トップページ 日程表 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ブルガリアの春の花 8日目 2016年5月1日(日) ヴァルナ ←→ 自然保護区 朝起きると晴れで、室温は20.7度。この日も一日晴れました。ブルガリアの西のほうでは雨が降っていたようです。花を見る初日に雨が降ったので、どうなることか心配しましたが、初日の、それも最初だけでした。それ以降ずっと天気に恵まれました。 今日は花の観察もいよいよ最終日です。本日は黒海に沿って北上し、保護区など三カ所を訪問します。 朝食は八時からですから、散歩に出かけましょう。ここはリゾート開発されたので、道の周囲も樹木が多い。 足下には様々な草花があります。 写真上左:Geranium
pyrenaicum、写真上右:Bellis
perennis タンポポはもう綿毛になっています。 ホテルや他の敷地には春らしく様々な花が咲いています。 写真下はアーモンドでしょう。 写真下は、遠目にはアーモンドと似ていましたが、花の形が違う。 写真下はキングサリ(金鎖)で原産地は欧州南部とされていますから、このあたりも原産地です。 写真上 Laburnum
anagyroides 昨日確認した浜辺に下りて見ると、もちろん、誰もいません。海辺に観光施設があるが、これまた誰もいない。ここは狭い浜辺で、写真を撮っている私の後ろは崖になっています(写真下)。 海から離れて公園の中を歩いているうちに、廃墟になっているホテルに入り込んでしまいました(写真下)。すっかり荒れはてた庭が広がっています。私はこういうのがわりと好きです(笑)。かつてはここで多くの人たちが宿泊し、働き、人間の喜怒哀楽や欲望がうずまいていたのだろうが、それらはすべて過ぎ去り、今は建物を草木が覆い始めている。日本人はこれを、兵どもが夢の跡と感情的にとらえ、ギリシャの哲学者は、万物は流転すると表現し、お釈迦様は、自分にさえも主体はないと見抜いたのだから、すごい。 廃墟ホテルを通りすぎると、散歩中の他のお客さんたちと会いました。教会(修道院)と海が見たいという。夢幻旅行社にお任せください!当社の社長兼お茶汲みの私はさっそく地図を出し、オプショナル・ツアーを計画しました。では、「ブルガリアの海辺と教会を巡る旅」に出発です!! 私が先ほど訪れた海岸に引き返すのも芸がないので、その北側の浜辺にご案内しました。 お客様に黒海の海辺を堪能していただいた後、次はご希望の教会です(写真下)。 St.St.Constantine and Helenaという16世紀に建てられた僧院で、このリゾート地の名前である「Saints Constantine and Helena」という奇妙な名前はこの教会があることからつけられたようです。 コンスタンティンは日本ではコンタスタンティヌス一世(272年- 337年)と呼ばれ、ローマ皇帝でキリスト教を公認したことから、聖人とされています。ヘレナ(Helena)は彼の母親で、彼女はキリスト教徒の示した奇跡を見せられて改宗し、巡礼や教会建設に私財を投じたことから、聖ヘレナと呼ばれています。 地名や教会名になっているのを見ても、ブルガリア正教会では重視されているのがわかります。部外者から見ると、武力を用いて人を殺した皇帝が聖者になっているのが何とも奇妙です。 コンスタンティンとヘレナ(ウィキペディアから転載) 御立派な歴史と違い、教会自体はかわいい雰囲気です(写真下)。しかし、ドアには鍵がかかっています。七時すぎているのに、教会のドアを開けないなんて、ずいぶん朝寝坊の修道士だ。 夢幻旅行社のオプショナル・ツアーも無事終了し、お腹が空いたところで8:00から朝食です(写真下)。昨日、結婚式の行われていたあのレストランで、もちろん喧騒の跡は何もありません。 写真下左はゆで卵で、ブルガリアのニワトリはこういう色の卵を産みます(笑)、というのは冗談で、これはイースター・エッグです。 バルタタ保護区 ホテルを出発(8:47)。黒海に沿って北上します。天気が良く、風景もきれいなので気持ちの良いドライブです。 途中、店により、トニさんが水などを購入します(9:04)。どこでも行きたがる私以外のお客さんは下りない。 バルタタ保護区(Baltata Reserve)に到着(9:12)。入り口ではウサギちゃんにお出迎えいただきました(写真下右)。 料金は自動支払機なのだが、トニさんがちょっと苦労しています。 保護区は下の地図のように黒海に面しています。私たちは赤い矢印の入口にいます。 構内は広い道路が整備されていて、自然保護区というイメージとはちょっと違います。それどころか、もっと違う物が走っていました。 蒸気機関車が走っている!まるで遊園地みたいじゃないか。客が少ないせいか誰も乗っていません。園内を周遊するのでしょうか。 保護区に来る途中の一般道でこの車両を見かけました(写真下)。トラクターのような車両だから、公道を走っていてもおかしくはないのだが、規制のうるさい日本から見ると驚きます。この保護区の車両とは知らなかったので、これを公道で見かけた時は、ブルガリア人はけっこう楽しい人たちなのかもしれないと思いました(笑)。 私たちは赤い機関車には乗らず、徒歩で保護区を散策します。 面積は約200ha(2k㎡)くらいで、保護区にしてはそれほど大きくはありません。ところが、欧州で見られる樹木が集まっており、背の高い樹木だけでも260種類以上、哺乳類が36種類、鳥が180種類といいますから、密度は高い。 (http://bulgariatravel.org/en/object/207/Baltata_poddyrjan_rezervat) ブナ林の下には春の花が咲いています。 写真上:Symphytum
orientale 写真上:Myosoton
aquaticum 園内で道端に圧倒的に多いのが写真下のキンポウゲ、日本で言えばウマノアシガタです。 写真上:Ranunculus
repens 写真下は、日本でいえばマムシグサやウラシマソウの仲間でしょう。 写真上:Arum
maculatum フウロソウのピンクがきれいです。 写真上:Geranium
robertianum 林の中のちょっとした空き地にスズランスイセン(スノーフレーク)が咲いています(写真下)。見慣れた花とは言え、野生で見るのは初めてです。スズランスイセンは欧州の中南部が故郷だといいますから、まさにここが原産地です。こんな林の中からはるばる日本まで来たのだ。 写真上:Leucojum
aestivum 私の住居の近くにある廃止された公務員宿舎にたくさんスズランスイセンが残っていて、掘り起こして、植え替えました。あのままでは売却後、すべて更地にされますから、草花は踏みつぶされます。 峠の貝殻 一つ目の保護区を終えて、さらに黒海に沿って北上します(10:07)。緑が多く、街並みもきれいです。 途中の山道で車を停めました。道端にもたくさん花が咲いています(10:33)。 ブルガリアにはホタルカズラの仲間が多い。 写真上:Buglossoides
purpuro-caerulea 写真下は毎日のようにお会いするヴェロニカで、今日も薄紫が美しい。 写真上:Veronica
austriaca 花の色が白だと白い岩肌には合わないような気がするが、実際はたいへん良く合う(写真下)。 トウダイグサの仲間もちょうど盛りです。 写真上:Euphorbia
myrsinites 写真下はナガミヒナゲシで、日本では群生していることが多いのに、ブルガリアでは単独でポツンと寂しそうに咲いている。花の大きさも日本より小さい。もしかして、ナガミヒナゲシは日本の環境のほうが合っているのではないだろうか。 写真上:Papaver
duhium 写真下ももうお馴染みになった花で、ユーラシアから北アフリカにかけて分布しています。 写真上左:Reseda
lutea 道路脇で見事に花を咲かせているのが写真下の黄色のマメの仲間です。 写真上:Coronilla
emerus 写真上:Mattiola
odoratissima Tragopogon dubius 木の枝に白い実のようなものがぶら下がっている。良く見ると貝殻です。 巻き貝が枝にくっついたまま死んでしまったらしい。山道ですから、近くに川らしいものはありません。雨の降る時期に発生して、急いで成長するのでしょう。枝にぶら下がったままなのは何か意味があるはずです。だが、質問しても答えてくれそうもない(笑)。 写真下の虫の背中の模様がまるで鬼の面みたいです。日本でも背中の模様が人面になっているカメムシがいます。 犬をからかう ガソリンスタンドの店に寄り、トイレ休憩(11:17)。写真下右の冷蔵庫にある大ビンはビールで、私たちが泊まっている市名そのままの「ヴァルナ(Varna)」という名前からして地ビールでしょう。2.5リットルとあります。ブルガリア人の強靱な胃袋を見せられたような気がしました。これをガブ飲みしながら、一晩中踊るのだ! ガソリンスタンドに隣接している家の庭にはニワトリと犬がいます(写真下)。柵の向こうの犬に挨拶しても、ワンワンと激しく吠えるだけなので、私は「やーい、こっちまで来てみろ」とからかう。日本人にからかわれたのは、あの犬の一生の中でも一度だけでしょう(笑)。 右手に半島が見えて、バスはその先端に向かって走ります(写真下)。 岬への道を進むにつれて目についたのが風車です。これまでも風車はしばしば目についたが、ここはただ事ではない数の風車が並んでいます。黒海が近いので風が常に吹いているのでしょう。 日本ももう少し自然エネルギーに取り組むべきです。電力会社は供給過剰になるから自然エネルギーは受け取れないという。未だに北海道や九州で自然エネルギーから生産した電力を東京に送電できないなんて、いったいどこの開発途上国の話なのかと不思議に思いませんか。宅配便でさえも一日で届く時代に、光の速度で伝わる電気をどうしてこんな狭い日本に送ることができないのでしょう?変ですよね。既得権をもった人たちが、電力の安定供給を人質にして、脅しをかけているからです。 原発を止めたら電力が足りなくなると主張した人たちがいたが、実際には数年間は原発ナシでも停電一つなかった。原発が無くても電力供給には何の問題もないと実験的に実証されたのに、原発を再開しました。つまり原発を再開するのは、表向きで言っている電力不足が理由ではなく、それで様々な利益を得たい人たちがいるからです。 岬の保護区 目的のカリアクラ(Kaliakra、Калиакра)という考古学保護区に到着(11:46)。 二キロほど突き出た半島の先にある遺跡です。 地図右 Wikpediaから転載 半島の先端に向かって歩道が続いています。観光地ですから、小さな店がたくさん並んでいます(写真下)。 他の観光地でも見たような陶器やイコンなどが目に付きます。こんな所でまでイコンを売っているのを見ても、ブルガリア人が信仰心が篤いのがわかります。日本ではこんな岬の観光地で仏画なんて売っていません。 貝の内側に真珠が形成された貝殻が売られています(写真下)。真珠養殖としてはたぶん失敗作です。女性のお客さんたちが興味と買う意欲を示したところで、トニさんが、これは黒海ではなくギリシャから持ち込まれたものだと告げたために、一気に熱が冷めました。店のオジサンはすっかり売る気になって、店の中に在庫を取りに行ったのに(笑)。 保護区には考古学的な遺跡があり、城や城壁の跡が見られます。紀元前四世紀には人が棲んでいたといいます。写真下の城壁跡は陸側からの侵入を防ぐためのもので、半島自体を一つの要塞のように使ったのでしょう。 カリアクラとは「美しい岬」という意味です。カリアクラという娘が率いる四十名のブルガリアの娘たちがトルコ軍に追われて、互いに髪の毛を結んでここで身を投げたという伝説が残っています。こういう遺跡はどこに行っても、耳をふさぎたいような血生臭い話がある。私は耳をふさいで花を見る。 写真上:Asphodeline
lutea 娘たちの身投げの話にはトルコ軍が出てくるから、オスマントルコに支配されていた1396~1878年までの話でしょう。五百年近くも他国に支配され、その間に何度も独立運動が起きて、多くの血が流れています。このカリアクラも例外ではなかった。 娘たちが身を投げた話は遠い昔ではなく、日本でもわずか七十年ほど前に似たような事が起きています。私が驚くのが、その体験者がまだ生きている時期に、また日本は戦争ができるようにと舵を切り始めたことです。武器輸出三原則の廃止、秘密保護法、安保法案、大学などの研究機関での武器開発、そして平和憲法を変えることを公約に掲げる政権を日本人の六割が支持している!?・・・脳に学習機能がついていないのだろうか。 ここは60~70メートルもの断崖が半島全体を取り囲んでいます。それだけに自然も豊かで、四百種類の植物、三百種類の鳥が確認されています。 遺跡のある半島から振り返ると、車からも見えた風車が彼方までたくさん並んでいます(写真下)。日本では土地の確保が難しいので、洋上発電などが増えています。 日本では土地の確保が難しいのが太陽光発電です。放置された農地などがたくさんあるのに、土地利用の規制が強すぎて、こういう農地の有効活用ができない。これも食料生産という大きな建前で守られた既得権を持つ人たちがいるからです。既得権が利権を生み出し、手に入れた人たちは離さない。 電気と農産物では違う、という考えの人が多いのには驚きます。都会のど真ん中に野菜工場ができて、水耕栽培がおこなわれています。これなど電気を大量に使うのだから、休耕地で発電することは農業生産と等価です。私たちが今食べている野菜は大半が石油でできているように、今後は電気から作る時代が来ています。 写真上:Malva
sylvestris 写真下は俗称スカンポと呼ばれるスイバです。私は草刈りでいつもお目にかかっている。草刈り機でスカンポを根元から刈り取って、一週間後に行ったら、ホウレンソウのような見事な葉が生えていました。青々とした葉に花の茎まで立ち上がっているのを見て、自分が本当に草刈りをしたのだろうかと一瞬疑いました(笑)。 写真上:Lathyrus
cicera 砦の門の下でアコーディオンを演奏している人がいます(写真下右)。少しお金を出したいが、買い物でほとんど使ってしまい、残っているのは店から受け取りを拒絶された少額のコインのみです。演奏家の位置からは入れた額がすぐにわかってしまうので、彼がよそを見た隙に音を立てないように入れてきました。 アザミ 観光地の岬から離れて、海の近くの風車の見える野原に咲く花を見ます。 ここで目立つのは写真下のアザミです。 写真上:Jurinea
mollis 欧州では珍しい花ではなく、ロシアやコーカサスの一部まで分布しています。ここがそうであるように乾燥しているところを好みます。 どこで見てもこの黄色いマメの仲間は白い岩肌と良く似合う。 写真上:Chamaecytisus
jankae 写真下はなんという強烈な紫でしょう。目で見てもこんな感じです。 写真上下:Astragalus
vesicarius 写真下のように総じて強い紫ですが、写真上がその中でももっとも強烈な紫でした。 写真上:Linum
hirsutum 写真下のトウザイグサの仲間は花が終わり実がなっていて、なかなか迫力がある。 シャクヤク 風車通りをさらに進みます。 トニさんは、このあたりにシャクヤクがあるはずだという。 ありました。ブルガリアに到着した初日にも見たホソバシャクヤクです。数は多くなく、また初日に見たよりも背丈が低い。たぶん、ここが初日の場所に比べて乾いているからでしょう。 写真上:Paeonia
ten uifolia まるで緑色の毛皮をまとって派手な化粧をしたお姉さんみたいです。 この野原には他にもたくさん花が咲いています。 写真上:Orobanche
alba 写真上:Syringa vulgaris 前にも見たオーストリアの名前のついたシソで、オシベが二本突き出ています。 写真上:Salvia
austriaca 写真下は小さくて濃い紫色の花なので、太陽の下では写りにくいという予想どおりで、花が黒っぽく写ってしまい、なんだかよくわからない。でも、こういう花です。 写真上:Nonea
atra 写真下は日本では高山植物のヤマハハコに似ています。 写真上:Achillea
clypeolata 写真下はちょっと見ると、枯れているのか花が咲いているのかわからないような花で、撮るのが難しい。スペインなど南欧州からウクライあたりまで分布しています。 写真上:Artemisia
pedemontana 葡萄レストランで昼食 花に夢中になり、少し遅めの昼食です(13:38)。 店内は厨房をはさんでコの字になっており、二十脚くらいのテーブルが並んでいます。 室内の天井に本物のブドウがはっているのが涼し気でおしゃれでいい。いったいどこからこのブドウは生えているのか。 ブドウの木は建物の外の道路脇から生えています。この店はブドウだけでなく、道端の電柱も建物の一部に取り込んでいます。 食事の後、運転手さんからイースター用の甘いパンが皆さんに配られました。彼らにとってイースターは重要なお祭りなのでしょう。 写真下のコーヒーカップの取っ手をごらんください。斜めになっていて、これがなかなか持ちやすい。もっともそれは右手で持った場合だけです。受け皿もおもしろいデザインです。 葡萄レストランで食事を終えて、再び風車の見える道路を北に進みます。このあたりは風車だらけです。日本も原発アリキではなく、自然エネルギーをもっと考えてはどうでしょうか。風車や太陽光では気まぐれだとか、発電量が少ないといった批判がありますが、そんな程度のことは日本の技術で十分に解決できます。実際、ドイツやスペインは簡単な方法で解決しています。やりたくない人たちはできない理由を並べる。 道路の脇には典型的な住宅が並んでいます。いずれも四角をいくつか組み合わせたような形をしているのが特徴です。 シャクヤクの群落 本日、三つ目の保護区に到着(15:06)。ここも黒海に面した自然と考古学の保護区です。 午前中の保護区のように高い崖の上にあります。 この保護区は写真下の看板によれば、178種類の鳥、270種類の動物が確認されているというから、豊かな生態系があるようです。 ここはまた紀元前に人間が居住していた洞窟もあるなど、考古学的にも貴重な場所です(写真下)。今のこの地域は人の住んでいる気配はありません。 崖の続く海岸に沿って一周できる遊歩道が出来ています(下図)。私たちは遺跡などが目的ではないので、駐車場から番号どおりに海岸を下がり、大半の人が9番あたりで引き返しました。 トニさんによればここにシャクヤクがあるという。先ほど見たホソバシャクヤクとは別種類のようです。 ありました(写真下)。おお、すごい。見事に真っ赤なシャクヤクが遊歩道の両側の藪の中に生えています。野生の花とは思えないほど派手で豪華です。さきほどのホソバシャクヤクよりも大柄で数も多いから撮りやすい。 ところが、トニさんは撮影は後にして早く先に行こうと言います。こんなすごい被写体を後回しはないだろう・・・。 「うわあ!」、これが私が写真下の光景を見た時の第一声です。他のお客さんも異口同音。一面にシャクヤクが群生して花を咲かせています。トニさんが急がせるはずだ。 念のために申し上げると、ここにあるシャクヤクの写真は色を強調するような加工はしていません。ドギツイほどの真っ赤は目で見てもそのまんまです。 下の衛星写真の、遺跡と黒海との間の広場のように見える所に一面にシャクヤクが咲いています。 問題は、これは自然そのままなのかどうかという点です。私の住む茨城でもバラ、アヤメ、ユリ、ケシ、ネモフィラなどを売り物にしている花公園は珍しくありません。しかし、あれらはほとんどが人工で、特にバラやネモフィラなど元々生えていた花ではありませんから、その意味で私にはあまり価値がありません。 この点については私個人は細かい規定があります(エヘン)。たとえば、その花は元々その場所に生えていたのか。元々なかった花ならもはや論外です。元々あったとしても、次に問われるのが保護の手法です。柵で囲うとか、除草程度で自然増加を待ったのか、それとも人が植えて増やしたものなのか。私の許容の限界はこのあたりで、人が植えて増やした場合は、かなり点数を下げます。日本で野生の花の保護をしている人たちは、悪気がなく人が手で植えてしまっている事があり、残念です。 ここは遊歩道の藪にもシャクヤクが生えているから、元々ここに生えていたのでしょう。問題は、目の前にある光景にどれだけ人の手が加わっているのか、という点です。 トニさんの説明によれば、前はヒツジなどが放牧されていたので、それを止めさせたそうです。ところが、これが逆効果で、ヒツジの草刈りがなくなったために、シャクヤクが他の雑草に負けて、一時減ってしまいました。そこで、人間が雑草を取り除いて保護したところ、現在のように復活したというのです。つまり、除草はしたが、人間が植栽するなどよけいなことはしていないということになります。 この話がたぶん本当だろうという証拠が写真下で、崖のはるか下にあるシャクヤクの群生です。写真下左の赤丸で囲んだ部分を拡大したのが写真下右です。シャクヤクがある場所は道からは下りるのが困難な急斜面の崖の下にあり、人間が立ち入れる状態ではありませんから、これはほぼ百%自然状態です。この海岸では人の手が入らなくてもこれだけの群落を作っていたのです。 今回の旅行の中で一番驚かされたのがここのシャクヤクです。野生のシャクヤクが見られることは先に聞いていました。私のイメージでは、初日のソフィアで見たホソバシャクヤクのように、あちらこちらにまとまって咲くシャクヤクで、まさかこれほどの大群落があるとは予想しませんでした。 遺跡をすぎたあたりにもシャクヤクの群落があります(写真下)。 足を踏み入れながら一番気になったのが、私たち以外にはあまり足を踏み入れた様子がないことです。つまり、これはこのシャクヤクが自然だという証拠である同時に、私たちが一番踏み荒しているになってしまう。「すまんね」「ごめんなさいよ」と言いながら、他の植物も踏まないように気を付ける。 ここではシャクヤクが主役だが、もちろん他の野草も花を咲かせています。 写真上:Fraxinus
ornus 写真下のマメの仲間は今回の旅行では初めて見る花ではないだろうか。 写真上:Pisum
sativum 写真上:Symphytum
tuberosum 真っ赤なポピーもここではシャクヤクに押され気味です。 写真上:Papaver
rhoeas 写真上:Mattiola
odoratissima ここにもゼニアオイがたくさん咲いています。理由がよくわからないが、やや小柄です。 写真上下:Malva
sylvestris 真っ赤なシャクヤクにフラフラになりながら(笑)、来た道を通ってヴァルナに戻ります(16:51)。 二頭立ての馬車で、女性のお客さんが乗っています(写真下)。これまでどちらかというと荷馬車だったのが、しっかりした座席のある馬車は初めて見ました。場所的に観光用とは思えず、ブルガリアでは馬車がまだ現役のようで、なかなか良い。馬車がもっとおしゃれなら観光用になります。 建物の壁面に歌手たちの絵が描いてあります。退色具合から見て、ポルトガルのアズレージョと違い、ペンキで描いたようです。こんなにたくさんの絵があるのはこの街だけで、他では見ませんでした。歌手が大半であることに何か意味があるのだろうか。 海岸の散歩 ホテルに戻りました(18:06)。夕飯の前に海辺に散歩に出かけましょう。海岸には釣り人などがいる程度で閑散としています(写真下)。釣り人は観光客というよりも地元の人たちのように見える。 砂浜に面してリゾート・ホテルが立っており、ビーチにはパラソルなどがあるが、どこも休業で、写真下右のように、一組の親子が広い砂浜をまさにプライベートビーチとして使ってしていました(笑)。 海岸に面したホテルの中には、まだ夏ではないからというだけではなく、傷み具合から見て、閉鎖されたような施設もあります。朝見た廃墟のホテルといい、ここのリゾート開発は必ずしも成功していないようです。 誰もいない静かな浜辺を散歩するのはとても良い。ただ砂の上は花がありません。 私は下の地図の浜辺の南端にいますから、花を探しに海から離れ、林の中を歩いてみます。 ここにもいろいろな花が咲いています。 29日に南側のマリナ・レカ保護区で見かけたのと同じフウロソウです。 写真上下:Geranium
pyrenaicum 雑草の中で濃い紫のムラサキモウズイカが咲いていて、かなり目立つ(写真下)。遠くから見かけた時はトリカブトの仲間かと期待して、毎回騙される(笑)。 写真上:Verbascum
phoeniceum 写真下も数は多くないが、こういう人家の近くで何回か見かけました。 写真上左:Reseda
lutea 風船のついたシレネの仲間がゴミを入れる倉庫の脇に生えています。花の美しさを、ゴミの臭いを我慢しながらの撮影(笑)。 写真上:Silene
euxina 写真下のヒナギクは、ブルガリアの初日にソフィアの市内を散歩した時にも芝生の中に花を咲かせていました。 写真上:Bellis
perennis ソフィアの街路樹として見かけたマロニエの花です。 写真上:Aesculus
hippocastanum 花を良くみると、花弁の色が黄色と赤など複雑な色をしています。 いつの間にか他のホテルの敷地の中に入り込んでしまいました(写真下)。このホテルだけは客がたくさんいて、他の閑古鳥ホテルと対照的です。ところが、このホテルの周囲は柵に囲まれていて、自由に出入りができない。たまたま門があったので行くと鍵がかかっていて、やはり出られない。私のホテルとは反対方向の海側に大きく迂回するしかなくなり、七時半の夕食に遅れそうなので走りました。 踊るブルガリア人 息を切らせながら、ホテルのレストランに到着。やれやれ一休みできると思ったら、レストラン内はものすごい騒音です。生演奏の音楽で、真ん中にディスクジョッキーがいて、彼がシンセサイザーなどを用いて音楽を選曲しているらしい(写真下)。昔のディスコに似て、腹に響くような低音をそれほど広くもないレストランに流しています。ここは食事をする所なのに、彼のコンサート会場になってしまい、隣の人との会話もできない。 丸一日、花に感激して、散歩で走ったので、だいぶんお腹が減っていた私だが、あまりの騒音に食事が進みません。私は田舎の静かな所で育ったせいか、騒音に弱く、その中にさらされるのは拷問です。料理はおいしいのに後半は半分くらい残し、なんとか忍耐して紅茶を飲むあたりまで我慢しましたが、ついに気持ち悪くなってきたので、レストランの外で待つことにしました。 一度部屋に戻り、同じレストランで九時からブルガリアの民族舞踊が披露されるというので戻ってみました(写真下)。民族音楽の伝統的な楽器を使った生演奏ではないかと期待して行くと、残念ながら、さきほどと同じ人が音楽を担当して、レストランの中は音楽ではなく、騒音の洪水です。 若い男女三人ずつ合計六人が民族衣装を着て踊っています(写真下)。踊り子のお姉さんはきれいだし、踊り自体は楽しそうだし、観客を誘い一緒に踊るなどの演出も良いのだが、とにかくすごい音量です。 写真を撮るために意を決して正面に出ると、スピーカーからの音が私を直撃します。カメラを構えていると、私のズボンが音で振動しているのがわかります。また気持ち悪くなり始めたところで、ちょうど一幕終わり、私は退散しました・・・もう少し民族衣装のお姉さんの写真を撮りたいのだが(笑)。 あれほど大きな音を出す理由の一つは、あのディスクジョッキーは難聴になっているからです。これは冗談や皮肉ではなく、ロックをしている人たちに難聴が多いことは良く知られています。彼の耳には聞こえないから、大音量にしている。 前に泊まったソゾポルのレストランでも会話が成り立たないほどの大音量の音楽でした。昨夜の結婚式といい、ブルガリアではこれが普通らしい。 音量はともかく、ブルガリア人は踊りが大好きなのは良い習慣です。 トップページ 日程表 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 |