クリンジ 12年に一度しか咲かないインドの花 5日目 2018年9月12日(水) サタラ → プネー → コーチ → ムンナール 今日はサタラを出てプネーから飛行機で南インドのコーチに行き、そこからバスでムンナールに行きます。 プネーからの飛行機が11時すぎなので、そこから逆算するとホテルを6時に出発しないと間に合いません。4:45のモーニングコールの前に起きて準備を始めました。予定どおりに6時にホテルを出発。まだ、外は暗い(写真下)。 少し走ると周囲はしだいに白み始めました。交通量は早朝なのに少なくありません(写真下)。 周囲は農村が広がり、西ガーツ山脈の山々が見えています(写真下)。 風車が山の尾根に沿って朝焼けの中に浮かび上がっています(写真下)。インドの風力発電は優秀です。補助金もなしに2017年では1kwあたり2.64ルピー、つまり5円もしないという驚異的な安さで、風力が全発電量の約3%を占めています。日本の風力が2017年に0.6%なのを見れば、インドが風力発電に積極的なのがわかります。インドは風力などの再生可能エネルギーによる発電が20%を占め、原子力の発電は2%です。 インドは今でも火力発電が中心で、電力不足から原発にも熱心で、2017年には10基を増やすなどの計画を発表しています。日本も積極的に売り込みをしたいらしいが、インドは日本と違い、トラブルが起きたら企業の責任を追及する法律がありますから、原発事故が起きたら、ほぼ間違いなくその企業は破綻します。 日本がイギリスやトルコにも原発の売り込みに失敗したのは良いことです。自分の国で大災害をもたらした原発を、成長戦略と称して首相自ら先導してよその国に売りに行くなど、いったいどういう品性なのだろう。お金さえもうかれば、原発でも武器でも何でも売るという神経は理解できない。 日本は原発の再開を裁判所さえも認め、寿命の切れたはずの原発をさらに20年稼働させています。賞味期限の切れた食べ物を売った店は批判されるのに、原発は賞味期限が切れても問題はないらしい。20年の稼働延長を決めた老人たちは20年後は生きていないから、後は野となれ山となれなのでしょう。 昔は「近頃の若い者ときたら」と年寄りがぼやいたそうだが、今は「近頃の年寄りときたら」と年寄りがぼやく。 写真下のトラックの乗客は見えるだけで15人、奥のほうまで人がいるようだから、たぶん20人以上は乗っています。乗り合いトラックにしては、プラスチックの浮輪のようなものがぶら下げてあり、子供がたくさん乗っているのはどうしてなのだろう?彼らは私のほうを何なのだろうとジッと見て、私も彼らは何なのだろうとジッと見る。 道路の両側に時々、ヒンドゥー教の寺院が見えます(写真下)。今日の午後に南インドのケララ州の道路を走ると、これがキリスト教の教会に変わります。 写真下左は9日に来る時にも見たコブウシの作り物で、写真下右は本物です。両方とも角に赤い模様を付けています。 同じように来る時も見た、赤いクマのヌイグルミを売っている店です。夜もこの状態のようで、泥棒は大丈夫なのだろうか。 まだ七時少しすぎで、学生たちの登校の時間にしてはずいぶん早い(写真下)。 トイレ休憩です(7:24)。犬クンがいて「僕は朝食がまだなんですけど」という顔をしている。あげる物が何もなくて、すまんね(写真下右)。 プネー市内 バスはプネー市内に入ってきました(写真下)。高い建物が多く、サタラに比べても大きな都市なのがわかります。 通勤ラッシュの時間で、どこもかなり混んでいます。 朝食は屋台で取る人が多いのか、けっこうはやっています(写真下)。 気のせいか、写真下の二人だけでなく、掃除をしているオバサンは赤いサリーを着ていることが多い。 八時頃になると通学の時間で、子供たちの姿が目につきます(写真下)。 街中は意外に宗教的な物は目につきません。ガネーシャのお祭りがあるはずなのに、サタラよりも目につかない。 写真下のポスターの共通点は、ガネーシャの絵と一緒に男性たちの顔写真が載っていることです。上段で赤いガネーシャが載っている二つの看板では、メガネを掛けた男性は左右両方に載っているが、他の四人は別人です。また、この男性は右と左で違うメガネをかけています。ガネーシャの祭りに合わせて、政治家や金持ちが自分を売っているのだろうか? 街中で目を引いたのが写真下の遊園地の看板です。これが写真下右のように百メートルくらいにわたり貼りつけてあります。プネーから北西のムンバイ方向に80kmほど行った所にある「イマジカ(IMAGICA)」というテーマ・パークです。 宗教的なお祭りが大好きなインド人なのに街に宗教的な物が少なく、テーマ・パークの看板が並んでいるのは、インド人の好みの変化かもしれません。遊園地は毎日がお祭りですから、赤いガネーシャを拝むよりも、赤い象と遊ぶほうが楽しいのでしょう(写真下右)。 (https://www.adlabsimagica.com/theme-park/) 壁画があります(写真下)。専門家が描いたもので、Pune speaking wallsという運動らしい。バサントさんによれば、この壁は刑務所の塀だそうです。 写真下の絵はちょっと奇妙で、真ん中から横に絵がずれている。壁をずらしたはずはないから、わざとこういう絵を描いたのでしょう。ただ、ずらすことで何を表現したかったのか、よくわからない。 またしても覆面女子 バスから見ていて目につくのが、9月9日にも紹介した「覆面女子」です。イスラム教の習慣です。サタラよりも都会なので数が多い。 写真下の二人はカメラに気が付いたので、私がカメラを指さすと、わざわざ覆面を外して撮影に応じました。 イスラム教では女性がスカーフをかぶることを義務づけていますから、この覆面はその延長です。しかし、街中を見ても、スカーフだけをかぶっている女性はほとんど見かけません。スカーフもかぶっていないか、覆面をしているか、両の極端です。そこから推測するなら、イスラム教の義務を果たしているというよりも、顔を隠すこと自体が目的のようです。 特に違和感があるのが写真下の「黒頭巾」の忍者スタイルで、いきなり目の前に現れたら、強盗にしか見えない(笑)。 イギリスで2017年、日本人の若者集団が白いマスクをしたままスーパーに入ったら、強盗と勘違いされて、非常ベルを鳴らされたという笑うに笑えない話がありました。 幸い、多数の女性たちは覆面はしていません(写真下)。 普通に顔を出している彼女たちを見ると、とても健全に見えるからおもしろい。覆面女子という奇妙な習慣が広がらないでほしい。見事な黒髪を隠すことはあるまい。 スパイス・ジェットのチャイ プネーの空港に到着して、ここで四日間お世話になった運転手と助手にお別れです(写真下右、8:35)。昔のインドは道路事情も悪かったから、バスに乗っていると前を見ていられないような怖い運転が多かったが、彼らは安全運転でした。 空港内は地方空港という感じで、それほど混んではいません(写真下)。 売店でコーラを買おうしたが、ありません(写真下左)。バサントさんが代わりに勧めてくれたのがFIZZというリンゴの炭酸飲料です(写真下右)。リンゴも炭酸水もどちらも好きで、「口うるさい」私は、期待しないで飲んだところ、インドへの評価が一気に上がりました(笑)。てっきり香料と甘味料をテンコ盛りにした甘々のジュースだろうと思っていたら、リンゴそのものを用いて、良心的に作られたサイダーです。 帰国後、調べてみると、インドではなく、フィンランドのメーカーのようで、残念ながら日本では売られていません。 (https://www.olvi.fi/en/products/ciders/fizz-apple-en/) リンゴのサイダーを飲んですっかり気分が良くなったところで、いよいよ搭乗です。 今回の旅行では飛行機に5回乗ります。その内、4回はインド航空で、今日の一度だけスパイス・ジェット(Spice Jet)という格安航空会社でした。 スパイス・ジェットという名前どおりで、真っ赤な機体を見ただけで辛そうです。写真下左は空港内の出発予定表で、表示が赤いので一目でわかります。 格安航空会社なので預ける荷物は15kgまでだという。私は日本を出発する段階で18kg以上あり、インドに来てから教授の本やバサントさんに頼んだ本も買いましたから、測ってみるまでもなく増えています。超過料金は1kgあたり400ルピーで、4kg超過なら1600ルピーで約2720円です。このため私はいつもの旅行よりも多めに換金していました。運賃はこの航空会社のネットで見ると4,050ルピー、つまり7000円もしないのに、荷物の追加に2720円も払うのは腹が立つが、彼らはこういうやり方でもうけているのだから、しかたないと思っていました。 しかし、幸い、団体全体の総量で測ってくれたので、お金を払う必要がありませんでした。 機内はほぼ満席です。スパイス・ジェットは新しくできた格安航空会社なので、ネットでの座席予約も簡単にできるだろうと期待したのですが、アクセスできませんでした。チェックインはバサントさんがまとめてしたので、私の座席は3座席の真ん中です。幸い、窓側の席は一緒に旅行しているお客さんで、それも今回で四回も一緒のお客さんなので、無遠慮に窓に手をのばして写真を撮らせてもらいました。 スパイス・ジェットSG 8185便の機体はボーイング737-800です。プネーを11:25に出発し、コーチには 13:15に到着予定で、1時間50分の飛行です。ほぼ予定どおり11:32に離陸しました。 経費節約で洗っていないのか、窓ガラスがひどく汚れており、カメラを向けるとこのゴミに焦点があってしまう(写真下)。日本のカメラは優秀です(笑)。 昼食が出ました(写真下)。私たちの飛行機のチケットには昼食代金が含まれていて、客室乗務員は名簿を見ながら、名前で本人を確認しています。 写真下右はチャイ、つまりミルクティーで、これでひともめしました。最初は写真下左のパックのジュースを配ったから、チャイはないというのです。さあ、ここからがインド式の交渉の始まりです。ジュースを返すから、チャイにしてくれと松森さんとバサントさんが粘り強く交渉してようやく交換してもらいました。 日本だったら簡単に話がつきそうなことでも、インドでは四つに組まないと終わらないことが良くあります。コツは忍耐、寛容、冷静、粘り強さといったところでしょう。私だけ離れた席を予約していたらジュースで我慢するしかなかったので、荷物の超過料金の件といい、一緒の席でよかったと安堵しました。チャイはインスタントで、店のチャイに比べてうまいわけでないが、忍耐、寛容、冷静、粘り強さで得た飲み物は特別に温かく味わい深い(笑)。 乗る前は、ネットでの予約ができなかったことと、荷物の超過料金の件で大幅に減点するつもりでいましたが、ジュースとチャイの交換に応じてくれたので、この飛行機への個人評価は五段階のC、普通とします。 一時間半ほどの飛行の後、眼下にコーチの街が見えてきました(写真下)。 水没した空港 ほぼ予定どおり12:54にコーチン国際空港(Cochin International
Airport)に着陸しました。街の名前はコーチ(Kochi)なのに、空港の名前はコーチン(Cochin)と別です。 写真下のように、空は晴れて普通の空港ですが、一カ月ほど前はすごい状態でした。 一カ月前の八月中旬、私はニュースを見てビックリしました。コーチのあるケララ州ではモンスーンの大雨によって各地で大洪水が発生し、67人の死者が出たなど、大被害が起きているというのです(写真下)。ケララ州は私たちの行くムンナールがある州で、そのムンナールでも、観光客が取り残されているという報道がありました・・・困ったことになった。 NDTVより転載(https://www.ndtv.com/) 写真下が8月16日のコーチン国際空港、つまり私たちが到着した空港の当時の様子です。飛行機はエンジンまで水に浸かっており、空港は8月26日まで閉鎖されるとありました。私はこのニュースを見て、ツアーリーダーの松森さんに連絡をしました。私以上に血の気が引いたことでしょう。 NDTVより転載(https://www.ndtv.com/) 日本でも9月上旬に関西国際空港が台風で冠水して閉鎖されるなど、災害が多かった。しかし、今日の空港を見る限り、洪水の跡がないことに私はちょっとホッとしました。しかし、問題はこれからで、ムンナールまでの道路が大洪水で寸断されたはずだから、それが復旧しているかどうかです。 空港内は日本の地方空港ほどで、それほど広くはありません。 飛行場内に事前にタクシー料金を払うPrepaid Taxiの窓口が二つもあり、人々が列をなしています(写真下)。日本ではこういうタクシー利用方法はあまり聞かないが、インドでは珍しくありません。理由は、タクシー料金がデタラメというか、ぼられるからです。インド人でさえも騙されるのですから、日本人がタクシーを利用する時はなおさらプリペイドです。 建物の外に出ても洪水の跡はわかりません(写真下)。ここからバスに乗り、ムンナールに向かいます。 迎えのバスは朝まで乗っていたプネーのバスと同じ型なので、バサントさんが「同じだ」というので、私は「違う」と写真下のバスのフロントにあるマリア像を指さしました(写真下左)。プネーのバスはガネーシャだからヒンドゥー教(写真下右)、こちらはマリアだからキリスト教です。 ムンナールへ ムンナールは空港から110kmほど東にあり、何もなければ約三時間半の行程です。前半を平地、後半を西ガーツ山脈の山道を走ります。その山道が問題です。 空港はコーチから離れた場所にあるので、どちらかというと田舎街を走ります(写真下)。 道は16号から85号という幹線道路に入りました。朝走ったサタラとプネーのような整備された道路ではなく、街と街をつなぐ旧道という感じで、どちらもあまり広くはありません。 街から離れると、ヤシが生え、バナナ畑が広がり、いかにも南インドらしい風景です(写真下)。 写真下の大きな河はペリヤール川(Periyar River)で西ガーツ山脈を源として、コーチとその周囲に水を供給している重要な河川です。後で、もう一度渡ります。 ペリヤール川の橋の上にインスタント・コーヒーの看板が並んでいます(写真下)。広告主のBrahminsはケララ州にある菜食主義者用の食べ物を作っている会社です。菜食主義の人だけを相手に商売が成り立つのだから、それなりの人数がいるということでしょう。 (http://brahminsgroup.com/beverages/) サタラからプネーへの道ではヒンドゥー教寺院が目につきましたが、こちらはキリスト教の教会や看板です(写真下)。ウィキペディアによれば、ケララ州ではヒンドゥー教徒が54%、イスラム教徒が26%、キリスト教徒18%だという。二割に満たない少数派なのに、教会がやたら目につきます。 写真下左はバスの後ろに描かれたキリストやマリアの絵で、写真下右のAnita Public Schoolはキリスト教系の学校です。 (http://www.anitapublicschool.org/) 写真下は教会の塔らしい。キリスト教系の塔は洗練された形が多いのに、ここのはイマイチです。 意外に少ないのがモスクです(写真下)。イスラム教徒が多いのだから、もっと目についてもいいはずなのに、キリスト教の教会とは比較にならないほど少ない。 イスラム教徒がどのくらいいるのかを示すのが写真下左の看板で、文字読めないので内容はわからないが、31人の学生によるイベントの広告らしい。男子生徒を除いた25人の女子生徒の内、スカーフをかぶっているのは9人だから、イスラム教徒は36%で、ウィキペディアの26%よりも10ポイントも多い。25人というサンプルが少ないことから来た誤差か、それとも実際には多いのか、わかりません。 人口の半数がヒンドゥー教だというのに寺院はあまり目立ちません(写真下)。 インド美人に微笑まれると、私に微笑んでいるはずもないのに、商品を買わないと悪いような気がしてきます(笑)。しかし、宝石の広告が多く、きっと私の財布が死んだふりをするくらいの値段なのでしょう。 広告の美女たちはインド・アーリア系の顔立ちで、一方、ここは南インドなのでドラヴィダ系の顔立ちの人たちが多い。 写真下の上段の男性たちは格好が良いのに、下段の赤シャツのおっさんは木綿の衣類の広告で、涼しいと言いたいらしいが、どう見ても暑苦しい。 写真下の看板はスカーフをしたイスラム教徒らしい女医さんの歯科医院の広告です。歯科医なのに首にかけているのは聴診器?腕組みをして微笑まれると「歯を抜いてあげようか」と言われているようで恐い(笑)。この歯科医は、日本の医学では否定されているホメオパシー(Homoeo)を取り入れています。 写真下左の丸々と太った可愛い仔豚ちゃんは、写真下右の掘っ立て小屋で、肉が冷蔵もされずに売られています。 写真下の魚屋も同様で、こちらは少し氷があるのが見える程度です。 果物屋は数も多く、店先で目に付くのはバナナ、ブドウ、リンゴ、ミカン、ザクロ、スイカなどです。 野菜はインゲン、カボチャ、キュウリ、キャベツ、ニンジンなどの他に、名前がわからないウリのような野菜が何種類かあります。ホウレンソウなどの葉物が見当たりません。 露店もあり、写真下左はヤシの実で、良く売れているらしく、殻が山積みになっています。薄甘いヤシジュースは暑い時にうまいし、内側に付いている油分を料理に使います。写真下右の店の背後にヤシの木がたくさんあります。 写真下左では道端にビニールシートを広げ、その上に衣類を乱雑に並べています。これで買う人がいるのだろうか?写真下右では、バナナ畑の前でバナナ以外の果物を売っています。 女性向けの衣類はとにかく赤系が多く、日本人から見るとド派手です(写真下)。 色が派手なのはトラックもバスもごらんのとおり(写真下)。 写真下は通過した街の一つで、家具屋が軒を連ねています。日本のように化粧合板ではなく、木材をそのまま加工して、ニスで塗装しただけのようなゴツイ感じの家具が多い。 店はたくさんあるのに、見てのとおり、客はほとんどいません。平日の日中にこの有様では閉店してもいいはずなのに、シャッター通りではありません。たぶん、この街は家具生産の一大拠点で、これらの店は小売りだけではなく、卸しのショールームにもなっているのでしょう。森林のある西ガーツ山脈のそばですから材料は豊富です。実際、写真下右のように木材を運搬しているトラックに出あいました。 西ガーツ山脈に入る 平地はネリアマンガラム(Neriamangalam)という街までで、周囲には山が迫っており、ここから西ガーツ山脈に入ります(写真下)。 街の東側にあるペリヤール川(Periyar River)を再度渡ると(写真下)、ここからが心配な山道です。ここまでで行程の半分で、ムンナールまではまだ60km弱あります。 空港でも述べたように、ケララ州は八月中旬に大洪水にみまわれ、ムンナールは一時、孤立が伝えられましたから、道路が寸断されたので、問題は十分に復旧しているかどうかです。 あちらこちらに崖崩れの跡があり、まだ工事をしている所もあります。 驚いたのは洪水の爪痕よりも道幅の狭さです。地図で見るとコーチとムンナールをつなぐ唯一の幹線道路なのに、普通乗用車がかろうじてすれ違える程度で、大型バスがすれ違うのはかなり難しい。私の知る範囲でいうなら、筑波山の山腹の、今はほとんど車が走らない旧道がこんな感じです。 工事をしていると片側一車線になって渋滞に拍車をかけます(写真下)。 写真下のように反対側車線まではみ出て車やバイクを走っています。山道ですから、カーブが多く、樹木で見通しが悪く、対向車が来るのが直前にならないとわからない。 写真下左では、黒い乗用車が前の白い乗用車に続いて、遅いトラックを追い抜こうとしています。こんな危険な追い越しが次々とおこなわれます。危険なのはわかっていても、またドクロの標識も効果はありません。 車の流れが完全に止まってしまいました(15:36)。他の車の運転手たちが車から下りて先のほうを見ています(写真下左)。前方に枯れて幹が白くなっている高い木が倒れかかっていますから、これが原因だろうか。 山の中なのに大渋滞です。私は「ついに始まったか」とため息をつきました。ムンナールに明るいうちにたどり着けるだろうか。このまま渋滞が続いて、最悪、このバスが今日のホテルなんてことになりかねない。 幸い、高い木を取り除くという時間のかかる作業ではなく、写真下のような崖崩れした土砂の撤去作業でした。 渋滞にも良い面があり、バスの中から花を撮れます(写真下)。それにしても濃厚な青です。 使い捨てプラスチック禁止 道路脇に立てられた看板は、プラスチックのゴミを捨ててはならない、という警告です(写真下右)。インドは2022年にまでに使い捨てのプラスチックは使用禁止になります。これを待たずに、ムンバイなどは全面禁止になり、取締の担当者が小売店の中まで入りこんでレジ袋などを摘発し、その場で多額の罰金を取るという徹底ぶりが、日本でも報道されていました。(「未来世紀ジパング」テレビ東京、2018年9月12日放送) 日本でもようやくプラスック製品を減らそうとレジ袋を有料化するようです。しかし、あいかわらずペットボトルのデポジット制度がない。売る時に上乗せして、ペットボトルを返せばお金も戻ってくるという制度です。台湾などは昔からこの制度が導入され、その当時で回収率が99%などというすごい数字が出ていました。ところが、日本はデポジット制を取り入れませんでした。 今年6月、プラスチック規制を強化する「海洋プラスチック憲章」にEUなどの先進国が署名したのに、日本とアメリカは署名しませんでした。使い捨てプラスチックの最大消費国はアメリカで、ついで日本が二位です。この日本のエゴ丸出しの態度に私は日本人として恥ずかしい。このような品性の卑しいことをして、これのどこが「美しい国」なのだ? 道端に滝(Cheeyappara Waterfalls)があって、観光客目当てに店が並んでいます(写真下)。 写真下のヒョウタンみたいなのは、なんだ、これ?道端で蜂蜜などと一緒に売られています。真ん中に穴が開いているから、鳥の巣らしい。中には穴が二つ開いていて、二階建ての巣もある。草などで巣を織り上げる鳥を南アフリカで見たことがあるから、同じようにインドにはこんな巣を作る鳥がいるんだ!!と感動するのは早かった(笑)。 ネットで調べてみると、インドのアマゾンなどで売られていて(写真下)、人間がココナッツなど自然の素材を使って作った鳥の巣箱で、鳥が作った巣ではありません。一つ入口が488ルピー(829円)、二階建てが694ルピー(1179円)です。板で作った巣に比べて形は良いが、鳥が気に入るかどうか別問題でしょう。インドにはすごい鳥がいるんだと感心して損した(笑)。 トイレ休憩 ムンナールまでまだ40kmほど手前のヴァラナ(Valara)という街のお土産屋でトイレ休憩です(15:50)。店は猫たちがお出迎えしてくれます(写真下)。ただ、インドではあまりネコは見かけない。 店はお土産物屋で、トイレを利用させてもらうのだから、何か買ってあげたいが、見てのとおりで、日本人の購買意欲をそそらない品揃えです。チャイでもあれば、喜んで買うのだが。 二階でも店主や店員が熱心にいろいろな物を勧めてくれるが、お客さんの購買意欲はイマイチです。写真下右は店にある写真です。太めの男性が椅子にどっかりと腰かけ、奥さんが後ろで夫をやさしく見ているという構図なのだろうか。道端の木綿のシャツの広告にも出ていた小太りの男性がインド人には魅力的に映るらしい。 「結婚式で着るサリーをお安くしておくよ」と言われてもねえ・・・(写真下)。 この店の名前がValara Spices & Herbesとあるように、ここは香辛料の産地で、専門店が道のあちらこちらに目に付きます(写真下)。 道は山の斜面を横に沿って走っているので、それほど起伏はありません。ただ、土地としては斜面なので、平らな土地は少なく、住宅や集落は専ら道沿いに続いています。 周囲はインドの田舎町では良く見られるようなのんびりした雰囲気です。北インドと違い、牛などの家畜を道路であまり見かけません。 山道ですから、看板はさすがに少ない。その中で目を引いたのが写真下左です。どうやら、上にいる赤い服の二人の結婚を祝って、その下の14人の友人たちが道端に貼った広告のようです。突然これを掲示してビックリさせようという作戦なのか、彼らは自分たちをFreakers(脅かす人たち)と名乗っています。広告を貼ったヤグラも手作りらしく、大きな風が吹けばたちまち吹き飛ばされそうです。 山の中ですから、それほど人口が多いように見えないのに、キリスト教の教会だけはたくさん目につきます(写真下)。 道路からは庶民の生活が見えます。写真下左の青い壁の家の前に洗濯物が干してあるのはインドだなあ、と私は思ってしまう(笑)。 庶民的な家だけでなく、お金のかかった立派な家も目に付きます(写真下)。 ブルー・マウンテンへの行進 ムンナールの30kmくらい手前にあるAdimali(Adimaly)という、このあたりでは一番大きな街に入ってきました(16:37)。 標高650mほどあるので一年を通して涼しく、街全体では四万人ほどの人口があり、大学(college)もあります。 ちょうど下校時間らしく、おおぜいの生徒たちが騒ぎながら道を歩いています。 バサントさんが道を走っている車の窓を指さし「クリンジ!」と叫びました(写真下)。見ると、クリンジのポスターを貼った車がたくさん走っています。見かけただけでも20台はありました。 写真下左など手前の三台ともにポスターを貼っています。ここはクリンジが咲くムンナールよりも車で一時間も手前の街なのに、盛大に盛り上がっている。ただ、車にはポスターがあるのに、道端には看板は何もありません。 車に貼られているポスターが写真下で、 「ニーラクリンジ ブルー・マウンテンへのラリー(Neelakurinji Rally to the
blue mountains)」 とあります。 ニーラクリンジとはクリンジのことです、クリンジが山一面に咲いていると青く見えることからブルー・マウンテンと呼ばれていますから、クリンジが咲いているムンナールまで行進をしようという意味のようです。 後で調べてわかったのですが、今日12日にムンナールの旅行会社などが企画して、クリンジの宣伝のためにコーチからムンナールまで150台の車と30台のバイクが参加して行進があったのです。つまり、この街にいるのはその行進に参加した車ということらしい。ネットで下記のように参加を呼びかけていました。 この街でも何かイベントがあったらしく、写真下のようにテントが設営され、クリンジのポスターが貼られています。たぶんムンナールでも行われたのでしょうが、ホテルはムンナールの手前なので、確認はできません。 写真下のように、クリンジを見るためのツアーが企画され「1200ルビーのところを975ルピーにおまけしております」とあります。 ようやくクリンジが出てきて私はホッとしました。山道に入ってでもクリンジについては写真下のたった一枚の看板しか目につかなかったからです。インド人ならクリンジで大騒ぎをしてもいいはずなのに、看板が一枚しかなく、全然盛り上がりに欠けているので、もしかして、クリンジはあまり咲いていないのかと不安になっていました。 写真下のインド人のノリでクリンジをガンガン盛り上げてほしい(笑)。 あちらこちらで崖崩れの跡が見られます。幸い、少しの渋滞だけで、通行止めなどはありません。 ムンナールに近づくにされて、斜面に茶畑が見られるようになりました。写真のように、かなりの急斜面に作られています。 ジープに乗り換え ムンナールの数キロ手前にあるダム(Munnar Headworks Dam)で、ジープに乗り換えます(17:42)。ここから先のホテルまでの道は細くなるのでバスが通れないからです。ホテルを建築するのに大型の重機も必要だったろうに、どうやって運んだのだろう? ジープのフロントにはハヌマーンが祭られていますから(写真下左)、運転手はヒンドゥー教徒です。 上右図 ハヌマーン 写真下は道路というよりもダムの堤防の上の道で、乗用車が一台通るのがやっとの幅です。 写真下左のジープにぶら下がっているおじさんも同じ料金を払っているはずです。ビソンバレー道(Bisonvally Road)という立派な名前がついているが、実際の道路は写真下のように狭く、ジープがすれ違うのがやっとで、ダムの上に橋をかけても、バスが通るのは難しい。 こんなバスも通れないような道しかない所に良くホテルを作ったものだと感心していると、看板ではホテルだけでなく、レストランなどいろいろなリゾート施設があるようです(写真下)。 やがてヤギが放し飼いされているPothameduという集落が見えてきました。写真下左は、ホテルの周囲にある二軒の店の一つです。この店の前には暇そうな男たちがたむろしている。インドでは良くあることです。 ホテルからの眺め 今日のホテルFragrant Nature Munnarに到着(17:50)。写真下を見ると小さなホテルのようですが、実は縦に長く、斜面下に建物があり、しかも末広がりです。表玄関のこちらのほうがむしろホテルの裏側です。 (https://www.fragrantnature.com/HotelsMunnar) ネット上でのこの時期の料金は¥13,348で、五つ星の高級ホテルです。2017年のネットでの書き込みでは、一年前に建てられたとありますから、まだ二年ほどしかたっていない新しいホテルらしい。 このホテルの最大のウリがロビーからも見える窓からの眺めです(写真下)。ホテルは斜面に建てられているので、眼下の眺望が素晴らしい。ここに三泊するので朝晩の風景が楽しみです。 七時からホテルの二階のレストランで夕飯です(写真下)。ビュッフェ形式で食材は豊かです。しかし、ここも大半が辛い。いつものように試しに少量だけ取って、少し口に入れて辛ければ食べるのは中止。ここもチャーハンさえも辛い。 ここの圧巻は写真下のケーキでしょう。シェフの力(リキ)が入っているのがわかるので、最初にナイフを入れて切るのに勇気がいる(笑)。皆さんが手を出す前に写真を撮りました。 ケーキを食べた他のお客さんが甘くないほうだという写真下左のスポンジケーキをいただきました。それでも甘い。甘すぎるケーキを甘すぎるチャイを飲みながら食べる(笑)。味付けが極端に辛いか、極端に甘い。 写真下が私の部屋で、薄黄緑で統一された明るい部屋です。設備も大きな問題がありませんから、個人的なホテルへの評価は余裕で4.0です。 水は市販のペットボトルではなく、シャンパンのような栓のしてある瓶詰です。使い捨てプラスチックを減らそうという方針で、良い事です。写真下右は有料のお菓子です。 バスはバスタブはないが、昨日までのホテルと違い、夜でもお湯は問題なく出ました。 窓の外は十キロ先までの西ガーツ山脈が見渡せ、期待どおりの素晴らしい眺望です。暗くなって、霧というか、雲がかかり、流れています(写真下)。 明日はいよいよクリンジです。 |