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ギリシャ北部 ピンドス山脈の花 7日目 2025年5月1日(木) パピゴ → オルマ 朝、部屋からでは天気がわからないのでベランダに出ると、曇っています。しかし、パピゴ猫は晴れるといいます(写真下右)。
今日はピンドス山脈のパピゴを発ち、ヴォラス山脈の麓にあるオルマ(Orma)までの270kmの間で花を観察します。オルマは北マケドニアとの国境近くの村です、と書きながら、私は北マケドニアについては何も知りません。良し悪しはともかく、日本人は普段、国境を意識することはまずないのは、平和だからでしょう。
いつもの食堂で、いつもの中国製南部鉄瓶からお茶を飲んで朝食(7:30)。鉄製の瓶に紅茶を入れると、鉄分とタンニンが結合するから、渋さを減らしてくれるのだろうか。
ホテルの裏山の花 事情があって、出発の予定が1時間遅れの10:00になりました。2時間ほど時間が空いたので、私はホテルの裏山で花を探すことにしました。ここは村の外れで、下の衛星写真のように、北に向かって、小型車なら通れるような山道が続いています。
早速見つけたのが、これまでも見たランで、写真下は茶色の唇弁を持つオフィリスの仲間です。
写真上 Ophrys
sphegodes 唇弁が茶色ではない花もあり、しかも写真下右のように、1本に茶色とそうでないのが同時に咲いています。今から茶色になる雰囲気でもないし、絵具が足りなくなったか、それとも手抜き?Wikipediaにも同じような写真がありますから、このランとしては珍しくないようです。
写真下の二種類のランも前にお目にかかっています。ちょっと裏山に行っただけで、これだけのランが見られるのはすごい。
写真上 Anacamptis
morio
写真上下 Orchis quadripunctata 写真下の特徴ある花はサンザシの仲間のようです。日本のサンザシは江戸時代に中国から持ち込まれたというから、意外に古い。
写真上 Crataegus
heldreichii 写真下はムラサキ科のLithospermumの仲間だろうが、花の真ん中が赤いという大きな特徴があるのに、生成AIに何度か名前を質問しても、納得できる回答がありませんでした。
これまで見た花がかなりあります。わざわざ車で出かけなくても、ホテルのすぐそばに生えていた。また、ここで初めて見た花もあります。二日前、期待していたロックプールで何もなかったので、このあたりはあまり花がないのだろうと決めつけてしまいました。
写真上 Lamium
garganicum 写真上 Sonchus
asper
写真上 Helianthemum
nummularium 写真上 Thymus
serpyllum 道の両側は所々、樹木が切り倒され、空き地ができて陽当たりが良いから、背の低い草花にはちょうど良い環境なのでしょう。
写真上 Hippocrepis
emerus 写真上 Cruciata
laevipes
写真上 Anthyllis
vulneraria 写真上 Trifolium
diffusum 1時間ほど山道を歩いて花を探しましたので、戻って、残った時間で村の中の花を探してみることしました。パピゴは東側に大きな岩山があって、早朝の散歩では陽が当たらないので、陽が上がっている時間帯に歩いたことがなかったからです。
写真上 Arabis
alpina 写真上 Tordylium apulum
写真上 Silene
latifolia 写真上 Fumaria gaillardotii 村の道端や石垣の上、空き地に色々な花が咲いています。
写真上 Euphorbia
myrsinites 写真上 Ranunculus
acris
写真下のシソは、花は小さいのに、とても印象的な紫色をしています。地中海もやや東側に分布します。
写真上 Ajuga orientalis
日本でも道端で見かけるクサノオウの仲間です(写真下)。日本のクサノオウよりも少し小型で、今回の旅行ではここでしか見かけませんでした。
写真上 Chelidonium
majus
写真下の小さなフウロソウは人家や山道など、どこにでも生える道端の雑草で、にぎやかに群落してきれいです。日本にも帰化して、道端で勝手にお花畑を作ってくれないだろうか。
写真上 Geranium
pyrenaicum
パピゴを発つ 予定どおり、荷物を車に積み込み、ホテルを出発(10:12)。この村もホテルもとても良かった。昨日も書いたように、遺跡も観光地もなく、ただの村にすぎないメツォヴォとパピゴはお勧めです。
通いなれた七曲りを下りて、アリステの街を、昨日と同じように右に曲がり、北上します。
大きな川(Vjosa)に出ました(写真下)。昨日、アルバニアとの国境で見たのと川の支流の一つで、このあたりで国境から10kmくらいです。
写真下左のコニッツァの街から再び山道に入ります。
道沿いの花 山の中に入って、最初の花の観察です(11:07)。
写真上 Hypericum
olympicum 写真下左は4月28日にメツォヴォからパピゴに移動する時も見たハンニチバナ科の花で、地中海に面した地域に広く見られます。写真下右は、今日の朝、ホテルの裏山で見たマメ科の花で、ここは赤だけだが、黄色もあります。
写真上 Cistus creticus 写真上 Anthyllis
vulneraria 写真下左はいつもの地味トカゲです。3回目なので、思い切って素人判断の名前を付けます。
写真上 Ophisops
elegans 道はSarantapors川が作った谷に沿って上っていきます(写真下左)。この川は、先ほど見かけた大きな川(Vjosa)とは別で、昨日、国境近くの展望台から見た川の上流です。
2カ所目の花の観察です(11:46)。このあたりは岩が黒く、ガレキになって崩れやすいのでしょう。そこにたくましく、タツナミソウの仲間が群落を作っています(写真下)。高山の寒冷地にも生えるというから、丈夫らしい。
写真上 Scutellaria
orientalis 写真下も黄色い花なので、上と同じかと思ったが、ちょっと生え方が違うので良く見ると、29日にヴィコス渓谷近くの岩の森で見かけたアブラナ科の花です。
写真上 Alyssum
saxatilis さらに、写真下は上と同じかと思ったら、トウダイグサ(Euphorbia)ですから、これも別種です。
写真上 Euphorbia
seguieriana 写真下も黄色い花で、開花しているのか、これから写真上のように咲くのか、わかりません。こんなふうに、ここは同じような黄色でまとまって咲く花が何種類かあります。
道端には祠があり、いつものように私は「失礼します」と挨拶しながら、中を撮る(写真下右)。ペットボトルは供養のつもりなのか、半分しか入っていないなど、まるで飲みかけを捨てたゴミ捨て場みたいで、片付けたい衝動にかられますが、ギリシャではこれが正しい姿かもしれないので、衝動だけにしておきます。
崖から水が染み出ている所にムシトリスミレが生えています(写真下)。4月27日のアオース湖の近くで見た時も、水が染み出ている土手に生えていました。
写真上下 Pinguicula
crystallina
花はきれいに咲いているのに、葉が赤茶けてイマイチの被写体です。ムシトリスミレだから、栄養源は虫で、光合成は補助的なのでしょう。アオース湖のも葉が黄緑色で、いかにも光合成はやる気がない雰囲気だったが、ここのはもっとやる気がない。 おまけに写真下右のように、ここは黒い蛇紋岩らしく、写真を撮るのにはありがたくない。
東屋で昼食 山間部を通過すると、所々に街があって、写真下はEptachoriという小さな街です(12:32)。
山をいくつかこえて、東屋のある所で昼食です(12:56、写真下左)。山の斜面から見える集落は屋根や壁の色が統一されていて、とてもきれいな風景です(写真下右)。最近、日本の新築の外壁に黒色が増えていることに驚きます。断熱材を入れても、夏は外壁を暖房したようなもので、非効率だし、何よりも、街の風景に合わない。
食後の花の観察は、開けた山の斜面に生えるランです(13:45、写真下)。
毎度見かける妖精が躍っているピンク色のランがあり、私はネギの花を連想します(写真下)。
写真上 Neotinea
tridentate こちらも赤い手袋と靴下をはいて踊る妖精のランです(写真下)。
写真上 Orchis
militaris 樹木のない斜面では、写真下のようなピンク色のランがたくさんあります。最初に見たのはメツォヴォからパピゴに移動した4月28日でした。ここは数も多い。
写真上 Qphrys
scolopax 写真下のように花を拡大してみると、いよいよ訳がわからん。花弁、ガク、シベが変化したものなのか、左右に両手を広げたような突起物と、背後のピンク色の2本の突起物は花弁?ガク?虫を呼び寄せ、受粉の手伝いをさせるためにどんな役割をしているのでしょう?
横から見ると、茶色の唇弁の下というか、先には踏み台のようなものが付いています。虫が来て、どのような行動をして、これらの突起物が役立つのか、ぜひ見てみたい。
写真下は花が完全に開く前で、白い頭巾をかぶったようなおもしろい姿をしています。
昨日までのオリフィスの多くは後ろの花弁やガクが緑色でした。ここでも1本だけありました(写真下)。緑色が少数派なのは、ピンク色のほうが虫から見ても目立つからでしょう。
写真上 Ophrys
sphegodes 近くで蜂蜜を採取しています(写真下)。譲ってくれないか、添乗員の山野さん(仮名)が頼んでみたが、この場では容器もないので、近くにある村で売っていると教えてくれました。ここで買えたら、証拠写真付、正真正銘、本物の100%純粋ギリシャ蜂蜜でしたから、ちょっと残念です。
ランもきれいだが、林の中にポツンと咲いているアネモネもなかなかです(写真下)。今回の旅行ではこれも毎日のように、ほんのわずか見かけます。ギリシャのアネモネは控えめな印象です。
写真上 Anemone
pavonina アヤメと初対面 先ほどまでの山道と違い、広い畑と街のある平野部に下りて来ました(写真下)。
私たちが進む北の方向に雪山が見えます(写真下左)。たぶん私たちが明日行く予定のカイマクツァラン山(Kaimakchalan)のあるヴォラス山脈(Voras Mountains)でしょう。
道路脇の斜面に黄色と紫のアヤメを見つけて停車(15:16、写真下)。黄色も紫も同じ種類で、今回の旅行では初対面です。高さはせいぜい30cmで、海外のアヤメの仲間は総じて小柄です。このあたりのギリシャ北部を南限としてバルカン半島に分布します。
写真上下 Iris
reichenbachii
紫もすぐそばに咲いています(写真下)。このIris
reichenbachiiと学名が非常によく似たIris reichenbachianaというアヤメもあって紛らわしい。後者はギリシャには分布しません。
写真上 Iris
reichenbachii
斜面で目につくのはマメ科の花で、普通はもっと色が薄いのに、ここのは真っ赤です。
写真上 Astragalus
monspessulanus ここにも道端に祠があるので、毎度私は「失礼いたします」と挨拶して写真を撮る(写真下)。ここはペットボトルこそないが、拝む対象なら、もう少しきれいに片づけられないのかと、私は自分の部屋の有様を忘れて、ため息をつく。
ガソリンスタンドでトイレ休憩です(16:46、写真下)。ここから見える住宅地も、緑に囲まれた建物の屋根と外壁の色が統一されていて、とてもきれいです。
開花の勘違い 花を探しに岩山を登ります(写真下)。森の中から石灰岩の岩が付き出ていて、そこだけ樹木がないので陽が当たり、草花が生えています。
ガードナーさんが見せたかったのは写真下の花らしいが、残念ながら花はたった1個しか咲いていません。この花は欧州では南欧だけですから、ギリシャでも珍しいのかもしれない。 最初、写真下右の開花前のツボミを見て、これを開花だと勘違いして、地味な花だと思いました。それと同じ勘違いをしたのが、次の花です。
写真上 Dictamnus
albus 写真下は4月29日のヴィコス渓谷の修道院の近くで群生していた花と同じで、今回見て驚きました。写真下右が修道院の花で、先だけ開いているツボミを、これが開花だと勘違いしました。開花前と後ではえらい違いで、地味な花だと思ったことを「失礼した」と謝りました。
写真上 Asphodeline
lutea 添乗員の山野さん(仮名)が呼んでいるので行ってみると、樹木の下にシャクヤクが群落していました(写真下)。今回の旅行では二度目の登場で、何度見てもすごい。
写真上下 Paeonia
peregrina たぶん、ガードナーさんはこのシャクヤクを見せるために連れてきたのではないと思うが、なにせこの強烈な赤ですから、日陰でも目の奥にグイグイと入り込んできます。
山野さんがまた呼んでいます。別な花かと行ってみると、30cmくらいはある亀君が岩の下にじっとして隠れています。私も写真だけ撮り、亀君には気が付かなかったふりをして静かに去る。
写真上 Testudo
hermanni 遠くから見ると、写真下の二つは黄色で似ていますが、写真下左は日本のナズナに似たイワナズナの仲間、写真下右はキンポウゲの仲間で、日本でいえばウマノアシガタで、今日の朝、パピゴでも見ました。
写真上 Aurinia
saxatilis 写真上 Ranunculus
acris 写真下はいずれも4月29日のヴィコス渓谷で見た花で、岩場が好きらしい。
写真上 Aubrieta
deltoidea 写真上 Ornithogalum montanum 岩の上に初めて見るモウズイカがあります(写真下)。近寄れない。昨日見た2種類のモウズイカよりも、欧州から日本に帰化したビロウドモウズイカ(Verbascum thapsus)に似て、立派な葉と背丈を誇っています。ビロウドという名前のように、表面が白い毛でおおわれています。残念ながら、花はこれからで、たぶんVerbascum
reiseriではないか。花が咲いたらさぞや見事か、いいえ、ほとんどこのままです。
写真下左と中は前にもあった、頭に赤い兜をかぶった妖精のランです。写真下右も4月29日に見たヤグルマギクの仲間です。
写真上 Neotinea
ustulata 写真上 Centaurea
montana 写真下は今回の旅行では初めて見るウスベニアオイで、日本では普通にみられるので「こんな所にも来ていたのか」と言いそうになるが、欧州が原産です。写真下左の一番上の花と、写真右の花は拡大して比較すると形ばかりか、花弁の筋までそっくりですが、真ん中の写真のように、隣同士の別な花です。花の後ろに小さなツボミが見えているのまで似ている。 写真上 Malva
sylvestris 花の観察を終えて、陽が傾く中、目的地に急ぎます。
オルマ到着 オルマ(Orma)の南側の斜面にあるホテル(Hotel Naiades)に到着(18:23)。部屋数が11室というこじんまりとした四つ星ホテルで、私たち一行は11人ですから、ほぼ満室です。
入口を入ると、ロビーと食堂を兼ねたホールがあり、広くて眺めがよい(写真下)。
小学生くらいの子供がいて、暇そうです(写真下)。泊り客の子供ではなく、写真下右で受付をしてくれたホテルの経営者の子供らしい。
ホテルは山の斜面にあるので、ベランダからは街が一望できます(写真下)。せっかく、街全体の屋根が赤で統一されているのに、手前の建物の屋根が赤く塗っていないのは法律違反だと私は怒るが、そんな法律はありません。
夕飯を食べに街の中心部に歩いて行きます(写真下、19:19)。山脈の麓なので街の標高は300mほどです。
夕方のオルマでは猫が歩き、犬はだらしなく眠り、鶏は餌を探している(写真下)。
ここは山脈の麓にできた街ですから水が豊富で、写真下はたぶん飲める水でしょう。
樹木に囲まれた広場が街の中心部で、土産物屋やレストランがあって、大勢の客でにぎわっています(写真下)。
屋外のテーブルの隣には普通に猫がいて「ボクの夕飯は?」と待っている(写真下左)。「ねえ、まだあ?」(写真下右)。
私たちの席は屋内で、この時間でも屋内は客が少ない(写真下)。店の名前はギリシャ語で書かれ、ディオニソス(Dionisos)と読むらしい。
飲み物のラベルがおもしろいので、写真を撮らせてもらいました(写真下)。
パピゴでも食べたキノコ料理がまた出てきて、なかなかおいしい(写真下)。
食事が終わって外に出ると、すっかり暗くなっていて、ホテルまでゆっくり歩いて戻ります(写真下、21:31)。
写真下が私の部屋204号室です。広さや設備に問題はありませんから、5段階評価の4.0で満足とします。
バスローブまであるのは珍しい(写真下右)。
ベランダからは街の中心街も良く見えます(写真下左)。やはり手前の錆びた屋根が目障りです(写真下右)。ここに一泊します。
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