花と雪のペルシャ 1日目 2018年4月13日(金) 成田 → (ドバイ) イランの春の花を見に行きます。イランは沙漠の国のイメージで、花は少ないように思えます。しかし、首都のテヘランの標高が1200mであるように、高地が多いので、野生の花が多いことでは有名な国です。これまでイラン上空を何度か通過した時、雪山が連なっているのを見て、これなら花が期待できそうだと思いました。 参加者はツアーリーダーの松森さん(仮名)を含めて女性6人、男性2人、合計8人です。お客さん4人とは前に一緒に旅行したことがある顔見知りで、その内1人とは3回目、3人とは今回で何と4回目です。打ち合わせをしたことはなく、たまたま偶然で、名前を覚えるのが楽です。 今日は朝から晴れて風が吹いて、明日から春の嵐になるという天気予報に、ちょっと不安を感じていました。飛行機は夜10時、つまり限りなく明日に近づいてから離陸するからです。南から低気圧が近づいているのが原因のようなので、飛行機が中国大陸に入ってしまえば、後は野となれ山となれで、頼むから、日本から離れるまで静かにしていてくれと祈る(笑)。 今日は成田から中東のドバイまで飛び、明日、飛行機を乗り継いで、テヘランに行きます。 成田からテヘランまで合計17時間ほどかかります。 飛行経路を見てもわかるように、イランに行くのにドバイを経由するのは意味がなく、成田からの直行便があればもっと短時間に行けるはずなのに、ありません。前はイラン航空が成田から北京や韓国を経由する直行便を出していました。しかし、経済制裁のせいで最新型の旅客機を購入することができず、機体の老朽化などが理由で2011年を最後にイラン航空は日本から撤退しました。 経済制裁が一部解除され、2016年にイラン航空はエアバス社やボーイング社からそれぞれから百機ほどの旅客機と、三菱重工の小型旅客機の購入を契約しました。日本へのイラン航空の乗り入れは時間の問題で、直行便も期待されていたのです。 ところが、未だにイラン航空の直行便の復活の話さえもない一番の理由は、アメリカがトランプ大統領になって経済制裁を復活させ、晴れ始めていた空に再び雲が立ち込めているからです。商売のうまいトランプ大統領がボーイング社の百機もの販売を中止させるのだろうか? 私たちが乗るエミレーツ航空319便はエアバス社のA380-800です(写真上)。ジャンボジェット機(ボーイング747)が引退しつつある今、旅客機としては最大級です。ジャンボが一部が二階建てであったのに対して、こちらは総二階建てです(写真下)。 下の図は一階のエコノミークラスです。エミレーツのA380-800は客席が615席と、かつてのANAのジャンボの記録を抜いて世界一です。日本の航空会社ではまだ導入されていません。 私の座席は、上図の赤い四角で示したように、いつものように後ろから三番目の窓側です。 アラブ首長国連邦のエミレーツ航空とエティハド航空、カタールのカタール航空が中東の御三家航空会社と呼ばれ、急激に売り上げをのばしています。エミレーツ航空は私たちが乗っているエアバスA380を96機も持っていて、輸送量は世界一です。飛行機は見事に満席でした。エミレーツの強さは安さでしょう。 22:00出発予定で、22:22に離陸。これから11時間15分飛行して、ドバイには現地時間で明け方の4:15に到着予定です。 私の隣は男性で、彼の足が突き出て来て邪魔だ(笑)。これまでの飛行機と大きく違うのは座席の前のモニターが大きい。15インチくらいありそうで、映画などを観るのもとても楽です(写真下左)。たぶんこの飛行機はA380の中でも新しいのでしょう。ただ窓が内側と外側のガラスに距離があり、写真撮影などにはありがたくない。 この飛行機への個人的な評価はBで、大きな過不足もなく、それなりに良く出来ています。 ヘッドホンも四角くて立派です(写真下)。 離陸してからほぼ二時間ほど後に食事が出ました(14日の0:07、写真下)。私は食事を取る時間ではないので、飲み物だけにしておきました。 イランは危ない? 今回の旅行の一年前、2017年4月にウズベキスタンとカザフスタンのチューリップを見に行き、帰国した成田空港で私は他のお客さんに「ぜひ来年はペルシャに行きましょう」と、一年後のこの旅行への参加を呼びかけました。人数がそろわないと旅行そのものが催行されないからです。その後もメールなどで参加を呼びかけました。 しかし、イランと聞くと、危ない国というのが普通の日本人の反応です。イランが絶対安全だなんて言うつもりはないが、今はロンドンやパリも危ない。何よりも、イランが2015年にもっとも旅行したい国に選ばれたということを意外に日本人は知りません。 ツアーは、発表された2017年の出だしは順調にお客さんが集まっていたので、催行は楽勝だろうと私は楽観していました。ところがイランでは2017年11月12日の大地震に続いて、年末には各地で大規模なデモがあり、死者まで出ました。そうでなくても日本人には怖い国というイメージのイランが自然災害ばかりか、暴動のようなデモまで起きたのでは、花どころではありません。私も誘っていた人たちにこれ以上強く勧めることは無理でした。 さらに二月になると、イスラエルとイランがシリア領内で初めて衝突し、イスラエルがイランの無人機の破片を示しながらイランを名指しで批判するなど、緊張が高まりました。 ただ地震は訪問地域から離れているのと、デモも2018年の年明けには沈静化していたので、他の旅行会社のイラン旅行は次々と催行が決定されて行きました。一方、このツアーはこういった影響でキャンセルが出て、二カ月前の二月になってもまだ「決定間近」のままで「催行決定」のサインが出ませんでした(下)。 今年は無理かなと、他の花のツアーに乗り換えることも考えていたところに、二月上旬、ようやく催行決定になりました。そこに書いてあった「行けるときに行きましょう」というお誘いの言葉に私はいたく感激しました(笑)。 海外旅行の難しい要素の一つが相手国の事情です。戦乱やテロが始まったら、どんな素晴らしい花が咲いていても行けなくなります。私も花を見に行くつもりで計画していて、戦争などで行けなくなった国が少なくとも二つあります。 2015年、アメリカのオバマ政権は核合意に基づきイランの経済封鎖を解いたので、私はイランに行くチャンスが来たと喜んでいました。ところがトランプ政権ではこれを破棄して、経済封鎖を再開しています。イランが経済的に行き詰まれば、政権も不安定になる危険性があります。行けるときに行かなければ、三つ目の行けない国になってしまうのではと、今回行くことにしました。 まだ眠くないので、大きなモニターで最新の映画を観ました(写真下)。 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ(Star Wars: The Last Jedi)』(2017年、アメリカ) この映画はディズニーが権利を買い取ってから二作目です。宇宙チャンバラ、騎士道物語の宇宙版で、暇つぶしにはちょうど良い。前作も飛行機の中で観ました。 Wikipedia から転載 予定では11時間15分の飛行です。離着陸や食事の時間を差し引いても、7時間くらいは眠っていけるから、十分な睡眠が取れそうに見えます。しかし、軟弱な私にはこの十分な時間が苦行で、何度も目を覚ましてしまう。起こされるまで爆睡したという他のお客さんの話を聞くと、ちょっとうらやましい。 映画も見終わって疲れてきたので、とにかく目をつぶることにしましょう。飛行機は北京上空を通過していて、中国大陸に入った頃から時々揺れて、シートベルト着用のサインが何度も出ていました。 |