トップページ 日程表 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ペルシャ北部の初夏の花 8日目 2019年5月22日(水) Eynali山、バザール → テヘラン 朝起きると部屋の温度は22.6℃と、これまでよりも少し低い。外は晴れています。 今日は、このタブリーズの北にあるEynali山で花を散策し、市内の中心部にあるバザールで観光した後、飛行機でテヘランに戻ります。 ホテルのレストランで7:00から朝食です。 予定どおりに8:30に荷物を積んで、ホテルを出発しました。目的の山は市のすぐ北側にあります。通勤時間なので、昨日と同じように、市内はかなり混んでいます。 Eynali山に到着 山の麓にある広場に到着しました(8:51、写真下)。 この山にはケーブルカーがあるなど、観光地になっているらしいが、人はそれほど多くありません。 イランでは良くある水瓶があります(写真下左)。さらに写真下右は巨大なヤカンのモニュメントです。モハンマドさんの説明では、水の少ないこの国では旅人を水でもてなし、皆さんでお茶を飲むことで歓迎という意味があるらしい。日本の「水くさい」とは逆です。 岩の上にはワシが飛び(写真下左)、大きな白いキノコも生えています(写真下右)。 公園の入口から先は車で入ってはいけないらしく、車を乗り換えます。乗り心地の悪いワゴン車にギュウギュウ詰めで出発です。私は背は高くないのに、乗り降りするたびに頭をぶつけた(笑)。 山道からはタブリーズの街並みが見渡せます。道は途中まで舗装され、その先もそれほどひどい道路ではないのに、どうして一般の車が立入禁止なのか、よくわかりません。せめて、電気自動車というなら環境配慮だろうが、私たちの車よりも車種は古い。 山の上には風車もあります(写真下左)。 乗り心地の悪い車を降りて、山道を進みます。ごらんのように、わりと平坦なので、歩くのは楽です。赤茶けた台地で、樹木はありません。 山の斜面に大きなセリの仲間があります。中東から西アジア、中央アジアにかけての広い範囲に分布します。 写真上 Zosima
absinthiifolia 写真下はアブラナの仲間です。アリッサムは園芸種にもなっています。こういう環境が故郷の花ですから、日本のような高温多湿な環境は苦手です。 写真上 Alyssum aizoides 写真下は昨日、ミショー山で見たアカネの仲間です。 写真上 Cruciata
taurica 写真下も今回の旅行で何度か登場しました。ユーラシア大陸、北アフリカなどに広く分布し、オートラリアなどでは外来種として嫌われています。 写真上 Reseda lutea 写真下も毎回登場するシソの仲間で、この植物から採れる精油に薬効があるらしい。赤いのは花弁ではなく、花を包む「苞(ほう)」の色です。 写真上 Salvia
hydrangea 写真下の花は防寒用の白いマフラーを巻いています。 写真上 Stachys
lavandulifolia 写真下も防寒用のセーターを着た花です。こういうわずかな毛でも、温度差が出てくるのが驚きです。 写真上下 Bungea
trifida トルコ、アルメニア、そしてイラン北東部に分布します。 淡い藤色のアマの仲間が日差しに向かってのびやかに咲いています(写真下)。 写真上下 Linum
usitatissimum ペルシャの乾いた高原の上に咲く花。なかなか絵になります。アマは地中海からインドまでの広い範囲に分布し、日本にも江戸時代に輸入されて、最初は薬として使われたようです。 白っぽいのが多いが、写真下のように藤色と言ってもいい花も少しだけあります。 背景が赤茶けた土だと、それで引き立つ花と逆に写真下のように目立たなくなる花があります。台地の赤茶色をそのまま吸い上げたような色をしています。 写真上 Matthiola
ovatifolia 青くて透明感のある花が斜面に群生しています。 写真上下 Moltkia
coerulea トルコ、アルメニア、イラン北部、イラクに分布しています。 遠目には青く見えるのに、良く見ると開花前のつぼみは赤紫で、シベも赤紫です。 写真下は世界のあちこちで見かけるアカタテハの仲間で、たぶんヒメアカタテハでしょう。三月にアフリカで発生したヒメアカタテハは海を越えてヨーロッパに渡り、スペイン、ギリシャ、さらにはイギリスやグリーランドまで到達します。しかも、夏が終わる頃になると、上空500mほどを大群で南下するというから、見かけによらずすごい。(『ビオトープ』45号、9ページ、2020年、日本ビトープ協会) 写真下はホウキのような花よりも、捻じれた葉が特徴的です。こういう乾燥した地域でチューリップなど、こんなふうに捻じれた葉になっていることが多い。何か乾燥と関係しているのでしょう。 写真上下 Allium
materculae 写真下はこれまでも何回か登場した一見、ムスカリのように見える花で、これも葉が捻じれている。 写真上下 Leopoldia
caucasica 写真下はアブラナの仲間です。ちょっと見た目にはそうは見えません。 写真上 Aethionema
fimbriatum 写真下は、昨日も最後に登った山で見かけたマメの仲間です。昨日に比べてはここは数が少ない。 写真上 Onobrychis
cornuta 写真下はScorzoneraの仲間です。これまでに見たのと似ているが、葉が太く、しかも波打っているのが特徴で、そのおかげて名前がわからない(笑)。 写真下は上と姿は似ているが、トラゴポゴンという強そうな名前のついた別種です。 写真上 Tragopogon
coloratus 昨日もミショー山で見かけた花です。花は小さく、数も少ないが印象的な色です。 写真上 Fibigia
suffruticosus 写真下は藤色のかわいい花が咲いていますが、名前がわかりません。 赤茶けた山々が連なっています(写真下)。ここでは一番高い山でも2378 mで、タブリーズ自体が標高1350mですから、標高差は1000mほどしかありません。 帰り道、道端の土手に咲くケシの花にノルジーさんが車を停めました。これまでとは違う種類だという。私の目にはただのナガミヒナゲシに見える(笑)。 写真上下 Papaver
dubium 日本ではナガミヒナゲシは一年草とみなされているが、一部は宿根草ではないかと疑っています。なぜなら、毎年同じ所に咲くナガミヒナゲシはだんだん大きくなり、立派な花を咲かせるようになるからです。 ケシを撮り終えて、道に降りようとした私をノルジーさんが制止しました。小声で「リザード(トカゲ)!」と指さしました。最初、私はどこにいるのかわかりませんでした。私は止まり、息をとめ、トカゲはじっとしたまま頭を左右にふって周囲を警戒しています。他のお客さんたちを待たせたまま、一匹と二人はしばらく静寂の中にいました(笑)。 写真上 Paralaudakia
caucasia 大きなヤカンのある麓の公園に戻りました。 巨大なバザールの迷路を行く これから市内に戻り、ど真ん中にある有名なバザールに行きます(11:21)。街の中は都会らしく、人の往来が激しい。 バザールという雰囲気の入口ではない普通の建物の入口から入ると、そこはバザールらしい店が並んでいます(写真下)。 バザールはかなりの広さなので、中は迷路のようだと言うよりも、迷路です。世界遺産にも登録されているバザールで、マルコ・ポーロもここを訪れたことがあるという。と言われると、急に立派なバザールに見える(笑)。 まず目についたのが靴です(写真下)。昨日の散歩の時も通りの店に靴屋が目立ちました。ここは靴の産地らしい。 バザールの中にモスクもあります(写真下)。手洗いが入口の右側にあるが、足を洗うにしては台が高い。足は洗わないのだろうか。 祈りの時間が近づいているのか、それなりに人が集まっています。当然、若い人よりも年寄りが目立つ。余談ですが、お釈迦様の説いた仏教には祈りはないし、加持祈祷はないどころか、禁止です。そういう目で見ると、日本の仏教って、変だと思いませんか? 狭い通路を荷車や自転車も通ります(写真下)。 こちらの通りは帽子など衣類が並んでいます(写真下)。 建物の中庭に出ました(写真下)。バザールもおもしろいが、空と緑と水を見るとホッとする。 写真下左は家族で買い物に来たのでしょうか。気持ちよさそうに昼寝を楽しんでいる人もいる(写真下右)。 下の衛星写真の、三方を幹線道路で囲まれた真ん中の白い建物群がバザールです。実際のバザールはさらに北側に広がっており、ここに写っているのは全体の三分の二ほどです。私たちは東側(入口)から入り、モスクの一つを経由して、中庭に出たところです。この後、再び、建物の中に入り、西側(出口)から出ました。これを見ただけでも、とてつもない広さで、7000以上の店があるといわれています。 再び、建物の中のバザールに戻ります。イラン人はヒゲなどを生やしているから、ちょっと恐そうだが、実際にはにこやかで親しみやすい人たちが多い(写真下)。 店番をしている人は全員が男性で、女性は一人もいません。 自分で食べるためにナツメヤシの実(デーツ)を一箱を4米ドルで買いました(写真下)。帰国後、予想外の急用が入って、すっかりこのナツメを忘れてしまい、気が付いた時にはカビが生えていました(笑)。 お菓子も量り売りが多い(写真下)。にぎやかで、子供が喜びそう。 写真下左のアメは、写真下右の去年テヘランからゴムに行く途中で見た看板のアメと良く似ている。翌日、このアメが紅茶を飲む時の砂糖として使っているのを知りました。 果物や木の実の乾物の大半は量り売りされています(写真下)。 写真下は米などの穀物の量り売りです。 写真下は紅茶で、昨年、スーパーでイランの紅茶を買ったのですが、飲んだ人の評判はイマイチだったので、今回は買いません。 写真下は豆腐ではなくチーズです。きっと安いでしょうね。 農業国ですから、野菜や果物は豊富です(写真下)。 ここでもヘンダワネ(スイカ)は当然売られています(写真下)。日本ではすでに江戸時代には入って来たにもかかわらず、栽培が一般的になったのは大正時代からだそうですから、わりと歴史は浅い。 写真下左は昨日、道端で売っていた山菜(写真下右)でしょう。葉がついていないので、いよいよウドのように見えますが、たぶん違うでしょう(笑)。 今回通過したバザーでは肉屋は少なく、魚貝類は見かけませんでした。写真下左は豚足のようにも見えるが、ここはイスラム社会だから、それはありえないよな・・・。 歩いた所が肉屋や魚屋が少ないせいか、ネコは期待したほどには見かけませんでした(写真下)。 バザールの絨毯 ここのバザールは絨毯が有名です。写真下のような回廊の両側に絨毯を売る店が並んでいます。天井の形がいかにもシルクロードのバザールという雰囲気で、いいですねえ。マルコ・ポーロもここを歩いたのだろうか。 通路の真ん中に絨毯が飾られています。素人目にもかなり質の良い絨毯が多いのがわかります。しかし、買っても日本のような湿度の高い国ではダニの巣窟になってしまうと、買えない者の言い訳をしておきます(笑)。 目を引いたのが写真下で、これは絵画ではなく絨毯です。見事なものだと感心する反面、いずれも西洋絵画であるのが気になります。 ヨーロッパの美術館に入ったような雰囲気で、イマイチです。もっとペルシャ美人を描くべきでしょう。もし私が部屋に飾るなら、こういう絵画の絨毯ではなく、通路に敷いてあった花を描いた絨毯が欲しい。 モハンマドさんによれば、写真下の後ろ姿の人たちは客ではなく、床に敷いた絨毯をこの店に売りに来たようです。旅行ガイド本によれば、こういう光景は珍しくないらしい。 バザールの観光を終えて、日差しのまぶしい通りに出ました(写真下)。 女性たちの黒い服に違和感があるので、子供が髪の毛も出し、普通の服を着ていると、なんとなくホッとする(写真下)。 飛行機でテヘランへ 昼食のために宿泊していたホテルに戻りました。ラマダンの時期なので、この時間に開いている店が少ないのでしょう。私は恒例の1ドルのノンアルコール・ビールです(写真下右)。 食事を終えて、市の北西部にあるタブリーズ国際空港に行きました(写真下)。空港の入り口でもエックス線の検査があるのに、飛行機には水が持ち込めました。 空港の売店には甘いお菓子だけなく、蜂蜜入りの巣がそのまま売られていて、私はしばらく足を止めてしまいました(写真下右)。ただ、この容器では、スーツケースに入れて持ち帰る勇気が起きませんでした(笑)。 私が写真を撮っていると、さっそくそばにいたイラン人の乗客が写真を撮ってくれと来ました(写真下)。楽しい人たちです。 飛行機はイラン・アーセマーン航空 (Iran Aseman Airlines)のEP641便で、 タブリーズを16:00に発ち、一時間少しの飛行の後、17:20にテヘランに到着予定です。 説明がペルシャ語で書いてあるので読めない(写真下)。 機体はBoeing 737-400です。このAseman Airlinesはオバマ政権時代、経済制裁が緩和されたのを機会に、ロッキード社からBoeing 737MAXを30機購入する契約を結んでいました。トランプ政権によって経済制裁が再開されたために、これは破棄されました。737MAXは2018年と2019年に二度の墜落事故を起こした飛行機です。経済制裁はよくないが、そのおかげで737MAXに乗らずに済む。 ほぼ予定どおりの時刻に離陸(16:03)。 写真下左に見えている赤茶けた山が、私たちが午前中に登ったEynali山で、手前がタブリーズの市内です。 窓の外は、見慣れたイラン高原の乾いた風景です(写真下)。 軽食が出ました(16:17)。ラマダンの時期ですから、周囲のイラン人の中には食べない人たちもいます。 一時間も飛ばないうちに眼下にテヘランの街並みが見えて来ました(写真下)。 北側に雪山の見えるテヘランの国際空港(Tehran Mehrabad
International Airport)に無事着陸しました(16:54)。 テヘラン市内 バスに乗り、テヘラン市内に向かいます。帰宅ラッシュなのか、道路はかなり混んでいます(写真下)。 写真下左はアーザーディー・タワーで、空港からテヘラン市内に行くときは必ず見かけます。1971年にペルシャ建国2500年を記念して作られた塔で、地下は展示室、最上階からはテヘラン市内が見渡せるそうです。 おや!ペルシャ美人です(写真下)。姉妹?いや双子か。右側の黒い服を着た女性の服にGUCCI(グッチ)のロゴが見えます。 イランは宗教的な規制が厳しいから、女性たちの服装は、私が「葬式スタイル」と呼んでいる黒を基調としたスカーフやガウンです。イランは服装を取り締まる風紀係が街にいて、取り締まっているというのです。 こういうイランのような上からの押し付けは私のもっとも嫌いなやり方の一つです。私の高校生時代、まだ制服があり、生徒の間から自由化を求める声がありました。これに対して、先生たちは校門の前で服装検査をするというやり方で圧力を加えて来ました。今のイランと似ている。私は服を選ぶなんて面倒なことはしたくないので、制服で三年間、通った生徒だったが、それでもこの先生方のやり方には強い反発を感じました。 世の中には自分の考えややり方を強く相手に押し付けて、従わせるのが大好きな人たちがいて、私は、面と向かって言うと怖いので、腹の中で彼らを「猿山のボス猿」と呼んでいます。イランは宗教を使って社会全体を抑圧しているから目立つだけで、世界中に、私たちの身の回りにも、男女を問わず、います。 上からの押し付けにささやかな抵抗ともとれるのが、例えば写真下左です。黒を基調にしながらも、赤などを用いている。 写真下左の真ん中の女性は、オレンジの長いスカーフにガウンは黄土色で、黒は使っていないし、写真下右の真ん中の女性はズボンは黒だが、スカーフは赤でピンク色のガウンをはおっています。 隣に停まったタクシーに乗った女性にカメラを指さすと、もちろん撮影OKでした(写真下)。彼女たちのスカーフも上着も黒ではなく、しかも、手前の彼女などはスカーフを外している。この二人も姉妹か、双子みたいに似ています。 ここでも庶民のささやかな商売が道端にあります(写真下)。 ペルシャ絨毯 お客さんの一人がシルクのペルシャ絨毯がほしいとのことで、店に寄ることになりました。 絨毯を織ったこともあるくらい詳しいモハンマドさんが連れ行く店だから、品質が申し分ないことは素人の私が見てもわかります。しかし、問題は値段です。購入するお客さんの価格交渉に私も乱入して少しまけてもらいました。 問題はそこからで、クレジットカードのビザやマスターなどはアメリカ企業ですから、経済制裁を受けているイランでは使えません。どうするのかと見ていたら、中東の某国の店と提携し、そこでクレジットカードで決済し、後でこの店に送金するというやり方のようでした。経済制裁でも、彼らはしたたかに商売をしている。 絨毯というと、分厚いのが高級であるかのように思いがちですが、ペルシャ絨毯は逆で、薄い。写真下左のモハンマドさんが手にかけている絨毯のしなり具合を見ればわかるように、厚手の布くらいで、折りたたむとスーツケースの中に入ってしまいます。 私が買おうとしたのは(と言うことにしておく)、写真下の繊細な花柄の二枚で、値段は一枚で中型車一台分くらいと格安ですから(と言っておく)、どちらにしようかと迷っているうちに時間切れになり、買いませんでした(笑)。 窓からの景色 最高級のペルシャ絨毯を見て、目の保養をした後、ホテルに向かいました。昨年、泊まったのと同じTehran Enghelab Hotelに到着(写真下、18:50)。建物は立派で四つ星ホテルを自称していますが、ネットでの評判は今ひとつのようです。 ホテルの道路側のレストランで夕飯です。昨年はこのレストランは結婚式か何かの会場になっていて、奥のもう一つのレストランで夕食をとりました。 写真下が私の部屋です。緑色で統一されたデザインは昨年と同じです。 ポットやお茶、使い捨てスリッパなどはそろっています(写真下)。 窓の外を見て・・・あら、どこかで見たような風景。 写真下は昨年このホテルに泊まった時の窓の外の風景で、写真上とほぼ同じです。ビルの位置関係から見るとかなり近い。ベッドの向きが去年と逆ですから、たぶん隣の部屋くらいです。 なぜかWiFiがつながりません。これだけのホテルにしては大きなマイナスで個人評価は3.5としたいところですが、去年の部屋の近くに泊まったという意味のない理由で、4.0におまけします(笑)。 |