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インド・ヒマラヤ西端に咲く青いケシ

9日目 2024722()

チャンディーガル デリー → (成田)

 

 六時頃起床。外は曇りで、今日は観光がないので、雨が強く降らなければ合格です。

 

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 今日も移動日で、チャンディーガルからニューデリーに向かい、夜遅くインドを発ち、成田に向かいます。ここからニューデリーまでは260kmほどで余裕のようだが、ニューデリー付近が渋滞する可能性があるという。

 

 

 七時からホテルのレストランで朝食です(写真下)。昨夜と同じようにビュッフェ形式なので、私は楽でありがたい。客が少ないのか、早すぎるのか、お客さんはあまりいません。

 

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日本はヒンドゥー教!?

 9時出発なので、周囲を散歩します。ストリートビューで調べたが、計画都市ですので、散歩しておもしろい所ではありません。しかし、昨日ホテルに到着する直前に見た、長い草を集めていた人たちがいた道路の脇の緑地帯なら、何か花が咲いているかもしれません。

 下の衛星写真の青い線が私が散歩した2kmほどです。

 

 

 インドらしく、根が盛り上がった巨木が道の両側にあります(写真下)

 

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 樹木の根本に赤い布で包まれた石が置いてあります(写真下左)。手前の黒い椀は供養で、この石はたぶんシヴァのリンガ(男性器)です。

 

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                  写真上 シヴァ・リンガ(Wikipediaから転載)

 

 ヒンドゥー教の神であるシヴァなど仏教国の日本と関係なさそうですが、彼は密教を通じて日本に来ています。大自在天は知らなくても、不動明王(下図)や大黒天はどこかで聞いたはずで、三者ともにシヴァです。山形は出羽三山という修験道の修行場があるので、不動明王の信仰も盛んです。花を探しに名前もない谷の奥に行くと、〇〇不動という名前のついた社や、石碑が祭ってあるのは珍しくありません。つまり、日本人は、気が付いていないだけで、ヒンドゥー教徒なのです()

 

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上図 ウィキペディアから転載

 

 写真下のように、日本の大黒天は打ち出の小槌を持ったお金や食べ物の神様扱いですが、これも元はシヴァです。古事記の大国主(オオクニヌシ)がダイコクと読めることから、両者が混同されたが、性格は正反対です。国津神系の大国主命は穏やかで争いを好まない性格だから、たぶん彼は縄文人の末裔でしょう。

 

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写真上 ウィキペディアから転載

 

 これに対してシヴァの化身であるマハー・カーラ(大黒)は時間や死の神です(下左図)。彼の妻のカーリーはアシュラたちの首をぶら下げて勝利のダンスを踊る狂暴な姿で描かれます(下図)

 カーリーに踏んづけられているのは夫のシヴァです。日本では「尻に敷かれる」と表現されますが、インドでは足で踏んづけられますから、インド人女性と結婚する方は覚えておいたほうがいいでしょう。

 

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上図 ウィキペディアから転載

 

 この街のチャンディーガルという名前はチャンディーという女神が由来です。そのチャンディーとは、この旅行で何度も登場したシヴァの妻のドゥルガーのことで(下図左)、ここはドゥルガーの街です。

 前にも書きましが、チャンディー(Caṇḍī)はチュンディー(Cundī)ともいい、これが漢訳されて准胝観音(じゅんていかんのん)になって、日本にも来ています(下図右)。観音は慈悲の神仏であるはずなのに、しっかりとシヴァの三叉槍や刀など武器を持っています。

 シヴァたちは夫婦そろって日本まで出稼ぎに来たらしい()

 

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上図左 ドゥルガー(『インド神話入門』から転載)

上図右 准胝観音(ウィキペディアから転載)

 

緑地帯

 緑地帯のある幹線道路まで来ました(写真下)。ただ柵があって入れません。

 

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 横に広がる樹木が植えてあって、根本を低くして、水が貯まるようにしています(写真下)。普通は根腐れを起こすが、この樹木は水没が好きらしい。

 

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 リスもいます(写真下)。インドでは大都市でもリスは珍しくなく、和名はヤシリス(northern palm squirrelfive-striped palm squirrel)で、東はバングラデシュ、北はネパール、西はイランまで広い範囲に棲息します。大都市にまでいる理由は、写真下のように、人間がそばにいても恐れないからです。このリスも木の上からわざわざ柵のコンクリートまで来たのは、私が餌をくれるかもしれないと期待したからでしょう。すまんね、君の朝飯は持っていない。

 

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写真上 Funambulus pennantii

 

 緑地帯は柵もあって入れないのに、敷地内に大きな黒いテントが張られています(写真下)。洗濯物が干してあるなど、公共用地で堂々と生活しているのは、いかにもインドらしい。ところで、トイレはどうしているのだろう。

 

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 道端には、ニチニチソウやキバナキョウチクトウなど、キョウチクトウの仲間が植栽されています(写真下)

 

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 写真下左は頼まれもしないのに増えた南米原産のランタナ、右はインド料理で使われるヤサイカラスウリで、雑草として増えたのでしょう。

 

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写真上 Lantana camara         写真上 Coccinia grandis

 

 写真下左は南米原産で日本にも帰化しているハキダメギクで、このすごい名前は日本の植物学の権威が付けました。右は、「ウサギ足のクローパー(Rabbit-foot Clover)」という可愛らしい名前の付いた欧州原産のクローバーで、トリフォリウムという名前で園芸種として市販されていますから、これも外来種です。

 つまり、都市部の道路脇は外来種だらけです。

 

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写真上 Galinsoga quadriradiata       写真上 Trifolium arvense

 

 昨日のショッピング・モールまで来ると、紫色の恐竜はまだ寝ている(写真下左)。勤務中は張り切っていたのに(写真下右)、オレと同じで朝寝坊らしい。

 

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芸術を観る

 予定どおり、9時にホテルを出発です。今日から写真下のワゴン車に代わり、ガイドも日本語のできるキーラナンドさんに交代です(写真下右)。彼とは初日のデリー空港で会いました。私はいつものように不人気の一番後ろの座席を占領。

 

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 昨日も書いたように、チャンディーガルを主に設計したのはル・コルビュジエ(Le Corbusier)です。彼が造った彫刻や建物、壁画が政府関係の庁舎として残っているので、それを車の中からだけでも見ようということになりました。過去の西遊旅行の旅行記でも、裁判所などを見学して、彼の作品を観たとあります。

 

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 しかし、行ってみると、立ち入りが難しいらしく、見えたのは通勤途中の人たちとたくさんの警備員だけでした()

 

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 正直なところ、個人的にはル・コルビュジエの作品はあまり興味をひきません。そこで唐突に自分の関心だけでインドと関係ない例を出します。

 アメリカのバイデン政権でもっとも私の目を引いた人はジャンピエール(Karine Jean-Pierre)報道官です(写真下)。英語のわからない私が注目したのは彼女の仕事ぶりではなく、登場した時の髪型、化粧、そして服装です。彼女の容姿、肌の色、体型の魅力を引き出す絶妙な組み合わせを選んでいました。専門家を雇っているのでしょうが、最終的に彼女が選んだはずです。日本のテレビ出演者が、誰も彼女のファッションのセンスを誉めないのには驚きました。

 

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 このファッションで政治の堅苦しい話を、時には激しい応酬をこなしているアンバランスさが素晴らしく、これ全体が生きている芸術です()。ル・コルビュジエの作品よりも、「彼女」のほうが私には優れた作品に見えます。著名な芸術家や値段の高い芸術作品でなくても、こんなふうに私たちの周囲にはいくらでも優れた芸術が転がっています。

 

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 インドの街中や道路脇で面白い風景が見られ、過去の旅行記でも、300km移動しても飽きないと書いてあって、その意見に賛成です。街中と人々は生きた美術館であり、ル・コルビュジエの作品は平凡にさえも感じさせます。

 

インドのガソリン価格

 ガソリンスタンドで給油します。1リットルあたり、82.4ルピー(164.8)です(写真下右)。インドは、ウクライナ侵攻で経済制裁を受けているロシアから安い原油を買っているから、もっと安いかと思ったら、意外に高い。この時期、ガソリンの高い山形市でも170円前後で売っていましたから、二重税の日本とそれほど違いはありません。

 

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 日本では今は1リットルあたり5円の補助金が出ていて、実際はもっと高い。急激な価格変動を緩和するために短期的には補助金も必要だろうが、今のように長期的な補助金は人気取りのバラマキです。それはすべて税金から出しているから、ツケが国債という借金となって国民に返ってきます。

 

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 日本はGDP比で260%という巨額借金を持つ、世界でトップの借金大国です。これがあのアベノミクスと呼ばれた経済政策の結果なのに、この大失策を批判する経済関係者がほとんどいないことに驚かされます。

 この経済政策の「異次元緩和」そのものが間違っていたのではなく、間違いは、効果もなく、成果を出せないにもかかわらず、なんと10年にわたって続けたことです。

 

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 本来なら3年で見直しをするべきだし、5年たっても効果がなかったのだから、中止するべきでした。こんなことは経済に限らず、どんな分野でも当たり前です。ところが、物価上昇の数値目標をまったく達成していないにもかかわらず、当時の安倍首相も日銀の黒田総裁も頑迷不屈にこれを続けた。その結果が、GDP比で260%という巨額の借金です。

 

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 今日、庶民は物価高に苦しんでいる理由は円安で輸入品の値段が高騰したからです。食料やエネルギーなどすべて輸入に頼っている日本では円安は庶民の懐を直撃します。その円安を長期にわたって誘導したのもアベノミクスで、これで輸出企業を活性化しようとしました。円安でその効果が出て企業業績は上がったが、その分、物価が上がったから、実質賃金が減り、庶民は苦しくなった。いったい、誰のための政治なのかということになる。

 

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 利上げをすれば円安は抑えられるのに利上げしないのは、景気を冷やすからだというが、半分嘘です。利上げをすれば、国債の利子の支払いが巨額に膨れ上がるからです。国家予算を圧迫するほどになり、さらに国債を発行するしかなくなる。日本は国債という借金麻薬の中毒患者です。

 

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 チャンディーガルの街中を通過して、郊外に出ると、昨日までのヒマラヤの山と違い、インド平原が広がっています(写真下)

 

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レトロなバス

 ガソリンスタンドでトイレ休憩。周囲にはきれいな田んぼが広がっています(10:52、写真下右)

 

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 ここに停まっていたのが写真下のバスです。インドの路線バスは外見に統一性がない。日本なら、一つのバス会社が一つのデザインなのに、インドは小さな会社が乱立しているのか、どこにいってもバラバラです。

 

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 今回もう一つ気になったのは、道を走る乗用車は新しいのに、バスは型からして昔のままで、ディーゼルの黒い排気ガスと音を出しながら走っていることです。写真下は、昨日、山の中で見かけた路線バスで、排気ガスがひどい。

 

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 レトロなバスと黒い排気ガスを見ると、インドに来た気分になる()

 

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寺院

 道路からは相変わらずシク教の寺院が目につきます(写真下)。シク教徒の多いパンジャーブ州にはチャンディーガルがもっとも近く、南下すれば遠ざかり、信者数も減るはずなのに、まだタマネギの屋根が目につきます。寺院はどれも立派だから、彼らは裕福な人たちが多いのでしょう。

 

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 写真下の寺院は同じタマネギでも、ミナレットという塔が付属していますから、イスラム教のモスクで、数は少ない。

 

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 イスラム教もシク教も偶像崇拝を禁止していますから、神様の像はヒンドゥー教で、見かけたのはシヴァと猿のハヌマーンだけでした(写真下)。女神だらけだったヒマラヤとは違いが出てきます。同じヒンドゥー教でも、地域によって人気の神様に違いがあります。

 

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 進むにつれてトウモロコシのようなヒンドゥー教の寺院の数がだんだん増えていきます(写真下)

 

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 写真下左など、まるで中国風の五重の塔みたいです。仏教の五重の塔は仏塔から発達した建築物で、眺望用のタワーではありませんから、登れるというのも奇妙な話です。

 

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 写真下左では、田んぼの真ん中にポツンと神様を祭った廟があって、白い廟が緑色の田んぼに囲まれているのは絵になるでしょう。写真下右はトウモロコシにしては長すぎるのも当然で、これはレンガを焼く煙突です。

 

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 写真下左などトウモロコシが3本もある巨大な寺院です。写真下右も立派な寺院・・・にしてはなにか変です。実はThe Royal Venetianという結婚式場です。この建物は仮面みたいなもので、奥がない()

 

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菜食主義の昼食

 日本の道の駅のような雰囲気のMannatというチェーン店のレストランで昼食です(12:10)

 

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 昼時なのに室内はほとんど客がいないのはエアコンが効いているからで、こちらのほうが料金が高い(写真下左)。そこで多くの客は写真下右のように外で食べている。インド人にとって今日くらいの暑さは暑いうちに入らないのでしょう。

 

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 出された料理は写真下で、菜食主義用の人気メニューです。ガイドのキーラナンドさんは菜食主義で、彼の家の伝統らしい。

 

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 日本では、お釈迦様が菜食主義だったと誤解され、一部の宗派では精進料理を出します。まったくの誤解で、お釈迦様への供養のためにわざわざ動物を殺すなと言っているだけで、供養されれば肉も魚も食べています。

 

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 食事を終えて、また道を南下します。インドでも写真下のような派手な模様の車両は少数です。日本では一昔前、派手な飾りを付けたトラックが流行ったのに、最近は見かけません。

 

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 首都に近づいていますから、片側34車線の立派な道路で、東京の首都高よりも走りやすい(写真下)

 

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 こういう立派な道路なのに、道端では傘を売っているのがインドです(写真下)

 

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 トイレ休憩に昼食と同じMannatというレストランのチェーン店に立ち寄りました(14:47)。この後、渋滞が予想されるので、トイレに行っておきましょう。

 

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 予想どおり、あるいは予定どおりに、四時頃からニューデリー市内のだいぶん前で渋滞が始まりました。インドの交通常識では2車線に3台、3車線には4台並びます()。しかし、幸い渋滞はそれほど長く続きませんでした。

 

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ゴミの山

 ニューデリーの北に位置するBhalswaという地区の、道路脇の川べりの光景が写真下で、大量のゴミです。河川の土手がゴミ捨て場になっている。かなりの距離にわたってこの有様で、付近の住人が捨てたにしては量がただごとではありません。

 

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 ガイドのキーラナンドさんが「ゴミの山」というので、私はこの河川のゴミを指しているのかと思ったら、彼が言っている「ゴミの山」は進行方向にあった(写真下)・・・ナ、なんだ、これ?!

 

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 本物のゴミの山です。デリーには山はないが、ゴミの山が3つもあるそうで、ここはその一つです。デリーの直轄領の人口だけでも1600万人をこえますから、これらの人々が出すゴミを焼却しなかったら、こんなものでしょう。もちろん、私は窓を開けて外の新鮮な空気を吸う勇気はない。

 

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 ゴミの山に運搬用の大型トラックが通行できるような広い道が螺旋状に作られています。写真下左では、空に鳥がたくさん舞っています。これはカラスで、ネズミもたくさんいるから、タカなどの猛禽類もいるかもしれない。

 

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 ゴミ捨て場を衛星写真で見ると、恐ろしいことに周囲はかなりの人口密集地帯で、しかも大きな河川のすぐそばですから、ゴミから出た汚染水がそのまま川に流れ出ている(写真下)

 

 

 下の地図の真ん中がデリーやニューデリーの中心部で、そこから10kmほど北のBhalswaにこの巨大なゴミの山があります。東京駅を中心に考えるなら、都区内にこの巨大なゴミの山があるのと同じです。

 

 

 日本人は顔をしかめるが、半世紀前、東京都でも夢の島というゴミの埋め立て地があって、東京駅から直線で5kmも離れていなかったから、似たようなものです。夢の島には19571967年までゴミが投棄され、ハエの大量発生で小学生が登校するのにハエ叩きを持参した写真が残っています。

 

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 ここはこのまま観光地にしてはどうだろう。私たち人間が何を生み出したのか、五感をもって体験するのが一番良い。

 研究対象としてもすごい。動植物の調査だけでなく、周囲に住んでいるたくさんの人間の健康調査をする。特に子供たちの血液の分析や、ガンや肺疾患などの病気の発症率を比較すれば、学者たちは何本も論文を書けるほどだろうから、このゴミの山は彼らには宝の山です。

 

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タンドリーチキン発祥の店

 ゴミの山をしっかりと見た後、ニューデリー市内で夕飯です。市内は雨が降った跡があるのに、晴れ女と晴れ男の力で雨も上がっています(写真下)。帰宅時間で混雑しているが渋滞はしていません。

 

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 写真下左の奥のレストランに入ろうとして・・・手前右側のFujiyaという看板に見覚えがある(18:28)。ガイドのキーラナンドさんに聞くと、ニューデリーでFujiyaはここ一軒しかないというから、6年前の2018年に南インドにクリンジを見に来たツアーで、帰国の日に夕飯を食べたあのFujiyaに間違いありません(写真下右)

 

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 私たちが食事をするのはFujiyaの二つ隣のMoti Mahal Deluxというインド料理のレストランです。ここのホームページの冒頭には、次のように書いてあります。

「モティ・マハルは単なるレストランではない。それは体験である。

(Moti Mahal is Not Just a Restaurant.It is an Experience)

 大上段に振りかざすだけの理由があって、この店は1947年創業した時、タンドリーチキンを初めて作った発祥の店です。写真下がそのタンドリーチキンです。

 

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 この話を添乗員の林田さん(仮名)から聞いて、私は驚きました。タンドリーチキンはインドの伝統料理で昔からあるものと思っていたからです。インドや東南アジアのレストランで言葉がわからない時には、一つ覚えでこれを注文すると、ほぼハズレがありませんでしたから、タンドリーチキンのうまさは知っています。それがわずか80年ほど前の個人が考えた料理方法だったとは驚きです。

 

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 インド料理と言えば、辛いカレーを連想します。しかし、その辛さの元であるトウガラシ(chili pepper)はアメリカ大陸原産ですから、インドにもたらされたのは早くでも1500年代と言われています。それまでのインド料理はコショウ (pepper)による辛さ程度だったのでしょう。コショウはトウガラシほど安価ではありませんから、庶民の料理が今日のように何でも辛いというのは、ここ五百年ほどということになります。

 

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 このレストランでは女神と象頭のガネーシャが祭られています(写真下左)。女神は右手に赤い蓮を持っていて、隠れた左手にもあるはずで、しかも武器を持っていません。女神像の手前にあるお椀に逆卍が描かれ、これはヴィシュヌの胸の旋毛(まきげ)を表わすとされ、ヴィシュヌの妻はラクシュミーですから、この女神像はラクシュミーでしょう。店の隅に、彼女を表わす赤い蓮を浮かべた容器も飾ってあります(写真下右)

 

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 ラクシュミーは富と幸運と豊穣の女神で、ガネーシャは富と繁栄、知恵と学問の神様なので、一般家庭だけでなく、商売ではよく拝まれています。719日に昼食で立ち寄ったウダイプールの店にもラクシュミーが祭ってありました。ラクシュミーの右手からは金貨がジャラジャラと噴き出ている!拝みたくもなりますよね()

 

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写真上左 ラクシュミー、右 ガネーシャ(『インド神話入門』長谷川明)

 

 レストランの柱に飾られた写真下はどう見ても、キリスト教の天使の聖水盤です。日本人には場違いに見えるが、ヒンドゥー教はゴッタ煮の「カレー宗教」ですから、細かいことは気にしない()。最近インドではヒンドゥー至上主義が流行っているが、ああいう排他主義はヒンドゥー教とは正反対の信仰です。

 日本の神道も元々は鷹揚で寛容な宗教だったのに、国家神道になってから、排他的で権力主義的な宗教になって、今では保守の一大政治勢力です。日本だけでなく、古今東西の歴史を見ても、宗教と政治がからむとろくなことがない。

 

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インドを発つ

 暗くなったニューデリー市内を通って、インディラ・ガンディー国際空港(Indira Gandhi International Airport)に到着(20:02、写真下右)

 

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 ここからはヒマラヤよりももっと険しい、検査という細く長く曲がりくねった道を登らなければなりません()

 空港の建物の入口で航空券を確認されます。身体検査と手荷物検査の厳重さは2日目の国内便で体験したので、まず身に着けている物はすべて出します。普通の空港ならパソコンを出せば、カメラやバッテリーはリュックなどに入れたままでもかまいません。ここではそれもすべて出さないといけない。それでいて、成田空港では禁止の500mLのペットボトルの水はかまわないというからおもしろい。

 インド独特のやり方がわかってしまえば、大変だが「飛行機が落ちるよりはいい」「インド人には勝てない」と自分に言い聞かせて、忍耐強く従う()

 

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 1時間ほどで厳重な検査をようやく抜けたのに(21:10)、私たちの飛行機A306だけがまだ出発ゲートが決まっていない(写真下の矢印)。まさか遅れるのかと心配しましたが、幸い、そんなこともありませんでした。

 

 

 さらに何度もチェックされて、ようやく飛行機に乗ります(23:31、写真下)。飛行機はエア・インディアのAI306、機体はボーイング787で、ニューデリーを0005に発ち、8時間25分飛行の後、72312:00に成田に到着予定です。

 

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また整備不良の飛行機

 写真下左の窓側18Aが私の席で、今夜の宿泊場所です。お客さんの数は、前の席の真ん中が空いているので、7割くらいでしょうか。飛行機は少し遅れて、00:34に離陸。

 

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 インドに来た時の飛行機と同じで、座席の前のモニターはスイッチが入るだけで使えません(写真下左)。イアフォンがあっても何の意味もない(写真下右)。自分の席の灯りも付かない。

 来る時も書きましたが、単にモニターや灯りが付かないだけなら不便なだけだが、問題はこの飛行機全体がこの調子でろくに整備されていない可能性です。同じ機体なら、整備不良が一機だけということになるが、たぶん他も同様ではないか。

 

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 厳重に検査するべきは客の手荷物だけでなく、エア・インディアの経営者たちの脳味噌に強いエックス線を当てて何度も検査し直すべきです。この飛行機への私の評価は、来た時のように五段階評価の一番低いEにしたいが、他は大きな問題がないこと、インドでは機械関係の整備不良が珍しくないから、彼らはわりと鈍感だという理由で「D不満足、改善するべき問題がある」とします。

 シンボル・キャラクターのマハラジャ君に合掌されても、今回も睨み返すだけです()

 

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 他のお客さんからも飛行機の苦情が出たので、林田さんは次回からは飛行機を変えることも検討するとのことでした。ただ、今回のように、エア・インディアは国際線で来ると、国内線のニューデリーからアムリトサルまでが無料になるので、費用を考えると「インド人には勝てない」かもしれません()

 

Air India | Tata-Owned Aviation Business | Company Profile

 

 私の隣はシク教の夫婦で、彼は身体を斜めにして寝ているので(写真下)、当然私のほうに大幅にはみ出てくる()。彼は離陸時もシートベルトはしないまま眠っていたようで、離陸後、しばらくたってから、目を覚ました彼はおもむろにシートベルトを締めたので、私は見ていて驚いた。客室乗務員は離陸の前に巡回しているのに、彼がシートベルトをしていないことに気が付かなかったのだ!

 モニター、灯り、シートベルトと、何かエア・インディアの企業体質が現れているように見えます。今、日本でも経済成長が著しいインドへの投資が盛んですが、私ならエア・インディアの株は買いません。

 

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 夜食が出ました(写真下左、723日の01:45)。インドでさえも深夜なのだから、こういう形式的なサービスは止められないものだろうか。映画も音楽もないから、早く眠りたいのに、食事の後片付けが終わるまでじっと待つしかない。

 エア・インディアの食事で一つ誉められるのは、スプーンやフォークが木なので環境負荷が少ない点です(写真下)。飛行機自体が環境負荷の塊ですから、減らす努力は良いことです。

 

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