ポルトガル 春の花 5日目 2013年3月4日(月) ラゴス → アラーデ貯水池 → ラゴス 私は朝起きて、ベランダに出ました。曇りなので、今日一日なんとか持ってくれると良いなあと思いながら、朝の準備を始めました。 7:45からの朝食の時、他の人から、雨がひどいと聞いて、初めて雨が降っていることを知りました。ところが、昨夜から雨が降っているのというのです。では、朝起きて、私の見た外の光景はあれは何だったのか。私はベランダまで出て、空が曇っていること、道路が濡れていないことを確認したのです。どうやら私は窓の外の別な宇宙に行ってきたようです(笑)。 昨日と同じように7:45から食事をして、8:30に出発する予定でしたが、外は土砂降りの雨だけでなく、強風です。食事中も建物を激しく雨が叩く音が聞こえるほどでした。三十分遅らせて、九時に出発に予定変更です。 本日は、ラゴスから東にあるシルベスの近くを周り、アラーデ貯水池の周囲で花を探します。 九時に出発しても天候はあまり変わらず、ご覧のように周囲は雨で煙っています。 雨でダメ シルベスを通過して、一カ所目で花を探しました(9:47~)。 写真下はここでしか見つからなかったランです。しかし、雨が降り、風が強く、暗すぎて、うまく撮れない。 写真上 Ophrys scolopax (Wild
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Regions,No.2436) アラーデの貯水池らしい池が雨に霞んだバスの窓からかろうじて見えます(写真下、11:01)。雨が激しく降っており、冨山さんだけが降りて偵察に行きましたが、収穫は無しです。花があったとしても、とても撮影できる状態ではない。 貯水池から少し先でバスを降りて花を探します(11:21~)。しかし、雨だけでなく、風が強い。カメラを濡らさないようにカサをさすが、風が強くて煽られます。雨で周囲が暗いところに、さらに風で花が動くので、撮影にはまったく向きません。 写真上 Ophrys tenthredenifera (Wild
Flowers of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.2442) 早めの昼食 雨でどうにもならないので、シルベスを通り過ぎたあたりのレストランで昼食です(12:00~)。店前で柑橘類を売っています。実は周囲にいくらでもなっている(写真下右)。 皮肉なことに、レストランで昼食を取る頃になって雨が上がってきました。 レストランはそれなりの広さがあるのに、ほとんど客はいません。コーヒーを買い、持って来たサンドイッチで昼食です。 ホテルからもらったワンパターンの食事をしていると、ここでもイヌ君が来ました(写真下)。パンに挟んであるハムがまずいので、イヌ君に二枚ともあげました。ハムをあげるまではシッポを振っているのに、あげるとシッポを振りません。 雨が小降りになった 天気がいくぶん回復しました。しかし、降ったり止んだりを繰り返していますから、昼食もそこそこに再び花を探します(12:47~)。 写真上 Cistus
ladanifer (Wild
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Regions,No.971) 上と下は同じ種類の花なのに、花びらの根本に模様があるのとないのとが混在しています。 写真下の花はポルトガルの中でもこのAlgarve地方の固有種で、絶滅危惧種の一つです。とても小さな花で、言われないと見過ごしてしまいます。 写真上 Linaria
algarviana (http://www.first-nature.com/flowers/linaria_algarviana.php) ラベンダーが自然に生えているのが良いですね。 写真上 Lavandula
stoechas (Wild
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Regions,No.1528) 丘を登り切った所が開けており、そこにピンク色のランがありました。 写真上 Orchis
morio (Wild
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Regions,No.2403) ここで目立つのはピンク色のランと、写真下の黄色いキンポウゲです。 写真上 Ranunculus paludosus (Wild
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Regions,No.429) 写真上 Dipcadi
serotinum (Wild
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Regions,No.2178) 丘を下りた道端の崖で、他の方がバイモを見つけました(写真下)。 写真上 Fritillaria
lusitanca (Wild
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Regions,No.2152) バイモを撮ろうと斜面をよじ登ると、そこに小さなロムレアがあります。 本当に小さいが、色といい形といい、目の覚めるような清楚な雰囲気です。 写真上 Romulea clusiana (A Selection of Wildflowers of
Southern Spain, p.212) (http://www.pacificbulbsociety.org/pbswiki/index.php/EuropeanAndMediterraneanRomuleas) 昨日も見た花の真ん中が青いランが少しあります。残念ながら、陽が射して青く光る状態では写真が撮れませんでした。 写真上 Ophrys
speculum (Wild
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Regions,p.2422) 花が地味なイラクサの仲間もちょうど花の盛りです(写真下)。 写真上 Urtica dubia (Wild Flowers of the
Mediterranean, p.37) グラジオラスの谷 我々が写真を撮っていると地元の人らしい人がやって来て、冨山さんと松江さんに何か話をしています(写真下)。アントニオ(ANTONIO LAMBE)さんといい、昆虫の研究をしており、日本の研究者を紹介してほしいというものでした。この近くに住んでおり、日本人が花の写真を撮っていると聞いて駆けつけたようです。冨山さんが知り合いを紹介することを約束して、名刺を交換しました。 アントニオさんがたくさん花が咲いている谷を教えてくれましたので、さっそく行ってみましょう。谷は川が流れ、川に沿って小型の車なら通れるくらいの道が奥のほうに続いています。 谷の入り口でまず目についたのが、斜面に咲いていた写真下のシーラです。 写真上 Schilla hispanica (Wild
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Regions,No.2191) 写真上 Anchusa undulata (Wild Flowers of the
Mediterranean, p.186) 写真上 Bellis perennis (Wild
Flowers of the Mediterranean, p.228) 谷の奥の方に入っていくと、崖崩れを起こしたらしい斜面にピンクのグラジオラスがたくさん咲いています。崖崩れで樹木がなくなって陽が当たり、お花畑になったようです。素晴らしい被写体を教えてくれたアントニオさんに感謝です。 花はすごいが、斜面は瓦礫が重なっているので雨で滑りやすく、地面が緩んで足場がかなり悪い。サブ・リーダーの松江さんが皆さんに足下に注意するように何度も呼びかけるほどです。 写真上 Gladiolus
italicus (Wild
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Regions,No.2307) こういう斜面では、私は寝転がって撮ることにしています。チベット人の巡礼みたいに何度も地面に五体投地をするので、後で身体中が痛くなります。チベット人てスゴイと、ポルトガルに来てピンクのグラジオラスを見ながら感心しました(笑)。 グラジオラスの咲く同じ斜面に写真下の花も群生しています。ラゴスの公園にもあった花です。 写真上 Echium
vulgare (Wild
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Regions,No.1384) 道の脇に高さ十センチほどの小さなアヤメが咲いています。 写真上 Gynandriris
sisyrinchium (Wild
Flowers of the Mediterranean: A Complete Guide to the Islands and Coastal Regions,No.2305) 谷から戻る頃に雨が強く降り出しました。私は最後まで粘ってアヤメを撮り続けましたが、さすがに雨と風が強くなり、あきらめました。 これで今日の花の散策は終わりです。来た道をラゴスまで引き返します(15:13)。 再び公園の花 昨日と同じように、ラゴスに戻る頃には雨は止み、晴れ間も見えるようになりました(15:57)。こちらでも雨は降ったようで、また時々ぱらつきます。夕飯の集合時間19:15までは十分に時間がありますから、昨日のポルタ・ダ・ヴィーラ公園に花の写真を撮りに行きました。 昨日と同じ所に来たのは、昨日撮り損ねた花が一つあったからです。オオイヌフグリです。日本のオオイヌフグリと大きさなどは同じなのだが、花の青が強く印象的でした。しかし、残念、花が付いているが、開いていません(写真下左)。雨まじりの不順な天候だったので、花びらを閉じてしまっています。幸い、咲き終えた花がタンポポの葉の上に落ちているのをみつけました(写真下右)。ごらんのように見事な青です。 草むらは小道がいくつかできているだけで踏み荒らされた形跡がないから、誰も中に入らないのでしょう。でも、雨が降った後なので、草むらの中に入るのは覚悟がいります。 写真上下 Chrysanthemum coronarium (Wild Flowers of Spain and Portugal, p.78) これらは花壇の花ではなく、雑草ですから、間もなく草刈りされてしまいます。惜しいですね。 写真上下 Silene
colorata (『世界のワイルドフラワーⅠ』p.9) 写真上 Smynium olusatrum (Wild
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Regions,No.1087) 写真上 Papaver thoeas (『世界のワイルドフラワーⅠ』p.10) 写真上 Fumaria capreolata (『世界のワイルドフラワーⅠ』p.15) 写真上 Convolvulus althaeoides (『世界のワイルドフラワーⅠ』p.92) アントニオさんが教えてくれた谷の崖に咲いていた花がここにもあります(写真下)。 写真上 Echium
vulgare (Wild
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Regions,No.1384) 写真上 Centaurea
pullata (Wild
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Regions,No.2006) 草刈りの済んでいないところはないかと城壁に沿って、北西に回ってみました。こちら側はほぼ草刈りは終わっており、何もありません(写真下)。引き返しましょう。 芝生の中にシロツメクサが生えている、と思ったら、シロツメクサともちょっと違う(写真下)。 すぐそばに写真下のような普通のシロツメクサも生えています。 写真上 Trifolium repens 花の部分を拡大したのが写真下で、見るからに両者は別種だと思うが、図鑑からは探し出せませんでした。 駐車場近くにアツミゲシが生えています(写真下)。日本では麻薬ケシとして栽培が禁止されていますが、実は、皆さんが知らないだけで、あちらこちらに生えています。欧州ではアツミゲシは麻薬性が低いので栽培禁止ではありません。 写真上 Papaver
somniferum (Wild
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Regions,No.281) 写真下は私が日本で撮ったアツミゲシで、幹線道路の道端に咲いていました。両者は良く似ているのを見てもわかるように、日本には半世紀ほど前に海外から入ってきたものです。渥美半島に大量に生えていたことからアツミゲシの名前がつき、自衛隊が出動して焼き払ったそうです。効果空しく、日本中に広がっていて、ポピーを売り物にしている花の公園にアツミゲシが紛れ込んでいて、大問題になったこともあります。 昨日は気が付かなかったのが写真下の植物です。花はシロツメクサにそっくりで、葉はアカシアなどマメ科によくあるシダのようで、しっかりとした茎があり四十~五十cmに成長しています。 写真上 Lavatera
cretica (Wild
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Regions,No.910) 写真下は城壁のそばに生えていたツルボランの仲間です。今回の旅行でツルボランはあちこちで見かけました。 写真上 Asphodelus
fistulosus (Wild
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Regions,No.2087) 城壁に沿って公園を東側に進むと、城壁の曲がり角に教会がありました。門の上のアズレージョは幼子を抱えたマリアのようですから、ここもマリアを祭った教会です。しかし、地図で見てもこの建物には名前がついていませんから、教会ではないのかもしれません。 教会の敷地に生えていた樹木の花です。終わりかけているので茶色に見えますが、元々はピンクです(写真下右)。他の人が「アジサイを逆さにしたような花があった」と言っていたのは、この花のことでしょう。たしかに花が下を向いてぶらさがっています。 旧市街の三度目の散歩 城壁の内側に入ると家が建て込んでいるので花も木もほとんどありません。城内は狭いからしかたないのだろうが、樹木さえもないのは欠点です。また、ベランダに花を飾ったらもっと街はきれいになるでしょう。 空は相変わらずどんよりと曇っており、いつ雨が降り出してもおかしくないような天気です。夕方になり、薄暗くなり始めています。 坂の上から海が見えます(写真下)。これで晴れていれば、青い海とオレンジの瓦屋根と白い壁が絵になるのでしょうが、あいにくの空模様です。 総じて建物は良く整備されていますが、中には写真下左のように、空き家になっているのか、工事用の塀で取り囲んでいる建物や、写真下右のように壁の一部が落剥している建物もあります。 坂を下りきった所に城壁があり、トンネルで外に出られるようになっています(写真下)。中は真新しい白いモルタルで塗られています。 トンネルの途中に祠があります(写真下左)。祠の中は灯りがなく、暗くてなんだか良くわからない。説明文はポルトガル語なのでますますわからない。Gonçalo de
Lagos(1360-1422)と言う、この地方の漁民に尊敬された聖者のようです。 トンネルを抜けると城壁の外に出て、道路の向こうに海があります。花を探して海岸を散歩するのもおもしろいそうだが、天気が悪いし、時間的にも難しいので、昨日まで行った広場のある中心部を一周してホテルに戻ることにしました。 こんな時間なのにサンタマリア教会の入口が開いています。中に入ってみましょう。 中でミサが行われていました(写真下中)。信者の数はそんなに多くありません。邪魔をしては悪いし、儀式にはあまり興味がないので、写真を一枚撮り、外に出ました。 すぐそばの聖アントニオ教会は閉まっています(写真下左)。 隣接している博物館もこの時間ですから、閉まっていました(写真下右)。 ラゴスの旧市街を見るのも今日が最後です。三日間ここに来ました。有名な名所旧跡はないのに、とても良い印象を持ちました。読者の皆さんにもお勧めの街です。 あたりが薄暗くなり始めましたから、ホテルに戻りましょう。 ホテルからバスでジル・エアネス広場のそばにあるレストランREISに行き、ラゴスの最後の夕食です。先ほどまで私が散歩していたあたりです。 (https://sites.google.com/site/restaurantereis/index/restaurante/) 店は50~60人が入れるくらいの大きさのレストランで、店のホームページにある「das 12:00 às
15:00 e das 18:00 às 22:30」という営業時間が、ポルトガルの食事や生活のリズムを表しているようです。 ネット上でのこの店の料理の評価はそれほど悪くありません。 食後のデザートは誕生日ケーキです。参加者の一人が誕生日で、ネイチャリングツアーが特別に準備したサプライズです。もっとも、誕生日だった人を含めて、客全員が誕生日が来てもうれしくない年齢です。誕生日のケーキが若い頃ほど甘くない(笑)。 バスでホテルに戻りました。このホテルの滞在も今晩で終わりなので、部屋に広げた荷物を片付けましょう。 |