トルコ北西部の早春の花 6日目 2019年4月3日(水) ボル ⇔ Golcuk自然公園 四時すぎに一度目が覚めてしまい、六時すぎに起きました。日の出が七時近くですから、早く起きても意味がない。 本日はボル市の南にあるGolcuk自然公園(Gölcük Tabiat Parkı)に行き、花の観察をします。Gölcükの発音はネット上のトルコ語の発音を聞いても、私の耳では日本語に表記できない(笑)。 朝の散歩に出かけました。ホテルの目の前の湖を散策します(写真下)。天気は曇りでかなり肌寒い。 湖の岸辺の一部は公園化され、整備されています(写真下)。 しかし、歩道から少し離れると自然そのままです(写真下)。早春なので、去年の枯草であまりきれいとは言えません。 岸辺近くの野原には、紫色のクロッカスやムスカリが群落して(写真下左)、数は少ないがキバナノアマナやシラーの仲間も花を咲かせています(写真下右)。 ホテルに戻り、七時半からホテルのレストランで朝食です。犬クンが番をしているオレンジを食べてみましょう(写真下右)。 ここにも蜂蜜のついた蜂の巣があるので、クマのプーさんになって食べます(写真下)。 春はフキノトウ 予定どおり、八時半にホテルを出発しました。雨こそ降っていないが、曇天で天気は良くありません。最初の花の観察はフキノトウです(写真下)。日本のそれとは違い、ずいぶん縦長です。 写真上 Petasites hybridus 昨日も見たプリムラです(写真下)。 写真上下 Primula vulgalis ここには薄黄色と白のプリムラがあります(写真下)。 昨日も見た小さなシクラメンが林のあちこちに花を咲かせています。 写真上下 Cyclamen coum この日もここ以外にもこのシクラメンを見ました。どうやら、このあたりではシクラメンが山野草としては普通の花らしい。 日本で売られている見慣れたシクラメンとは違い、小さい。日本でもミニ・シクラメンとして売られているのと大きさは似ています。シクラメンに限らず、野生と園芸種を比較すると、私の好みはいつも野生種のほうです。 スノードロップです(写真下)。この曇り空では開花しているのは少ない。ルーマニアからクリミア半島、コーカサス北西部まで分布し、トルコでは北部にしかありません。 写真上下 Galanthus plicatus これからボルの市街地に行くために、山を下りていきます。道端には、観光客を狙った店が見られます(写真下)。煙が出ているから、営業中なのでしょうけど、まだ早いせいか、客の姿はありません。 山道を降りて、ボルの郊外に入ってきました(写真下)。 ボルで買い物 ボルに到着しました。13万人程度の都市で、中心部の建物のほとんどが写真下のような大きさや形のそろった集合住宅でできているせいか、雑然としておらず、小奇麗な印象です。もちろん、電柱や電線もありません。大きな看板などありません。 電柱と看板がない、という点に日本人の皆さんには注意を払ってほしい。日本はどこもここも電柱と看板だらけの「小汚い風景」です。地下に埋設するとお金がかかるという。だが、トルコのように日本よりも経済的には小さい国でもこのように埋設しているのを見れば、本当の理由ではないのがわかります。埋設されたら利益を失う人たちがいるからでしょう。 街中にあるスーパーでガードナーさんたちは昼食の食材を、私たちは土産物を買いました(10:01)。 これまでのスーパーでも目立つのがチーズの種類と量の多さで、うらやましい。写真下左のように、量り売りのチーズと、右のように包装されたチーズが分けて売られています。 おもしろいことに酒を売っています(写真下左)。トルコは99%がイスラム教徒というから、酒を飲む人は少数派なのに、売場は広く、日本のスーパーと変わりません(笑)。 スーパーで買い物をした後、コンビニ併設のガソリンスタンドでトイレ休憩です(10:46)。ここもコカ・コーラは売られているが、500mLのはありません。 Golcuk自然公園 ボル市内を通過して、南にあるGolcuk自然公園(Gölcük Tabiat
Parkı)に向かいます。 自然公園の山道に入ると、間もなく周囲の林の中に様々に花が咲いているのが見えてきました(11:15)。 最初に目についたのが、お馴染みのプリムラです。 写真上下 Primula vulgalis 写真下はプリムラとエンゴサクの共演です。 ピンク色をおびた薄紫のエンゴサクです(写真下)。これまでもエンゴサクは何度も出てきましたが、このエンゴサクは初めてです。 写真上下 Corydalis caucasica 数が少ないが、白もあります(写真下)。 林の奥の土手に紫色のスミレが咲いています(写真下)。二日前のブルサの山の中でも見ました。あの時よりもこちらのほうが数も多く、紫色がもっと鮮やかです。 写真上下 Viola reichenbachiana 二日前にも紹介したようにEarly Dog-violetという奇妙な英語名のついたスミレです。分布はヨーロッパ全土で、トルコは東端にあたり、モロッコなど北アフリカにもあります。 石灰岩のある広葉樹の森に咲くとありますから、ここはその条件にぴったりです。 ガードナーさんが珍しくスマートフォンで写真撮影をしています(写真下左)。彼は一眼レフの予備のバッテリーを忘れたらしい。バッテリー一個で丸一日の撮影はなかなか厳しい。型が同じなら貸してあげたいが、メーカーが別なので無理です。 写真下は二日前のブルサでも見たトウダイグサの仲間です。ヨーロッパ全体に分布し、日陰でも育つ植物です。地理的に近いですから、スミレだけでなく、共通の植物はたくさんあります。 写真上 Euphorbia amygdaloides 写真下のクリスマスローズはすっかりお馴染みになり、二日前に初めて見た時の感動がだんだん薄れてしまうのは困ったことです。ただ、二日前の花はピークをすぎていたのに対して、ここは気温が低いせいか、今が盛りです。 写真上下 Helleborus orientalis 写真下も二日前のブルサで見た寄生植物の仲間です。 写真上 Lathraea squamaria 雪の残る松林の下 登るにつれて周囲には残雪が目につくようになりました(写真下)。 伐採された松の木が積み重ねてあるところで昼食です(13:02)。松をテーブル代わりに使ったのが仇になり、皆さん、松ヤニが衣類に着いて悩まされました。ここのは木材にしては細くて、しかも短く切ってしまい、いったい何に使うのだろう。 食事を終えて、松林(Pinus sylvaticus)の中を再び花を探します。 写真上 Pinus sylvaticus 松林の近辺にあったのが二日前にも見たクロッカスです(写真下)。ここのはことのほか薄紫がきれいです。 写真上下 Crocus biflorus ssp. Pulchricolor トルコでは、このあたりの北西部と北東部でも少し分布します。Crocus biflorusはヨーロッパを中心に亜種が多く、これもその一つで、トルコに分布しているようです。 クロッカスの野生種の分布を見ると、西端がスペインから始まり、そのまま東にのびて、トルコを横切り、中央アジアのタジキスタンやキルギス(キルギスタン)、さらに天山山脈の東端の中国のウイグル自治区で終わっています。小柄で弱そうなのに、見た目と違い、環境に応じて、姿かたちを変えながら、適応したようです。 中に写真下のように濃い紫の花もあります。 写真下はクロッカスと良く似たコルチカムです。昨日の湿原はこの花が群生していたのに、ここは数が少ない。 写真上下 Colchicum triphyllum クリスマスローズが群生していて、しかも、今がちょうど盛りらしい(写真下)。 写真上下 Helleborus orientalis キンポウゲの仲間ですから、花弁のように見えるのはガクです。 ガクなのだから、元々緑色なのに、園芸品種の中には赤や黄色があります。どこかのクリスマスローズの中に赤い遺伝子があったということなのでしょう。そのことも驚きだし、それを探し出した人もすごい。 写真下は群生していますから、この環境が合っているようです。左側の斜面の上は松林で陽当たりが悪くなり、右側は低くなっていて、水が集まりやすく、雨の時には小川になるのでしょう。半日陰と適度な水分もある斜面が好みのようです。 シラーの開花順序です。蕾だったのが(写真下左)、下から少しずつ開花して(写真下右、下段左)、やがてすべて開く(写真下段右)。 写真上 Scilla bifolia ずいぶん色の濃いエンゴサクです(写真下)。私の周囲の野山に咲くエンゴサクはぼけたような色が多く、こんな濃い色のはありません。 写真上下 Corydalis wendelboi ssp. Congesta すべてが写真上のようではなく、濃い赤紫は花が完全に開く前の外側の花弁で、写真下のように開くと、内側の花弁は薄紫なので、全体の色も薄れた印象を与えます。 いつものムスカリ・・・と思ったら、花が青く、頭頂部は水色です(写真下)。 写真上下 Muscari aucheri このムスカリは元々、高地の草原に咲くトルコ産であるというから、ここが原産地らしい。これを品種改良したらしく、真っ白な園芸種もあるそうです。ただ、このムスカリは白がアクセントで、ムスカリはやはり紫や青が良い。 ここのほとんどのムスカリが頭頂部が白や水色なのに、普通のムスカリのように、紫のもあります(写真下の上段)。数は少なく、これだけでした。別種なのか、ただの変わり者なのか、わかりません。 湖のクロッカス 湖の見える斜面に黄色いクロッカスが生えています(写真下)。学名のancyrensisとはトルコのアンカラから来た言葉で、ボルの南東200kmほどにある首都アンカラで最初に確認されたので、この名前がつきました。標高1000~1600mに分布し、ここは標高1300mほどですから、その条件にも合っています。 写真上下 Crocus ancyrensis 曇り空にほんの一瞬だけ、陽ざしがありました(写真下)。 ほとんどはどんよりとした曇り空で、ごらんのように、湖も鉛色で、対岸の山は雲がかかっています。風景どおりで、肌寒い。 黄色いクロッカスは昨日までも登場しましたが、このクロッカスは今日初めて見る種類です。当然、私の目では区別がつかない(笑)。 毎日出てくる同じシラーです(写真下)。ここのは特に大きくて見事な株が多い。 写真上下 Scilla bifolia たった一株の白いシラーをお客さんが発見しました(写真下左)。このシラーは花数も少なく、あまり勢いがない。 シクラメン群生地 山の林の中にシクラメンの群落があります(写真下)。 写真上下 Cyclamen coum ちょっと残念なのが、陽が射していないうえに、針葉樹が多く、地面が薄暗いために、撮影しにくい。 このまま針葉樹が増えれば、地面には陽が射さなくなり、シクラメンはなくなります。同じようなことが私の裏山でも起きていて、杉林が広がった所にはカタクリなどの春先の花は消滅してしまいます。 山を下りて、ボル市内を通過します。 ボル市内の女性たちはほとんどがスカーフをかぶっています(写真下)。 数少ない例外が写真下左で、中年の二人の女性は何もかぶっていません。 これに対して、写真下の若い女性はほとんどかぶっていません。また、大人の女性たちは長いスカートなどで足を隠しているが、若い女性の多くは足の線がきれいに出るようなズボンをはいています。 ホテルのあるアバント自然公園(Abant Tabiat Parkı)に戻ろうとして、公園のゲートでもめました。入場料を払えというのです。私たちは自然公園内のホテルから出て戻ってきただけで、すでに払っているのだから、おかしいだろうと運転手が粘るが、係員は断固として拒絶し、結局、入場料を払って中に入りました。 またシクラメン 六時頃にホテルに戻りました。夕飯が七時半だというので、私は散歩に出かけることにしました。湖のそばは朝散歩して、あまりおもしろくなさそうだったので、下の写真の赤丸で囲った山に行ってみることにしました。ここを狙ったのではなく、ホテルから山の方に適当に歩いて、たまたま行きついただけです。 霞みが出ている森の斜面一面にシクラメンが咲いています。 写真上下 Cyclamen coum さっきもさんざん見たのに、何度見てもすごい。私の裏山で春先にシクラメンがこんなふうに咲いていたら、すごいだろうなあ。 先ほどのシクラメンと同じだが、一つ違うのは自分一人しかいないことです。撮影がとても楽になります(笑)。 他の人たちがいると、自分一人では見逃してしまうような花を見つけてもらえます。これまでも毎回というよりも毎日経験しています。 その一方で、写真を撮る時はお互いに邪魔です(笑)。背景まで入れて撮ると、50m以上も離れた人が入ったりします。私が集合の声がかかってから撮影をするのはこれが理由です、と言い訳をしておきましょう(笑)。 山の北側には雪がかなり残っています(写真下)。 その斜面に咲いているのがプリムラとクリスマスローズです(写真下)。 写真上 Primula vulgalis 少し霧で霞んでいる樹木の足元のクリスマスローズはみな下向きに咲いています(写真下)。 写真上下 Helleborus orientalis 雪の見える斜面に紫のエンゴサクが咲いています(写真下)。昼間、クロッカスと一緒に松林で見たのと同じ種類で、あちらは赤味を帯びた紫だったが、こちらは紫から薄紫です。 写真上下 Corydalis wendelboi ssp. Congesta どのケーキ 雲や霧があることもあり、七時頃から暗くなり始めたので、ホテルに戻りました。七時半からホテルで夕飯です(写真下)。 今日もどのケーキにしようかと迷っている(笑)。 明日はここを発ちますから、荷物をまとめなければなりません。 |