トップページ 日程表 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 雪ふるキルギスに初夏の花 9日目 2019年6月17日(月) ビシュケク → モスクワ → (成田) 朝、五時すぎに起きると、晴れています。室温は25℃で快適です。私の部屋は北側の端なので、庭と道路の様子が見えます(写真下)。 今日は、午前中はバザールでの買い物やアラ・トー広場での観光をして、午後はキルギスを発ち、モスクワ経由で帰国の途につきます。 七時からホテルの食堂で朝食です。初日と同じ恰幅の良いオバさんが準備してくれました。 ゲストハウスの中を見ると、なかなかおしゃれにできていて、朝日の差し込んでいる階段はきれいです(写真下)。 私の部屋からも見える北側の庭園も良く整備されていて、ここは小奇麗なホテルです。 出発は9時とゆっくりなので、周囲を散歩してみましょう。ここは首都なので車は少なくはないが、日本なら地方都市のような雰囲気です。馬に乗った人はいない(笑)。 幹線道路の両側に店はあるが、朝早いことを除いても、繁華街という雰囲気ではありません。 昨日も売っていた飲み物です。たまたまなのか、黄色いタンクはなく、三種類の容器のほうだけ売っています(写真下)。 後でアイピリさんに聞くと、うまくはないから、お勧めではないとのことでした。試して、その味を皆さんに報告したいみたい気持ちは山々だが、私の胃腸は軟弱で、旅行の終わりにお腹を壊したくないので、味はご紹介できません。 赤色はマクシム(Максым)といい、大豆、トウモロコシ、小麦、キビなどを混ぜて発酵させたキルギスの代表的な飲み物のようで、ネット上で見ると、薄茶色で牛乳のような臭いがするとあります。子供から老人まで飲めて、身体良いらしい。 青色(чАлАл)は、ヨーグルトにオオムギ、トウモロコシ、小麦が少しはいっており、味はほぼ酸味の強いヨーグルトだとあります。写真下中の表示を見ると、ヨーグルトに赤色のマクシムを加えたヨーグルト・ドリンクでしょう。 茶色は昨日もタンク売りで見たクワス(Квас)で、ライ麦と麦芽を発酵させた1~2.5%のアルコール飲料というから、日本ならビール扱いです。クワスを種にするとライ麦パンができるという。ロシアや旧ソ連圏では一般的な飲み物です。黄色いタンクで単品で売られているくらいだから、これが一番人気なはずなのに、写真上の三つの容器の中ではクワスが一番小さい。 クワス以外で私の目を引いたのは、通りに面して、周囲の雰囲気とまったく合わない廃屋のような建物とその足元に咲いていた花です(写真下)。こんな小さな建物なのに、どうしてドアが二つもあるのだろう?「Подработка(アルバイト)」と書かれた小さな求人広告がドアに三枚貼られています。たぶん住宅ではなく、しかも、しばらく誰も出入りしていないようです。 ビシュケク市内の様子 九時にホテルを出て、まず市内にある市場に行きます。 市内の交通機関は日本ではほぼ見かけないトロリー・バスです(写真下)。電気で排気ガスが出ないので、環境保全には適しています。 写真上の四台は同じタイプでまだ新しい車両で、写真下はそれぞれ別な型です。 写真下は型が古い。同じ「6」という番号だから路線も同じで、形もそっくりなのに、色が違う。赤と緑のペイントの塗り方も微妙に違います。ちょっとレトロで良い雰囲気ですね。 写真下はトロリーではなく一般的なバスで、写真下左の頭に何か乗せたような形は、たぶんガスボンベで、日本のタクシーのようにガスを燃焼させているか、最新型のバスなら燃料電池用の水素ガスかもしれません もう一つの市民の足が写真下の、海外では良くみかけるベンツ製の小型バスのマルシュルートカです。手をあげるとどこでも停まってくれます。しばしば、私のたちの車をマルシュルートカと間違えて手をあげる人たちがいました。 日本は運転手不足で路線バスが縮小・廃止されているという。だが、こういう小型バスなら、普通免許でも運転できるから、人手不足の心配もなく、また普通車を使っているのだから、改造費もいらない。こんなわかりきったことが日本でできないのは、もちろん規制と、既得権を離さない人たちがいて、思い切った改革ができないからです。 オシュ・バザール オシュ・バザール(Osh Bazaar)の南側の入口に到着(9:22)。庶民の台所を見るのは楽しい。 写真下の道路に囲まれた台形部分がほぼバザールです・・・正確にはちょっと違う(笑)。 食べ物は言うまでもなく、衣類、DVD、日常雑貨品まで、なんどもそろいます。 写真下左はキルギスの男性が良くかぶっている帽子です。植物ガイドの竹野さん(仮名)がこの帽子がほしいと言っていたので、キルギス人になった彼の姿を皆さんで楽しみにしていたのですが、残念ながら買わなかったようです。 ここはイシク・クル湖からも離れていますから、さすがに鮮魚店はなく、干し魚を売っています(写真下)。魚の一覧表がわかりやすい。 どれもこれもうまそうな果物で、日本と比較しても何でもあります(写真下)。 写真下左のイチゴのバケツ売りは昨日道端で売っていたのと同じです。この国ではイチゴは黒いバケツにいれるのが習慣らしい(笑)。安いんだろうなあ。ジャム用に一つ買いたい。 写真下左の四角いパックに詰められたのと、写真下右の瓶のようなものに入ったのは、キイチゴのように見えるが、私の知っているキイチゴは黄色などで、赤いキイチゴのような果物って何だろう? お兄さん、それじゃ、顔が隠れてしまうよ(写真下)。 少し先に行くと、平屋の建物の中に店が並ぶ市場があります(写真下)。 野菜は豊富で、どれも新鮮です。 日本人のネットでの旅行記を読むと、このバザールにはスリだけでなく、偽警官が出没して、荷物検査と称して盗難があるそうです。私たちは現地ガイド付の団体だったこともあり、幸い、遭遇しませんでした。 写真下は漬物のコーナーらしい。ペットボトルに入れた漬物の素と一緒に売っています(写真下)。キルギスには朝鮮人も強制移住させられた歴史があるので、この市場にもキムチがある聞きましたが、見かけませんでした。 写真下の白い塊は豆腐で、隣にビニールの袋に入ったモヤシがあります。日本人にはこの組み合わせは奇妙に見えるが、豆で豆腐を作り、発芽させてモヤシとして売っているのでしょう。 写真下はハルサメでしょうか。豆腐やハルサメは中国の影響なのがわかります。この市場にはいろいろな人種の人たちがいるそうですから、様々な食文化が入り混じっているのでしょう。 写真下はパンのような主食のナンです。発酵させないから、パンほどには膨らんではいないが、言われなければ、パンだと思って食べてしまうでしょう。 写真上と下では、ナンをその場で焼いて売っています。こねた小麦粉を写真下右の釜の内側に張り付けると、たちまち膨らんで焼き上がります。焼きたてのナンを皆さんで分けておいしくいただきました。 私が買ったのは写真下左のオバサンが売っていたナツメヤシ(デーツ)です。ナツメヤシが採れないキルギスでナツメヤシを買うという変なことをした理由は値段です。安いのではなく高い。 ナツメヤシがいくつか並んでいるのに、そのナツメヤシだけは倍くらい値段がする。いったいどんな味なのかと、私は残っていたお金を全部出して売ってくれと言いました。帰国後、食べてみると、私が普段食べている安物と違い、味も口あたりも良い。ただ、もう一度買うかと聞かれると、安いナツメヤシを倍買ったほうが楽しめそうです。 写真下は花売場で、ほぼ全てが切り花で、鉢物がありません。 日本でも見かけるような園芸品種が大半で、特に珍しい花は見かけません。 スーパーで買い物 Globusというスーパーで買い物をしました(10:27)。Globusはビシュケク市内に何店もある大手のスーパーで、商品は豊富です。 (https://www.globus.kg/) こういう大型のスーパーはお土産を買うのにも、また現地通貨を使い切るのに足りない分をクレジットカードで支払えるので便利です。 スーパーを後にして、次の観光地に向かいます。道は十分な幅があり、写真下のように両側に緑地など設けられています。日本は新しく作った道さえもギリギリの幅で、こういう余裕が何もない。日本はキルギスに比べたらはるかに裕福な国であるはずなのに、日常はせせこましい。GDPなどをただ誇るのではなく、庶民の日常生活の空間的な余裕も豊かさの一つです。 街でスカーフをかぶっている人は見かけますが、多数ではありません。また、スカーフをのぞけば、戒律の厳しいイスラム教の国のような服装は少ない。 他の国のイスラム教徒で見られる全身黒づくめの服装を見かけたのは写真下の三人だけでした。 この街の公共交通機関は午前中も見たトロリー・バスなどで、道の両側にはバスを待つお客さんたちがかなりいます。 写真下はBeta Teaの広告で、6月11日~12日に泊まったコルコチのゲストハウスの朝食に出てきた紅茶です。景品と思われる銘柄入りの皿が用いられていたから、やはりこのアゼルバイジャンの会社は商売が上手で、儲かっているようです。 写真下左は初めて見るタイプの飲み物屋です。昨日や今日の朝など、写真下の赤いパラソル、赤いエプロン、赤いテーブルかけだったのが、写真下左は青いパラソル、青いエプロン、青いテーブルかけです。しかも、樽が四つもある。四つ目の緑色の樽は何が入っているのだろう? 写真下の映画の広告など内容は都会的なのだが、相変わらず気になるのがポスターのシワです。写真下右は周囲をヒモでくくり付けるからシワが寄るのは当然だが、それが減るように工夫した形跡がない。 リスのいるアラ・トー広場 チュイ大通りに面したアラ・トー広場(Ala Too Square)に行きました。2005年にキルギスで起きたチューリップチ革命で初代のアカエフ大統領を国外に追放した時の中心的な場所です。チューリップ革命という表現のように、死者や負傷者は最小限で済みました。 こういう中心部の建物は国の威信をかけているのか、でかくて、ごっつく、威圧的な物が多くて私は苦手です。その中で、広場に面した建物の一つに大きな花の絵が飾られているのが好ましい。 桜のようなバラ科の樹木で、アーモンドかとも思うが、それならもっとピンク色です。 写真下左で、皆さんが見ている馬に乗った銅像がキルギスの英雄叙事詩に出てくるマナス大王で、その後ろにある四角い建物が国立歴史博物館です。キルギスが独立するまではマナスではなくレーニンの像が飾られていました。 国旗がはためいて、その柱の下では警備員が二人、直立不動です(写真下左)。 幸い、その前を通りかかる庶民は万歳もしないし、礼拝もしない(写真下)。庶民は暑いから噴水で涼を楽しむ(写真下段)。 建物の向こうに4000m級の雪山が連なっているのがいかにもキルギスらしい風景です(写真下)。この国は最後まで横長の風景でした(笑)。 写真下は人民が壁を打ち破り、押し開いたことを象徴しているのでしょう。でも、黒いほうの壁が道路にはみ出ていて迷惑です(笑)。「自動ドアにしたらどうだろうね」と余計なことを私は言う。 御立派な建物よりも、人間でも見ていた方がよほど面白い。写真下右は「やあ、どうもどうも、おひさしぶりです」と言っている。ここで会う約束をしたらしく、真ん中の人が車に乗せて行きました。 「お父さん、こんな建物ばっかりじゃ、つまんないから、あくびが出ちゃうよ」(写真下左)、「ほんじゃまあ、違う所に行こうか」(写真下右)とは言っていないでしょう(笑)。 隣接するパンフィロフ公園の中を散策します。街路樹の上に赤毛のリスがいて、下に集まっている日本人の野次馬を見ながら何か食べている(写真下右)。 公園内は広々として、人の数も少ない。首都のど真ん中にこれだけ緑の多い大きな公園があるというのは素晴らしい。 若者が憩い、人生について語り合う。観光客は私たちくらいです。 あれはレーニンではないか(写真下左)。本家のロシアではすっかり減ったというから、この像には観光的価値があるでしょう(笑)。先ほど広場で見たマナスの像は、前はレーニンだったというから、これがそれかもしれません。捨てないでリサイクルしたほうが良い。ここにはマナスの叙事詩を口述するマナスチたちの銅像もあります(写真下右)。 歩き回ってお腹が空いたところで、公園の近くのレストランでピラフの昼食です(11:58)。昼食の時間なのに、あまり人がいない(写真下)。 キルギスでの最後の食事をおいしくいただきましょう(写真下)。 キルギスを発つ 食事を終えて、ビシュケクから北に三十分ほどの空港に向かいました。あまり人のいないマナス国際空港に到着(13:45)。 ここでガイドのアイピリさんや5人のドライバーともお別れです(写真下)。どこか遊牧民らしいおおらかさを持った人たちで、一方で、トラブルが起きた時にはかなり適切に対処していました。またここで植物ガイドの竹野さん(仮名)ともお別れで、彼は居住地のロンドンに戻ります。 空港は中も空いています。検査ではベルトや靴を脱がされたのに、水の入ったペットボトルは持ち込み可でした。空港によってやり方がずいぶん違う。 飛行機はアエロフロートSU 1881便で、16:05にビシュケクを発ち、17:50にモスクワに到着予定です。機体はAirbus A321で、私の座席は予約どおり34Fです。飛行機は北西に飛びますから、太陽は西側、つまり機体の左前から射すから、右側の座席を取りました(写真下右)。 機内はほぼ満席です(写真下)。国際線なのに座席にはモニターはありません。2時間の飛行で、しかも、キルギスは旧ソ連の一部でしたから、国内線の扱いなのでしょう。飛行機は混んでいます。 予定より少し早く、飛行機はキルギスを離陸しました(15:58)。見納めのキルギスは、残念ながら私の座席からは天山山脈の雪山は見えません。 後ろの席の人がかなり激しく咳をして、赤ん坊の泣き声がうるさいなどあったが、これは航空会社の責任ではありませんので、この飛行機に対する個人評価は五段階評価の真ん中Cの普通とします。 離陸して一時間ほどして、夕飯が出ました(17:19)。 高度を下げ始めると、地表は緑が濃くなりました(写真下)。 ロシア式完全無視 ほぼ予定どおりにモスクワの空港に着陸しました(17:31)。 乗り換えは2時間ほどで、空港の中に入ったのは6時すぎていましたから、実質1時間ほどしかありません。下の地図が空港の建物で、私たちが到着したのはDで、成田行の飛行機はFだという。DからFまではかなりの距離があるのを私は知っていました。初日にこの空港で時間があったので、DからFまで遊びに行ったからです(笑)。真っ直ぐのように見えるが、店の間の狭い通路を通ったり、二階から一階に降りるなど煩雑で、あの時はちょっと道を間違えました。 皆さんを引き連れてFまで出発!・・なあんて、案内を見て通路に沿って行けば子供でも行けます(笑)。 ここでこの空港での印象が変わる体験をしました。お客さんの一人が体調を崩していたので、車椅子を借りられないかと交渉したが、予想どおりダメでした。受付の反対側を見ると、車椅子が一つ空いている。予約が入っているだろうが、ダメモトで、私はそのそばにいた男性にカウンターごしに、車椅子を貸してくれるように頼みました。 ところが、2メートルも離れていない所に立っているその男性の係員は私を完全に無視しました。私の声が聞こえないはずはなく、彼の視野に私の姿が入らないはずはないのに、二~三度声をかけても、完全無視です。 この空港の職員は態度が猛烈に悪いとネットでは大評判だったので覚悟をして来たが、この直前までは特に悪いということはありませんでした。しかし、態度の悪さの模範演技を絵に描いて額縁に入れたような男性職員と遭遇して、腹が立つ前に私は妙に感動して笑ってしまいました。さすがは旧ソ連だ。 成田へ 皆さんで協力して、無事、体調の悪いお客さんも搭乗することができました。成田行のアエロフロートS 0260便は19:00に離陸して、18日の10:30に成田に到着予定です。機体はBoeing 777-300ERで、私の座席は予約どおりに46Aです。 飛行機は少し遅れて19:41に離陸しました。間もなく夏至のモスクワですから、外はまだ十分に明るい。 暇な時の映画は軽い物が良い。アニメはあまり好きではないが、最新作で日本語で選べるのが少ないので、観たのが下です。内容を紹介しようにも、観た後、三分で忘れてしまいました。 『スパイダーマン: スパイダーバース(Spider-Man: Into the
Spider-Verse)』(アメリカ、2018年) 夕飯が出ました(21:57)。モスクワ空港での職員の対応の悪さはこの航空会社の責任ではありませんから、最小限のサービスは問題ないので、この飛行機への個人評価は五段階評価のC、普通とします。ところが、翌日、飛行機を降りてから、この評価を変えることになりました。 モスクワ時間で夜11時をまわっているのに地平線が明るい(写真下)。私の座席は飛行機の左側ですから、北極の方向を見ていることになります。 写真下の飛行経路を見ると、夏の白夜圏の端の部分を通過しているから、太陽は沈んだ直後の状態がずっと続いているようです。いつまでも陽が暮れないのは理屈ではわかっていても、何とも奇妙な感じです。 窓の外は、来る時も見たように沼だらけの風景です(写真下)。シベリアの凍土が溶けて、無数の沼になっているのでしょう。夏はいつもこうなのか、それとも地球温暖化でより増えているのかはわかりません。 水があるのだから花が咲いていてもおかしくない。しかし、これだけの水溜りがあるということは、泥沼のような湿地帯で、近づくことも難しいだけでなく、蚊の猛攻撃があるでしょう。 成田まではまだだいぶん時間がありますから、一眠りすることにします。 |