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ギリシャ北部 ピンドス山脈の花

5日目 2025429()

ヴィコス渓谷

 

 朝、晴れています。パピゴの東側に岩山があるので、朝日が当たるのは遅い(写真下)

 

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 今日はパピゴの南にあるヴィコス渓谷に沿って花を探します。下の地図でもわかるように、ヴィコス渓谷はY字型にえぐれた深い渓谷で、パピゴは渓谷の一番北に位置します。赤丸が主に訪れた場所で、直線距離はそれほどでなくても、車ではパピゴからアリステ経由で大きく迂回するので時間がかかります。

 

 

朝食と散歩

 ホテルの食堂で7:30から朝食です(写真下)。従業員の女性が食べ物を運んできてくれるのはありがたいが、自分だけの皿なのか、それとも同席の人と共用なのか、良くわからないので、適当に食べる。各人が好きなだけ取るほうが無駄も労力も少なくて、お互いに楽な気がします。

 

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 注目はお茶で、鉄瓶に入っていて、日本の南部鉄器風です(写真下)。私は家に昔から伝わった南部鉄瓶を子供の頃から見ているので、それとは形や色が明らかに明瞭に全然違う。見てのとおりで、美しさのカケラもない。後でパピゴの土産物屋で売っているのを確認すると、予想どおり、ラベルには中国製とありました。

 

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 中国の南部鉄器で出したお茶を飲んでから、出発が9:00なので、30分くらい村の中を散歩することにしました。下の地図のように、こじんまりした村で、1時間もまわれば行くところがなくなるくらいです。

 

 

 ホテルの坂を下りた所にあるのが水汲み場です(写真下)

 

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 メツォヴォよりさらに人口が少ないせいか、八時すぎなのに、村の中はいたって静かで、人通りもほとんどありません。

 

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 どの家も石造りとスレートの屋根で、メツォヴォよりももっと統一感があり、印象が良い(写真下)

 

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 目につくのがレストランやゲストハウスで、この村が観光で成り立っているのがわかります(写真下)

 

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 私は珍しく散歩で一眼カメラを使っています。普段の旅行では、一人で行動する時には目立つ一眼カメラは持ち歩きません。メツォヴォと同様に、ここは観光村ですから、用心深くしなければならないが、メツォヴォのような店が集まった繁華街もなく、ここに34日いた範囲では、危険は感じませんでした。そもそも人がいない。

 

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 メツォヴォのように、村の中心には広場があります(写真下)

 

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 村の道にはホテルなどの案内板があり、ここが観光村なのがわかります(写真下)

 

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 写真下は村の中の掲示板で、どちらもこの村の名前はパピゴ(Papigo)です。旅行会社とウィキペディアではパピンゴ(Papingo)Mapcartaの地図ではPapigkoで、いずれの表記も間違いではありません。ただ現地の看板はPapigoですから、地元に敬意を表して、パピゴを用います。

 

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ヴィコス渓谷へ出発

 予定どおり、9時すぎに出発して(9:14)、私はオリバーさんの運転する2号車の後ろの席です。昨日、上って来た七曲りを下りて、斜面を降りきった所に川が流れていて、カヌーの乗場になっています(写真下)

 

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 ヴィコス渓谷から流れて来たヴォイドマティス川(Voidomatis River)で、透明度が高く、とてもきれいです(写真下)。この川の名前は上流に行くとVikosと表記している地図もあります。

 

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 川のそばにはアオース湖の昼食の時に見たフキの仲間が花を咲かせています(写真下左)

 

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写真上 Petasites hybridus 

 

 ガードナーさんがここで車を停めたのは崖に咲いている花を見せるためです(写真下)。ユキノシタの仲間と言われれば、丸い葉は似ています。

 

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写真上 Saxifraga rotundifolia

 

 パピゴの往復では必ず通るアリステ(Ariste)を通過して(写真下左)、峠を越えて、さらに南下します。

 

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 写真下左は石造りのATMで、必要もないのにお金を下してみようかという気になる。

 

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石の森

 50分ほど走り、2カ所目の花の観察はStone Forest(Petrino Dasos)です(10:22)。直訳すれば「石の森」で、板状の石灰岩が積み重なって、それが風化して隙間ができて、岩が林立しているので、これを森に例えているようです(写真下)

 

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 写真下のピンク色の花は石灰岩の白い岩と相性が良く、被写体としてもきれいです。主にブルガリアを含めたバルカン半島に分布して、ブナ林などにあるというから、写真後ろに見えるのはブナかもしれません。日本でいえばハナダイコン(Hesperis matronalis)のような印象です。

 

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写真上 Malcolmia orsiniana

 

 写真下は同じアブラナ科の植物で、ここのような岩だらけの山岳地帯が原産地ですから、丈夫できれいなので、栽培品として広く重宝されているようです。

 

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写真上 Alyssum saxatilis

 

 写真下の花は開花していないのがほとんどだったのを、お客さんが林の中で、岩の壁にたった一株だけ咲いているのを見つけました(写真下)。お手柄です。石を横積みしたように見えるのは、これで自然のままです。

 

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写真上 Ramonda serbica

 

 写真下は日本のホトケノザやヒメオドリコソウに似ています。こちらのほうが花が大きく一本一本が見ごたえがあって、主に地中海沿岸で見られます。

 

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写真上下 Lamium garganicum

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 写真下のように石灰岩の隙間は意外に住み心地が良いのかもしれません。少なくとも踏まれる心配はなく、競争相手も少ないでしょう。

 

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写真上 Doronicum austriacum

 

 写真下左はテンナンショウの花に似ていますが、こちらの花はせいぜい5cmくらいで、草の中に埋もれており、教えてもらわないと気が付かないほどです。イタリア、ギリシャからトルコにかけた低木地帯に生えます。

 写真下右のヤグルマギクは欧州の南部では珍しくない花で、ここではあまり多くなく、雑草に埋もれています。園芸種のヤグルマギクは一年草で、こちらは多年草です。

 

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写真上 Aristolochia pallida    写真上 Centaurea montana

 

 写真下の2つはどちらもフウロソウの仲間で花もそっくり。葉を見て、別種だと後で気が付きました。

 

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写真上 Geranium robertianum        写真上 Geranium lucidum

 

オキシア展望台

 石の森の少し先にある、ヴィコス渓谷の景観を見るのにちょうどよいオキシア展望台(Viewpoint Oxya)に行きます(写真下)

 

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 渓谷の崖に沿って遊歩道が途中まで続いています(写真下)

 

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 写真下中で谷底を流れているのがヴォイドマティス川(Voidomatis River)で、先ほど、私たちが下流でカヌーの船着き場を見た川です。ここはヴィコス渓谷がY字になっている分かれ目で、写真下は下地図のオキシア展望台(Viewpoint Oxya)から矢印の北に向かって撮った写真です。

 

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 写真下のバイモは、2日前の427日にアオース湖の周囲でも見ました。

 

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写真上 Fritillaria graeca

 

 ここで一番目を引いたのが写真下の紫の花で、崖に飾られたように咲いています。

 

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写真上 Aubrieta deltoidea

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 ところが、無神経な奴はどこにでもいるもので、写真下左のように、岩に落書きがあります。せっかくの美しい花もこの愚か者のおかげで台無しです。犯人に、花にゴメンナサイを千回言わせるのはどうだろう。

 

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 写真下左は崖の上に群落しているので、近くまで行くのは無理です。幸い、ネット ”greekflora.gr” 、同じような角度で撮った写真がありました。周囲の緑色の絨毯のような葉がこの植物の葉です。

 

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写真上 Saxifraga spruneri

 

 写真下左は日本のハコベの親戚で、花の雰囲気は似ているが、ハコベよりも少し花も背丈も大きい。

 写真下右の、私の目にはありふれたアブラナ科の植物に見える花は、遺伝学の研究で、元々は200万年前にトルコあたりで発生して、それが東アフリカと欧州に広がったことがわかっています。200万年前といえば、今の人類がヒト属(Homo)になった頃で、お互いに長い旅をしている。

 

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写真上 Stellaria neglecta         写真上 Arabis alpina

 

 写真下左はたった1本、崖の縁に咲くスイセンで、正面からの姿がわからないので、判定は難しいが、427日にメツォヴォのカタラ山に行く途中で見たスイセンに後ろ姿がそっくりだということにして、独断で名前を決めました。

 写真下中は、旅行前に旅行会社から渡された「期待できる花々」の一覧表にありました。主に南欧に分布します。

 写真下右はセイヨウカノコソウという和名もある欧州原産の植物で、不眠症や精神不安への薬効があるとして、中世の修道院の薬草園で栽培されていたそうです。

 

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写真上 Narcissus poeticus  写真上 Hesperis laciniata   写真上 Valeriana officinalis

 

 写真下で、せっかくトカゲを見つけたのに、身体の模様が地味で、名前がわかりません。ネット検索ではバルカンミドリトカゲ(Balkan green lizardLacerta trilineata)を候補に挙げましたが、いくら拡大しても緑には見えない。

 

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 オリバーさんは若いから、崖の上に登り花を撮っています(写真下左)。私も老人を代表して真似したいが、気持ちだけにしておきます。

 

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モノデンドリ

 ヴィコス渓谷に面した修道院があって、その近くで花を探します(地図下)

 

 

 修道院の手前にあるモノデンドリ(Monodendri)という街に車を停めて修道院まで歩きます。

 

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 モノデンドリにはたくさんの観光客がいて、修道院の観光やハイキングの拠点になっています(写真下)

 

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 今年、NHKがヴィコス渓谷のあるこのザゴリ地方の番組を放送しました(写真下)

 

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「山の向こうへ ギリシャ・ザゴリ地方」(NHK20250121日放送)

 

 アナウンサーが地元出身のガイドと一緒にヴィコス渓谷の南側から渓流に沿って北上し、パピゴ近くを経由する57kmのハイキングで、初日の宿泊地がこのモノデンドリでした。番組で貴重なのは、屋根に乗せた石を修理する職人や羊飼いで、後者は自分がこの地方の最後の羊飼いだろう言っていました。

 

修道院までの道端の花

 街を通過して、修道院までの道も平坦で幅の広い石畳です(写真下)。どうして石畳は三重構造なのでしょう?この先にあるのは修道院だけですから、街と修道院を結ぶためだけに作られた道です。実用ではなく、見た目を重視した観光用の石畳?

 

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 道の両側にもたくさんの花が咲いていて、写真下など、石畳の道と石でできた家がよく合っています。

 

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 写真下は日本でも昔はよく見かけたヒナギクで、今回の旅行ではあちこちで見かけました。

 

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写真上 Bellis perennis

 

 写真下のフウロソウも道端の花としてはたいへん良くみかけます。ヒナギクもフウロソウも、春先らしい、かわいい花です。

 

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写真上 Geranium pyrenaicum

 

 写真下の黄色い花は、道が広くなっている所に生えていました。駐車場だったのか、かなり年月が経って、今では土が上を覆い、草花の花壇になって、後ろの石造りの建物や石垣と良い雰囲気です。花は地味だと思ったら、後日、私が見ていたのは開花前で、開くと地味な花ではないとわかり、花に謝りました。

 

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写真上下 Asphodeline lutea

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 写真下左の樹木の花は、生成AIの推測によれば、和名はスミミザクラで、欧州からイランまで生えていて、観賞用ではなく、実であるサクランボを料理に使い、またギリシャでは楽器を造る木材として利用するそうです。

 

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写真上 Prunus mahaleb

 

 写真下のオルニソガラムは2日前のアオース湖でも見た花で、イタリアからバルカン半島、トルコ、さらにイスラエルなどの雑木林などに生えています。

 

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写真上 Ornithogalum  montanum

 

 写真下のフマリアはここが原産地で、海外では仲間を時々見かけます。日本にもフマリアの仲間が帰化していてカラクサケマン(Fumaria officinalis)と呼ばれています。チリで海岸近くにフマリアの仲間がまとまって咲いていて、とてもきれいでした。

 

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写真上 Fumaria gaillardotii

 

 写真下の花は外見が印象深いのと、トラゴポゴン(Tragopogon)という、私には発音できないし、覚えられないが、おもしろい学名なので記憶に残ります。日本でもトラゴポゴンは、種の姿からジャイアント・タンポポなどと呼ばれ、帰化しています。

 

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写真上 Tragopogon porrifolius

 

 写真下左と中は開花しようとしているアザミで、右は開花前のツボミと思われます。欧州から中央アジアが原産で、北米やオーストラリアなどでは侵略的な外来種として嫌われています。

 

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写真上 Carduus nutans

 

 写真下のムスカリは名前がわかりません。花の高さは3050cmくらいあって、ムスカリにしては大柄で、葉は生い茂っています。

 

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 写真下もたぶん写真上と同じムスカリで、これから写真上のように花が開いていくのでしょう。

 

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修道院

 道が狭くなり、行き止まりの先に修道院の門があります(写真下左)。正式な名称は聖パラスケヴィ修道院(Holy Monastery of Saint Paraskevi)で、1414年に建てられ、ザゴリ地方では最古の修道院です。中庭では聖者のイコンなど土産物が売られていますから、観光修道院です。

 

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 修道院といっても、管理人がいるだけのようで、生活の様子を示すのが、通路に積まれた薪です(写真下左)。モノデンドリから修道院まで広い道路があるのだから、ガスや石油を運ぶのは簡単なのに、あえて薪を使っているのがすごい。

 

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 薪が地球温暖化に貢献しない方法と知っていても、私の裏山の杉林は間伐など行われず、松林はマツクイムシの食堂で、山道は雑木の中に消えて、最近は熊や猪が恐いので山に登る人も減り、ますます荒れています。

 

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 修道院の近くの斜面は雑草が生い茂り、その中にジャーマンアイリスがあります(写真下左)。ジャーマンアイリスは1800年代初めに品種改良された園芸品ですから、昔植えたのが残ったのでしょう。昨日、昼食で立ち寄った教会の敷地にもジャーマンアイリスがありました(写真下右)。私の畑では、雑草の中でも陽さえ当たれば花を咲かせる頑健な植物です。

 

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 修道院の敷地は狭く、建物の東側にある展望台で行き止まりです(写真下)

 

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 展望台からヴィコス渓谷は目の前で、ここで標高1100mです。このあたりは渓谷の南側で、写真下の右側あたりから、渓谷の険しさがなくなります。

 

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 帽子をとって、修道院の中に入ってみましょう。建物の最初の部屋入ると、私の後に若い一団が来て、ローソクを灯し始めました(写真下)。ギリシャの若者たちは信仰心があるのだとわかり、物見遊山の私は彼らの邪魔をしないように気を遣う。

 

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 背の低いドアを通って奥の部屋に入ると、祭壇があり、目を引くのが、四方の壁に描かれたフレスコ画です(写真下)

 

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 壁画は全体に傷みが目立ちます。皆さんは壁画を見ているが、私が気になったのは、天井近くの壁が白く塗ってあることです。壁画が落剝したので、漆喰や石膏で白く塗った??まるで縄文土器の復元に、破片が見つからない部分を石膏で補ったみたいです。縄文土器は修復部分をはっきりさせるためにもあれで正しいが、この壁画は信仰対象の一部ですから、ひどくチグハグな印象を受けます。

 

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 ここの修道士は周囲の観光客など気にもせず、毛づくろいに専念する(写真下)。同じ猫かと思ったら、尻尾の模様が違うから、別な猫です。

 

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崖っぷち

 私たちは花を探して、修道院の北にある山道を渓谷の崖に沿って歩きます。

 

 

 山道は渓谷の崖を削って作られ、平らで上り下りは少ないので歩くのは楽です。しかし、写真下のように、断崖絶壁の道で、柵もありませんから、踏み外したら、軽く百メートルは転落して、そのままあの世に行けます。私は崖の下をのぞきながら、昔の歌を口ずさむ。

 まっさかさまに堕ちてdesire ♪(DESIRE ー情熱ー』作詞:阿木燿子、作曲:鈴木キサブロー、唄:中森明菜、1988)

 

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 崖の下は見ないようにして、花を探しましょう。写真下左は道の両側に群落していて、フウロソウ(ゲラニュウム)の仲間にしては、はっきりしたピンク色です。

 写真下右は、なんとも奇妙な形の花で、これでシソの仲間だという。西洋では昔から観賞用に栽培されています。

 

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写真上 Geranium macrorrhizum      写真上 Phlomis fruticose

 

 今日、カヌー乗場の近くで見たユキノシタの仲間がここにも生えています(写真下)。あそこでは崖の上で撮りにくかったが、ここは目の前にたくさんあります。遠目には白い花だが、良く見ると花弁に赤い点々が付いていて、なかなか可愛い。

 

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写真上下 Saxifraga rotundifolia

 

 マメ科の植物が目につきます。写真下左はどう見てもシロツメクサ(Trifolium repens)で、お客さんは誰も撮りません。写真下右もたくさん咲いているのに、白いので皆さんの興味をひきません。

 

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写真上 Trifolium nigrescens         写真上 Vicia lutea

 

 写真下左のオレンジ色のきれいなマメの仲間は、欧州や北アフリカなどが原産で、豆には毒性があることが古くから知られ、食べた人たちが様々な病気を患った記録があるようですから、見た目と違い、けっこう恐い。写真下右は欧州では牧草に用いられ、日本にも帰化しているそうです。

 

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写真上 Lathyrus cicera          写真上 Vicia sativa

 

 写真下左は昨日も見たナヨクサフジで、欧州が原産地です。日本古来のクサフジはかなり駆逐され、良く見かけるのはコイツです。写真下右は昨日も午前中に山の斜面に生えているのを見たマメの仲間です。

 

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写真上 Vicia villosa           写真上 Hippocrepis emerus

 

 なんだ、この花は?帽子をかぶったような姿からすると、これもマメ科の花です(写真下)。ソラマメの仲間だと言われても、私はソラマメの花は見たことがない。先の黒い部分がこれから開くのでしょう。

 

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写真上 Vicia galilaea

 

 写真下はたった1本見つけたオレンジ色のケシです。花も終わりで、弱々しい。ギリシャに到着した日はあんなにたくさん見かけたのに、メツォヴォもパピゴでも少ししか見かけません。修道院のあたりで標高1000mですから、高地には合わないのでしょう。

 

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写真上 Papaver apulum

 

 道はしだいに細くなり、やがて行き止まりになりました(写真下)。私は皆さんが引き返した後も、さらに道があるのではないかと探しました。行き止まりから先に行こうとする人が必ずいるもので、ヤブの中にそれらしい跡を見つけましたが、急斜面で、私の運動神経が「やめておけ」というので引き返しました。

 

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渓谷の南にある石橋

 ハイキングですっかりお腹が空きました。モノデンドリから南下して、道路脇にある、眺めの良い東屋で昼食です(写真下、13:55)。モノデンドリからはヴィコス渓谷をはさんで反対側です。

 

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 食後、近くのココリス橋とプラキダス橋という石橋を二カ所見学します。

 

 

 一つ目のココリス橋(Kokkoris Bridge)は、1750年頃に近くの村の篤志家によって造られ、その後、再建や修復が加えられ、現在も観光用に使われています(写真下)

 

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 橋は、写真下左のような切り立った岩山の間にわざわざ造ってあります。写真下右はすぐそばに作られた現在の橋で、こちらのほうが両岸ともに岩山はありませんから、場所的に作りやすかったはずです。

 

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 岩山を利用することで長さを短く、また高くするために石を積む必要がないからでしょう。その結果、橋の終わりを岩山が邪魔しているので、橋に接続する北側の道はほぼ直角に交わり、荷馬車などには不便だったはずです(写真下)。掲示板の説明には19101911年に急勾配を修復したとありますから、これでも歩きやすくなったらしい。

 

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 写真下は掲示板に載っていた1911年に撮られた写真で、荷物の運搬用か、河原に馬かロバがいます。

 

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 不思議なことに川に水がない(写真下)。ここはヴィコス渓谷の上流の一つですから、水源なのに水がない。橋の高さ(11.6m)からいって、冬の雨期にはそれなりの量の水が流れるはずです。後でさらに上流に行くと、水がありました。どうなっているのだ??

 

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 このあたりでヴィコス渓谷が終わるので、修道院あたりよりも渓谷の険しさもなくなります(写真下)

 

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 道の脇は崖で、花が少し咲いています(写真下)。しかし、名前はわかりません。写真の下段はたぶん日本にも来ているシラタマソウです。

 

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 写真下はこれまでも見たマメ科の花だろうと決めつけたのが間違いで、後で調べたら、花弁が6枚で、初めて見る花でした。

 

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プラキダス橋

 さらに上流にあるプラキダス(Plakidas)橋を見に行きました(15:09)3連のアーチです。1814年に木造の橋が作られ、その後この石橋が作られ、1866年には修復が行われたとありますから、少なくとも150年以上もたっています。地図を見ると、この近くにはこういう石橋がいくつも保存されているらしい。

 

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 えっ!?水が流れている(写真下)。下流のココリス橋では水がないのに、上流のプラキダス橋には水がある。いったい、どこで水が消えたのでしょう?地図を見ると両者はわずか2kmくらいしか離れていないから、途中で水が蒸発したはずはありません。

 

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 写真下左の、橋の端にある石柱は何のためにあるのでしょう?転落防止の欄干にしては間が開きすぎて役立っていません。写真下右の、先ほど見たココリス橋は隙間なく石が並んでいます。他の石橋を見ると、写真下左が一般的で、右が少数だから、右は観光用に追加工事したのではないか。

 

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債務の対GDP比は237%の借金大国

 橋の手前で、うずくまり、頭を抱える人がいます(写真下)。ギリシャは2009年に財政破綻しましたから、気持ちもわかる。債務残高の対GDP比は165%(2023)という驚異的な借金ですから、気持ちも暗くなるでしょう。

 

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 でも、ギリシャ人の皆さん、日本を見てごらんなさい。債務残高の対GDP比は237%(2024)というダントツの世界一で、破綻したギリシャをはるかに上回る借金大国だが、日本人は、国債という借金をもっと増やして財政出動しろという主張する政党が議席を増やしています。この巨額の借金を作ったアベノミクスを批判する学者はほとんどいないどころ、それを継承し、積極財政と称して借金をするという高市氏が首相になった。借金漬けのところにもっと借金をする??!!

 ギリシャ人も頭なんか抱え込まないで、日本人のように借金麻薬漬けで脳天気になって、楽しくすごしましょう。

 

チューリップ

 四時もすぎているから、このまま引き返すのかと思ったら、案内されたのは、斜面に咲く黄色いチューリップです(写真下、16:07)

 

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写真上下 Tulipa sylvestris

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 普通は花弁が6枚なのに、写真下左は8枚あります。

 

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 427日にメツォヴォの北にあるアオース湖近くで、たくさんのバイモが生えていた中に、たった1本、まだ花が開いていないチューリップがありました。姿形と色からして、たぶん同じ種類でしょう。

 

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 大半が写真下左のように花弁は黄色なのに、中(=右)のように、花弁の裏が茶色のも見られます。

 

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 日本で市販されているチューリップとはだいぶん印象が違い、首を曲げ、横向きに咲いている姿はスイセンみたいです。

 

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 四時すぎなので、陽射しが斜めになって、斜面の地面には陽が当たらず、チューリップだけに当たって浮かび上がっているのを、私は思わずボーッと見ていました・・・いかん、他の人の撮影の邪魔だ。

 

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 さらにもう一カ所立ち寄ります(16:51)。道路から入った林の中にちょっとした空き地があり、 少しだけランが咲いています(写真下)。ほぼ毎日のように登場する、両側の花弁()に筋のあるランです。

 

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写真上 Anacamptis morio

 

 ピンク色のアネモネも少し咲いています(写真下)。花弁が完璧なのが少なく、虫に食われたような跡があります。これまでも数回見かけたアネモネです。市販のアネモネはがっしりした体型の花なのに、ギリシャのは細く、やっと花を咲かせたような、か弱い雰囲気です。

 

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写真上下 Anemone pavonina

 

 写真下左のムラサキの青とアネモネのピンクとが似合うので、皆さんがいなくなってからも、しばらく私は見とれていました。

 

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写真上 Lithospermum purpurocaeruleum

 

ミクロ・パピゴ

 七曲りを登り、パピゴに近づいたので、他のお客さんはこれで今日の観光も終わりかと思ったでしょうが、車はパピゴを通過して、谷をはさんで東側にあるミクロ・パピゴに到着しました(写真下、17:26)

 

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 私がミクロ・パピゴとロックプールに寄れないかとお願いしました。

 

 

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 ミクロ・パピゴの村の中には普通の車は入れず、教会の前が駐車場になっていて、ここからは歩きます(写真下)。広場と教会が村の中心で、必ず巨木が生えています。

 

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 私は礼儀正しく、村の主に挨拶をします(写真下左)。写真下右は観光客の子供たちのようです。今回、村の子供たちをほとんど見かけませんでした。

 

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 この村は坂がきついので、バギーカーが正解だとロバ君たちも言っています(写真下)

 

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 村の中には観光客用にホテルなどの案内板も設置されています(写真下)。名前どおりの小さな村で、迷ってもたいしたことはないが、坂がきついので少しでも迷いたくはない。

 

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 パピゴと同様に、建物は石の壁に石の屋根で統一感があって、美しい風景が広がっています(写真下)

 

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 村の中は道路脇だけでなく、壁も屋根の上も花が咲いています(写真下)

 

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ロックプール

 ミクロ・パピゴから引き返す途中で立ち寄ったのがロックプール(rock pool)という谷川です。ガードナーさんもここに来るのは初めてだそうです。看板の説明によれば、1960年代に、ここで水泳ができるように手を加えたとありますから、写真下の池などは人工的なものでしょう。

 

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 午前中の「石の森」でも見かけた層状の石灰岩を、谷川(Rogkovo)が削り出した景色です(写真上下)。私がここに立ち寄ってほしいと頼んだのは、谷川は水が豊富だから、特別な植物があるのではないかと期待したからです。ただ、急ぎ足で少し上流まで歩いた範囲では、花の成果はなしで、ちょっとガッカリしました。

 

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同じ店で夕飯

 七時から昨日と同じレストランで夕飯です。途中にある土産屋に立ち寄りました(写真下)。店は広く、ギリシャ中から集められたような様々な手作りの小物が並べられていておもしろいのだが、残念ながら、私の好みと合わない。

 

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 7:30にレストランに到着しても、ご覧のように、まだ明るい(写真下)

 

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 お客さんが注文したビールのラベルは羊と羊飼いが描かれ、たぶん地ビールでしょう(写真下)

 

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 食事を終えて(20:55、写真下左)、のんびりとホテルまで歩いて戻ると、まだ東側の岩山がはっきりと見えるほどの明るさがあります(写真下右)。連泊は楽です。

 

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