秋たけなわのギリシャの花 4日目 2019年11月2日(土) マニ半島 日の出はちょうど7時頃なので、写真下はその少し前です。部屋の温度は25.3℃です。 ギシオはマニ半島の付け根にあるので、今日は、マニ半島の先端のほうまで出かけて、秋の花を探します。 島の教会 港の南側にマラソニシという小さな島があります。ガードナーさんから、シクラメンなどがあるから行くようにと勧められていました。では夜明けの港を行きましょう。 写真下の灯台の立っているのが島で、道があるので歩いて行けます。 夜明け前から釣りをする人がいます(写真下)。魚もまだ眠っているのではないか。 海岸に沿ってホテルやレストランが並んでいますが、もちろんまだ人影はありません。 島に渡る道の所でガードナーさん夫妻に会いました(写真下左)。彼らは朝の散歩を終えて帰るところのようです。 私がマラソニシ島まで来た一番の目的は、シクラメンではなく、教会です(写真下)。島の入口にはかわいらしい教会(Agios Petros)があるのです。朝日にあたる街を背景にした教会という構図を考えていました。朝日が昇った後のほんのわずかの時間を狙ったつもりだったのです。だが、結果はイマイチで、理由は教会の周囲には電線があるからです。それを入れないで写すのは容易ではない。 教会はどうもおもしろくないと思っていると、猫が来ました。写真下の白い猫は私に近づき、いきなりゴロッと横になりました(写真下)。私は「初対面の相手に腹を見せるなんて、とんでもない。猫としての誇りを持て」とお説教しました。猫は「ホコリって、なに?それ、おいしいの?」と言っていました(笑)。 朝日が当たり始めると、先ほどはずいぶん違う印象の街になります(写真下)。 ホテルに戻ったのが七時半で、七時から朝食なので、人は少ない(写真下)。 写真下左が私が朝食を取っているテーブルから見える風景です。写真下右のオレンジのジャムは市販品ではなさそうなので試してみました。ちょっと甘すぎるが、素材はごまかしてはいないようです。 マニ半島の西側 予定通りに八時半にホテル出発しました。私は今日は二号車の乗用車のほうです。 写真上は道の両側も山も緑に覆われています。ところが、写真下のように、マニ半島の西側に出て海が見える頃には、道の両側や山にも高い樹木はなくなりました。半島の西側のほうが雨が少ないらしい。 地中海性気候は温暖で湿潤な冬と、陽ざしが強く乾燥する夏に分かれます。ここの植物にとっては夏は成長する時期ではなく、日本の冬のように耐える時期らしい。そこで花は、冬の雨の後の春と、雨が降り始める秋に多く咲きます。 真っ先に目についたのは枯れた植物です。咲いていた時にはさぞや見事だっただろうと思うような枯れ方です。「どういう花だったのか」と花に質問すると、「春にもう一度来い」という返事でした。 テッポウウリの仲間です(写真下)。水の圧力を利用して、種を遠くまで飛ばします。 写真上 Ecballium elaterium 人が歩く山道に沿って、シクラメンが咲いています(写真下)。 写真上下 Cyclamen graecum 写真下はお馴染みのクロッカスで、これは初めて見る種類です。 写真上 Crocus boryi 目的のスイセンが見つかりました。数が少ないので探すのに苦労していました・・・つまり、私は探していない(笑)。普通のスイセンに比べて、小柄です。写真下の上段と下段はそれぞれ同じ花です。 写真上下 Narcissus serotinus ここのヤブは刺が多く、歩くのが容易ではありません。強引に歩くと、脛は傷だらけになります。これでは家畜が入り込むのも容易ではないでしょう。 白いネジバナです(写真下)。日本に帰化しているネジバナに比べると、花が白いことと、ほんの少し大きいような気がするだけで、ほぼそのままです。英語名はautumn lady's-tresses(秋の女性の髪の毛)というから、茎が捻じれている様子から束ねた髪の毛を連想したのでしょう。 写真上 Spilanthus spiralis 写真下はネギの仲間だというから、ちょっと意外です。 写真上下 Allium callimischon トルコ南西部とこのペロポネソス半島やクレタ島にも分布します。花がかわいいのと、背丈が20cmほどなので、園芸用に栽培されているようです。 写真下のモウズイカの仲間は、中東から地中海にかけて分布するようです。 写真上 Verbascum sinuatum ギリシャのタンポポです(写真下)。 写真上 Scorzonelaの仲間 ギリシャのバッタは周囲の枯れた草と同じようで目立たないのが多い(写真下)。 写真下左のクモは白いクロッカスの花に乗っています。フンコロガシも朝の仕事に忙しい(写真下右)。 斜面に街が見えます(写真下)。水の確保がたいへんそう。 建物に統一性があり、とてもきれいで、ちょっと訪ねてみたいような街です。 薄紫のクロッカス これは美しいクロッカスです。今日の一番の美人と言っていいでしょう。 写真上下 Crocus goulimyi 薄紫と白い部分の配色が絶妙で、つい写真を撮るのを忘れて眺めてしまう。しかし、陽ざしが刻一刻と変わるので、そうはしていられないのです。 被写体が良いだけでなく、陽ざしがちょうど良い。土手に生えているので、陽ざしが少しずつ変わって行き、さっきまで陽が射していなかった所に射すと、また別な花のように見えます。何度も、あっちに行ったり、こっちに行ったりをくり返す。 このクロッカスの白花らしい(写真下)。やはり藤色が圧倒的にきれいです。 写真上のクロッカスがなかったら、写真下の初登場のクロチカムも着目を集めていたでしょう。ところが、不幸にもクロチカムはクロッカスのわりと近くに咲いていました。 写真上 Colchicum psaridis 毎度、クロッカスとクロチカムはそっくりでわかりにくい。クロッカスは葉が針金のように細いが、クロチカムは幅がある。ただ、ここのクロチカムは幅が細くて、単独で見られると区別がつきにくい。 このあたりは低い樹木が生い茂っています。クロッカスとクロチカムはこれらの樹木の足元にあります。 シクラメンの群落 集落の中のうねうねとした道をいくつも通り過ぎていきます(写真下)。 岩場の間に、ずっとシクラメンの群落が続きます(写真下)。 写真上下 Cyclamen graecum シクラメンは葉がついているのと(写真下左)、葉がないのとがあり、ついていないのが圧倒的に多い。秋で、これから光合成をするために葉がのびるのでしょう。 写真下のように、岩の間にけなげに咲いていると私たちは見てしまいますが、案外、彼らにとっては住み心地よいのかもしれません。岩は保温性が良いから、真冬でも冷えるのに時間がかかり、動物に踏まれることもなく、また、雨が降れば水が隙間に集まり、直射日光が当たらないから乾きにくい。 これまでも出てきたクロッカスで、かなり大ぶりな花です(写真下)。主に分布はギリシャ、それもこのペロポネソス半島に主に自生します。 写真上下 Crocus niveus こちらはヒガンバナの仲間で、初めての種類です(写真下)。白い石の間から生えていて、なかなか絵になる。 写真上下 Sternbergia lutea 良い被写体なので、皆さん、いろいろと工夫して撮っています。 近くに石垣と建物があるのでこれを入れて撮ろうとするのだが、なかなか難しい(写真下)。 地中海から、中央アジアのタジキスタンくらいまで分布します。日本でもキバナノタマスダレという名前で入っているようで、それらの写真では黄色いスイセンのような雰囲気です。ここのは、黄色いクロッカスという印象です。 岩の間のわずかな土を利用して根付き、さらに石の隙間をぬって茎をのばし花を咲かせている。 写真下はいかにも乾燥に強そうな地面を這っている小さな花で、花の形だけでいうなら、梅の花です。 写真上下 Polygonum equisetiforme 写真下は地中海を中心とした欧州、北アフリカ、中東、コーカサスなど広い範囲に分布します。 写真上 Prospelo autumnale 彼女が僕の花 村の教会のそばにある樹木の下で昼食です(12:43)。 ガードナー夫妻は仲が良い(写真下)。ガードナーさんはイギリス人で、奥さんはトルコ人です。ガートナーさんは「彼女が僕の花だ」というくらいです。ところが、今回の旅行中、親に預けて来た男の子二人の内、下の三歳の子供が熱を出して、しかも単なる風邪ではなく、入院したので、二人ともとても心配していました。 さらにマニ半島を南下します。ガードナーさんが半袖であるように、暑いくらいです。 トイレ休憩を兼ねて、ガソリンスタンドに立ち寄り、2ユーロでエスプレッソを飲みました。胃の弱い私がシングルを頼んだので、いきなり目が覚めた(笑)。 コーヒーで目が覚めたところで、次の花です。 ガードナーさんが撮っているのが、写真下のツルボランの仲間です。この花は中東やトルコなどの地中海側に分布し、ギリシャはその西の端のようです。ツルボランの仲間は砂漠のような所でも見かけますから、乾燥に強いのでしょう。 写真上下 Drimia aphylla カマキリ君が虫が来ないかと待っています(写真下)。 ヴァテイア 車はさらに半島を南下します。車も少なく、晴れた日のドライブは気持ちが良い。 道は旧道のせいか、道が急に狭くなっている所もあり、道ぎりぎりに石作りの建物があるので、対向車を考えると、けっこう恐い(写真下)。 山の上に要塞のような街が見えます(写真下)。ヴァテイア(Vatheia)という村で、Wikipediaによれば現在は人口33人だという。少なくとも五百年以上の歴史があるようだが、それらを読まなくても、こんな高台に堅牢な石の城を築いたのを見れば、ずっと戦争をしていたことがわかります。 これだけの建物があって、人口33人ということはほとんど建物は空き家や廃墟なのでしょう。高台にあって眺めも良く、立地は抜群ですから、店やホテルにすれば観光施設になります。そんな誰でも思いつくようなことがされていないのだから、資金など何か大きな障害があるのでしょう。 道の両側には住居にしては奇妙な場所に塔や建物があり(写真下)、いずれも海からの攻撃を想定した見張り台でしょう。 マニ半島は、当然、古い歴史があります。ところが、このあたりまで車でこれるようになったのは近代で、それまでは船が交通手段だったという。 写真下は道端では良くみかける花です。 写真上 Dittrichia viscosa ガードナーさんが道端の崖の上に花を見つけたらしい。下から見てもなかなか良い被写体です。ギリシャからイタリアにかけても分布します。カンパニュラという学名でもわかるように、キキョウの仲間です。 写真上下 Campanula versicolor 崖を登り、上から写真を撮ろうとすると・・あら!あの青い車は邪魔だよ(写真下左)。私たちが停まって崖に登っているのを見て、何をしているのかと見上げているのです。私は必死に「Move the car !」と叫ぶが、私の英語が通じないのに、ガードナー夫人が同じ事を言うと、どいてくれました(笑)。 私たちは半島の南端までは行っていませんが、そろそろ引き返しましょう(15:49)。 マニ半島の西側の遺跡で21万年前のホモサピエンスの頭蓋骨が発見されたという。ホモサピエンスは7万年前にアフリカから移住して、ヨーロッパやアジアに広がったと思っていたら、先発隊がいたのだ。 道は広くはないが、車の台数も少ないので、快適に飛ばせます。一号車のガードナーさんはかなり飛ばす。これに対して、奥さんはわりと慎重で、普通の運転なので、安心して乗っていられます。 夕暮れのクロチカム まだ五時前なのに、11月ですから、陽がだいぶん傾いている中、もう一カ所、寄りました(16:48)。 午前中も見た小型のスイセンです。痩せこけた印象だが、たぶんこれがこのスイセンの標準的な姿なのでしょう。 写真上下 Narcissus serotinus 数も少なく、すでに種をつけているのもあるから、終わりの時期なのでしょう。野生はやはり種をつけて増えるのだ。市販のスイセンでも原種系は種をつけると聞いたことがあります。 初めて見るクロチカムの仲間です(写真下)。 写真上 Colchicum parlatoris 陽がちょうど山に隠れてしまい、陽ざしがないのが残念です。 ギシオ一番のレストラン ホテルに戻り、六時半から夕飯です。今日は昨日の行く予定だったSaga Fish Restaurantに行きます(写真下)。 見るからに、こちらのほうが昨日のレストランよりも高級そうで、トリップアドバイザーでも、ギテオの37軒のレストランで一位です。また実際、料理や味付けも昨日のレストランほど庶民的ではありません。 高級レストランである証拠が写真下で、お客さんが魚を頼んだら、店員がナイフとフォークで骨を取り除いてくれる。食べたお客さんによれば骨は残っていたそうです(笑)。箸を出してくれれば日本人は慣れているから、上手に取るでしょう。 ここも塩分が強いのが難点ですが、味は良い。 デザートはリンゴ煮で、なかなかうまかった(写真下)。ところが、ガードナーさんからリンゴではないという意見が出てきて、最後までリンゴだと信じきって食べた私は、自分の味覚に大ショックを受けました(笑)。結局、後でリンゴで決着。 明日も今日のように晴れることを期待しましょう。 |