、白いキンポウゲが咲いていて、とてもきれいです(写真下)。木陰でない斜面に生えているとたくましそうなキンポウゲなのに、ここは陽当たりが悪いせいか、どこかはかなげです。 写真上:アネモネ・オブトゥシロバ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.620、『中国秘境に咲く花』p.34) 写真上 リグラレア・ツァンカネンシス (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.104) 写真上:ミクロウラ・シッキメンシス (『世界の山と高山植物のアルバム』) 馬主たちはキノコを採ってきたようです。まあ、とにかく大きい。私もいくつか花の撮影中に斜面でキノコを見つけました。 食事を終えて、元来た道を引き返します(12:22)。雨がいくぶん小降りになったし、下り道なので、私は予定どおり荷物をポーターに預け、カメラと酸素だけ持ち、写真を撮りながら歩いて下山することにしました。 皆さん先に進み(写真上左)、私は写真を撮りながら後ろをノロノロと付いていきます。しばらくすると、皆さんの姿も見えなくなりました(写真上右)。一人でお花畑にいるのはなんと気分が良いことでしょう。晴れていれば、しばらく寝っ転がっていたいくらいです。 写真上:アスター・スーリエ または アスター・ファレリー (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.88、『中国秘境に咲く花』p.79、『世界のワイルドフラワーⅡ』p.88) 登山のグループがやって来ました(写真下)。この時間に登山するということは、四姑娘山の一つ大姑娘山に登山するつもりなのでしょう。彼らは山に少なくとも二泊するはずです。翌日の午前中も雨でしたから、けっこう大変だったでしょう。 牛が放牧されています。写真を撮ろうと近づくと逃げます(写真下)。私は牛肉はあまり食べないのだから、そんなに嫌わなくてもいいだろうに(笑)。 下山するにつれて、午前中多く見かけたポンポンクサが増えて、斜面一面に咲いています。 写真上:モリナ・クルテリアナ(またはコウルテリアナ) (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.125、『世界のワイルド・フラワー』p.79) ポンポンクサとアズマギクが一面に咲いている斜面です。 往きでは通過した朝日坪の仏塔が見えてきました(13:34)。古い仏塔が、土台だけなのを含めると四つほどあります。 だいぶん雲もとれて、時々、北側の日隆の山(写真下の上段)や四姑娘山の一部(写真下の下段)が見えるようになりました。 犬クンは相変わらず元気で楽しそうで、いつも考え深げに遠くを見ています。彼は飼い主にかわいがられて幸せなんだろうなあ。 日本人の三人が全員馬から降りてしまったので、馬と馬主たちは先に帰ることになりました。ポーターと犬だけが残り、私ともう一人分の荷物を持ってくれています(写真下)。 写真上左:プリムラ・ステノカリクス (『世界の山草・野草ポケット事典』p.182) ポンポンクサの一面に咲いている中を下りていきます。 それまで白いポンポンクサと薄紫色のアズマギクが専らだったのが、オドキリソウのような黄色の花(写真上)が加わってきました。 北側の日隆の向こうにある山の斜面には菜の花(たぶんカラシナ)が黄色い花を咲かせているのが見えます(写真下)。 写真上:ペディクラリス・ダビディ (『中国秘境に咲く花』p.82。『世界のワイルドフラワーⅡ』p.125に載っているが、名前不明とある) 写真上:ゲンティアナ・チュンティエネンシス (『雲南花紀行』p.118) 雲の切れ間から、四姑娘山の山頂付近がようやく姿を現しました。午前中はご機嫌が斜めだったようなので、ちょっと感激です。もっとも、特別サービスだったらしく、すぐに雲に隠れてしまいました。 午前中は通過した斉戒坪に到着(15:24、3365m)。 烏里さんが南側の崖にランの花がたくさんあるぞと教えてくれました。 写真上:(『ヒマヤラ植物大図鑑』p.698にあるペリスティルス属の一種) 写真上:ハベナリア・グラウキフォリア 『世界のワイルドフラワーⅡ』p.114 サキシフラガ・メラノケントラ (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.507) 斎戒坪からは午前中に登ってきた道は戻らず、北側(日隆側)の斜面を近道をして下山します。 写真上:ペディクラリス・ダビディ (『中国秘境に咲く花』p.82。『世界のワイルドフラワーⅡ』p.125に載っているが、名前不明とある) 道の土手には、一面にピンク色のシオガマギクが咲き乱れています(写真上下)。道路を造ることは自然破壊なのだが、そのおかげで、この花のお花畑ができていることも事実で、なんとも複雑な思いです。 写真下は、様々な花が一面に咲いているところです。これも道路を造ったことで、空き地ができて陽当たりがよくなり、お花畑ができたのです。 私は花の写真を撮りまくっていたので、三人から大幅に遅れながら降りて行きました。途中、さらに近道があり、烏里さんがその場で待っていて教えてくれましたが、そうでなければ、花に夢中でそのまま通り過ぎて、皆さんとは違う所に降りていたでしょう・・・ま、それも良かったかもしれない(笑)。 写真上:パルナッシア・キネンシス (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.475) 写真上:ゲラニューム・ムーピネンセ (『中国秘境に咲く花』p.91) 写真上:アナファリス・トリプリネルビス (『世界の山と高山植物のアルバム』) 写真上:コドノプシス・ネルボサ (『世界の山草・野草ポケット事典』p.165) 下山途中で子供たちと会いました。彼らは薄暗い林の中からたくみにキノコを見つけます。ちょっと毒々しいけど、本当に食えるんだろうか? 写真上:プリムラ・ケルヌア (『世界のワイルドフラワーⅡ』p.86 ) 写真上:カルサ・バルストリス (『ヒマヤラ植物大図鑑』p.590、『中国秘境に咲く花』p.36) 降りた所は、ホテルから1kmもないところでした。 ホテル到着(16:41)。部屋は18.6度で薄ら寒く、湿気がひどく、相変わらずカビ臭い。 カッパを着ていたので、身体は濡れていませんが、靴はグショグショです。部屋がこの有様では、靴が乾きそうもないので、烏里さんに、靴屋はないかと頼んでおいたところ、すぐそばの店で売っているというので、買いに行きました。 ホテルの下の道路に面した土産物兼雑貨屋(写真下左)で一足20元(300円、写真下右)の靴を買いました。山歩き用に厚手の靴下をはくことを考えて大きめのを買ったら、ほんとうにぶかぶかだった(笑)。とりあえず、濡れた靴をはかなくてもよくなりました。帰国前の成都で捨てるまで、何回かはいて重宝しました。ついでに店で水2本を3元(45円)で購入。 烏里さんがネットカフェに案内してくれるというので、先ほど下山した近くまで歩いて行きました。 通りは人の姿もなく、道に面した土産物屋らしい店はほぼ全部閉店で、いわゆるシャッター通りになっています(写真上下)。 我々の泊まっているホテルと、道路の反対側にあるいくつかのホテルを見ると(写真下)、車の出入りもなく、大半は営業していないようです。 写真下左のように明らかに営業していないホテルもあります。ここは五月から十月くらいにかけて観光シーズンですから、今はかき入れ時なはずです。日隆は地震被害はそれほど大きくないが、経済面での影響が深刻なようです。日本からのツアーも再開されたくらいだから、国内の観光客が戻っているのではないかと予想していただけに、目の前の光景に少々驚かされました。 地震が起きる前までは、写真上右の道路標識にあるウーロン(臥龍)から、パンダを観光しながら、巴朗峠を越えて来るのがお決まりコースだったのに、この道路が地震で寸断されて、一年たっても完全には復旧していないのです。 人もおらず、車もほとんど通らない静かなシャッター通りを谷の奥のカーブのほうに歩いて行きました(写真下左)。 ネットカフェは、写真下の建物のラセン階段を登った二階にありました。薄暗い部屋にパソコンが十台くらい並んでおり、若者たちが専らゲームをしているようでした。私はパソコン持ち込みなので、ネットケーブルを貸してもらうと、見事につながりました(10元/1時間)。速度もかなり速く、中国は地方都市でもこういう点は充実しつつあります。 ホテルの隣にあるいつものレストランで夕食です(19:02)。 トップページ 日程表 1 2 3 4 5
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