ポルトガル 春の花 2日目 2013年3月1日(金) リスボン → アラビダ自然公園 → ラゴス モーニングコールが6:30なのに、時差ボケでそれよりも早めに目が覚めました。食事の前にホテルの前に出ると、まだ灯りがついたままになっています(写真下)。 ホテルの前を路面電車(エレクトリコ)が走っていきます。なんかレトロな雰囲気で良いですね。一度乗ってみたい。 七時からホテル二階のレストランで朝食です。部屋のカード式の鍵を見せるだけでなく、部屋番号も告げないといけません。なかなか厳重な所をみると、ごまかす人たちがいるのでしょう。 一流ホテルですから、食材は豊かです。ただ、期待したほどにはチーズやパンの種類は少ない。唯一、手作りと思われるマーマレードがうまかった。 八時にホテルを出発。今日は、バスでリスボンからラゴスまで行きます(下の地図)。道路が整備されているので、丸一日かかる距離ではないものの、途中のアラビダ自然公園で花を見ますので、ラゴスに到着するのは夕方になります。 今回の旅行で乗ったバスが写真下です。四十人ほどが乗れる中型バスに、ドライバーを含めて14人なので、余裕です。私はいつものように一番後ろの座席を占領しました。 バスはリスボンの街を西に横切って走ります。街中は石作り建築物が整然と並び、調和が取れています。 橋の上から住宅街が一望できます。オレンジ色の屋根に白や薄黄色の壁で街全体が統一されていて、とてもきれいです。 テージョ川にかかる「4月25日橋(Ponte 25 de Abril)」という名前の橋を渡り対岸のアルマダに行きます。1974年に独裁政権を無血で倒したカーネーション革命の日にちなんでこの名前がつけられたもので、長さが2kmにも及ぶ橋です。 スイセン アルマダ側に渡り、本日最初の花の散策です(8:59)。 驚いたのは、昨夜は零度を下回ったらしく、日陰ではまだ植物に霜がついています(写真下)。ここは山の上なので意外に冷え込むようです。 霜が降りた日陰に青いきれいな花が咲いています。 写真上 Borago
officinalis (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,p.1395) 斜面にペチコート・スイセンが生えています。ペチコートという名前のように、花がスカートのように広がっています。しかし、この花を愛らしくみせているのは後ろにトゲのように出ている花弁でしょう。 写真上下 Narcissus
bulbocodium (『世界のワイルドフラワーⅠ』p.11) 自生のペチコート・スイセンを見たのは初めてですが、日本では園芸品として販売されているので、前に庭に植えたことがあります。ネットでこのペチコート・スイセンの球根が売られていました。花の形がおもしろい上に値段も安かったので、試しに購入して植えたところ、最初の年に花を咲かせただけで、消えてしまいました。どうやら環境がお気に召さなかったらしい。 スイセンと言っても、周囲にある草や小石と比べてみると何となくわかるように、概して小さい。花の大きさはミニスイセン程度ですが、背丈はもっと低く、茎や葉も細く、弱々しい感じです。 霜が降りて花に露がまだついています。小石のある道の真ん中は環境が厳しいのか、さらに小型です。 斜めから射し始めた朝の日差しを浴びて、黄色の花が浮き上がってきます。 この時見つけた唯一のランが写真下です。だが、実は根が切り取られ、道端に捨ててありました。我々よりも先にここに来て、ランを堀り、根だけ持っていったのです。どこの国にも心ない人がいる。 写真上 Barlia
robertiana (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.
2446) 藪の中を歩くと良い香りがします。写真下のローズマリーなどの樹木を踏みつぶしたために匂いが漂ってくるのでしょう。でも、入り交じっていて、どれがそれなのかわかりません。匂いが一種類ではないから、複数あることだけは確かです。 写真上 Rosmarinus
officinalis (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.
1526) 写真上 Erica
arborea (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.1178) 写真下はハンニチバナで、毎日のようにハンニチバナをたくさん見かけました。 メキシコ原産のリュウゼツランがこんな山の中にまで生えているのがおもしろい(写真下)。真ん中からのびる花茎が生えると、下の葉が枯れると図鑑にあります。写真下はどう見ても、両方とも元気です。 写真上 Agave Americana (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.2253) 山道の下の水が流れている所にシラーが生えていました。周囲を探してもこれしかなく、こういう時の撮影は順番待ちです。トイレの順番待ちを連想します(笑)。 写真下は日本で言えば、テンナンショウなどの仲間でしょうか。とても小さい。葉はたぶん地面をはっているのでしょう。形がユーモラスです。 写真上 Arisarum
vulgare (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.
2377) 写真上 Bellis
sylvestris (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.1793) 地面を良く見ると、他にも小さな花がいろいろと咲いています。 写真上 Allium
neapolitanum (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.2225) バスに乗ってアラビダ山脈(Serra da Arrábida)に入っていきます。やがて、南側に海が見えてきました。 アラビダ自然公園 アラビダ自然公園(Parque Natural da
Arrábida)の看板で出ているあたりでバスを下りて、丘陵地帯を散策して、花を探します。 写真上 Astragalus
lusitanicus (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.504) ここで一番目立つのは写真下のピンク色のハンニチバナです。花弁にシワが寄っていますが、これで開花した状態です。 写真上下 Cistus
albidus (『世界のワイルドフラワーⅠ』p.6) こちらは白いハンニチバナです。 写真下もハンニチバナの仲間で、両者は葉が違います。また写真上の花弁は細かいシワがあります。 写真上 Cistus
salvifolius (『世界のワイルドフラワーⅠ』p.7) バスに乗り、海を右に見ながら、さらに東に進みます。天気が良く、海岸がきれいに見えます。 アラビダ修道院 アラビダ修道院(Convento da Arrabida)の見える展望台でバスを停めました。 この展望台は修道院が一番絵になる場所のようです。フランシスコ会とかカプチン会に所属する修道院と言われても意味がわからないし、興味もないが、16世紀に天正遣欧少年使節がたどった道だと聞くと、相変わらず何も知らないのに急に身近に感じます(笑)。きっと彼らもこの修道院に立ち寄ったことでしょう。 五百年前に日本人の少年たちがこのあたりの風景を見ていてかと思うと、何とも奇妙な感じです。 写真下左は掲示板に載っていた絵で、写真下右はそれに対応すると思われる風景です。ただし、絵はこの展望台よりももっと左側から見た光景のようです。掲示板の説明はポルトガル語なのでまったくわかりません。 おもしろいのは、私は修道院の建物がたくさんある所が中心なのだろうと思っていたら、この絵ではそれらは左端にちょっと載っているだけで、重視されているのはその右側の森の中にある建物です。 絵の説明文の表題は「アラビダ修道院のリトグラフ(Litografia do Convento
da Arrabida)」とあり、1839年頃の風景を描いたもののようです。 わざわざ名前が載っているのだから、ここの修道院にとって大事な建物なのでしょう。 A- Casa da Romagem B- Capela do Bom Jesus C-Habitacao dos Ermitaes da Lapa de
St.Margarida AのCaseは家のことで、翻訳機を使ってもRomagemの意味は正確にはわからず、巡礼地やチャペルや教会を意味するようですから、たぶん修道士たちの住居という意味でしょう。 Bはイエスを祭った礼拝堂のようで、バスの中から写真下のように見えました。 Cもほとんど意味不明。文中の聖マルガリダ(St.Margarida)とは「アンティオキアのマルガリダ」とも言われ、没年が304年のキリスト教の聖者ですから、彼女を祭った聖堂なのでしょう。展望台の崖にあった写真下左の絵は聖母マリアではなく、聖マルガリダかもしれません。
上右図 聖マルガリダ(ウィキペディアより転載) 展望台の崖の上になにやら塔のようなものが並んでいます(写真下)。 展望台のそばにもタンポポのようなジシバリのような黄色い花が咲いています。天正遣欧少年使節たちも見たのでしょう・・・いや、案外、最近入って来た外来種だったりして。 眼下にサド湾を見ながら、アラビダ自然公園(Parque Natural da
Arrábida)をさらに東に進みます。 三カ所目の花園 本日の三カ所目の花の観察です。 周囲は石灰岩がむき出しで、土が痩せているのでしょうか、灌木があるだけで、大きな樹木は見当たりません。石がゴロゴロしているので、実に歩きにくい。原野の中を歩いて花を探すよりも、人間が作った道に沿って花を探すが一番でした。人間が灌木などを取り除くので、草花にとっては、生育しやすいのでしょう。 石灰岩の荒涼とした雰囲気とエリカの白い花が奇妙に合います。 写真上 Erica
arborea (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.1178) まず目についたのはキクのような花で、キンポウゲの仲間です(写真下)。 写真上下 Anemone
palmata (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,p.219) 写真下のキンポウゲは写真上とは花弁が違いますので、別種のようです。 写真下は先ほどの展望台にもあった黄色いキクの仲間です。通りすがりに見ると、キンポウゲと区別がつきません。 写真上 Bellis
sylvestris (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.1793) ここにも少しだけペチコート・スイセンが咲いていて、白い石灰岩と良く似合います。 写真上 Narcissus
bulbocodium (『世界のワイルドフラワーⅠ』p.11) セトゥーバルで昼食 アラビダの山を下りて、海辺の街・セトゥーバル(Setúbal)に到着しました。ここは昔漁港として栄えた街だそうです。 街中のレストランNova Capoteで昼食です。 入り口の手前がカウンターのあるバーになっていて(写真上右)、奥にレストランがあります(写真下)。 ノンアルコールのビールが1.5ユーロだというので飲んで見ました(写真下右)。おっ!ノンアルコールにしてはなかなかいけるじゃないかと感心して小瓶を飲み干すと、明らかに酔いがまわって来ました。私の胃袋はアルコールの醸造までするのかと驚いて、瓶の表示を読むと0.5%のアルコールが入っているとあります。良くみるとノン・アルコールではなく、セミ・アルコールと書いてあります。 教会まで散策 0.5%のアルコールでほろ酔い気分の食事を終えて港に行くと、フェリーの出航までにまだ小一時間もあるという。時間があるのに港でボーッとしていてはもったいない。街を散策しましょう。 見れば、丘の上に教会らしい建物が見えます(写真下)。急いでいけば、なんとかなりそうです。一同、急ぎ足で港を出ました。 大通りを渡ると、そこから斜面になっています。店のおばさんに、教会に行きたいという身振りをすると、右側から行けると言います。帰りにわかったのは、左側のほうが近かった。 おばさんの指示に従い、大通りに沿って右側を進み、線路を渡り(写真下左)、斜面の住宅地に入って行きました。 車の多い大通りから、急に静かな住宅街になりました。 おっ、ネコがいる!急いでいるのだから、珍しくもないネコなんかどうでも良いのに、私はやはり写真を撮ってしまう(写真下左)。家の壁が丸くへこんでいて、そこにハトが巣を作っています(写真下右)。何か絵でもはめ込むために作ったのでしょうか。ハトは居心地がよさそう。 洗濯物が外に干してあるのが、いかにもボルトガルです。 写真下左は洗濯板のついた洗濯桶ではありませんか。今でも手で洗濯しているのでしょうか。 坂の道の両側に隙間なく住宅が並んでいます。これだけ隣接して建てても、石でできているから、騒音などの心配がないのでしょう。日本の住宅は騒音という点であまりにズサンです。 丘を登り切ったあたりで教会に到着しました(写真下)。聖セバスチャン教会(Igreja
de São Sebastião)で、建設が1564-1566年というのだから、五百年近くもたっている歴史ある教会です。 教会の右脇にある出入り口から中に入ってみました(写真下)。しかし、ここから教会に入る入り口は鍵がかかっており、閉まっています。 周囲を見渡しても教会への入り口がない。通りかかったオバサンに身振り手振りで、教会に行きたいというと、通りの向こう(写真下)を指さし、そこから入れと言います。道があるのだろうかと、行ってみたが教会からは遠ざかるばかりです。引き返すと、他の皆さんは建物の一つに入っています。そこが博物館のようになっており、奥から教会に入れるらしいが、有料だという。博物館の入場料なのでしょう。お金を出さないと入れない教会は初めてです。しかし、お金を払ってまで見たいわけではないので、諦めました。 まだ時間がありますから、周囲を散策してみましょう。 教会の西側に公園があり、港が一望できます。 フェリーでトロイア半島に渡る 港に戻ると、間もなく大きなフェリーが入港してきました(写真下)。我々もバスに乗ったままフェリーに乗り込みます。車を積み終わるとすぐに出発です(15:13)。 フェリーはそれほど混んではいません。車の台数からいくと定員の7割というところでしょうか。 航行距離が短いので客室に相当する設備はありません。客は車の中か、階段上のデッキにいます(写真下)。風が一方向に吹いているらしく、船の右側にいると強風で寒く感じるほどなのに、船の中央部まで来るとまるで線を引いたように急に風がなくなります。 波も静かで、船はゆっくりと進む。船の鉄塔にはカモメが停まっています(写真下)。この船では鉄塔が一番高いから、落雷があればカモメの丸焼きができます。カモメ料理って聞いたことがないけど、どんな味なんでしょうか、などといつものように私は余計なことを考えながら、海を見ています。 やがて進行方向の右側に高層の建物が見えてきました(写真下左)。これから行くトロイア半島の先端にある建物です。その右側にはぼんやりと、我々が今日訪れたアラビダの山並みが見えます(写真下右)。日本なら橋をかけてしまうのだろうが、ここはやはりフェリーが良い。 三十分ほどでトロイア半島側の港というよりも船着き場に到着(15:41)。船着き場はフェリー専用らしく、いきなり道路に接続していて、他には船もなければ設備もありません(写真下)。どうやら、この船一隻が往復しているらしい。 トロイア半島は砂州でできた半島で、リゾート地として開発されているらしく、道路は整備され、ホテルや別荘でしょうか、さきほど船からも見えた高層の建物が見えます(写真下)。 トロイア半島の花 本日の四カ所目の花の撮影です(15:52)。 写真上 Lygos
raetam (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.479.) 白い砂と黄色い花が良く合います。 写真上 Medicago
marina (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.605) ここは砂州でできているので、白く細かい砂がきれいです。 写真上 Anchusa
azurea (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.1409) 写真上 Acacia retinoides (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.438) 日本のカタバミの仲間です。道端などにもたくさん咲いています。 写真上 Oxalis pes-caprae (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.735) 林の中で目立つのは写真下のキンギョソウです。フェリーが着いた海岸にもたくさん咲いていました。花壇や切り花でお目にかかることの多い花だが、ここでは雑草です。 写真上下 Antirrhinum
majus (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.1609) キンギョソウと同じようなピンク色でたくさん咲いているのが、ナデシコの仲間のシレネです。 写真上 Silene
littorea (Wild Flowers
of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.169) ここまでの写真だとシレネは清楚に咲いているかのようなイメージですが、これは砂地で栄養も足りないために大きく成長できなかったのでしょう。実際の姿は下の写真のような、もっとゴチャゴチャした感じです。もっとも、ここには2種類のシレネがあったようで、私はどれがどれなのか区別がつきません。 小さなスイバの仲間のように見えます。 花も葉もイヌフグリにそっくりなのに花弁が白い(写真下)。 写真上 Veronica cymbalaria (Wild Flowers of
the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.1646) 集合の声がかかってから見かけたベンケイソウのような花です。たぶんこれが花が咲いている状態なのでしょう。「変な花があるよ」と皆さんを手招きしたので、出発時間が遅れました(16:28)。 今日の花の散策はこれで終わりで、一路トロイア半島を南下して高速道路を目指します。 コウノトリ 民家の屋根の上にコウノトリと巣が見えたのでバスを停めました(16:43)。日本のコウノトリと種類が微妙に違うそうで、こちらのコウノトリは正確にはシュバシコウという名前で、違いは嘴が赤です。日本のコウノトリは絶滅しており、中国から譲り受けたコウノトリが人工繁殖で増えているのが現実です。トキやコウノトリなど、わりと大きな鳥が日本は絶滅しています。 AB 写真下の衛星写真はコウノトリが巣をつくっている建物(A~D)です。上から見ると、右側のオレンジ色の屋根の新しい建物ではなく、いずれも古い建物に巣を作っているのがわかります。巣の大きさから見ても、ずっと棲み続けているのでしょう。 Aの巣のコウノトリは座っているのか、頭が見えるだけです。この巣が一番立派です。 A 写真下はBのコウノトリです。AとBは同じ建物の上にあります。 B 上のBと下のCのコウノトリは、片足で立っています(写真下左)。日本ではしばしばツルと間違われた理由の一つでしょう。ツルやフラミンゴなどが片足で立つのは保温のためと聞いています。では、寒くもないのにどうして片足なのでしょう。 C Cのコウノトリが巣から飛び立ちました。驚かさないようにできるだけ静かにしていても、十数人の見たこともとない連中がじっと見ているので気になるのでしょう。 写真下はDのコウノトリです。こちらは煙突の上ではなく、屋根の上に巣を作っています。木ぎれをただ積み上げただけのようで、どうやって強風にも持ちこたえるのでしょう。 D 写真下のコウノトリも近くに巣を作っていました。しかし、走るバスの中から撮ったので、具体的な位置はわかりません。煙突に巣をかけています。暖炉や台所の熱い排気や煙が来るだろうに、巣を作っているところをみると、大丈夫なのか、それとも住人は火をつけないのでしょうか。 こんなふうに欧州では人間とコウノトリが共生しているのに日本では絶滅です。 バスの中から見える街並みはオレンジ色の屋根に白い壁とたいへん統一性があります。これらはリゾートではなく、普通の街並みです。 街と街の間にはずっと林や畑が続いており、このあたりは雨があるらしく、緑が豊かです。 林で目につくのが松の木です(写真下)。ごらんのように、下の部分には枝がなく、頭部が丸くなっている。これは下枝を払っていることも一因のようです。日本と違い、松が利用され、林業として成り立っているのでしょう。 写真上 Pinus pinea (Wild Flowers
of Spain and Portugal,p.36) 松以外に目につくのがコルクガシの林です(写真下)。ワインの栓に使われているあのコルクが取れる樹木です。写真下の樹木の下半分が茶色になっているのがおわかりでしょうか。コルクを取るために樹皮をはがした跡です。ポルトガルは世界の生産量の半分を占めるコルクの一大産地で、コルクでできた帽子やハンドバッグまであるのを後日見かけました。 写真上 Quercus suber (Wild Flowers
of Spain and Portugal,p.48) 五時を少しすぎた頃、ようやく高速道に入りました(写真下)。車があまり通っていない。ポルトガルでも無駄な高速道路が作られ、巨額の借金となっていることが「無駄な道路 官民で延々」と題して新聞で報じられていました(朝日新聞、2013年2月10日朝刊)。 日本も今、わかっているだけでも約1000兆円の借金があり、庶民には見当もつかない数字です。そこで我々一人あたりに直すと約800万円ですから、家族三人なら約2400万円の借金があることになります。景気浮揚によって税収を増やし、この借金を返済していくというのが今の政府の方針で、歴史的にもこのやり方は成功した例があります。現実に2013年3月現在、景気は良くなりつつあります。 ただ、それを庶民レベルに話を落とすなら、お父さんが今よりもさらに働いて収入を増やし、2400万円の借金を返すという話です。しかも、収入を増やすために無制限に借金を増やすことが前提です。 庶民には気が遠くなりそうな数字を思い浮かべる中、バスは夕暮れのポルトガル南部の平原と山の道を軽快に飛ばします。 パーキングエリアでトイレ休憩(18:28)。写真下左の売店があり、コーヒーなどを注文を受けるとその都度出してくれます。値段は1ユーロ少々で高くはありません。私は日本で高速道路を走る時は、パーキングエリアの自動販売機で挽き立てのコーヒーを飲みます。ここでは列に並ぶのが面倒なので、やめておきました。 ところで、日本の高速道路では、トイレしかないパーキングエリアは自動販売機もないのはなぜなのでしょう。店のあるパーキングエリアは混雑するので、私は店のない所で休憩したいのに、自動販売機さえもない。 この後、周囲は暗くなり、どこを走っているのかよくわからなくなりました。 ラゴス到着 今日から4泊する予定のホテル・モンテマール(Hotel Montemar)に到着(19:39)。ラゴスの観光地の旧市街には歩いて行けます。全部で65室の中規模のホテルです。写真下右は昼間、交差点から見たホテルの全景です。 古いタイプのエレベータがあり、この時は動きました。後日、ホテルを出る時は動かず、スーツケースは階段で下ろしました。 建物の真ん中が四角く吹き抜けになっており、その四方に部屋があります。 ホテルに荷物を置いて、夕飯のために、バスで旧市街の中心部に出かけました(20:13)。レストランのあるジル・エアネス広場は街の中心部で、まだ八時だというのにあまり人通りがありません(写真下)。ラゴスはポルトガルでも南なので、もっと温かいと期待していたら、意外に寒い。 夕飯はレストラン・ピリピリ(Restaurante Piri Piri,
Rua Lima Leitão 15 8600-748 Lagos)です(写真下)。 料理を待っている中、火災警報装置がけたたましく鳴り響いても他の皆さんは悠然としています。私は一番端の入口に近い席に座っていたので、リュックに入っている懐中電灯を手で確認しながら、逃げる準備です。 従業員があわてて装置の解除をしようとするが、当然ながら、簡単には止まらない(写真下左)。警報装置が作動した理由は写真下右の調理場です。ものすごい油煙を上げながら調理しているのだから、煙感知器が作動するのは当たり前です。 警報装置を鳴らしながら焼いたのが本日の料理、イワシです(写真下右)。味は日本のイワシの塩焼きそのまんまなので食べやすいし、日本人には違和感がありません。私は持参した割り箸で4匹とも食い散らかしました。ただ、あまりに庶民的な食べ物なので、これがここの名物だと言われてもピンと来ない。 イワシを食べる時に着ていた衣類に落としたらしく、次の日、生臭い臭いに困りました。水で洗ったくらいでは落ちず、石けんでようやく臭いが薄れました。 十時すぎにホテルに戻りました。写真下がこれから四泊する私の部屋です。部屋としては悪くないものの、いろいろと問題がありました。 第一にエアコンの効きが悪い。シャープ製なのに古いのか、反応が鈍く、温度設定を高くしても上がらない。しかも物凄い音です。とてもうるさくて眠れないので消したところ、夜中に寒くて目が覚めました。朝方の室内の温度は16℃でした。 隣の部屋のエアコンの室外機がうるさいので、自分の部屋のエアコンを止めるのは意味がないことに気がついて、次の日からエアコンを入れたまま寝ました。疲れていたので、うるさくても眠れた。 風呂は最初お湯が出たのに、入った頃にはぬるま湯しか出なくなり、朝はまったくお湯が出ない。他の客の中には夜中に入ろうとしたらお湯が出なかったとぼやいていました。翌日の朝食時を見てもそれほど客が多いとも思えず、65室の収容人員に14人が増えたとたんお湯も出ないのでは困ったものです。 私の部屋のバスタブにはゴム詮がない。欧米の洗面所にはゴム栓がないことが多く、私は10cm角のゴムの板を持ち歩いているので、今回はバスタブにこれを使いました。他にもう一人の部屋もバスタブに詮がなく、持ってきてもらったそうです。 もう一つ問題だったのがネット接続です。無料のWiFiがあるという売り込みだったのに、部屋では接続が維持できません。サブリーダーの松江さんの部屋ではまったく接続できないとのことでした。結局、四日間ともに、下のロビーまで下りて行くと何の問題もなく接続できました。要するに電波が弱すぎる。 ネットで見ると、ラゴスのホテルの中で評価が53件中33位というのもわかるような気がします。エアコンに表れているように、このホテルはそろそろ改修しないといけない時期にきているようです。 |