クリンジ 12年に一度しか咲かないインドの花 4日目 2018年9月11日(火) カース高原 6時頃、建物内と目の前の国道48号線の騒音で目が覚めました。室温は25℃で暑くも寒くもありません。外を見ると、晴れています(写真下)。どうやら、カース高原は三日間ともに天気に恵まれたようです。インドはモンスーンが終わりかけているとはいえ、まだ雨が降ってもおかしくありません。 今日は昨日と同じように、カース高原に行き、花を見る予定です。 朝の散歩です。昨日はホテルから北東方向に行きましたから、今日は逆に国道48号の向こうにある南西方向に行ってみましょう。下記の朱線が私の散歩コースです。 朝の通勤、通学の時間で、バスを待っている人たちがいます。下段の真っ赤な唐辛子バスは日本のそれよりも長さが長いような気がする。 道の脇に塀で囲まれた広々とした空き地があり、しかも入口は開いており、敷地内にはたくさんの人が歩いたような道ができていて、実際に歩いている人もいます(写真下)。道があるということは、反対側に通り抜けができるのでしょう。公園にしては奇妙だが、とにかく入ってみましょう。 敷地内にはいくつか建物があり、いずれも空き家で、いろいろな雑草が生い茂っています。 写真下はピンク色のアサガオなのかヒルガオなのか、小さいがなかなかかわいい。 写真下はチョウセンアサガオで、名前と違い、アサガオではなくナスの仲間で、強い毒性を持ちます。原産は南アジアですから、ここのは野生である可能性もあります。 写真上下 Datura
metel ここにも問題のあるランタナが咲いていて、ピンクだけでなく、オレンジなどいろいろな色がある。石を積み上げた家の古い壁とランタナの花が良く似合う(写真下)。 写真上 Lantana
camara 敷地内を通り抜けると一般道に出ました(写真下)。通勤の人たちがいます。 大通りから少し入ると住宅街があり、それなりにオシャレな家も多い(写真下)。 ところが、こういうきれいな住宅街のそばの川にはゴミが投棄されています(写真下)。こんなことしなければ、川と周囲の緑が住人の日常を豊かにするはずです。意識が低いという点では日本も今でも山林などに不法投棄が行なわれ、私の自宅の畑にも時々、犬の糞をそのまま放置する人がいます。 道端に捨てられたゴミを野良犬があさっている(写真下)。どれも痩せていて、あまり食料事情は良くなさそうです。日本と違い、世界のあちこちではまだ野良犬がいて、幸せそうに見える野良犬の国と、そうでない国があります。インドの野良犬は痩せていてあまり幸せそうに見えない。もっとも、日本のようにすべて殺されてしまうより、痩せても生きていられるだけまだ良いのかもしれない。 写真下の犬はお腹いっぱい食っている夢を見ている。 ホテルに戻り、7:30からホテルのレストランで朝食です(写真下)。昨日もそうで、七時半というのは彼らが朝食の準備をする時間らしく、まだ出そろっていません。 朝のサタラ市内 予定どおり8:30にホテルを出発。 バスは昨日のように南側の田舎道を迂回するのではなく、サタラの市内を東から南に通過します。街の様子が撮れるので、このほうがありがたい。 街は通学の生徒でにぎわっています。写真下は意図的に女子学生だけを撮っているのではなく、決してそうではないのに(笑)、なぜか男子学生は少ない。 写真下の薄紫の服はパンジャビという民族衣装で、制服らしい。一方で、下段のように、日本と同じようなタイプの制服もあります。 小売店も店をあけて仕事を始めています。 写真下左では、古い建物の窓に赤と白の洗濯物が干され、その前を赤いサリーを着たオバサンが歩いて行く。これらの組み合わせは日本ではまず見られません。 写真下左の古い家は昨日の夕方も洗濯物シリーズで撮りました(写真下右)。草が生え、壊れかけた屋根の下に今日は別な洗濯物がかけてあるだけでなく、あちこち錆びの浮いた水色のスクーターが家の前に置いてある。あまりに素晴らしい組み合わせの被写体に、私はバスを停めてくれるように頼もうかと思ったほどです。 写真下左では、黄色いマフラーをかぶり掃除をするオバサンを、擁壁の上の犬が寝そべって見ている。写真下右の駄菓子屋の前に立つ女の子は学校にいかないのだろうか。 サタラ市内を通り抜け、街の南側からカース高原へのカース・ロードを登っていきます。その道路の擁壁にもカラフルな洗濯物が干してあります(写真下左)。 カース高原でも通学や出勤の人たちがいます(写真下)。 カース高原では昨日も見た黄色いお花畑が道の両側に広がっています(写真下)。毎日見てもすごい。今日はこのまま通過します。 三度目のカース・パーサー カース・パーサーのチケット売場に到着(9:24)。まだ早いせいか、観光客はほとんどいません。 道端の樹木の下で赤いサリーの女性が犬たちと一緒に座っています(写真下左)。前も座っていた。つまり彼女も監視員です。飼い犬なのか、サタラ市内で朝見かけた犬よりも肉付きが良いから、彼女が餌を与えているのでしよう・・・もしかして、三匹の犬も監視員?! 教授は昨日と違い一般の観光客が立ち入らない場所で、柵もなく、監視員もいない、特別な所に案内してくれるといいます。二日間、お花畑を見たから、ちょっとくらいのお花畑では驚きません・・・わっ!スゴイ!!ツリフネソウがはるか向こうまでお花畑を作っています(写真下)。 写真上下 Impatiens
oppositifolia これはすごい。初日にもツネフネソウのお花畑を見たが、ここのほうが桁違いに広い。 カース高原のお花畑は八月から十月上旬くらいまでの三~四週間の間に集中しています。これは高山植物と同じで、環境が厳しく、花を咲かせられる時期が一年の間にこれしかないことを意味しています。十月以降は乾期で雨が降らず、春先には日本の真夏のような高温になり、夏にはモンスーンの大雨が降り続きます。つまり、水があり、適度な温度と太陽があるのはこのわずかな時期だけです。 カース高原はテーブル・マウンテンのテーブルの上の部分ですから、標高1200mにしては平らです。お花畑になっている部分は樹木も生えていません。地面の下には玄武岩があり、その上にわずかばかりの痩せた土が乗っているだけなのは、夏はモンスーンの大雨で表面の土が流されてしまうからです。これでは樹木が育つほどの土が堆積しない。 土が少なく痩せているので農業にも向かなかったのでしょう。それが幸いして、お花畑が残ったというわけです。 当然、ここに人間が入り込むことは生態系を乱すことになります。痩せた土地だからこそ樹木が生えず、背の低いこれらの草花が残ったのですから、人間が入り込み、牧畜などすれば、土地は肥えて、樹木や強い外来種などが入り込み、ここにある花などは駆逐されてしまうでしょう。 私が気になったのはトイレです。入口のチケット売場には簡易トイレが数個ある程度で、それ以外にはありません。一日の入場制限が3000人で、昨日の教授のスライドでもあれだけの人出があるのに、たった一カ所に数個のトレイがあるだけですから、現実がどうなっているか推測できます。 きれいなお花畑を見ながら、トイレの話もなんですが、インドのトイレ事情は非常に悪く、国をあげて改善に取り組んでいるほどです。インドの習慣から、彼らは悪気がなく、こういう自然の中で用を足しているのでしょう。しかし、それがここの微妙な生態系には致命傷になりかねない。 前述のように、ここにある草花の多くが貧弱な土壌に適したから残っています。モンスーンなどの豪雨で土壌が流され、深く堆積しないから、樹木が育たないおかげで、背の低い草花が生育できる。そこに人間の栄養豊富な排泄物を大量に供給したらどうなるか、やってみなくてもわかります。 歩き続けても終わらないお花畑を独占できるのはほんとうに素晴らしい。 シータの涙の群落 赤いツリフネソウと写真下の紫色の「シータの涙」(ミミカキグサ)がこの台地の主役です。 写真上下 Utricularia
purpurascens どンだけシータは泣いたのだろうというくらい咲いています。 赤がツネフネソウ、紫がミミカキグサ、白はホシクサの仲間です。花の数の上でもこの順序で多い。 紫と白が混ざって、しかもそれが台地の上に複雑な模様を描き出しています。 ツリフネソウ、ミミカキグサが混ざっている所もあるが、写真下のように、ツネフネソウがまったくない所もあるし、逆もまたそうです。同じように見える台地でも、彼らが選り好みするような違いがあるらしい。 お花畑ははるか彼方まで花が広がっている、と言いたいところがですが、残念ながら、台地部分のみで、そこから先の斜面には樹木が生えていますから、背の低いこれらの草花はありません。 花一つは写真下の直系1cmほどのボールペンと比較してもわかるように、かなり小さく、群生することで昆虫を集めているのでしょう。 時々、真ん中の部分が青味を帯びたのがあり、意外にそのわずかの差の青が目に付きます。これらの変わり種はほんの少数です。 写真下中のように、青味を帯びた花がまとまっていることもあるから、遺伝的な形質のようです。写真下右は花の裏側です。 教授が、こんなふうにして撮るのだと教えてくれた方法で撮ったのが写真下です。寝転んで、精一杯近づいて撮っています。花がおしゃべりしているような雰囲気です。 花たちと記念撮影をするには寝転ぶしかありません(写真下)。これがなかなか楽しい。 白いホシクサもアクセントとなっているので大事なのだが、目立たないのでつい撮るのを忘れます。 岩場と水辺の花 台地の上には所々に水溜りと岩場があります。 岩と池が配置され、背景に樹木があると、まるで庭園のような雰囲気です。 ここが庭なら岩のところにキャラボクでも植えるのだろうが、ここではサボテンのようなトウダイグサの仲間が生えています(写真下)。 写真上 Euphorbia
royleana 写真下は岩が好きな薄紫の花で、ここでもとにかく岩のそばに咲いています。岩と薄紫の花のコントラストがきれいで、絵になっている。 写真上 Neanotis
lancifolia 写真下は昨日は崖っぷちに咲いていた花で、今日もやはり崖っぷちに咲いている。 写真上 Pinda
concanensis 池があります(写真下)。ここは水を通さない固い岩盤で出来ていますから、平らで池ができにくいが、窪みがあれば水が貯まりやすいのでしょう。周囲には流れ込む川も流れる出る川もありません。 岩の所々に水溜りがあり、そこにカニやオタマジャクシがいます(写真下)。写真上の池と違い、写真下は小さくて浅い水溜りですから、陽が照ったら、たちまち蒸発してしまいそうです。カニは移動できるとしても、オタマジャクシがいるということは、わずかな水が流れて来て、案外、水溜りが消えないのかもしれません。モンスーンは終わりかけており、まもなく乾期が来ますから、それまでにカエルになるのでしょう。 写真下の濃い紫の印象深い花はこれ一本しか見つけられませんでした。 写真上 Exacum
lawii 写真下は昨日、道の脇で見かけた花で、ここのは株が大きい。 写真上下 Justicia
latispica 一昨日は池のそばに生えていた薄紫のクリンジの仲間です(写真下)。ここでも群落はしていません。日本ではスズムシバナと呼ばれているようです。 1 写真上 Strobilanthes
callosus 写真下のセネシオはここでは主役になるほどの数はありません。 写真上 Senecio
graham 写真下は柵のある道沿いにも群生していたショウガの仲間です。 写真上下 Hitchenia
caulina 写真上のように群生しているよりも、写真下のように一本が岩場で咲いているほうが絵になる。草地では葉が目立たないが、ここは葉が目につくから、イメージが違って見えるのでしょう。 写真下のイボクサは昨日も少し見かけました。カースの特産ではなく、インド全体で見られます。ここのは薄い黄色からクリーム色ですが、もう少しオレンジの強い花もあるようです。 写真上下 Murdannia
lanuginosa 昨日、道路脇のコンクリート擁壁に咲いていたシュウカイドウです(写真下)。水が流れる木陰の下に群落しています。西ガーツ山脈では良くみられる植物です。私の自宅にあるシュウカイドウよりもややピンク色が薄いだけで、外見的には同じです。ボルネオで見たシュウカイドウも日本のそれと良く似ていました。 写真上 Begonia
crenata 写真下も日本のツユクサと良く似ています。色は上段のほうが見た目に近く、下段はコンパクト・デジカメなので、青色がやや強調されています。あまり数は多くありません。 写真上 Commelina
clavata 花を踏まないでは歩けないほどのお花畑からチケット売場に戻り、これでカース・パーサーの三日間にわたる花の散策も終了です(写真下)。満腹です(笑)。 女神様にお礼 またKaas Holiday Resortに立ち寄り、昼食です(12:57)。玄関先に舞っていたのが、写真下右のチョウです。インドから東南アジア、オーストラリアにかけて棲息し、黒いせいか「インドのカラス(Indian crow)」と呼ばれています。 写真上右 Euploea
core カース高原の女神カサイ・デヴィ(Kasai Devi)が飾られた食堂で昼食です(写真下)。たくさんの花を見せてくれた花のように美しい女神様に私はお礼を言いました(笑)。 食事は相変わらず辛すぎて、この写真にある食べ物はほぼ私はパスです。 食事を終えて、移動しながら、再び花を探します。晴れて陽ざしが強いが気持ちが良い。 お客さんがバスの中から花を見つけて停車(写真下)。花それ自体は園芸品種として見たことがあるものの、これが自然に生えているという点がすごい。写真下右の黄色いのが未熟な花で、成熟すると左のように赤くなります。 写真上下 Gloriosa
superba 外見どおりにflame lily(炎のユリ)などと呼ばれていて、名前どおりにアルカロイド系の強烈な毒性を持ち、逆にそれを利用して薬も作られています。薬として使えることが災いして、野生が採取され、インド東部のオリッサ州(Odisha)では絶滅危惧種に指定されています。 写真下は昨日も見た、花弁に虫が停まるとオシベが飛び出す花です。オシベが隠れているのはわかったが、では、メシベはどこにあるのだろう?花の構造がいまひとつ良くわからない。花はまとまっておらず、茂みの中のあちらこちらにあります。 なんだ、これ?! 教授は特別な花を見せてくれるらしく、写真下の斜面に案内しました。木立と草原があるだけで、特に目立つ花は見当たらない。 ありました。それが写真下です・・・なんだ、これ?! 写真上 Ceropegia
oculata 風船のように膨らんだ根元から緑色の先までの全体が花らしい。昆虫の頭部を連想させます。形も模様も奇妙だし、この深い緑色がなんとも言えない。 他にも先が白っぽいのや紫色のがありますが、上の緑色が一番きれいというか、衝撃がある。 少し歩いた所にまた別な種類の花があります(写真下)。こちらは黄色から薄黄緑色です。 写真上 Ceropegia
hirsuta 地下にある茎(塊茎)がでんぷんを貯めるので食料になるそうです。 写真下の三つ目は見覚えがあります。昨日、昼食を取った後、緑色のランが生えているところで見た花で、私が花のツボミだと思った花です。これ単独で見せられるとあまり興味をひかないが、上の緑や黄色の仲間だと知ると、ちょっと見る目が変わります。 写真上下 Ceropegia
media ここでは三種類を見ましたが、ネット上の図鑑を見ると40種類近くもあるようです。いずれも写真下のボールペンと比べるとわかるように、とても小さい。教授から教えられなかったら、これらの前を通過しても、気が付かないような花です。まして、三種類も見つけるのは無理です。 カース高原の動物たち 広いお花畑や奇妙な形の花など、カース高原の花々に驚きながら、バスに乗ります。 写真下左は白いコブウシにスキを付けて畑を掘り起こしています。牛の角には赤い模様が施されている。 坂の途中にいつもいるボンネット・モンキー(Bonnet Macaque)に、今回で最後なので、バスを停めて挨拶します(写真下)。 写真上 Macaca
radiata お客さんが菓子を与えるとサルたちは大喜びです。餌をもらえるのを知っているから、こんな車が往来する道の近くでウロウロしているのでしょう。 ボンネット・モンキーとは別な種類のサルが反対側の山の斜面にいます(写真下)。こちらは人馴れしておらず、人間が近づくと林の奥のほうに逃げて行きます。しかし、完全に去ることもしない。 ハヌマーンラングール(Gray langurs, Hanuman
langurs)というインド、スリランカ、パキスタンなどに広く分布するサルです。西ガーツ山脈にはNilgiri langur (Semnopithecus johnii)というラングールもいて、身体全体が黒い毛でおおわれているのが特徴ですから、写真下は残念ながら普通のハヌマーンラングールです。 写真上 Semnopithecus
entellus サルばかりか、トラもいる(写真下左)。 道沿いの花 三日間バスで往復したカース・ロードを歩いて花を探します(写真下)。 数の上で目につくのが、バスでこの斜面を往復するたびに見かけたツリフネソウの群落です。 写真上下 Impatiens
balsamina 良く見ると、写真下右のような白花のツリフネソウもあります。 道端にはカース・パーサーとは違った花があります。写真下は蔓状に茂みに巻き付いているのでバスの中からも良く見かけました。インドやスリランカで見られ、学名にfragransとあるから、香りが強いのかと思ってしまうが、実際には香りはほとんどありません。名前を付けた学者の釈明を読んでみたが、意味不明です(笑)。 写真上 Thunbergia
fragrans 写真下は様々な部族によって薬として用いられてきた薬草の一つです。 写真上 Plumbago
zeylanica 写真下のきれいな黄色も、コンパクト・カメラ(上段)と一眼レフ(下段)では花や葉の色がだいぶん違ってきます。 写真下はこれまでも何度か出てきました。数が少ないが、こんなふうにあちらこちらで目につきます。 写真上 Asystasia
dalzelliana 写真下はアジアに広く分布して、日本でいえばコマツナギに相当します。 写真上 Indigofera
cassioides 道端ですから、外来種もあります。写真下は日本にもあるオオセンナリで、南米原産です。インド北部でも何度か見ました。 写真上左 Nicandra
physaloides 私たちが道端で花の撮影をしていると、新聞記者だという二人から取材され、またしても全員で記念撮影です。昨日の新聞記者の取材と大学での記念撮影で少々食傷気味だったが、せっかく取材してくれるというので、ここは日本とインドの友好のために忍耐です(笑)。 写真上 Celosia
argentea 若い人たちはたぶん合コンでしょう(写真下)。彼らももちろんカメラを嫌がらない。 夕方のサタラ市内が一望できます。今日も天気に恵まれました。 最後に寄ったのが、尾根を走る送水管で、描かれた絵が有名らしい。 楽しそうに赤い人たちが走っています(写真下)。全員が水の流れる方向とは逆向きに走っている。 送水管の尾根からは夕方のカース高原の南側が見渡せます(写真下)。斜面で牛はのんびりと草をはむ。 花の写真よりも、牛と一緒にのんびりしたいような風景が広がっています。そして、ここで三日間にわたるカース高原での花の観察は終了です。今日の朝、三回も同じ場所に行ってもおもしろくないのではないかと思ってしまい、カサイ・デヴィと教授に失礼しました(笑)。 写真上左 Lavandula
bipinnata、中 Senecio
grahami サタラ市内 サタラ市内に戻ってきました。 ちょうど帰宅時間なので混んでいます。 いや、インドはいつも混んでいるのかもしれない(笑)。 子供たちは下校時間です。 子供たちとは逆に、どこの国でも老人たちの時間はゆっくりと流れている(写真下)。それにしてはオレの周りはゆっくりしていない(笑)。 三輪車のタクシーであるオートリクシャは大活躍です。子供たちも利用している(写真下右)。日本でも高齢者による交通事故が多発し、免許証の返納が呼びかけられています。しかし、私のように田舎に住んでいる者にとって車がなかったら生活ができません。日本ではタクシー代が高いので、低料金で利用できる移動手段がありません。オートリクシャのような気軽な交通機関が日本にないことが返納が進まない大きな理由です。 好評の洗濯物シリーズです(写真下)。ハンガーにかけるという習慣はなく、柵などを物干し竿にしてぶら下げるというのがインドのやり方のようです。 夕日を浴びる小売店の店先に買い物客がいます(写真下)。これだけの街なのにスーパーのような大きな店は見かけませんでした。 こちらのカメラに気が付くと、露骨に嫌がる人はおらず、中には喜ぶ人もいます(写真下)。撮るほうは助かる。 覆面のお姉さんライダーがスクーターで爆走していきます。日本でこんな格好で走っていたら、強盗か映画の撮影かと間違われる(笑)。 インドですから、街中にも家畜がいます。写真下左の茶色の牛は角が長く、背中にコブのあるコブウシで、インドなど南アジアでは古くから育てられている牛です。 舗装されていない道路もあり、ホコリがひどいから、ヤシの実を売っている人は口を押えています(写真下左)。写真下右はたぶんタキギ売りの女性たちです。これだけの街なのに、まだタキギの需要があるのだ。 ガネーシャの祭 サタラの街中はガネーシャ(Ganesha)の大きなポスターや像が飾られ、ガネーシャの祭りがあるようです(写真下)。 写真下右のポスターなど子供を対象としたお菓子の看板のようで、左側にガネーシャの絵をわざわざ入れています。「ガネーシャも毎日食べている」なんて書いてあるかどうかわかりません。しかし、MAHALAXMIがお菓子の名前なら、これはラクシュミーという女神の名前で、しかもガネーシャとは関係がない。 ガネーシャは象頭のヒンドゥー教の神様です(写真下)。インドだけでなく、象が身近なタイなどでも人気があるそうです。日本には密教で聖天や歓喜天として入っています。 写真下左の荷台に運ばれている物は大きなガネーシャの像の後ろ姿です。私たちが乗っているバスのフロントにもガネーシャの像が祭ってあります(写真下右)。日本の交通安全のお守りの感覚でしょう。 街中はガネーシャの像を雛段に並べて売る店をあちこちに見かけます(写真下)。ガネーシャの人気は、太っ腹でいかにも富をもたらしてくれそうで、親しみが持てるからでしょう。彼の父親はシヴァという怒りっぽい神様です。シヴァが自分の子供とは知らずに首をはねて殺してしまい、妻のパールヴァティーに怒られたので、たまたま見つけた象の頭をくっつけたら生き返ったのがガネーシャです。 シヴァはインドらしい乱暴な神だと日本人は思う。だが、日本人の多くが彼を拝んでいるのをご存じでしょうか。不動明王など密教系の忿怒の神仏のほとんどが元はシヴァです。 ガネーシャの牙は片方が折れています。諸説ある中で私が一番納得している説は、ガネーシャが夜道で転んだひょうしに、食べたお菓子が口から出てしまったのを月に見られて笑われたので、怒ったガネーシャが自分の牙を折って月に投げつけたという話です。お菓子が口から出てしまうほど食べたというのがとても説得力がある(笑)。 教授の自宅でお茶会 サタラ市内にある教授の家に到着しました。お茶に招待されています。通りに面してピンク色の門柱が立っています(写真下)。建物や部屋の内部もピンクが使われています。 教授と奥さん、そして二人の息子さんです(写真下)。家族で私たちを歓迎してくれました。 居間から見える庭は良く手入れされています(写真下)。 居間の壁には教授自慢の花の写真が飾ってあります・・・やっぱり(笑)。お茶をいただきながら、じっくりと拝見しました(写真下)。 部屋のテレビのモニターの上にガネーシャが飾ってあります(写真下右)。家の中も外もまだ新しいのかと思ったら、建てて二十年くらいたつそうです。庭と同様に、家もかなり良く手入れされています。 近所の子供たちを撮って、ここで教授ともお別れです(17:48)。 再び、夕方の人ごみの街中をホテルまで戻ります。 道端で売られている果物の中にザクロがあります(写真下左)。インドではザクロのジュースを売っています。ただ、絞ったり切ったりする道具に雑菌がついているから、私のように胃腸の弱い人はやめたほうが良い。 写真下は草花を売る店です。二日前、プネーに到着した時も草花を売る店がたくさんありました。鉢植えがたくさんありますから、花を育てる習慣があるのは良いことです。 夕飯と心配事 7:30からホテルのレストランで夕食です。レストンの入口の店名を良くみるとchiniとあります。チニとは中国のことで、ここは中華レストランらしい。ところが、中華料理さえもすべて辛く、中華風インド料理です。 辛さは味覚ではなく、単なる刺激にすぎません。テレビ番組で、口の中にある味蕾と呼ばれる味を感じる器官を調べてみると、インド人は日本人に比べて摩耗したように衰退していました。タバコや老化によっても同じ事がおきます。辛い物を食べ続けるのは味覚をどんどん悪くすることです。 旅行前半のカース高原の花はカサイ・デヴィと教授のおかげで期待以上でしたから、普通なら私はウキウキした気分に浸ってもいいはずなのに、むしろ緊張しています。明日からは旅行の後半で、一番の目的であるクリンジを見るために南インドに移動するからです。むしろこれからが問題です。カース高原は今年がダメでも来年があるが、クリンジは今回見損ねたら12年後です。うまくクリンジのお花畑が見られるだろうか? |