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ギリシャ北部 ピンドス山脈の花

4日目 2025428()

メツォヴォ パピゴ

 

 朝、起きて板戸の窓を開くと、いつものように斜面に白と黒の二頭の馬がいます(写真下)

 

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 今日はメツォヴォを発って、次の宿泊地であるパピゴ(Papigko)に向かいます(地図下)。距離は約100kmですから、車なら3時間かかりません。そこを私たちは花を探しながら丸一日かけて移動します。

 

 

メツォヴォ朝の散歩

 メツォヴォは二泊したのに一度も散歩していないので、朝の散歩に出かけます。まずはメツォヴォ猫とメツォヴォ犬に朝の挨拶です(写真下)

 

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 座っている場所からすると飼い犬だろうに、ずいぶん汚れている(写真下左)。この犬、私の部屋から見える斜面の草場に馬と一緒にいた犬ではないか(写真下右)。お尻あたりの汚れ具合がそっくり。馬は遊びに来てくれるので、うれしいかもしれない。

 

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 山の斜面に大きな街ができた理由の一つは、一年を通して水が確保できるからでしょう。写真下はホテル近くの道路下にある水場です。一年中、水が途絶えないだろうから、排水路の先に溜池を作れば、水草を育てられ、水質浄化にも役立ちます。

 

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 各家庭に水道は行きわたっていても、水場は現役です。写真下左などは屋根を支える横の梁が新しい。柱や壁などは石だが、梁は木材を使っています。石でできた屋根の重みが梁にかかるから、傷みやすいのでしょう。

 

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 昨日も紹介した「LIFE」誌のカメラマンが撮った1959年の水場では、女性たちが洗濯棒で洗濯物を叩いています(写真下)。写真下左の入口の真ん中には2本の棒が立っています。立ててあるから物干し竿ではなく、おそらく梁がどのくらい曲がっているか、調べているのでしょう。棒のたわみがひどくなったら、写真上左のように新品に取り替える。

 

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 写真下は写真上と水場の建物の作りや大きさがよく似ています。間口の縦横の比は、写真上が2.16、写真下が2.09ですから、ほぼ一致します。今は裏に3階建てのマンションが建っていて(写真下右)、一階の住人にとって目の前の水場が邪魔だから、水場の裏の部分がへこんでいます。

 

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 広場近くの店はほとんど開いていません中(写真左)、パン屋だけはすでに営業して、マネキンがパンを売っているのに、客が来ない(写真下右)

 

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 写真下は、外の門が閉じられて敷地に入れないのは教会にしては珍しく閉鎖的だと思ったら、アヴェロフィオス庭園(Αβερώφειος κήπος)という庭で、閉園時間らしい。教会のように見えるのはアギオス・ゲオルギオス礼拝堂だそうです。

 

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 巨木のある広場にもほとんど人はいません(写真下)。今ギリシャは夏時間の8時頃で、実際は7時らしい。月曜日の朝7時でも人がいないのは、この街の人口が少ないからでしょう。人口密度で比較すると、1㎢あたり、東京都約6500人、山形市約600人、メツォヴォ約15人です。

 

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 写真下左などが、たぶん1959年は写真下右のようだった。昔の写真の背景になっている山は、薪を使っていたせいか、樹木が少ない。

 

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 街はほとんど斜面で雪も降るから、1階建ては少数で、ほぼ2階建て以上です(写真下)。たぶん街の景観を考えて、高層は禁止でしょう。建物を見ると、この街が観光で潤っているのがわかります。

 

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 残念ながら、道の一部はアスファルト舗装です(写真上右)。景観のためにも、主要道路は石畳にしてほしい。

 住宅街に入ると無計画に斜面に多くの家が建てられているので、地図がほとんど役立たず、道が狭く、行き止まりなど、迷い込むので、散歩には楽しい(写真下)

 

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 ギリシャらしい風景が写真下の洗濯物です。日本人には見慣れた風景でも、欧州ではイタリアやギリシャなど日差しの強い南でしか見られません。

 

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 ホテルに戻る途中で、何台もの車から子供たちが降りて、写真下左の建物に向かっていきました。この地域の公立高校(GENIKO LYKEIO METSOVOU Public High School)です。山の斜面の街で、遠くから歩いて通うのは難しいので、写真下右の車はたぶんスクールバスです。

 

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 ホテルに戻り、一階の食堂で朝食です(8:28)

 

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道端の花

 9:30にホテルを出発した頃はすぐに雨が降りそうでしたが(写真下左)、進むにつれて青空も見えてきました(写真下右)。今回のギリシャ旅行では前半は天気が悪かったが、この日を境に良くなりました。ギリシャの天気の神様のご機嫌がようやく直ったみたい。

 

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 道路脇に花畑を見つけて停車(10:08)。陽が射すと、花も楽しそう。

 

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 一番目につく白い花はセリの仲間で、ギリシャでは昔から葉が料理の香味として用いられています(写真下)。欧州と西アジアが原産地で、耕作地も荒地も、酸性も中性もアルカリ性も気にしないたくましい植物です。

 

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写真上 Tordylium apulum

 

 白いセリの間で目につくのがピンク色の花です(写真下)。きれいな花で、写真下右のように庭の植え込みに使えそうなのに、南イタリア、バルカン半島からトルコ西部まで分布するとあるだけで、詳しい説明が見つかりません。

 

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写真上 Saponaria calabrica

 

 写真下左のシレネの仲間は、ギリシャと北隣のアルバニアにしか分布していませんから、ほぼ固有種と言ってもいいでしょう。

 写真下右は二日前も見かけた、欧州では珍しくないハンニチバナの仲間です。ハンニチバナは栽培品が多いが、私は日本ではあまり見かけたことがありません。

 

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写真上 Silene cephallenia        写真上 Cistus creticus 

 

 写真下の花を見た時、マツヨイグサの仲間かと思いましたが、花弁の数が、マツヨイグサなら4枚なのに、これは5枚です。これも写真上右と同じハンニチバナの仲間で、欧州ではどこにでもあります。

 

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写真上 Helianthemum nummularium

 

 写真下は道路から少し入った所に生えていたマメの仲間で、地面に葉を広げて、シダみたいです。半分だけ光が当たっていて撮りにくい。「おい!そこの樹木、影になるから邪魔だ」と言っても、どいてくれない。

 

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写真上 Astragalus monspessulanus

 

 写真下の花は蜜が豊富で、ミツバチやマルハナバチたちに人気があるので、庭で良く植えられるようです。

 

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写真上 Anchusa officinalis

 

 紫色がとてもきれいなシソです(写真下)。ただ、頭頂部(写真下中)とそれ以下(写真下右)の花の形が違う。良く見ると、頭頂部は花ではなく紫色の葉で、虫を集めるための一工夫らしい。426日のメテオラでも見ました。

 

 

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写真上 Salvia viridis

 

 写真下は一昨日、昨日も登場したランで、両側の花弁に緑色の縞模様がついています。

 

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写真上 Anacamptis morio

 

 写真下はシソの仲間で、欧州と地中海沿岸の東部や北アフリカに分布します。

 

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写真上 Ajuga chamaepitys

 

 写真下はムラサキの仲間で、ネットでの解説では生息地として森林伐採地や道路脇とあり、人為的には作られた場所が好きなようです。

 

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写真上下 Alkanna pindicola

 

 写真下の二つはキクの仲間だから、外見が似ているが別種です。写真下右は日本にも帰化して、ブタナというとんでもない名前が付けられています。

 

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写真上 Senecio vernalis  写真上 Hypochaeris radicata

 

 写真下のマメ科の花は欧州、西アジア、北アフリカが原産です。47種類の亜種があるといいますから、きっと写真下も亜種の一つでしょう。薬用植物で、学名のブルネラリア(vulneraria)とは「傷を治す人」という意味だそうです。ただ、何に効くのか、書いてありません。

 

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写真上 Anthyllis vulneraria

 

 写真下は26日のメテオラでも見たナヨクサフジで、日本にも帰化していて、良く見かけます。周囲に写っている楕円型の葉はこの花の葉ではありません。

 

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写真上 Vicia villosa

 

 白い花が斜面に見事な花壇を作っています(写真下)

 

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写真上 Iberis sempervirens

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 この斜面は道路を作るために作られた人工的な斜面、いわゆる法面(のりめん)です。草花の生え方から見ると、人為的に植物の種をまいたのではなく、勝手に生えて来た。地形は自然ではないが、花は自然です。

 

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 ガードナーさんが優れた植物ガイドである点は、素人が苦労して歩くこともなく簡単に行けて、花を十分に楽しめる場所に案内してくれることです。

 

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外来種が少ない

 幹線道路から少し外れた二カ所目で花の散策です(写真下)。先ほどの道路脇もそうだが、意外なのは外来種が少ないことです。日本なら道路脇など外来種の宝庫で、在来種を探すのが難しい。ところが、ここはこれだけ人の手が入っていても、在来種がほとんどです。

 

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 最初に見つけたのが写真下で、これから咲くのではなく、これで下の部分は開花しています。日本で見られるオカトラノオ( Lysimachia clethroides)の仲間で、花の付き方が似ています。

 

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写真上 Lysimachia atropurpurea

 

 写真下左はハマウツボの仲間で、日本で見かけるヤセウツボにそっくりだと思ったら、ヤセウツボ自体が地中海沿岸から来た外来種でした。こちらが本家本元です。

 ヤセウツボの周囲に生えているのが写真下右の花で、最初に花の観察をした場所にも少し生えていました。

 

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写真上 Orobanche minor   写真上 Thymus pulegioides

 

 写真下左は、日本のマツムシソウに近い花で、426日のメテオラでも見かけました。

 写真下中はオニノゲシで、日本にも帰化して道端で良く見かけます。ノゲシといってもケシではなく、見た目どおりのキク科のタンポポの仲間で、こういう紛らわしい和名は付けないでほしい。

 

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写真上 Knautia integrifolia    写真上 Sonchus asper    

 

 写真下左は、ガートナーさんは不明としたOnosmaの仲間を、素人判断で名前を決めました。

 写真下中と右はシソの仲間で、ミツバチが好むので養蜂家にはありがたい花のようです。

 

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写真上 Onosma elegantissima        写真上 Stachys cretica

 

 写真下左はシロツメクサと良く似ていて、シロツメクサは欧州原産だから、親戚なのでしょう。ムラサキツメクサとシロツメクサの中間のような印象です。

 写真下右のマメ科の樹木は欧州から西アジアに、またギリシャでは全土に分布します。

 

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写真上 Trifolium diffusum      写真上 Hippocrepis emerus

 

 写真下は花を見ただけでオオイヌノフグリ(Veronica persica)の仲間とわかります。写真下のほうが背が高い。日本のオオイヌノフグリは欧州か西アジア原産の外来種で、写真下は地元です。

 

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写真上 Veronica chamaedrys

 

 写真下の和名はヒメフウロで、日本にもいくつかの山に生えているという。欧州はもちろんアジア、北米など温帯に広く分布します。

 

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写真上 Geranium robertianum

 

 写真下の花は昨日、ピンク色のが咲いていて、ランかと勘違いしたヒメハギの仲間です。ここのは白が多く、ランに間違えることはないと思ったら、似たのがありました。

 

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写真上 Polygala nicaeensis

 

 写真下を見た時、写真上の花かと錯覚しました。日本のギンラン(Cephalanthera erecta)そっくりで、普通ランには清楚という誉め言葉はあまり使わないのに、ギンランだけはあてはまります。林の中でポツンと咲いている姿はなかなかなものです。

 

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写真上 Cephalanthera longifolia

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 清楚なランは写真上だけで、写真下は昨日も見た蜜を出さずに虫を騙すランです。

 

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写真上下 Orchis mascula

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 写真上のランに蜜がないのに騙されているのか、ルリシジミそっくりの蝶が停まっています(写真下)

 日本のルリシジミ(Celastrina argiolus)の親戚かと思ったら、学名の属が違っていますから、見た目はそっくりでも意外に血縁は遠いらしい。欧州ではCommon blueと呼ばれるくらいで、どこにでもいるのでしょう。イカルスヒメシジミという和名も付いていて、欧州、北米、中国北部などかなり広い範囲に分布します。

 

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写真上 Polyommatus icarus

 

 桃色の花弁を持つランがあります(写真下)。数は少なく、見つけたのは3株のみです。花の上からピンク色の角が2本突き出ている。角を含めると、花弁とガクの合計数が普通のランよりも2枚多いような気がする・・・ランは訳がわからん。

 

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写真上 Ophrys scolopax

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 写真下左のランは、上の花がまだ完全には開花していません。茎がさらに上にのびていますから、これから上のほうにさらに花を付けていくのでしょう。

 

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 写真下は写真上と似ているが、前に突き出た花弁(唇弁)についた模様が違う別種です。ネットで見ると、このランの模様は個体ごとに違っていて、同じランとは思えないほどです。

 

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写真上下 Ophrys reinholdii

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 写真下のキキョウの仲間を見た時は、一瞬、小さなユリかと期待しました。欧州はユリが少ない。茎は非常に細く、この花を良く支えていられるものだと感心するほどです。今回の旅行では今日が二度目で、この後も何度かお目にかかり、姿形も色もたいへん気に入った花です。

 

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写真上下 Campanula spathulata

 

 隣接するアルバニアからモンテネグロ、ブルガリア、トルコまで分布しますが、もっとも多いのはギリシャのようで、ほぼ全土で見られます。ギリシャはキキョウ(Campanula)の仲間はかなり多く、大半がホタルブクロのようなドーム状の花なので、この花は例外的な姿です。

 

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石橋の聖者

 石でできたアーチ型の橋です(写真下左)。ヴァルダス(Vardas)川にかけられたツィピアニ(Tsipiani)橋で、オスマン・トルコから独立後の1875年に近隣の村の寄付によって作られたと掲示板にあります(写真下右)

 

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 橋の隣に十字架のついた祠があります(写真下左)。ギリシャでは道端のこういう祠は珍しくなく、中に馬に乗った聖者の図像があります(写真下右)。ネットで検索すると、竜を退治する聖ゲオルギオスらしい。空想上の生き物である竜を退治するというのが意味不明なだけでなく、武力で相手を殺すのが聖者!?それではいつまでも争いが終わらない。非暴力を旨とする仏教では理解できない世界です。

 

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 お釈迦様の説いた仏教にも敵としての悪魔が登場します。しかし、その悪魔とは自分自身の煩悩です。つまり、仏教では、敵とは外にいるのではなく、自分自身の内にいる。これは困ったことになった。敵が外にいるなら攻撃するか、逃げればいいだけで楽です。

 だが、自分の煩悩が敵だと言われても、私のように煩悩と長年友好を保ってきた人間には、攻撃するなど朋友を裏切るようで、人の道に反します。逃げようにも、自分の中にあるのだから、逃げられない。

 このようにお釈迦様の仏教は自分自身に非常に厳しいので、インドでは絶滅し、日本では大乗仏教という偽仏教が根付いただけで、釈迦仏教は根付きませんでした。

 

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 石橋は造られてから150年たっても、まだ使えるのがすばらしい。おまけに橋にはランまで咲いています(写真下左)。日本は橋も上下水道も50年でメタメタです。

 

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 写真下左のガードナーさんの左が新しい橋、右が石橋です。写真下右で、彼は川に石を投げて川面をジャンプさせる「水切り」をして、なかなかうまい。

 

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 写真下は橋脚の根本に生えていたムラサキの仲間で、青い色がとてもきれい。

 

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写真上 Aegonychon purpurocaeruleum

 

 道を走っていると、時々見かけるのが写真下の桃色の花を付けるセイヨウハナズオウで、南欧から西南アジアにかけて自生するマメ科の樹木です。

 桃の花のような印象と言っても、桃の花を知らない方も多いでしょう。桃の花はまさに桃色の、いかにも桃ができそうなきれいな花を咲かせます。私は桜よりも好きで、果実がなったら二度おいしいという下心で、畑に何本か植えてあります。

 

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写真上 Cercis siliquastrum

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道端のラン

 道路の脇にランが次々と現れます(写真下、12:19)。今回、これほどランが見られるとは予想しませんでした。

 

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 写真下は威風堂々として女王様のように立派なランです。しかも、こんなランが車が走る道端に何本も生えているという点がすごい。似た容姿のランが3種類あります。

 

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写真上 Orchis purpurea

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 2つ目の写真下は写真上と良く似ているが、花の形を見るとたしかに違います。

 

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写真上 Orchis simia

 

 一個一個の花の形がおもしろい(写真下)。猿に見えると言われていますが、それは間違いで、頭巾をかぶった妖精が踊っているのです。

 

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 私の説が正しい証拠に、頭巾をかぶった猿なんていない。「踊っていない」というだろうが、踊っていたのに私が見たから動きを止めたのです。人間が見ている間は動きを止めますから、目を離したようなふりをして、横目でこっそり見ると、ほらね、風に合わせて踊っています。

 

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 3種類目の写真下も、見た目は女王様のような堂々としたランです。道端ですから、日本ならあっという間に盗掘されるでしょうが、ここにはそういう愚か者がいないのでしょう。ランの好きな人たちに聞くと、日本では乱獲がひどく、せっかくの自生地が次に行った時には何もなかったという。

 

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写真上下 Neotinea tridentate

 

 このランは南欧州だけでなく、ポーランドやドイツ、さらにトルコにも分布しますから、見た目どおりで、かなり丈夫らしい。

 

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 このランにも妖精がいます(写真下)。ピンクで袖口や裾の広い服だが、顔は男性です。顔だけ拡大してみましょう。

 

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 これは兜をかぶった男性で、目をつり上げ、口を曲げて怒りの表情をしています(写真下)・・・この顔に見覚えがある。

 

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 悪党どもをやっつける『大魔神』(大映、1966)です。最近見かけないと思ったら、ギリシャでランになっていたのだ。

 大魔神様!ガザでは大悪人どもが民衆に爆弾を落とし、子供たちを飢餓に追い込んでいます。大虐殺を繰り返す残虐非道な大悪人どもをやっつけて、飢えている人たちを助けてください。

 

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村の教会で昼食

 村の近くにある無人の教会の入口を借りて昼食です(写真下、13:34)。手前に四階建ての塔があり、奥に教会があります。

 

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 四階建ての塔を見て、恐がりの私が登らないはずはありません。各階に木で作った床と梯子が取り付けてあり、古くないので、危険はありません(写真下左)

 

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 四階からの眺めは良く、隣にある教会の建物や、斜面にあるDoliani村などが見えます(写真下)

 

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 教会の周囲は空き地や林があって、自生や栽培品の花が咲いています(写真下)

 

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 教会の入口を借りて昼食です(写真下)

 

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ギリシャの亀

 山道を少し登って案内された所に咲いていたのが写真下です。また、この後、森の中を探してみたが、ここの群落しかありませんでした。ガードナーさんはこの花を見せるためにここに案内したのだろうから、珍しいのでしょう。今回の旅行ではもう一回見ただけでした。

 

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写真上下 Melittis melissophyllum

 

 シソ科のメリテス(Melittis)属のたった一種類の植物だという。一属一種と聞くと、急にスゴイ奴に見えて来る。独り我が道を進化したのか、それとも一緒に進化した仲間が消えてしまったのか。

 

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 道を上り切った森の中に建物がポツンとあります(写真下)。人もおらず、何の建物かわかりません。

 

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 建物の裏に黄色い大柄な花が咲いているので、声をかけたが、誰も来ません(写真下)。そのためか、旅行会社から後日渡された植物の一覧表には載っておらず、ネットの生成AIが提案したのがこの名前です。Wikipediaの説明では、イタリアやギリシャから東欧にかけて一般的で、観賞用にも栽培されているというのが説得力があります。森の日陰に、すっくと立ちあがり、写真下よりも実際には目立つ花で、私も庭に植えてみたい。

 

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写真上 Doronicum orientale

 

 マメ科は種類も数も多く、マメ科だとは簡単にわかるのに、似たようなのが多く、名前の特定が難しい。写真下はキバナカラスノエンドウという和名があるくらいで、欧州からアジアにかけて広く分布します。

 

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写真上 Vicia grandiflora

 

 周囲はブナ林で、あまり花もなく、おもしろくないと思っていたら、お客さんがカメを見つけました(写真下)。欧州では良くみかけるヘルマンリクガメです。日本にもペットとして輸入されているようです。

 

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写真上 Testudo hermanni

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写真上 Quercus frainetto

 

さらに何種類ものラン

 展望のきく山の上でさらに別なランを探します(写真下)

 すごいことに、狭い範囲で6種類ほどのランを見ました。斜面の上り下りがあるにしても、距離にして100mまで離れていません。そんな範囲にこれだけの種類のランがあることがすごい。日本ではランが湿気のある半日陰に多いのに、ここでは乾燥している所にたくさんあります。

 

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 一つ目は午前中も見かけた妖精が躍っているランで、ここは数も多い(写真下)

 

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写真上 Orchis simia

 

 二つ目の写真下は初めて見るランで、遠くから見た時、ラッパスイセンかと思いました。他のランはたいてい地中海の沿岸に分布するのに、このランはイタリアからギリシャとエーゲ海の島々など限定的に分布します。

 

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写真上 Orchis pauciflora

 

 ランらしく、花弁が複雑で、どこからどこまでが一つの花なのかわかりにくく、それぞれの花弁やガクが何のためにこんな形をして、どんな役割をするのか、いよいよわからない。

 

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三つ目の、写真下の赤いランはイタリア南部から地中海東部にかけて見られます。

 

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写真上下 Orchis quadripunctata

 

 花の中に4つ点があってfour-spotted orchisと呼ばれているというが、老眼では見えないので、カメラに見てもらおうと15枚撮りました。たぶん写真下左のように、手前に2つ点があり、その奥にもう2つ点があり、合計4つをさしているのでしょう。写真下右のように斜めから見ると、手前の点があるあたりは斜面になっていて、それを越えた向こう側の斜面にさらに点があるのがわかります。

 

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 しかし、写真下左は少なくとも5つ見えるし、写真下右は奥のほうまで点がありますから、4つというのはあまり根拠のある話ではありません。それよりも、この点はいったい虫にとってどんな役割をしているのでしょう。「点に沿ってお進みください」という蜜への案内板?

 

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 四つ目は、私が「馬面ラン」と名付けたランです。手前に出ている花弁(labellum)が細長く、馬面に見えるのは、花弁が下側に丸まっているからです。欧州から西アジア、北西アフリカに分布します。

 

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写真上下 Orchis spitzelii

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 五つ目は写真下の白いランで、昨日、一昨日など何度か出ていて、ここのは特に花が立派なのに、白いと写真は撮りにくい。地中海からコーカサスまで広い範囲に分布します。

 

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写真上下 Orchis provincialis

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 最後の六つ目は、昨日アオース湖の周囲でも見たオフィリスです(写真下)

 

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写真上 Ophrys sphegodes

 

 ガードナーさんに案内されるから、次々とランを見つけられるが、自分一人で来ても、たぶん半分も見つけられないでしょう。植物ガイドの腕が花の旅行には大きく影響します。

 

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パピゴへ

 花の観察を終えて、道は山を下りて、写真下あたりでは珍しく平地を走ります。

 

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 再び、峠を登りきると、北側の山の斜面に七曲りが見えてきました(17:36、写真下左)。あの道を登りきった先に目的地のパピゴがありますから、あと三十分くらいでしょう。その前に七曲りの手前にあるアリステ(Aristi)という小さな街を通過します(写真下右)。明日以降、パピゴからどこに行くのでも、この街を通過しました。

 

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 七曲りを登りきって少し行った所に展望台があります。写真下左の岩山の西()側にパピゴがあります。対岸の山の上に建物が見えますから、あんな高い所にも集落があるらしい(写真下右)

 

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 展望台近くにトネリコがたくさん花を咲かせています(写真下)。和名ではマンナトネリコといい、欧州の中央部と南部からトルコ西部やレバノンまで分布します。

 

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写真上 Fraxinus ornus

 

 写真下が「野生のジャスミン(wild jasmine)」という名前だと後で知って、香りを確認しなかったのが残念。

 

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写真上 Jasminum fruticans

 

パピゴ到着

 パピゴ(パピンゴ)の村に入って来ました(写真下)。パピゴを紹介した“visitpapigo.com”によれば、ここはティムフィ山(Timfi)の斜面の標高970mにあるというが、どれがその山なのか、わかりません。

 私たちのホテルは坂を登った村の外れにあります。

 

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上地図 Wikipediaから転載

 

 本日のホテルに到着(18:20)。パパエヴアンゲロウ(Papaevangelou)という名前は、私の耳には「パパ+エヴァンゲリオン+下郎」と聞こえるのに、特に変わったホテルではありません。パピゴの東側にそそり立つ岩山がすごくて、眺めは抜群です(写真下)。この岩山はすぐ裏にあるのではなく、間に谷川があります。

 

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 山野さん(仮名)が手続きをする間、入口のそばにある食堂で待つつもりで入りました(写真下)

 

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 でも、眺めが素晴らしいし、晴れて気持ちがよいから、外で待つことにします(写真下)

 

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 19:30から夕飯で、街中のレストランまで歩きます(写真下)

 

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 屋外でも食べられるが、私たちは店内です(写真下)

 

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 写真上左でもわかるように、ここの家主が私たちを「こちらにどうぞ」と案内します(写真下)。「お気遣いいただき、すみませんねえ」と私はお礼を言う。

 

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 店内は私たちの後にもお客さんが来て、にぎわっています(写真下)

 

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 3日間ここで夕飯を食べましたが、混むことも多く、人気があるのかと思ったら、予定していた他のレストランは、経営者の兄弟が裁判で争って休業したため、客がこちらに流れたからで、いわゆる漁夫の利。

 

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 裁判沙汰のレストランと味比べしてみたかった。

 

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 食事を終えて、薄暗い中を歩いてホテルまで戻ります(21:02、写真下右)。夜9時だというのに完全に真っ暗ではありません。

 

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 写真下が私の部屋の入口で、斜面の建物なので.一階です。石でできた丸いアーチが素敵です。

 

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 部屋の窓からの眺めは良くありません。写真下は部屋の前のテラスで、樹木が生い茂っていて、せっかくの岩山の景色が見えない。

 

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 写真下は私が3泊した部屋です。スーツケースなど荷物を広げるのには十分な広さがあります。ただ、ホテルでは良くあることで、灯りがたくさんあるのに部屋全体は薄暗くて、作業には向きません。

 

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 コーヒーやお茶だけでなく、湯沸し器があるのは助かります(写真下左)。瓶詰の水はどこまで信用していいか、わからない(写真下右)。部屋によって、湯沸し器がない、部屋が狭いなど、便利さに違いがあったようです。

 

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 部屋には暖房器が二つ付いていて、一つは東芝のエアコンで、暖房専用なので床近くに設置してあります(写真下左)。もう一つは温水式か蒸気式で、トイレにあります(写真下右)。ここはスキー場があるくらいですから、夏は涼しく、冬はかなり寒いのでしょう。

 

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 東芝のエアコンの室外機は外のベランダの先に設置されています。その間のホースは石の床面を切り取って、埋めたようです(写真下左)。しかも、ご丁寧にもその工事が行われたのが201612月だとドアの脇の地面に刻印があります(写真下右)。そして、ご丁寧にも私も写真を撮る。

 

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 トイレの水が少ししか流れない。レバーを何度も回すうちに、内側で外れてしまったらしく、修理を頼みました。直しても、ただ元に戻っただけで、相変わらず水はうまく流れない。諦めて、2リットルのペットボトルで水を流しました。

 

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 洗面所で気に入ったのが、写真下の真鍮製の蛇口です。実用上はレバー式のほうが便利ですが、こういう蛇口なら手で回すのも楽しい。

 

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 部屋にはいろいろと問題はありましたが、真鍮の蛇口も素敵だし、街とホテルの雰囲気は良く、ホテルへの評価は余裕で5段階の4.0で満足です。メツォヴォのホテルと同様に、一週間くらいゆっくりと泊まっていたい。

 

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