トップページ 日程表 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 カナリア諸島の花 5日目 2015年6月05日(金) ラ・パルマ島南部の観光 朝の散歩 夕べ遅かったので、ゆっくり寝ていようかと思いましたが、六時頃には目が覚めてしまいました。まだ外は暗い。私の部屋からの眺めは写真下で、海とホテルのプールが見えます(写真下)。 今日は、島の南側を周り、タバコ農園を見学した後、島の西側にあるロス・リアノス・デ・アリダネ(Los Llanos de Aridane)で市内観光をします。島を南下して、一番南にあるフエンカリエンテ塩田(Salinas de Fuencaliente)を見学し、その近くにあるサン・アントニオ火山(Volcan de San Antonio)を訪れます。 七時からホテルのレストランで朝食だというので行って見ると・・・あら?誰もいない。時間を間違えたかと思ったが、間もなくもう一人が来ました。どうやら、皆さん疲れて遅いらしい。いつもは集合に一番遅い私が飯だけは一番乗りでした(笑)。 せっかくですから、海の見える一番端の席で朝食を取ります(写真下左)。港に朝一番の船が入港してきました(写真下右)。 ここもブュッヒェ様式なので、好きな物が食べられて良い。前のホテルよりも野菜が多い。私は好物のライ麦パンとチーズを食べました。 九時出発ですから、ホテルの周囲を散歩することにしましょう。海岸に散歩コースが作られていることを日本にいる時にgoogleのストリートビューで見ていたのです。旅行に行く前から現地での予定が立てられるのでとても便利です。 下記の赤の線が朝の散歩コースです。海岸の散策コースのうち、今日はホテルの北側に行きました。 海岸に打ち寄せる波は、大西洋の荒波らしく、激しい(写真下左)。海岸から北に、昨日私たちが到着したサンタ・クルス・デ・ラ・パルマ(Santa Cruz de La Palma)の街並みが見えます(写真下右)。 海岸に沿って石で作られた散歩道があり、散歩するのは楽です。岩が溶岩なので黒くて、寒々しく感じますが、それほど寒いことはありません。風はかなり強い。 浜辺や歩道を掃除する人たちがいます(写真下)。この島が観光に力を入れているのがわかります。 海岸の近くも様々な植物が生えています。テネリフェと同様に、乾燥に強そうな植物が多い。 写真上 Limonium
pectinatum (LA PALMA LANDSCAPES AND WILD FLOWERS,
No.929) 写真下は花だけみるとハハコグサのように見えますが、実は低木です。ご覧のように、海岸近くの空き地に一面に生えています。ただし、花は少ない。 写真上 Schizogyne
sericea (Native Flora of the Canary Islands, p.20) 写真上 Echium
brevirame (LA PALMA LANDSCAPES AND WILD FLOWERS,
No.639) 写真下は街路樹として植えられていたもので、ブドウのような実が付き、ジャムなどに使えるそうです。私が見たのは人の背丈ほどでしたが、十メートルを超す巨木になります。塩害にも強く、カナリア諸島にはうってつけです。 写真上 Coccoloba uvifera (The flora of the Canaries, p.78) 写真下はブドウのような種が見事になっています。バス停のそばの道端に生えているので写真を撮ったら、なんとこれはカナリア諸島の固有種だそうです。 写真上 Bosea yervamora (Native Flora of the Canary Islands, p.80) タバコ農園 九時にホテルをバスで出発です。テネリフェと同じで島が一つの山のようなもので、海岸にあるホテルから出て山の斜面を上ります。 テネリフェのように街並みはどこもきれいです。ゴミなどが放置されているなどほとんど見かけません。 通りでは竜血樹が普通に見られます(写真下)。写真下右など年数がたってブロッコリーのような竜血樹らしい姿になりつつあります。さすがにここまで成長した竜血樹は少ない。 ホテルからバスで二十分ほど山を上り、斜面の中腹にあるタバコ農園「el Sitio」に到着しました(9:25)。 (http://www.fincatabaqueraelsitio.info/sto/) 私はタバコが大嫌いなので、後ろからノロノロと付いていきました。バスから下りるまで、私は自分だけ見学をやめて、近くを散歩しようかと迷ったくらいです。 上の衛星写真でタバコ畑に相当するのが写真下で、今のはビニールハウスになっており、タバコが成長しているところです。緑がきれいだと言いたいところだが、私は嫌悪感が先だってしまう。 ここで葉巻の生産もしています(写真下)。日本のように独占的な管理されているのと違い、農産物の一つにすぎないようです。いわゆるタバコとは違う独特の臭いがします。もちろん良い臭いではありません。 皆さん、作業所に入って説明を聞いているが、私は臭いが苦手なので中に入れません。しかし、それでは写真が撮れない。私は決死隊を結成して、皆さんが出て来た所を入れ違いに、呼吸を止めて、中に入り、手早く写真を撮り、逃げるように出てきました(笑)。 入口の近くに売店があります。あまり気が進まないが、とにかくのぞいてみましょう。 当然ですが、売っているのは葉巻がほとんどで(写真下左)、例外はワインだけです(写真下右)。日本で一般的な紙で包んだタバコは見当たりません。 昔、新幹線には禁煙車両がありましたが、地方の特急にはありませんでした。私は実家と東京の往復に四時間半、お金を払って吸いたくもないタバコを吸わされ続け、ついに怒って、新聞にどうして禁煙車両を設置できないのかと投書しました。今では禁煙車両ではなく、公共の場で喫煙なのは本当に助かります。 紹介遅れましたが、写真上下の右隣にいる女性が現地ガイドのサライさんです。なかなかの美人でしょう。もちろん、彼氏がいます。 日本はタバコの値段が安すぎる。明らかに健康に悪く、それで生じた病気を健康保険でまかなうのだから、タバコの値段はこういう健康被害による保険料を上乗せするべきです。感覚的に申し上げるなら、一箱2000円くらいが適正ではないでしょうか。日本では18歳から喫煙を認めてはどうかという意見があるそうですが、それなら、3000円でどうでしょうか。 敷地内で目を引いたのが、写真下の建物です。火山性の岩を利用したトイレ(写真下左)と犬小屋(写真下右)です。ただし、犬は別なところで飼われていました。 峠を越える タバコ農園を後にして(10:01)さらに山を上っていきます。 これから島の中央にある山を越えて、西側にあるロス・リアノス・デ・アリダネ(Los Llanos de Aridane)に行きます。 道の両側から人家が消えて、緑深い森林の中を上っていきます。 山を自転車で登る人たちがいます。スペイン人も意外にすごいなあと感心していたら、どうやらドイツ人らしい・・・彼らならやりそう。この道路は峠の一番高い所だと1500m近くになりますから、海抜0mから登るのは楽ではありません。しかも、二人とも軽装で、霧の中を突き切っていくは大変です。 峠を越えて島の西側に入ったころから、霧がなくなり、明るいカナリア松の林が両側に広がっています(写真下)。 見晴らしの良いカーブで休憩です(10:25-10:34)。眼下にはこれから行くロス・リアノス・デ・アリダネ(Los Llanos de Aridane)の街並みが見えます(写真下左)。 今越えて来た山を見ると、雲が東から山を越えて流れてきて(写真下右)、それが山を越えて西に進むと消えてしまうのがわかります(写真下左)。テネリフェ島やラ・ゴメラ島でも見られました。 下の衛星写真のように、このあたりは一面に黒い火山性の砂や小石で覆われています。 周囲は真っ黒な火山灰で覆われています。しかし、その中にも植物がたくましく育っています。 周囲は火山性の細かい砂ですから、雨が降ってもすぐに吸い込まれてしまうだろうし、栄養など何もないし、陽が当たれば砂は黒いから急激に温度が上がるなど非常に厳しい環境です。この時も風で激しく煽られていました。 写真下は赤いので目立つが、すべてツボミでこれから咲くようです。 休憩した場所もそうだが、道路の両側は火山灰や溶岩が流れた跡があちこちら見られます(写真下)。 このあたり一帯の地形図を見ると一目瞭然で、小さな火口の跡がニキビのように残っています。また、おそらくは溶岩が流れ出したと思われる溝や、溶岩が体積したと思われるような地形もあります。 カナリア松の下に低い樹木が生えています。しばしば松の根元に生えています。葉の雰囲気からして、松ではありません。今回の旅行で何度か見かけたのだが、近くまで寄る機会がありませんでした。 サンタ・クルス・デ・ラ・パルマから来る道路と合流しました(10:47)。私たちはタバコ農園に立ち寄ったので、峠を越えるのに南側の道路を迂回しましたが、一番近いのがこの道路です。 ガウディの公園? ロス・リアノス・デ・アリダネ(Los Llanos de Aridane)の市内に到着して、最初に訪れたのが、公園です(11:05)。公園の名前を直訳するなら「アントニオ・ゴメツ・フェリッペ地方公園(Parque Municipal Antonio
Gómez Felipe)」または「植物センター(Centro Botánico)」です。 下の衛星写真を見てもわかるように、公園としても小さな公園で、ただ通り抜けるなら一分もかかりません。横が60mくらい、縦は100mもありません。つまり、日本で言えば町の中にある公園程度の大きさです。ところが、中に入って、その濃密さに私は溺れそうになりました(笑)。 北側の道路から入ると、階段があり、公園は道路よりも低い位置に作られています。写真下左は入口から見た公園で、それほどどうだということはありません。ところが、写真下右のように、内側から見ると、ちょっと違って見えます。 入口の門番の詰所に相当するのが写真下左で、中は入れませんが、御伽の国の入口みたいです。階段を降りると、床は竜血樹の絵です。 公園の中に入る前に、入口の横にあるトイレで足止めされました(写真下)。 男子トイレはこんなふうで、それはもうおしゃれです(写真上下)。女子トイレのほうはピンク色らしい。 入った正面に後ろ向きで出迎えてくれるのが二匹の大きなトカゲです(写真下)。 作り物のトカゲだけでなく、この公園には本物がいます(写真下)。テネリフェでも見かけた首の青いトカゲが岩場を動き回っています。ここはラ・パルマですから、このトカゲは英語名はラパルマ・リザード(La Palma Lizard)です。これは島によって種類が違うからなのか、はっきりしません。 写真上 Gallotia galloti ここは植物園で、写真下のような島の固有種を集めてあるそうです。本来なら私は植物の撮影に夢中になりそうですが、固有種だと紹介されても、そっちのけで公園の写真を撮っていました。 写真上 Aeonium
manriqueorum (Native Flora of the Canary Islands, p.171) 写真上 Vieraea laevigata (Native Flora of the Canary Islands, p.170) 公園はカナリア諸島の自然を凝縮したような作りです。火山岩を利用して、そこに生えている植物を巧みに再現しています。 この庭の面白い点は西洋風ではないことです。西洋の庭や建物で石を使う時は、きれいな角度をつけて切断して用いています。しかし、ここは人間はできるだけ手を加えず、岩の本来の特性を生かすような使い方です。日本庭園や盆栽がそうです。自然の征服ではなく、敬意を払い、模写し再現しています。日本と反対側に同じような思想で作られた庭があるのは興味深い。 床の模様はどうでしょうか。写真下の模様を見た時、私はこの上で女の子がオハジキを蹴って遊ぶ姿を連想しました。 模様の上は歩いてはいけないような気になります。 写真上のようなどちらかという抽象的な模様の他に、写真下のような花やトカゲもあります。彼らは何百年もこの姿を保ち続けるのでしよう。 写真下の手すり曲線と作りがアールヌーボーみたいでいいですねえ。ゴミ箱さえも植物を模している(写真下右)。日本の公園などはこういう無意味な曲線をなくしています。無駄で無意味に見える物が必要であることは中国の古典にも出て来るのに、どうも日本は学んでいない。 門の上やゲートにたくみに島の植物の造形が使われています。おとぎの国の妖精や小人が後ろから出てきそうな感じです。 公園の雰囲気を見てもお気づきのように、スペインの生んだ芸術家ガウディ(Antoni Gaudí)を模範にして作っているのがわかります。ガウディも自然界には直線などないとして曲線を多用しています。 模倣と書きましたが、実はガウディと決定的に違う点が一つあることにお気づきでしょうか。それは生きた植物を用いている点です。写真下などシダがまるで岩の模様みたいになっています。 公園は通り抜けるだけなら一分もかかりません。南側の裏口(写真下左)から出ると歩道をはさんで別な公園があります。もう一つの公園に出ると(写真下右)・・・あら?なんか急に現実に引き戻された感じがして、私はあわててまた元の世界に戻りました。 ガイドのサライさんによれば、この公園を設計したのはルイス・モレラ (Luis Morera)という人です(写真下)。1946年生まれというのだから、七十歳くらいです。多才な芸術家で、歌手でもあるらしく、サライさんがバスの中で彼の歌を聞かせてくれました。YouTubeにもありますから、皆さんもお聞きください。 写真上 ルイス・モレラ この公園の正式名称はアントニオ・ゴメス・フイリッペ地方公園(Parque Municipal Antonio
Gómez Felipe)ですから、ルイス・モレラの名前は出てきません。ネットで調べて見ると、アントニオ·ゴメス·フェリペ(1900年-1966年)という歯科医が1958年にこの公園を最初に作ったようです。たぶん、街の有力者だった彼が私財で市民に公園を提供したという意味でしょう。残念ながら、当時の公園がどういう公園だったのか、写真は探せませんでした。 2010年に改修され、その際、公園をルイス・モレラによる植物園と二つに分けたようです。先ほど、私が歩道をはさんで入ったあの南側のつまらない公園・・・失礼、平凡な公園がもう一つのようです。あちらもルイス・モレラに任せれば全体としてもおもしろいものができたような気がします。 ロス・リアノス・アリダネに来て、最初に見せられたのがこの公園で、私はストレート・パンチを食らったようにフラフラになりました(笑)。正直のところ、街中の観光だからと、気を抜いていました。 市内の散策 公園にもう少しいたいが、次の市内観光があります(11:31)。公園から、下の地図に青で囲った市の中心部の繁華街まで歩きました。 絵が描いてある建物を見かけます。これらはタイルでできているというのだから、ポルトガルのアズレージョ、スペインのアスレホです。 写真でみると大きさが良くわからないでしょうが、周囲の窓などと比較すればかなりの大きさなのがわかります。絵を構成しているタイル一枚が畳よりも大きいことは確実です。 ジャカランダの花が真っ盛りです(写真下)。ただ、あまり勢いが良いようには見えない。カナリア諸島は合わないのだろうか。 写真上 Jacaranda
mimosifolia (The Exotic Flora of the Canary Islands, p.134) 写真下がスペイン広場(Plaza de Espana)の中心の道路で、年数のたった樹木が並んでいます。 大きな木の下は屋外の喫茶店になっていて、人々が木陰でひと時を楽しんでいます(写真下)。しかし、その多くは観光客というよりも、地元の人たちではないかと思われます。 日本は雨が多いから屋外で食事を取るのが難しいことに他に、そもそも歩道などが狭すぎて、無理です。昔の道路や土地の値段の高い所はしかたないとしても、郊外の新しく作られた道路もまったく余裕なしに作る。 広場の横の路地でも椅子や机を出してお茶を楽しんでいます(写真下)。せっかくこんな素敵な広場に来たのだし、この広場のキヨスクはコーヒーで有名らしいから、カナリア人の真似をしてちょっとお茶を・・・などと私が思っているうちに、皆さん早足で先に行ってしまいました。 「レジャーを満喫している彼等の姿を見ると、日本の庶民階級が気の毒で可愛そうだ。あまりに余裕がない。一泊か二泊が多い。しかも、高い交通費、高いホテル代、高い飲食費、高いお土産代、やたら待ち時間の長い貧相な遊園施設。そのくせどこもここも超混雑だ。彼我の歴然たる差異を知らされ、あらためて愕然とする。」(『VIVA!カナリア』船越博、創土社、2005年、172頁) この文章の著者は日本の大使館員としてカナリア諸島に住んだことがあります。上記の記述はそのまま今でも日本の現状を示していて、日本が物質的に豊かになったなんて、嘘です。「日本は物質的に豊かになったから、次は精神的な豊かさを求めるべきだ」などと識者は語るが、海外の先進国をちょっと見ただけでもピンホケの主張だとわかります。猛烈に込み合う電車で毎日通勤し、ウサギ小屋に一生かかってお金を払う日本人のどこが豊かなんでしょう。日本は今でも十分に物質的に貧しい。皆さんも騙されないことです。 建物は鉄筋コンクリートなのだろうが、外側に模様をつけたり、ベランダを付けることでとてもオシャレな建物になっています。日本もこういう点を真似できないでしょうか。こういう街なら歩いても楽しい。 通りの建物はどれも小奇麗で、写真下左のように手入れに余念がない。日本も建物など建築物を造る時は大きな予算を出すのに、維持管理にほとんど予算を出さない。日本の道路も橋も今ではボロボロだって、皆さんご存知ですか。 商店街の飾りも思わず写真を撮りたくなるのが多い。日本と違うなあ、と私はぼやく。 日本人は、日本橋の上に高速道路を作ったのですよ。どういう美的感覚をしているのだ?どういう育ち方をしたら、こんな愚行ができるのだ?私が日本の大統領に選ばれたあかつきには、あの高速道路をぶち壊して、日本橋を皆さんが記念撮影したいようなきれいな観光名所にすることを政治公約といたします(なんちゃって)。 店の前のディスプレイもなかなかおしゃれで、ちょっと中をのぞいてみたい気になります。 マンホールの蓋にある紋章は、このロス・リアノス・デ・アリダネ(Los Llanos de Aridane)市の紋章です。 通路のど真ん中で男性がギターを小さくしたような弦楽器を弾いています(写真下)。「El Arriero」という表題で、直訳すれば「ラバ追い」です。音楽とラバ追いがどう関係しているのかと思い、ネットで検索すると、フォークソングの一分野を意味しているらしく、たぶん2007年この街でEl Arrieroの集まりがあり、それを記念して作られた像のようです・・・この説明はあまり信用しないでください(笑)。 皆さんが教会の隣の郵便局で切手を買うというので(写真下左)、私は外で待つことにしました。 教会そのものは興味がないが、その外壁がおもしろい(写真下)。白い漆喰で一色に塗ってしまうのではなく、火山性の黒い石をそのまま出して模様に使っています。ちょっとユーモアがある。カナリアではよくこういうデザインの壁を見かけます。 この模様はホルスタインなどの牛の模様と似ているので、私はこれを牛模様と名付けました(笑)。 ここは中心街に近いこともあり、高級住宅地なのでしょうか、道の両側に立派な家が並んでいます。しかし、奇妙なことに一階建てが多い。 庭のソテツが花を咲かせています。さすがに南国でのびのびと成長しています(写真下)。 写真上 Cycas
revoluta (The Exotic Flora of the Canary Islands,
p.84) 街の市場に案内してくれるというので、スペイン広場から西に向かって歩いていると、交差点でばったりと会ったのは、なんとサライさんのお父さんとおじさんだという(写真下)。チベットでは良く現地ガイドの家に案内されたなんて話を聞くが、親に会ったのは初めてです。いや、実は後でもっと驚くことに、後で彼女のお母さんと恋人とも会いました。 彼女はこの街の住人ですから、不思議なことではないのだが、たまたま家族とばったり会うくらいこの街の中心部が小さいことを示しています。 エキウムの蜂蜜 街の散策の終点は中心街の西にある市場(Plaza Mercado, Mercado Los
Llanos de Aridane)です(写真下)。 写真上の外見はちょっと大きそうに見えますが、実は小さい。下が間取りで、14店舗しか表示されていません。 真ん中は通路になっており、その両側が店です(写真下)。たぶん昔は天井がなく、真ん中が中庭のようになっていたのでしょう。欧州では良くある構造です。柱の周囲に出している店を加えても20軒くらいしかなく、全体でも日本で言えば、近所のスーパーマーケットというところでしょう。 外見も中も真新しいようですが、どうやら少なくとも五十年くらいはたっており、外見を変えないで改修したようです。 買ってみたいような様々な野菜や果物があります。ひしゃげたような小さい桃が売られていま(写真下左)。 各店もそれほど大きくなく、写真下右などこれで二軒分の店です。 店で探していたのがエキウムの蜂蜜です。テネリフェ島のテイデ山で見かけたあの花です。蜂蜜自体はあちらこちらの店でも売っていますが、エキウムはなかなかありませんでした。 蜂蜜やジャムがたくさん並んでいて、ラベルを見ても、他の蜂蜜と区別がつきにくい。どうやら、エキウムが「Tajinaste」というらしいが、小さく下に印刷されているだけだから、他の蜂蜜と区別がつけにくい。サライさんに探してもらい、ようやく見つけたのが写真下のオジサンの店です。店の奥にあった在庫も即刻、日本人によって完売しました。500gで4.95ユーロ(約650円)ほどですから、一種類の花の蜜としては日本よりもはるかに安い。 めったにお土産を買わない私も意を決して買いました(笑)。写真上のオジサンとは別な店でラベルの違うエキウムの蜂蜜があったので、思わず二つも買ってしまいました。一つ500gですから、私のスーツケースは20kgを越してしまい、国内線では重量オーバーのラベルを貼られてしまいました。 市場の入り口に植えられていたのがアフリカ南部原産のニコライで、ちょうど白い鳥のような花が咲いています。 写真上 Strelitzia
Nicolai (The flowers of the Canaries, p.92) 市場の北口には歩道で花を売っています。スペイン人はド派手な花を好むのではないかと期待していたのですが、意外にも普通で、いずれも日本でも見かけるような栽培品で特に珍しいというような花はありません。 フエンカリエンテ塩田 ロス・リアノス・デ・アリダネで甘い蜂蜜を買った後は、島の最南端にある塩田を見に行きます(12:45)。 写真下は道路脇の民家です。ちょっと住んでみたいような小奇麗な家が多い。これはうらやましいという意味です(苦笑)。 牛模様の建物をあちらこちらで見かけます。なかなか楽しい。 海岸近くを見ると、ビニールハウスが見えます(写真下)。これはバナナの農場です。ネットでは湿度を保つためのものだとありましたが、サライさんの説明では保温と風よけのためとのことでした。 斜面にはいかにもカナリア諸島らしい家が建って、風景がきれいです。 街としては島の一番南にあるロス・カナリオス(Los Canarios)を通過(13:21、写真下)。火山を見るために後でここまで戻ってきます。 街を通り過ぎると、道は荒涼とした斜面を海岸に向かって降りていきます(写真下)。 眼下にフエンカリエンテ塩田(Salinas de Fuencaliente)が見えてきました。 灯台のそばの駐車場で降りて、塩田の近くにあるレストランに行きました(13:41、写真下)。 塩のサンプルなどが展示してあり、展示室なのかレストランなのかよくわかりません(写真下)。お腹が空いているので、レストランということにします(笑)。 食前に出た飲み物が写真下左です。「Sal Marina」というのだから、海の塩くらいの意味でしょうか。塩のジュースかと恐る恐る飲みましたが、特に塩分は感じませんでした。写真下右の他の人が注文したマンゴージュースは色が鮮やかでドロッとしていて、いかにも100%ジュースという感じです。私はここでもアップル・タイザーです。 塩田のレストランなのに、料理は特に塩辛いということもありませんでした(笑)。 食事を終えて、自由時間になり塩田を見ることになりました。写真下の白い道は雪ではなく塩です。 私はレストランの東側にある塩田の周囲を歩いてみました。 塩田にもいろいろと色があるのがおもしろい。何か藻が発生するのでしょう。先ほど、塩の展示場にもいろいろ色の塩がありました。 塩田のさらに東側にはバスからも見えた風車があります(写真下左)。 塩田の周囲は荒涼としているが、ほんの少し草花が生えています(写真下)。当然、この厳しい環境に適用した植物の種類はあまり多くありません。 写真上 Limonium
pectinatum (LA PALMA LANDSCAPES AND WILD FLOWERS,
No.929) 生えているのか枯れかかっているのかわからないくらいです。 写真上 Reichardia
ligulata (LA PALMA LANDSCAPES AND WILD FLOWERS,
No542.) 写真下のように、周囲には草一本ない所で見事に成長して花を咲かせています。ちょっと感動します。 写真上 Schizogyne
sericea (Native Flora of the Canary Islands, p.20) 写真下の植物はネット図鑑を見ると、もっと青々としているようですが、ここでは花も終えて枯れ始めています。 写真上 Astydamia latifolia (FLORA CANARIA) 写真上 Echium
brevirame (LA PALMA LANDSCAPES AND WILD FLOWERS,
No.639) ここにもトカゲ君がいました。 写真上 Gallotia galloti 塩田を後にして、これから塩田の北にある火山に行きます。山の中腹から火山が見えます。たぶん、写真下左の右端に写っているのがこれから私たちが行くサン・アントニオ火山、左端に写っているのが、1971年に噴火したテネグイア火山です。 サン・アントニオ火山 来た時の山の斜面を戻り、ロス・カナリオス(写真下)から南に行くと火山はすぐです。 下の衛星写真をみればわかるように、サン・アントニオ火山(Volcan de San Antonio)が一番大きいだけで、もっと小さな噴火口が東側の海岸にもいくつかみられます。この島自体が火山によって作られており、テネグイア火山が1971年に噴火したとなると、このまま静かであるはずがない。日本で噴火中の小笠原諸島の西之島も何千年後にはこの島みたいなるのかもしれません。 サン・アントニオ火山のビジター・センター(Centro de visitantes)に到着(15:45)。 ビジター・センターの中は展示物と売店があります(写真下)。1971年のテネグイア火山(volcan de Teneguia)の噴火の様子が上映されていました。サン・アントニオ火山の南側にある火山です。 1971年のテネグイア火山の噴火の様子を写した写真がネット上にありました。噴火の様子よりも、皆さん、座ったり、寝転んでのんびりと見物しているのがおもしろい(写真下)。この火山での死者は一人で、近づきすぎたためのようです。 写真上左(http://www.elapuron.com/noticias/opinion/13621/al-volcn-tenegua/から転載) 写真上右(http://www.viajejet.com/volcan-de-teneguia-la-palma/から転載) 去年2014年、日本では御嶽山の噴火で多数の死者を出したので、火山の噴火には恐怖心があります。しかし、気のせいか、写真下左はピクニックの雰囲気で、この人たちは噴火を楽しんでる(笑)。 写真上左(http://www.avcan.org/?m=Noticias&a=noticia&N=900から転載) 写真上右(http://www.acanvol.org/teneguiaから転載) 火山のすぐ近くに街があります。写真下左で、火山の北側に見える街は、私たちが先ほど通過したロス・カナリオスです。 火山からみると、すぐ山の下に住宅や農地が広がっています(写真下)。この火山がまた噴火する可能性は低いだろうが、噴火の歴史やその跡を衛星写真で見ると、別な場所から突然噴火が始まってもおかしくない。 斜面に見えるのはブドウ畑です。火山性の水はけのよい大地だから、ブドウの栽培には最適でしょう。 海岸近くには、バスからも見えたバナナ農園のビニールハウスがあります。当初、島でバナナを育ててもすべて失敗したのが、台湾バナナだけが適応したそうです。スペイン本土に出荷しており、島の重大な産業です。 ハイキングと聞いていたので、構えていたのですが、実際には衛星写真で見てもわかるように、ビジター・センター自体が火口のすぐそばにあり、そこから火口を三分の一を往復するくらいなので、実質二キロも歩いていないでしょう。上下もそれほどないから、登山装備は必要ありません。往復、ゆっくり歩いて三十分ほどです。 折り返し地点は火口の南側で、そこからさきほど我々が訪れた塩田と(写真下左)、その左側に1971年に噴火したテネグイア火山が見えます(写真下右)。 火口で一番驚いたのが、写真下です。火口の内側に樹木が生えている。カナリア松です。 写真下の衛星写真で火口を見てもわかるように、火口の内側と外側にも様々な低木など植物が生えているが、内側にたくさんのカナリア松が生えています。 それも火口の上にはあまりなく(写真下左)、下のほうに行くにつれて増えます(写真下右)。これは火口の上の方は常に地崩れを起こしているので松が成長する前に崩れてしまい、斜面の下のほうは地崩れは少ないが、上からの土砂が落ちてくるので、小さい植物は埋まってしまい、背が高い松しか残らなかったのでしょう。 それにしても、こんな乾ききった石ころだらけの急斜面に、よくまあ松が生えるものです。カナリア松の強烈な生命力に驚かされます。 この火山が大規模な噴火をしたのは1677年というのだから、すでに三百年経過しています。しかし、松は一番太いものでも百年くらいしかたっていないように見えます。いったいいつ頃から生え始めたのか、調べたら面白いかもしれません。 火口付近にはそれなりに植物があります。まず目立ったのか、写真下の黄色いポピーです。これは火口だけでなく、来る途中の道路脇のあちらこちらに群生して、なかなかきれいでした。残念ながら、ここでは群生はしていません。 写真上 Glaucium
flavum (Flora
Vascular de Canarias) このケシは私の持っている図鑑には載っておらず、ネット図鑑にありました。Wikipediaでは原産地域の一つとしてmacronesiaとあります。ミクロネシアではなくマカロネシアとはなんぞやと調べてみると、Macronesiaとはアフリカや欧州に隣接する大西洋の島々を指し、その中にはカナリア諸島も含まれます。このケシは海の近くにしか咲かないそうです。今回も、海岸では見かけなかったが、海が遠くに見える程度の地域、たとえばホテルの近くでも見られました。 写真上 Glaucium
flavum 写真上 Aeonium
davidbramwellii (SOPHY) 写真下の植物もカナリア諸島の国有種です。環境が厳しいので小さいがネットで見ると人の背丈よりも大きくなります。 写真上 Rumex lunaria (Flora Vascular de Canarias) 写真上 Echium plantagineum (La Gomera Landscapes, Flora and Fauna,
No.686) 写真上右 Echium
brevirame (LA PALMA LANDSCAPES AND WILD FLOWERS,
No.639) 火山のハイキングを終えて、今日の観光はすべて終了で、島の東側を回り、ホテルに帰ります。 ドン・キホーテと原発 ホテルの南側に空港があり、ちょうど飛行機が離着陸するところでした。空港の隣にも風力発電施設があります。スペインも日本と同じで資源のない国で半世紀も前から原子力発電を進めてきました。しかし、1980年代以降、原発を減らす方向で、現在は7基しか稼働していません。 ドン・キホーテ以来の風車の国ですから、人の環境への意識はかなり高く、この国の総発電量の2割を風力発電が占め、2014年には原子力発電を抜いてトップになっています。日本は?といえば、風力や太陽光発電など再生可能エネルギーを全部集めてもわずか1.6%というお寒い状況です。 カナリア諸島の近くから石油が出そうだとわかり、カナリア人たちは採掘に大反対したそうです。金銭的な利益よりも、自分たちの今の環境が悪くなることを恐れたのです。幸い、採算が取れないとして中止になったのだが、彼らの意識を良く表しています。 一方、日本人は2011年に原発崩壊と放射能汚染という「羹に懲りた」はずなのに、わずか四年でまた原発を再稼働するという(2015年8月に川内原発再稼働)。 スペインで風力発電が発電量のトップだというこの意識が、こういうきれいな街並みを作り出しているのでしょう。日本人は、後は野となれ山となれとばかりに、「トイレのないマンション」を再稼働させるという。私はため息をつきながら、バスの外のきれいなブドウ畑を見ていました。 ホテルに到着。今日は島の真ん中から南半分を一周したことになります。添乗員の小場さんがホテルの近くの店に案内してくれるというので行きました。一人でも行ける所なのだが、店内の写真を撮るのは大勢いたほうが便利です。目的の土産物屋は開いていませんでしたが、隣のSPARが開いています(写真下)。 日本の普通のスーパーのような品揃えで、一般的な食材などがよくそろっています。皆さんの目的の一つがワインです。まずその安さに驚かされます。写真下左などの2.35ユーロですから、300円ほどが当たり前です。 私は基本的には荷物が増えるので自分のお土産は買わないことにしているのだが、蜂蜜に続いて、ライ麦パンを買ってしまいました(2.15ユーロ、写真下左)。ネットで見ると、同じようなパンが日本では600円ほどで売られています。 今回の旅行ではホテルでの食事はビュッフェスタイルが多かったので、そのたびに私が主食に選んだのはライ麦パンです。写真下右はホテルのレストランのパンで、一番色の黒いパンがそれです。ごらんのように白いパンがないのがうれしい。ライ麦パンはゴソゴソして、酸っぱいような奇妙な味が日本人からはあまり好まれていないようですが、そう嫌わずに、ゆっくりと噛みしめてください。 ホテルの庭園 買物を終えてホテルに戻りました。 四泊するこのホテルの中庭を皆さんにご紹介しましょう。入口から入り、そのままロビーを突き抜けると、そこに写真下のような吹き抜けの大空間が現れます。写真下右はロビーのほうを振り返った風景です。正面に巨大な滝の絵があり、両側が緑に覆われた谷川の底のようなイメージは、たぶん6月7日に行くロス・ティロス(Los Tilos)を再現したのでしょう。 滝の絵の下にはカナリア諸島で良く見かける木でできたバルコニーがあり、その下がレストランの入口になっています。 両脇の回廊からは観葉植物の葉がぶら下がっています。何種類かの植物が使われ、その中ですだれのようなっているのは観葉植物に使われるポトスです(写真下)。 一番上から下までのびているのではなく、各階に植えてあり、そこから枝を下ろしているにしても、結構な長さです。ポトスは強烈な生命力をもつ植物で、私の部屋に何十年と枝葉をのばしているので、昔からの知り合いです。 真ん中は、溶岩でできた庭園です(写真上下)。段差があるので小川が流れ、一番下の池にはコイが飼われています(写真下右)。今日のガウディ風の公園と同様に、自然をそのまま模した庭で、日本人には親しみがあります。ホテルの中に植物を飾るのは珍しくはないが、ここまで大規模な庭は初めて見ました。 七時から、この庭園の奥にある滝ノ下レストランで夕食です(写真下)。 野菜も果物も豊富でおいしい。甘いデザートも欠かせない。だが、たいていそうなのだが、夕飯時にはお茶がありません。周囲の観光客が甘いケーキをいくつもそのまま食べているのを見ると驚きます。 明日は島の中央部を周ります。同じホテルで移動がなく、荷物は使いやすいように散らかしたままで良いので、それだけでもとても楽です。 トップページ 日程表 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 |